警告
この記事は『仮面ライダー龍騎』第49・50(最終)話の重大なネタバレがあります。
はい
前後のストーリー
ここまでのあらすじ(~Aパート)
「己が欲望のために13人のライダーが戦い殺し合う」という衝撃的な設定が大きな反響を呼んだ仮面ライダー龍騎。
そんな中でただ一人願いを抱えず「ライダーを含めた人々を守りたい」という思いのもと龍騎として戦ってきた主人公、城戸真司だったが、彼の思いに反しライダーは次々と無残な最期を遂げていった。
そして…………
真司&蓮サイドの一連の流れ
(裏で北岡&吾郎、浅倉のストーリーも平行展開されていたが、ここでは割愛してこの二人に集中して記述する)
神崎優衣の真実を知り苦悩してきた真司。
彼女の誕生日の前日、優衣は他人の命を奪ってまで生きる事を拒絶し、消滅してしまう。
真司は彼女の思いを汲み取り神崎士郎にぶつけるが、彼はまだ間に合うとして話を聞かず引き続き戦いの継続を言い放った。
そんな中で、職場の先輩であった桃井令子に変身の瞬間を目撃され、ついに正体がバレてしまった城戸真司はOREジャーナルにて大久保編集長に全てを打ち明ける。
大「そっか……
お前そんなこと、ずっとやってたのか……」
「俺…… 全然、答え出せませんでした。
今だって、優衣ちゃんが消えたこと……」
大「ハッ! 上等だよ、
この野郎! いいんだよ、
ンな答なんか出せなくて」
「えっ?」
大「考えてきたんだろ、今まで。
お前のそのデキの悪い頭で必死に、よ。
それだけで充分なんじゃねぇか?
俺はそう思うぜ」
「編集長……」
大「ただし、だ。
何が正しいのか選べないのはいいが、
その選択肢の中に自分のことも、
ちゃんと入れとけよ」
「えっ?」
お前が信じるもんだよ。
お前だって、ここんとこにしっかり芯がねぇと、
話し合いにもなんねぇし、
誰もお前の言うことなんか聞いてくんねぇだろ。な?
「俺の、信じるもの……?」
大久保編集長からアドバイスを受けた真司は、その後同僚の島田奈々子や浅野めぐみから北岡秀一の真実を知る。彼が不治の病に冒されていたこと、それ故に永遠の命を求めていたことを。
「北岡さんの、戦う理由って……」
(蓮「そうやって何でも飲み込もうとするから迷うんだ」)
しかしその裏、ミラーワールドでは次々とレイドラグーンが増殖していた。
Bパート
翌1月19日、ついにレイドラグーンの大群が現実世界へ侵攻を開始し、都会の一角で人々を襲い出す。
人々を守るために現場に向かった真司と蓮。目前で襲われている人を助けた後、蓮が一足先にナイトに変身しミラーワールドへ向かう。
一方真司は一人車にしがみついて動けなくなっていた少女"未来"を見つけ、彼女を抱えて助け出そうとする。しかし迫ってきたレイドラグーンを目前に彼女を庇った瞬間、
彼の背中から、鋭利物が刺さる鈍い音が聞こえた。
なんとかレイドラグーンを追い払い少女を逃がすことに成功するも、上手く立ち上がれず手に取ったカードデッキを吐血と共にこぼすほど苦しむ真司。
車を支えになんとか立ち上がり蓮の戦う姿を目撃した彼は、編集長の言葉を思い出す。
(お前が信じるもんだよ。)
「…変……身!」
そして、真司は最後の力を振り絞って仮面ライダー龍騎に変身する。
傷つきながらも必死に戦う彼だが、撃破できたとはいえ、ドラゴンライダーキックのハイジャンプですらできなくなっていた。そして、そのままうつ伏せに倒れ込んでしまう。
蓮(ナイト)「城戸!? どうかしたのか? ……おい!? 城戸!」
「はぁ、はぁ……
別に……ちょっと、はりきり過ぎた……」
なんとか立ち上がりナイトと共にサバイブに変身。
自分の余命を悟った故か、戦いながら彼の上げる叫びは悲しく聞こえる。
そして共にファイナルベントを繰り出し、レイドラグーンの群れは一掃された。
現実世界に帰還した真司。吐血しながらも、少女と母親の再会を見届け安堵する。
「やっと…ちっとは答えらしいモノが
…見つかったかもしれない。でも……なんか俺……。駄目かもしれない」
直後に真司は自動車にもたれながら崩れ落ちる。
蓮「城戸!しっかりしろ!城戸!」
俺さ…………昨日から…………ずっと、考えてて…………
それでも、わかんなくて…でも…さっき思った…
やっぱり、ミラーワールドなんか閉じたい…………闘いを止めたいって…………
きっと、すげぇ辛い思いしたり…………させたりすると思うけど…………
それでも止めたい…………それが正しいかどうかじゃなくて…………
俺の、ライダーの一人として…………
叶えたい願いが………………それなんだ…………………
蓮「だったら生きてその願いを叶えろ!……死んだら……終わりだぞ!!」
そうなんだよなぁ…………
蓮……お前はなるべく……生きろ……
蓮「お前こそ生きろ! 城戸……死ぬな……死ぬな!!」
お前が、俺に…………そんな風に言ってくれるなんてな……………
蓮「おい……おい!!」
ちょっと…………………
蓮「城戸……」
蓮「おい城戸! 城戸ぉーーーーーーー!!!」
共に戦ってきた友の屍に寄り添う蓮。
直後、神崎士郎からお呼びのかかった蓮はその屍を背に向け、最後のライダーとしてオーディンとの決着に向かうのであった……
衝撃
番組タイトルにもなっている主役ライダーが最終回直前に、一般怪人の攻撃が原因で、サブライダーよりも先に完全に死亡するという展開は今までほぼ例が無く、役者陣含め当時大きな衝撃を呼んだ。
視聴者からの反応:
- 「呼吸が止まった」
- 「寝込んだ」
- 「ひたすら泣きじゃくった」
- 「放心状態になり泣くことも出来なかった」
- 「直後の朝ご飯は味がしなかった」
- 「(後番組の)おジャ魔女まともに見れなかった」
- 「受験前に見て絶望した城戸君のファンがいるらしい」
- 「小学校低学年だったが、初めて"死"について考えた」
(出典:過去のニコニコ動画期間限定配信跡地&Twitterの各種ツイート)
また、この第49話が放送された2003年1月12日には
があり、これらについても「握手して貰った後帰って録画を観たら奈落の底に落とされました」「携帯テレビを持ち込んだ連中から啜り泣きが聞こえて来た」「喪服ないしは黒のフォーマルな服お姉さん達がイベントに来ていた」などの証言がTwitter上では確認されている。
役者陣:
- 須賀貴匡氏(真司役)「この結末はこれっぽっちも想像しなかった。」「『最終回まで生き残れないんだ…。』って思いましたね。」
- 松田悟志氏(蓮役)「プロデューサーの武部さんも、あの台本が来て戸惑っていた。」「僕もあの台本をロケバスの中で見た時、一回ページ閉じました。」
「誰が最後のライダーになり、願いを叶えるのか?」というのは役者陣でもよく話題になっていたが、誰一人としてこの結末は当てられなかったという。
しかもこれまでの捕食や爆死、ダメージ超過による死、ミラーワールド内での消滅、事故死(いずれも血の描写無し)と違い、真司の最期は流血を伴う大変生々しいものであった。これは人の死が悲劇的ドラマティックに訪れるものでは無く、まして美しさや尊さなど欠片もない痛々しく汚らわしいものであることを表現するための演出であり、これが彼の最期の独白により強い説得力を与えた。
(後の作品でも主人公が死ぬ展開はあるが、仮死状態に近かったり、復活が前提の空気感があることがほとんどなので、よりその特殊性が際立つ。)
脚本担当の小林靖子氏がしばしば繰り出すとされる暗黒展開の一つとして語られることもあるが、実際のところこの展開はプロデューサーの白倉伸一郎氏から持ち掛けられたものだった模様。
作品のテーマ「本当の正義とは何か?」を語る上で主人公もまた死亡することは避けられなかったという。
この結末になった理由については秋山蓮役の松田悟志氏のYouTubeにて語られている。
現在に至るまで、一切蘇生の見込み無く最終回前に死亡したニチアサキッズタイム番組の主人公は、城戸真司のみである。
関連タグ
グリスショック:15年半後の衝撃のライダー退場劇だが、30分後の番組でも別の意味で大惨事をやらかした。
そして……
- 戦いの真実
翌第50話(最終回)では北岡と浅倉の死亡が判明、そして蓮もまた恵里の意識回復と引きかえるように息を引き取った。
大久保編集長が、己の卓で一人ノートPCに向かい記事を打ち込む。
「以上が、原因不明の失踪事件の真相であり、仮面ライダーと名乗る人間たちの、戦いの真実である。」
この戦いに、正義は……ない。
そこにあるのは……純粋な願いだけである……
その是非を問える者は……
- エピローグ
優衣「お兄ちゃん……また繰り返すの……?」
神崎邸でなお優衣に固執する士郎。しかし優衣は新しい命を拒み続ける。
幼少期の姿に戻る神崎士郎。
優衣「私はここにいる……お兄ちゃんのそばにいる……新しい命なんかなくても……絵を描いてた時みたいに……ただ願えば……」
鏡の中から消える19歳の優衣と入れ替わるように幼少優衣が現れる。
窓に貼られた幼少期の絵、
鏡に映る大人神崎士郎、
そして回転しながら落ちる鏡の破片にそれぞれ浮かぶ主人公達と神崎兄妹のイメージ映像。
二人の兄妹が、絵に囲まれた幻想的な空間で楽しそうに絵を描いている。そこにやって来て共に絵を描き始める、大人の優衣と士郎。
そこに描かれていたのは「自分達を守ってくれる怪物」ではなく、「いろんな人達の笑顔」だった。
やがて幼少期の絵と古椅子を残し、神崎邸の兄妹の部屋には誰もいなくなっていた……
INORI
2003年1月19日、OREジャーナルの新しい朝が始まる。
遅刻した新人記者の城戸真司は編集長からお仕置きの羽交い締めを受けた後、金色の蟹の取材に向かう。
その途中で、やや散々な目に遭いながらも次々とかつてライダーだった者達と遭遇、時にすれ違っていく。
通りすがりに見つけた喫茶店「花鶏」に立ち寄ったところで、目前に立ちふさがるかつての戦友。
蓮「どけ」
真司「どけって……あんたこそ!」
店内、扉を開けた真司はコーヒーを頼むが、店主に紅茶しかないと跳ね返されてしまう。平穏な日常が壊れない事を願う祈りの歌と共に穏やかな時が巻き戻る事なく流れていく。どこか無愛想な店主の脇には、幼い兄妹の写真が飾られており、彼らの顔には笑みが浮かんでいた…。
祈りを 捧げよう 世界が 終わる前に
大事な 人がもう 争わないで 済むように
祈りを 届けよう 世界が 愛に満ちて
未来で 誰一人 傷つかないで 済むように
いつでも 祈ってる……
真司くんと蓮を忘れないでね
余談
最後の場面、互いに振り向いた蓮と真司の目が合っているが、蓮の性格上これはあり得ないのではないか?という論が一つ出されている。
真司は初対面の時点で蓮を気に食わない嫌な奴と認識したため、振り返って背中を見るのは想像できるのだが、蓮の側からすれば真司は「どうでもいい通りすがり」であるため振り返る理由が無い、その上ちょっとしたイラつきを相手の背中を睨む形で解消するような性格でもないため、本来なら蓮の背中を真司が一方的に睨みつけ、バイクで走り去る前にヘルメットごしに一瞬目が合う程度なのが自然なのである。
では何故蓮は振り返ったのか?
この時の蓮だけは優勝者特典で記憶を保持していたのではないか?という考察があるのである
そして最終回から20年後にあたる2023年1月19日、蓮を演じた松田氏が「石田監督から『蓮は覚えてる、でやってみてくれるか』との注文があった」事が明らかとなった(参照ツイート)。
『KAMEN_RIDER_DRAGON_KNIGHT』でも劇場版『EPISODE_FINAL』と併せて本回の映像が流用されたが、城戸真司に当たるキット・テイラーが悲惨な退場を遂げることはなかった(DRAGON_KNIGHTでドラゴンナイト=龍騎を倒したのはラス=オーディンとなっている)。
真司が身を挺して助けた幼い少女を演じたのは、当時はまだ9歳の子役であまり名前も知られていなかった志田未来女史である。更には、後に志田未来女史と蓮役の松田氏は、天海祐希女史主演のドラマ『BOSS』で共演しているのだが、こちらで2人が演じたのは松田氏が『優勝トロフィーで撲殺された体育教師』、志田女史が『その体育教師を優勝トロフィーで撲殺した犯人である女子高生』と言う、龍騎ファンから見れば『真司が命がけで助けた少女が、蓮を殺害する』というあまりにも笑えないネタとなっており、別の意味で衝撃となっている(実際に松田氏もこの事について『MOVIEバトルロワイヤル』公開を記念した須賀氏と萩野氏との座談会でネタにしていた)。
関連タグ
仮面ライダービルド 仮面ライダージオウ…似たような結末を迎えた後輩ライダー作品。
飛電或人:新型ライダー制作の経緯で敵の凶弾を受け死亡してしまうが、実は…こちらを参照。
仮面ライダーセイバー:こちらも同上と同じように味方の剣士たちが次々と命を落とすものの、最後は主人公が起こした奇跡により世界の消滅が完全回避されるというものだった。それと同時に仲間たちも記憶を引き継いだまま復活する、そして連れ去られた人たちが現実世界へと帰還するなど異なる点を持つ。
セーラームーン無印ラストショック:「主人公達が全滅するが、世界がリセットされ戦いが存在しなかったことになる」という流れの先輩。