概要
PCエンジンは日本電気ホームエレクトロニクス(NEC傘下)とハドソン(現コナミHD)が共同開発し1987年10月に発売された家庭用ゲーム機とその派生機。
コンパクトな本体サイズが特徴で任天堂のファミリーコンピュータ(ファミコン)の約半分。
ファミコンやセガマークⅢと同じ8ビットCPUのゲーム機なのにも関わらず、16ビットCPUゲーム機のスーパーファミコンやメガドライブと肩を並べるグラフィック性能・サウンド性能も特徴的である。実際、画像処理は16ビットで行われており、欧米では「TurboGrafx-16」の名称で発売された。
PCと付いている上にNECである為、PC-98シリーズと何か繋がりがあると思われがちだがそもそも部署が違う為PC事業とは関係は無い。なのに何故かシャープのX1と合体した物なら存在する。
代表的なソフトはR-TYPE、PC原人、天外魔境(いずれもハドソンが発売)等。
※R-TYPE(左)PC原人(中)天外魔境(右)天外魔境はCD音楽に坂本龍一・久石譲を起用。
ゲームパッドの接続口が一つのため、同時プレイにはマルチタップなどの分岐装置が別途必要(スーパー桃太郎電鉄などの交代制の場合は無くても可能)。この仕様は最終モデルのPCエンジンDuo RXまで変わらなかった。
基本的にファミコンを拡張させた仕様で設計されており、CPUもファミコンの上位互換であることから、ファミコンの開発経験があれば比較的応用が利いたとされる。
あまり知られていないが、ハドソン的にはファミコンとは競合するよりも共栄・共存の道を視野に入れていたとされており、PCエンジンリリース以降もファミコンにもソフトを供給し続けた。
本体発売時のパンフレットには、PCエンジンを構成するパーツ群が「アベンジャーズ」さながらのアメコミヒーロー軍団に擬人化されて描かれていた。メンバーは以下の通り。
- ハイパーCPU:軍団の頭脳。6chの威力を備える巨大なサウンドウェーブメモリ砲を持つ
- マスクROM:世界最高速で行動できるハイパー忍者。HuCARDに乗って大活躍
- ハイパーVP:巨大に変身する能力を持った怪物的戦士。ハイパーCPUの忠実な僕
- Pパレット:色彩のマジシャンと呼ばれる女戦士。512色を巧みに操る
- ゴッドハンド:4人の戦士を外部世界へジョイントするスーパー兵器。コア思想の中核
セーブ機能
パスワード方式とバックアップユニット方式。
他社との比較・傾向
国内販売台数は392万台。メガドライブの販売台数を上回るが、国内シェア独走1位のスーパーファミコンには大きく差を開かれ2位のシェアに留まる。
CD-ROM²システムは192万台で、メガCDの普及台数40万台より大きく普及した。
- HuCARDという厚さ2ミリのカード式ゲームソフト
- 大容量CD-ROMのゲームソフト
- マルチタップによる最大5人の多人数プレイ作品
- ナムコの業務用メジャー作品
- PCエンジンに参入しなかったカプコンやセガのライセンス移植作品
などが投入された。
※ボンバーマン(左)の1画面対戦プレイとスーパー桃太郎電鉄(右)はPCエンジンで産声を上げた。
※ナムコから画像のキャラクタの登場作品「ワルキューレの伝説」 「超絶倫人ベラボーマン」 「スプラッターハウス」 「ワンダーモモ」 「ドルアーガの塔」。他「源平討魔伝」 「パックランド」 「ドラゴンスピリット」 「オーダイン」 「プロ野球ワールドスタジアム」 「ゼビウス」 「ギャラガ88」 「ワールドジョッキー」等当時のナムコの主要なタイトルはほぼPCエンジンに投入されている。
CD-ROM²システム
PCエンジンはコア構想と呼ばれる多くの周辺機器を接続できる拡張性の高さを想定した構想を掲げていた。その最たる目玉商品として1988年に満を持して登場したのがPCエンジン本体背面の拡張バスを使用したPCエンジン用CDドライブ「CD-ROM²システム」であり、本システムが世界初の光ディスクを採用したゲーム機となる。
それは数字にして540メガバイト(=4320メガビット)という、8メガビットのHuカードソフトを500本(=4000メガビット)入れても余る代物であり、CD-DAによって内蔵音源以上の高音質BGMの演奏・フルボイスも可能になりNo・Ri・Koやビックリマン大事界、デジタルコミックのようなゲーム機の新しいスタイルも試みられた。
これによりPCエンジンは強力なアドバンテージを長期に渡り得ることとなった。今日までの家庭用ゲーム業界の歴史において「未来の先取り」という意味では比肩する事例の無いゲーム機である。
Huカードスロットを用いたシステムカードにより機能拡張が可能で、CD-G再生機能を追加したVer2.0、CDのオートチェンジ機能が使用可能となったVer2.1が登場している。
更にSRAM容量を増やしたVer3.0ことSUPER CD-ROM²が登場し、SUPER CD-ROM²規格の本体を使用するかSRAM拡張を行うスーパーシステムカードを旧規格本体に使用することでSUPER CD-ROM²規格のゲームが遊べるようになる。
1991年には拡張バスを排除したPCエンジンとSUPER CD-ROM²の一体型ゲームマシン「PCエンジンDuo」がヒットし、システムカードによるRAMの拡張こそ残ったもののコア構想の大部分は事実上の終焉を迎える事となる。以降PCエンジンの市場はほぼCD-ROM²に移り、プレイステーションやセガサターンが台頭するまでの5年弱に渡って独自の市場を形成していくことになる。
1994年にはDRAMを増やす拡張カード「アーケードカード」も登場している。カードスロットが1つしかないことから、DRAMのみを搭載したSUPER CD-ROM² SYSTEM用と、DRAMとスーパーシステムカードを2-in-1にした旧CD-ROM² SYSTEM用のバリエーションで発売された。
余談ながら、システムのバージョンチェックや音楽CDと同じようなトラック構造を利用して、ソフトにおまけ要素を持たせていたものがあった。旧バージョンのシステムで起動すると凝った警告画面や隠しゲームが表示されたり、CDプレイヤーで再生するとゲーム専用CDだという警告を兼ねたボイスドラマや声優のコメント集が聞けるソフトがあった。
PCエンジンGT
詳細はPCエンジンGTを参照。
TurboGrafx-16
PCエンジンの米国モデルである「TurboGrafx-16」は、本体が小さくてショボいハードだと思われることを懸念したことから、あえて横幅を拡げたサイズでデザインされた。単体だとそれなりにスタイリッシュだが、日本のCD-ROM²ユニットにあたる「TurboGrafx-CD」を接続するとCD-ROMユニットが後ろになって非常に不格好になる(上から見ると「凸」型になる)。
「TurboGrafx-16」の名称は、16ビットゲーム機に対抗するのに、ちょっと詐欺臭いが「本ハードも画像処理は16ビット」いう理屈で名付けられた。
米国でのTurboGrafx-16の売れ行きは散々だった。ソニックのようなキラータイトルに恵まれなかったとか、EAのスポーツゲームが発売されなかったとか理由は色々あるが、これにより欧州でリリースを予定していたPAL版の「TurboGrafx」(16は付かない)は発売がキャンセルされた。
LD-ROM2²
PCエンジンとレーザーディスクの融合。
パイオニア製のコンパチブルLDプレイヤー「レーザーアクティブ」に、オプションの「LD-ROM²パック」を取り付けることで、Huカード・CD-ROM²・SUPER CD-ROM²に加えて、パイオニア独自規格であるLD-ROM²のゲームが遊べる究極体となる。LDプレイヤーがPCエンジンを取り込むという点ではコア思想の真逆の発想である。
正に夢の環境だが、レーザーアクティブ本体とLD-ROM²パックのセット価格は128,800円で、Duo-R+LDプレイヤーとして見るとかなり割高である。LDプレイヤーも両面再生に対応していなかったりジョグシャトルが付いていなかったりと機能面ではエントリーモデル並みである。
LD-ROM²ソフトは取り扱っているショップが殆ど無くて入手が大変だったらしい。レーザーアクティブはパイオニアの他に、NECもOEMで販売していた。
なおタイムギャルが遊べるのはLD-ROM²ではなくてMEGA-LDなので注意。
PCエンジンミニ
ファミコンミニから始まった各社のミニ筐体の流れでコナミも6月12日に「PCエンジンミニ」をリリースする事を発表。三種類あり、日本市場向けは初代PCエンジンタイプの「PCエンジンミニ」、米国は「TurboGrafx-16mini」、ヨーロッパは「PC Engine CoreGrafx mini」としてリリースされる。
無能な働き者?「NECアベニュー」
NECアベニューは社名にNECを冠するNEC傘下のメーカーであったが、任天堂やセガといったファーストパーティのようなソフトの価格優遇は無くハドソンより割高であった。
何より、カプコンやセガ等を相手にライセンス移植の契約を取り付けるのばかり速くて、いざ発売となるとなかなか発売しないのでハドソンやナグザット等の優良な移植企業がライセンス移植をしたくてもできないという、PCエンジンを自縄自縛状態に陥らせていた負の側面が大だった。
ソフトリセット
PCエンジンには本体にリセットボタンが無い代わりに、RUNボタンを押しながらSELECTボタンを押すとリセットをかけることができる。
ソフトリセット操作と似た裏技が設定されていたゲームでは誤操作でリセットしてしまったり、対戦ゲームでは負けそうになったからとリセットするといった悲劇がたびたび起きていた模様。
特定条件でソフトリセットを行ったり、一定回数ソフトリセットを行うといった裏技が設定されていたゲームもあった。
「ストリートファイターⅡダッシュ」等の一部のソフトはソフトリセットがかからないようにされている。
その他PCエンジンの「コロンブスの卵」
モデルチェンジの先達
PCエンジンにはNEC自身の手で様々なモデルチェンジ、派生機種が投入されている。
現代でこそそれは任天堂やソニーでも当たり前となった手法だが、PCエンジン以前までは高額なゲーム系パソコンどまりの手法であり、
- 皆が同じデザインのゲーム機を共有する事による共感が失われる
- 周辺機器の互換性や修理部品の確保が負担増になる
等のリスクも危惧されたと思われ、任天堂のゲームボーイも94年のゲームボーイブロスの登場まではかたくなに1種類のデザインのみで通されていた。
その通例を破ったのが89年のNECによるコアグラフィックス・シャトル・スーパーグラフィックスの3モデル投入であり、以降もGT・Duo・LTなどを意欲的に投入。
他社でもセガが追随するように少しずつ派生モデルを投入するようになり93年以降は顕著になっていく。
定価を下げた先達
定価変更も今でこそ任天堂やソニーで当たり前となっているが、PCエンジン以前は先に買ってくれた人に配慮して定価は下げてはいけないといった空気が強かった。
それはPCエンジンでもコアグラフィックスは旧モデルと同じ24,800円に設定されたりDuoをCD-ROM²より高い59,800円としスーパーCD-ROM²はコストダウンを名目に翌年の発売に持ち越される予定だった事からも窺える(結局クリスマス商戦に合わせて47,800円で発売される)。
その一方で基本的に性能はコアグラⅡと同等だがTFT液晶モニターとTVチューナーを内蔵したLTは単体だけでPCエンジンシリーズ史上最高額の10万円近い価格だった。
現在の諸権利
コナミがハドソンを吸収した際にPCエンジンの商標も持っている…のは半分正解。実はもう一社PCエンジンの商標を持っている。それはKDDI傘下のBIGLOBEである。
BIGLOBEはNEC HEが解散した際に本体であるNECに吸収された後、同社のパソコン通信サービスの「PC-VAN」とインターネットプロバイダー事業の「mesh」との統合により誕生した事業で、後に分社化して「NECビッグローブ」になった際にPCエンジンの商標もコナミと共有される形で持っていたからである。
BIGLOBEは投資家ファンドに譲渡された末にKDDIに買収されたが、現在はゲーム開発とは無縁である為に実質ハードならびにソフトの復刻リリースはコナミが担当となる。
PCエンジンミニには実はNECのロゴが付いていない。これは現在のNECが関与していない事や、当時のNECロゴが使えない事が、PCエンジンミニに関与した岩崎啓真氏が後者に付いて述べた事がある。
海賊版の問題
当時はCD-Rが民間用に存在しない時代だったのでCD-ROMにコピー対策がなされていない。
ヤフオク!で出品されている「PCE-WORKS版」を名乗る商品は「PCE-WORKS版です」などといかにも公式ライセンスのように装っていてもそのような商品は存在せず、精巧な違法コピー品なので注意されたい。中には本来PCエンジンに出た事すらない勝手移植のものまであるという。
現在PCエンジンの諸権利を持つコナミに対して疑問を持った者が「この「PCE-WORKS版」に本当にライセンスを与えたのか?」とコナミ公式Twitterアカウントに問い合わせたところ、どうやらコナミも知らなかったようである。
非ライセンス(いわゆるパチモノ)ソフトについては、CD-ROM²のBIOSに強力なライセンスチェックがあるため、このチェックを無許可でかいくぐるソフトはライセンス違反で摘発できるが、これも独自のシステムカードをカードスロットに挿すことで迂回可能で、ハッカーインターナショナルの「GAMES EXPRESS CD CARD」が該当した。
関連動画
東京おもちゃショー
PCエンジンコアグラフィックスのCM(ドラえもんを起用)
PCエンジンDuoのCM集
TurboGrafx-16のCM
TurboDuoのCM
代表的なソフト(HuCARD)
関連リンク
ハード、周辺機器
ゲーム機 据え置きゲーム機 マルチタップ HuCARD CD-ROM² SuperCD-ROM²
PCエンジンシャトル PCエンジンコアグラフィックス PCエンジンスーパーグラフィックス
ソフト
超兄貴 PC原人 マジカルチェイス 空想科学世界ガリバーボーイ にこにこぷん 女神転生シリーズ 天外魔境 ガンヘッド(PCE) ドラゴンハーフ ダウンロード 死霊戦線 Xak
関連メーカー
NHK : ハイビジョン技術の一つとして「Hi-10ボンバーマン」を展示していた。
イメージキャラクター
関連国
ポーランド:修理に必要なギアを生産している国である