概要
「過去に存在したが、何らかの理由により後世に伝えられず現代では失われてしまった技術」のことを指す言葉。
完全にフィクションの存在であるオーバーテクノロジーと異なり、ロストテクノロジーにはわかりやすく実在する例がある。例えば戦艦の主砲として使用されていた、口径12インチ(30.5cm)~20インチ(50.8cm)クラスの大砲は、航空機やミサイルの発達などにより戦艦自体が無用の存在となった事で製造技術が失われてしまっている。戦艦については、船体だけを新造するにも船体装甲や主砲塔装甲板のような分厚く巨大な特殊鋼材のリベット接合の技術が失われた現在では不可能である。
また、オーバーテクノロジーであっても、かつて滅びた超古代文明のものであれば、ロストテクノロジーと言う事ができる。かつて隆盛を極めた文明が衰退し、一部の技術がロストテクノロジー化したという事例は現実においても珍しい事ではない。
ロストテクノロジー化した物体が現代で発見された場合、歴史上存在し得ないはずの物体「オーパーツ」として扱われる事もある。創作物においては「核戦争レベルの大規模な戦乱により近未来の文明が崩壊。僅かに生き残った人類がかつての文明の遺産である遺跡などを運用する」というシチュエーションが多く、特にロボットアニメではお約束の題材とされている。
ロストテクノロジーが発生する原因
文明の変質・衰退、代替手段の発達、原料の枯渇などがあげられる。
主な例
注:【※】は外部リンク
工学
- 戦艦:上記及びこちら(※ニコニコ大百科版)も参照。
- ※歯車式計算機、※アナログコンピュータなど:いずれも電子式デジタルコンピュータの進化に太刀打ちできず1970年代~1980年代に絶滅。他にもコンピューターの発達でロストテクノロジー化した技術は非常に多いが、その中で計算尺やそろばんは細々と命脈を保っている。
工芸
- 日本刀(の一部技術):鎌倉時代から室町時代初期に作成された太刀などに関して幕末に再現が試みられたが同一のものにはならなかった。
- ※ロシアンカーフ:トナカイの皮から作られた皮革製品。ロシア革命前後に作り方が失われたとされる。
- ※高麗青磁
- セルアニメーション:CGアニメへの移行により新たなセルの製造もされなくなり、ロストテクノロジー化しつつある。超時空要塞マクロス愛・おぼえていますかの※ラストシーンなど。
地域
- ヨーロッパにおける※魚醤:古代ギリシャおよびローマでは盛大に使用されたものの、その後用いられなくなり技術が絶えた。近代に製造されるようになったウスターソースも魚醤であるが、古代の調味料と技術的なつながりはない。
- ローマ帝国における水道技術:下水道などはその後千年以上にわたって使われた。戦乱や老朽化で使用不能になるものも多かったが、近代になるまで新設は不可能だった。
- ヨーロッパ人による征服前の南米の技術:プラチナや金細工の加工技術(溶接した跡が見られない)。その他にもビーズ細工の技法や極細糸の製造技術、プレ・インカの白色染料など(いずれも再現不可能)。
- アメリカ合衆国における通常動力型潜水艦の建造技術
- アイヌ文化における土器製造技術:中世に和人との交易が盛んになり、本州から簡単に品質のよい陶磁器や漆器が手に入るようになったために土器づくりをしなくなった。
- 近代以前のタスマニアにおける石器製造技術:ある時期から石器を使っていた痕跡が無くなり、そのままヨーロッパ人の到来にいたる。
理論
- ※和算:学問というより芸能として継承されたため、秘密主義、秘伝主義によりロストテクノロジー化した部分が多い。ただし、和算のうち初歩的なものは現在の算数やパズルゲームなどにも応用されている。
- ※華岡青洲による世界初の全身麻酔薬「通仙散」:使用には大変な危険を伴うため秘伝にされ、のちに伝来した安全な麻酔薬の普及により忘れ去られた。
技術の検証
ロストテクノロジーのうち、工芸品などは再現が試みられるものもある。
- 中が透けるほど薄い有田焼磁器「卵殻手」:明治時代以来100年ぶりに再現に成功
ある程度再現に成功した例
- アブラアン・ルイ・ブレゲの同調時計
- 有田焼における濁絵技法
- 田中久重の万年自鳴鐘
- ラスター彩のイスラム陶器
- アクセサリーのピクウェの技法
ロストテクノロジーを題材とした作品
- アーマード・コアシリーズ:一部シリーズを除き、「大規模戦争により世界が荒廃。生き残った人類が前世代の技術を運用している」という設定の作品が多い。
- 風の谷のナウシカ:『火の七日間』と呼ばれる最終戦争により文明が崩壊してから1000年後の世界を題材とした作品。劇中の人類は古代遺跡を掘り起こしてエンジンやセラミックなどを入手しているほか、巨神兵などの超兵器も発掘されている。
- 天空の城ラピュタ:かつて隆盛を極めた超古代空中都市『ラピュタ』の争奪戦が描かれる作品。飛行石の結晶化技術、外部装甲の素材すら不明なラピュタのロボット兵など、随所にロストテクノロジーと呼べる存在が登場している。
- ゴジラシリーズ(主に1954年公開のゴジラとリンクする時系列シリーズ):オキシジェンデストロイヤーと抗核エネルギーバクテリアが該当。いずれもゴジラに対し効果的な威力を誇ったが、研究開発者が資料等を一切残さず死亡したため再度開発されなくなった。しかし前者は……。
- 機動新世紀ガンダムX:ガンダムシリーズにおいて初めて、戦乱による荒廃とそれにより生じたロストテクノロジーが題材とされた作品。第7次宇宙戦争により荒廃した地球で、15年前に製造された最強のモビルスーツ・ガンダムXの発見を契機に物語が始まる。
- 機動戦士クロスボーン・ガンダムDUST:地球連邦軍が衰退し、地球圏全体の技術レベルが低下した『宇宙戦国時代』を題材とした作品。前作に登場したような超高性能モビルスーツの運用が困難になり、ジャンク品同然の改造旧世代モビルスーツが登場する作風が特徴。
- ∀ガンダム:先述のガンダムXやクロスボーンガンダムDUSTより遥かに超未来、全てのガンダムシリーズが黒歴史として過去になった世界を舞台とした作品。かつての文明を失った地球の人々はマウンテンサイクルと呼ばれる場所からモビルスーツを発掘、運用している。
- 狂気の山脈にて:クトゥルフ神話作品の一作。かつて地球を支配した『古のもの』と呼ばれる生命体の超科学文明が衰退し、制御技術が失われた奉仕種族『ショゴス』によって破滅していった過程が描かれる。
- THEビッグオー:40年前に起こった「何か」によって全ての人々が記憶喪失と化した世界を舞台としたロボットアニメ。作中では巨大ロボットやアンドロイドなどの超技術に留まらず、煙草や野菜などの農産物、愛玩動物なども失われた「メモリー」……すなわちロストテクノロジーとして貴重品扱いされていた。
- スーパーロボット大戦α外伝:先述のガンダムXや∀ガンダムをベースとしたクロスオーバー作品。ヱクセリヲン自沈の影響で壊滅した並行世界の超未来における戦いが描かれ、ロストテクノロジーを保持する強大な組織アンセスターが登場する。
- 砂ぼうず:数百年前に文明が崩壊し「関東大砂漠」と化した世界を舞台に、ロストテクノロジーを奪い合いながらしぶとく生きる人々の生活が描かれる。
- スプリガン:超古代の遺跡から発見されるオーパーツやオーバーテクノロジーの悪用を防ぐ組織『アーカム財団』の活躍を描いた作品。
- ドラえもんシリーズ:映画ドラえもんシリーズでは度々古代文明が登場している。特に『のび太の南極カチコチ大冒険』では超古代文明が遺したロストテクノロジーを回収し、故郷の復興を図る異星人がゲストヒロインとして登場した。
- ファイナルファンタジー2:強力過ぎるために封印されたと伝えられる究極魔法・アルテマが登場。仲間のひとりミンウが命を捧げてその封印を解いてくれるのだが……その犠牲に見合わぬ低威力でプレイヤーを落胆させた。一説によると担当したプログラマーが「伝説のなんちゃらなんて昔の時代のものでしかない。今の目から見たら見劣りのするものが当たり前なんだ」と主張し、無理やりこのような性能にしたのだとか。
- Falloutシリーズ:核戦争により荒廃したアメリカ合衆国を舞台に弱肉強食の生存競争を繰り広げるゲーム作品。やはりロストテクノロジーの争奪戦が物語の鍵を握る事が多い。
- ブレスオブザワイルド(ゼルダの伝説シリーズ):今作では物語から一万年前のシーカー族の高度な技術で作られたガーディアンや神獣等でガノンの封印に貢献したが、当時のハイラル王からその技術は脅威とし、シーカー族は追放され、その半数はその技術を捨てて平穏に暮らしている。(残りはイーガ団としてハイラル王国に敵対している。)
- メタルマックスシリーズ:前触れ無く発生した「大破壊」により地上の文明の多くがロストテクノロジーと化した世界を冒険する作品。特にその中で主人公たちと密接にかかわりあうロストテクノロジーが、戦車である。
関連タグ
ロストテクノロジーが題材に含まれている作品(ネタバレ)
※こちらでは、ストーリーが経過することでロストテクノロジーが大きく関わっていることが判明する作品を記載する。ネタバレ注意!
- ゼノブレイド2:ストーリー終盤に、この世界が一度壊滅していることが判明する。壊滅前は現実の現代世界に似た建造物や機械技術が存在していた。
- STELLA GLOW:ストーリー後半に、人類は天使たちによって何度も襲撃され、文明のリセットが繰り返されていることが判明する。