概要
『ウルトラマン』に友情出演したゴジラ~(※)…ではなく、ゴジラの着ぐるみに襟巻きを付けて誕生したウルトラ怪獣である。
※ゴジラもウルトラマンも特撮の神様円谷英二監督の作品であり、円谷プロも東宝と密接な関係にある上、スーツアクターも昭和ゴジラの中島春雄氏なので、友情出演したゴジラといっても差支えは無い。
が、さすがに鳴き声まではそのまま流用されておらず、早回しにしたものが使われている(ガイラやレッドキングの鳴き声に近い)。その後、『帰ってきたウルトラマン』のサータン、『ウルトラマンレオ』のギロ、アトランタ星人、ハングラー、『ウルトラマン80』のザンドリアスに流用された。
データ
ウルトラマン第10話「謎の恐竜基地」に登場
イギリスのネス湖から二階堂教授(演:森幹太)によって卵の内に日本に運ばれ、長年かけて日本の北山湖で育てられていた。
武器は口から吐く放射火炎…ではなく熱線。100万ボルトの電流を帯びているらしい。
ウルトラマン相手に早撃ち対決を挑むなど性格も愛嬌溢れる。最初は二階堂教授の命令に従う知能の高さを見せていたが、次第に凶暴化して手に負えなくなった。
肉食性であり、1日にまぐろ2万頭を喰うほど。…いやネタで言っているのではなくて本当に怪獣図鑑にそう書いてある。
最終話「さらばウルトラマン」においても、ウルトラマンの敗北シーンで流れる走馬灯の中でガボラとともに登場した(第10話の映像の流用)。
本編での活躍
北山湖で二階堂教授によってひっそりと育てられていたが、成長するにしたがってエサの量が増えていった為か、北山湖で魚が大量発生する事態になり釣り人が殺到、更に調査に科学特捜隊がやってきた。
特殊潜航艇S号まで投入される程の大規模な捜索が行われたが、この時は大人しくしていたのでソナーには反応せず、水中カメラもギリギリやりすごせた。
夜間の餌やりの時間に、夜釣りをしていたイデ隊員に目撃されてしまうが、イデ隊員は二階堂教授に捕まって監禁されてしまったので、またもやり過ごすことに成功する。
その翌日、科学特捜隊がイデ隊員の捜索に掛かっている間に、間が悪い事にバカな釣り人がカーバイト(炭化カルシウム)を湖に散布してしまい(※水質を汚染する犯罪行為ですので絶対に真似しないで下さい)その結果、汚濁した湖水に苦しくなったらしく遂に湖上に姿を表した。
カーバイトと科学特捜隊の攻撃で興奮していたのか、飼い主である二階堂教授をも蹴り飛ばしながら大暴れするが、駆けつけたウルトラマンと戦闘に入る。ウルトラマン相手に岩を早撃ちで撃ち落とす勝負を挑むが負けてしまい、(「シュワッハッハッハ」と笑われるなど散々おちょくられた事もあって)怒り狂って格闘戦に移行するが、ウルトラマンの素早い動きに翻弄されて襟巻きを取られてしまい…
ゴジラ丸出しとなってしまった!
特撮ファン待望の「ゴジラVSウルトラマン」が実現してしまったのである!
剥ぎ取られた襟巻きを取り返そうとウルトラマンに挑むゴ……ジラースであったが、ウルトラマンは闘牛士の如く襟巻きを振って(小躍りしてふざけながら)ジラースを翻弄し、遂にウルトラ霞斬りで口から血を流して倒されてしまった。
さすがに絶命したジラースを哀れに思ったのか、ウルトラマンは最後の最後にジラースの死体に襟巻きをまき付けてやるのだった。
そして、動かなくなったジラースを目の当たりにした二階堂教授は、「ジラース…ジラーーーーァァァス!!」と慟哭しながら絶命した。
戦闘が非常にコミカルだっただけに、この悲劇的な結末は視聴者に強い印象を残すものとなった。
二階堂教授
演:森幹太
「モンスター博士」の異名を取る中村教授(画像)に変装していたマッドサイエンティスト。
15年前にネス湖探検隊に参加し、計画が打ち切りになったのにも関わらず、単身ネス湖で調査を続けて、その結果恐竜の生き残りであるジラースを発見した。
その後、ジラースを密かに日本へと持ち帰り、北山湖の一角に恐竜の壁画が描かれた研究所を築き、オオトカゲやカラスといった様々な生物を飼育しつつ、密かにジラースを育成していた。一度取材に訪れていた女性記者がイデ隊員と共に再び研究所に訪れると口封じに監禁した挙句、科学特捜隊バッジを破損させた。しかし、イデ隊員はヘアピン一本でバッジを修理して科学特捜隊に通報してしまった為に、彼らの脱出を許してしまう。
自分の育てたジラースが暴れ回る姿を見て歓喜し、攻撃する科学特捜隊を止めに入るなど、研究者としての真っ当な思考は無いに等しく、恐竜への愛はもはや歪んでしまっている。最期は興奮したジラースに踏みつけられて致命傷を負い、悲痛な叫びを上げながらジラースの遺体に縋るように絶命した。
その後の登場
今でも再登場を求める声は絶えないが、シリーズでもやや特殊な位置づけにある『レッドマン』を除けば、2020年現在、ジラース単体が怪獣としてウルトラシリーズの映像作品へ再登場したことは一切ない。ゴジラシリーズの版権が問題なのか定かでは無いが、同じくゴジラの改造であるゴメスは『大怪獣バトル』以降度々再登場している。
そのため、ジラースのみ何かしら面倒なしがらみのようなものがあるのではないかという憶測もある(ゴメスよりもゴジラに見た目が近い等の話や一部では、一時期東宝と円谷プロの関係が悪化していたことも一因ではないかという見方もある)。
一方で、後述する例を始めとして、映像の流用や名前が出てくる間接的な登場やゲーム・ショー等の映像作品以外での出番は設けられており、商品化もそれなりに行われている。その際にはゴジラを絡めたネタを披露することも多い。特にショーではウルトラマンフェスティバルやウルトラヒーローズEXPOでも登場している。
このように、あくまで出番や商品はあるが映像作品で着ぐるみなどの単体での再登場がないだけなので、映像作品での出番のなさは前述のようなジラース特有のデリケートな版権問題ではなく、ほかの過去作品の怪獣のように単純に映像作品に出せるレベルの着ぐるみが存在しないためという一般的な問題であることも考えられる。
なお、近年もショーやイベントで出ているためアトラク用スーツは存在しており襟巻きが外せるようになっている。
映像作品
レッドマン
バルタン星人や他の怪獣たちとコンビを組んで戦う事が多かった。
襟巻が小ぶりでかなり貧相になっているのが特徴。
一方、マット・フランク氏のアメコミ版では、原典のような貧相さは影も形もなくなり、平成ゴジラを思わせる重厚感あふれる容姿へとアレンジされて登場。しかも、まるまる1ページを使って登場シーンが描かれるという優遇っぷりであった。
しかし、その直後にレッドマンに背後からレッドナイフを突き刺さられて、吐血しながら絶命。
物々しい登場シーンに反してあまりにもあっけなく退場してしまい、完全な出オチ要員となってしまった。
ウルトラ銀河伝説
百体怪獣ベリュドラの構成パーツとして登場した。
ウルトラゾーン
「エリマキの無いジラースに似た怪獣」が現れたという通信が入り、通報を受けたタカダ・リホ隊員が「エリマキが無いって、やばくない?」とメタ発言をするシーンがあった。
ウルトラマンX
直接の登場はないが、ダークサンダーエナジーの影響で凶暴化したゴメスの鳴き声にジラースのものが混ぜられていた。
ウルトラマンZ
第4話「二号ロボ起動計画」にて、直接の登場はないが、ジラースの怪獣メダルが登場。セレブロに寄生されたカブラギ・シンヤが、ゼットライザーを使って入ったインナースペースのような空間内で、謎の装置に緑色の液体を流し込んで生成した。
その後ゼットとの戦闘中に倒れ込んだテレスドンの口の中にカブラギがあろうことかメダルを投げ込み、テレスドンを強化地底怪獣エリマキテレスドンへと変貌させた。
最終的にかつてのジラースのように襟巻きをひっぺがされてエリマキテレスドンが倒され、メダルはゼットとハルキに回収されたが、情報を隠蔽するためかハルキの手の平で粉々に砕け散ってしまった(しかし、一時的ながらもメダルがハルキとゼットの手に渡ってしまったことで、ウルトラメダルの技術を悪用している者がいること自体は知られてしまうこととなる)。
エリマキテレスドンが登場した際にはユカがテレスドンにジラースの襟巻きが生えたことに驚いていた(=ジラースに関する情報をある程度把握していた)ため、『Z』の世界の地球で過去に出現したことが示唆されている。
そうだとすると謎の液体の正体はその際に出現したジラースから採取された体液であり、カブラギ・シンヤが保管先から盗み出したものであると考えられる(実際、液体はラベルの貼られた瓶に収められていたことからその可能性は高い)。もともとカブラギは怪獣研究センター生科学研究所に所属する研究員であり、その立場を利用すれば保管先から怪獣のサンプルを特に怪しまれることなく持ち出せたであろうことは容易に想像できる。
この時のエリマキテレスドンは襟巻きから光線の増幅や空気の盾を生み出しているが、ジラースにも同じことができるのか、エリマキテレスドンに固有の能力なのかは不明。
漫画・小説
ウルトラマンSTORY0
ジェロニモンの手下としてゾンビが登場するが、光線を吐くことも無くウルトラセブンに顔面をアイスラッガーで断ち割られて倒された。
ウルトラジャーニー
サバトとパルゴが訪れたとある世界の生物として登場(本作では怪獣ではなく、ごく普通の小動物として扱われている)。
干ばつで瀕死の状態でさまよっていたところをパルゴに助けられるが、やがてサバトの手によって住んでいる世界が過酷な生存競争が繰り広げられる環境へと激変してしまい、最後は近くで争っていたレッドキングとゴモラの争いに巻き込まれて血塗れになるほどの重傷を負い、息絶えてしまった。
ウルトラマンF
ウルトラマンに倒されたオリジナルのジラースの骨格を人工細胞と金属材料で覆い、原子力モーターを動力としたサイボーグ怪獣レプリカジラースが登場。
巨人兵士の実験台としてレプリカゴメスと共に投入され、破壊された。
ステージ・ショー
ウルトラヒーローバトル劇場
久野千草のファーストライブを妨害した巨大ヤプール率いる怪獣軍団の一体として登場。
ウルトラマンゼアスと戦った後に初代ウルトラマン、セブンと戦闘するが、またしても襟巻きを引っこ抜かれると思わずシェーをするわ今度は二人がかりであの闘牛士の戦いを再現されるわと散々な目にあっていた。
ウルトラマン×仮面ライダー×スーパー戦隊 3大特撮ヒーローフェスティバル
ここでもやはり初代ウルトラマンに襟巻を引っこ抜かれていた。
余談
元にしたゴジラの着ぐるみは東宝から「ゴジラに戻して返す事」を条件に借りたものであったため、襟巻きを引っぺがす演出はそれを劇中で意図的に行ったものであるという。
よくネタにされる襟巻き引っぺがしだが、これを踏まえるとゴジラへのリスペクトがこもった演出だったと言える。
借りものだったのに盛大に三枚おろしにして大目玉を食らった後輩とは大違いである。
名前の由来はゴジラをもじったもんなんだろ?と思わせておいて金城哲夫の発案により、沖縄語で「次郎おじさん」を意味する「ジラースー」から取られた。そんなひっかけ問題アリなの…?
『ウルトラ怪獣大百科』では、ナレーションの青野武が「だが、このジラースが最後の一匹とは思えない。なぜならネス湖では今でも怪物を見たという報告が後を絶たないからだ」という54年版『ゴジラ』の山根恭平博士の名台詞を捩ったナレーションを読んだ。
どう見てもゴジラなのは否定しようがないのだが、コアなファンの中にはジラースをゴジラ呼ばわりされるのを嫌がる人も少なくない(例えば、アメトーークの「ウルトラマン芸人」の回では、「ゴジラでしょ?」というツッコミを芸人の皆さんが頑なに否定していた)。
ジラースを話のネタにするときは、そういったことにも留意すべきだろう。
関連項目
ゴメス:同じくゴジラの着ぐるみを改造して作られたウルトラ怪獣。ただしこちらは顔以外ぱっと見ではゴジラに見えず、大怪獣バトルに登場した際はゴジラベースでは無く、最初からゴメスの着ぐるみで造られた。『ウルトラマンZ』にも登場しており、ゴメスとジラースが同作品内で登場することとなった。