概要
根の一族に属する蟻人間の王であり、常に妻の女王蟻であるマダム・バーバラに寄り添う小柄の中年男性。
構成
暗黒神ヨミの復活を企んで日本各地に異変をもたらした悪の元凶である工学博士デーロン、生物博士デロレン、魔道博士ベーロンにバーバラと共に従い、1000年前に猛威を振るった難攻不落の大要塞『砂神城』(さじんじょう)の新たな城主となって緑豊かな因幡を砂塵が舞う人喰い流砂の国に変えた張本人。
シナリオとディレクションを担当した桝田省治の後日談によると、「本来はバーバラと共に砂神城で退場する段取りであり、該当シーンにはガーニンの改造バージョンを登場させる予定だったが、メッセージを書き進めるうちにキャラクターが暴走を始めて設定負けしてしまったため、急遽ペペに白羽の矢を立てた。」とあり、この登板交代をきっかけに紡ぎ出された驚愕の展開で「天外魔境にこの人あり」とプレイヤーの記憶にその名を深く刻み込む要因となった。
来歴
邂逅
1000年前の大戦で火の一族の勇者である大霊院女彦、船海宮義経、蛇光院松虫、いろは宮静の4人が命を賭して陥落し、魂となってなお莫大な霊力で封縛していた砂神城を復活させた三博士の指令、即ち根の一族の首魁たるヨミの勅命を受け、竜巻と流砂を操る妖術を駆使して因幡の人々を苦しめる。火の勇者の導きによって砂神城に突入した戦国卍丸一行を滅ぼすべく戦いに臨むが、バーバラを倒した卍丸の強大な力に為す術も無く逃走し、裏切り者の烙印を押されて三博士から差し向けられた追討隊の目を掻い潜る日々を送るようになった。
最愛の妻の仇を討とうと潜伏先の丹波で独り決戦に臨むも、程無く追討隊が現れたために止むを得ず退き、その後も少しずつ傷付きながら必死で逃げおおせつつ何度も卍丸の前に姿を現す中で「卍丸たちに敗れて最愛の妻も、帰る故国も、頼るべき存在も全て失った。自分にはもう復讐しか生き甲斐が無く、恨みの元凶である卍丸の命を他の誰にも奪われたくない。」と語り、遂には「愛してるよ!」と無上の愛憎を凝縮した感情を露わにして襲い掛かったが、ここでも追討隊の邪魔が入って行方を眩ました。
復讐
丹波と浪華の国境近くにある鹿の子村に逃げ込み、たった1人の小さな体で瞬く間に『箱庭城』(はこにわじょう)と名付けた二棟続きの長屋を完成させた上で再び妖術を使って竜巻を呼び寄せ、浪華に急ぐ卍丸の足止めに成功する。しかし、村人の噂を聞き付けて箱庭城に入り、難無く最奥部へ辿り着いた卍丸を目にすると堂々と敵前逃亡を宣言し、「卑怯者と呼んでくれ。臆病者と罵ればいい。今日負けても明日負けても地獄の底まで追いかけて、付き纏って喰らい付いて、お前たち一人残らず叩き殺すまで何度でも何度でも挑んでやるよ。」と言い残してまたも行方を眩ましたが、その道中でとうとう追討隊の手が伸びて捕縛されてしまった。
ところが、三博士のうちデーロンはペペの行動の詳細と底無しの執念を知って強い興味を抱き、本来であれば生贄として命を奪う所を敢えて取り止める願いをヨミに上奏した事で九死に一生を得た。卍丸がガーニンを倒した直後に現れると宣教師のホテイ丸を人質に取って境の北西の岬に来るように仕向け、そこで三博士の傑作である飛行要塞『鋼鉄城』(こうてつじょう)の威容を見せ付けるが、所用があると言って戦闘は避けつつも「それじゃ、俺以外の根の一族にはくれぐれも気を付けろよ。」と憎悪に歪んだ愛情に満ちた励ましの言葉を残し、鋼鉄城を起動して姫路へと旅立つ。
変貌
姫路城主が自慢する精鋭揃いの大兵団を主砲の1発で跡形も無く消し飛ばし、顔色を一変して狼狽する城主に泣き付かれた卍丸一行が鋼鉄城へ突入した頃、三博士による肉体改造手術を受けて己の身をサイボーグと化し、ホテイ丸の救出に向かう卍丸の前に顕現する。しかし、折角サイボーグとなってまで得た力について「こんなもんじゃお前たち火の勇者の化け物じみた力には通用しない。」と明らかな不満を漏らし、より強大な力を得るべく「俺を虐めてくれ!グチャグチャにしてくれ!人間を捨てられるようにな!!」と懇願しながら襲い掛かる。
これを退けた卍丸が持つ火の勇者の力に一層惚れ込んで「絶対、俺の手で息の根を止める。約束するよ。」と言い残してその場を去り、さらなる改造手術によって頭部以外を機械化した強化体として再び姿を現すと「これでやっと、お前たちや妻に引け目無く戦える!!もうすぐだ!もうすぐだよ!もうすぐお前を俺だけのものに出来る!!」とさらに歪んだ愛情を嬉々と語って襲い掛かるも敗れ去り、ここへ来てまだ人間を捨てきれない己の甘さを呪いつつ再戦の誓いを残して逃亡する。
決戦
鋼鉄城最上部で卍丸の到来を喜び、もはや筆舌に尽くし難い異形と化した己の姿を「見てくれ、この俺の醜い機械の体を…。もう一人で飯も食えない!下の世話さえ自分じゃ出来ない!」と嘆くと同時に、ようやく一切の迷い無く力の限り卍丸と戦える満願成就の時に心震わせて最終決戦に臨む。
文字通り人間を捨てて単なる殺戮兵器と成り果てた姿を以ってしても卍丸に敵わず、「勝てるとは、ハナから思ってなかったよ…。それにしても強いね、俺の卍丸は…。」と敗れてなお心からの充足を語る一方、「どうして、お前たちの中で一番戦闘力のある者が戦わないのだ…。どうして…。」と最後まで理解出来なかった1つの疑問を投げかけて絶命した。
人物
蟻人間の頂点に立つ王として「デューク(=公爵)」を名乗り、竜巻や流砂を自在に操る妖術を使い、戦闘となれば多彩な補助、回復術でバーバラを強力に援護する有能な術者。
女王を頂点とする蟻の社会形態からして、王とは言え一見すれば女王であるバーバラに付き従う小兵の腰巾着と思いきや、戦いを挑んだ卍丸一行を退けたバーバラ曰く「火の一族とは何と弱々しいのかしら。やっぱり私の旦那様がこの世で一番強い男ね!」と豪語し、今際の際にも「私が死すとも、まだ夫のペペがいる。あの人が、必ずこの仇を取ってくれる。」と言い遺すなど、凄まじい力を発揮する巨体を持つバーバラをして一目置く存在である。
来歴を見てもわかるように、良し悪しは別としてもペペの行動には必ず何かしらの「愛」が深く関わっており、バーバラに対しては生涯唯一の良妻であり、箱庭城の近くに建てたせめてもの墓標を通じて仇討ちの請願を形にした紛れも無い純愛を、卍丸に対してはバーバラを殺めた恨みが募るにつれて自分以外の手に掛かって命を落とす事を極端に嫌う独占欲をこじらせ、挙句の果てに人間が人間としてあるべき最後のプライドすら捨ててまで卍丸の打倒を渇望する捻じ曲がった偏執愛を表現した。
時には挑発、時には激励と取れる苛烈な想いをエキセントリックな言葉に乗せて饒舌に語り、愛憎渦巻く狂気のみを支えに何度も逃亡と挑戦を繰り返す哀れで痛々しく、それでいて徐々に精神を歪める描写はプレイヤーに背筋の凍る不気味な印象を刻み付け、単作出演でありながら天外魔境シリーズを代表する屈指の悪役に数えられるまでに至る。
『髑髏譚』では
小説『天外魔境I・II架話 髑髏譚 -SKULL TALE-』では設定が違っている。
『安倍平明』という名前の人間で陰陽師。阿観とは知り合い。安倍晴明の血を引いていることを自慢しているが、卑屈な性格の小男のため、陰では『ぺーぺー』と陰口を叩かれている。やがてネの一族の陰謀に巻き込まれ、拉致されて常世蟻(後のマダム・バーバラ)の婿にされてしまう。最初は蟻の夫は嫌だと逃亡を図ったりしたが、常世蟻が自分を大事に思って逃がしてくれた気持ちを考えて、「女王様(常世蟻)だけに責任を負わせてはわしの男が廃る」と、常世蟻が自分を逃がしたことを責められないように自ら戻り、常世蟻の婿としてネの一族に加わった。後に幻王丸から『デューク・ペペ』という名前を与えられた。
関連キャラクター
動機や原因は異なるが、ペペ同様に改造手術を重ねて主人公に戦いを挑み続けた他作品の人物。
など
関連イラスト
- 根の勇者?
「なぁ、俺って強いだろう。でも、お前に勝てないと何の意味も無いんだ。愛してるよ、卍丸!!」