シェン=シアン
しぇんしあん
戸塚慶文の漫画『アンデッドアンラック』に登場する《対未確認現象統制組織》の否定者(ひていしゃ:世界の理を否定する業の器になった者)のみで構成された円卓メンバーの1人。円卓での席はⅡ。
もみあげの長い水色の短髪、水色眼をした童顔、筋肉質な体格をした青年。
端正な顔立ちをしており、(公式小説第1巻にて)日本の高校へ学生として潜入しても不問題だった若者。そして男子女子を問わずに注目された公式イケメンくん。
組織構成員の共通装備であるスーツは、中華風の白い袖無服(ノースリーブ)と黒い袴を着用している。赤ネクタイを付け、証(エンブレム)は左襟に付属。接触できない敵も想定してか、二の腕まである長手袋(ロンググローブ)を付けている。
因みに、袴の腰にある隙間(スリット)を注視すると肌色が多いような着こなしであり、これはシェンがノーパンである信憑性の高い要素であろう(参考:2021年25号の週刊少年ジャンプ巻末目次 ジャンプSBSより)。後に原作者・戸塚慶文から下の衣類を不着用である解説がされた。彼がノーパンの理由は、作者が剣道をやってた頃に袴の下は穿いてない人が多く、強い人は穿いてないというイメージから。
一人称は「ボク」の中国人男性。
おしゃべり好きで人当たりが良く、感情をストレートに顔へ出すフレンドリーな好青年。
普段は自由人として周囲を振り回す側だが、アンディと風子の独断専行に振り回される側になってしまうなど、面倒見が良くて良心的な一面も目立つ。
しかしシェンの本質は戦闘狂(バトルマニア)。敵が強ければ強いほど喜び、相手が駆使する戦い方の巧さには「精彩(ヂンツァイ:すばらしい)!」と母国語で称賛する。
笑顔一つとっても、強者が関わった途端普段の爽やかな笑みからは一転。邪悪で不気味な笑みを浮かべる場面もある。
男性主人公・アンディのかつての姿とされる『戦勝の神(ヴィクトール)』と戦うことを心から望んでいる。
UNION(ユニオン)の任務や同僚の命よりも自分の都合や好みを優先しがちで、やらかしてトラブルを起こすことも度々あるらしい。私生活もズボラになりやすいようだ。この辺りの日常面は下記でも触れる部下・ムイに助けてもらっている。
夢は『天下無双』であり、時間があれば鍛錬に励む努力家。組織本部で過ごす場面では、トレーニングルームで筋トレする様子が多い。また、身寄りの無かった出自もあってか、意外にも自炊ができる。
円卓のメンバーは各自調査員軍や戦闘部隊を持てる権限がある。
シェンに関しては中国人女性の構成員・ムイのみを直属に置き、自身のやらかしたトラブルの処理やズボラになりがちな私生活の補助(カバー)をしてもらっている。
同僚にも仲間意識の希薄な彼にしては珍しく、彼女を「ムイちゃん」と呼んで非常に好意を持って接している。またムイも武術家であり、互いに切磋琢磨したり、一緒に料理を作ったりもしている。
「謝謝(シェイシェイ:ありがとう) 強い強いキミのおかげで」
「ようやく彼に 会えそうだ」
「可哀相に… 避けたかったんだね 真実(ほんとう)は」
他対象 強制発動型
他の「真実(ほんとう)」を否定する能力。
シェンの視界へ入った他者が取ろうとした行動・発言を真逆(あべこべ)にする。これは視認対象が刹那に抱く偽りない無意識を否定している。
ただし発動には条件があり、それは―
対象を好きになること。
因みに、シェン本人が述べた理屈のうち「ある程度の距離制限がある」という性質は全くの不真実(ウソ)であり、視界に入りさえすれば発動できる恐ろしい瞳術。最高難易度とされるUMAからも「こんな能力があってたまるか」と危険視されるほど強力な性能を持つ。
優位性のある分、上記で触れたように本来は発動条件が厳しい制約がある。殆どの人なら、敵対者を好きになるとは考え難い。
だが現能力者・シェン=シアンは戦闘狂気質のある武闘家。彼は「強い相手のことは好きになるので発動できる」「弱い相手ならそもそも格闘技で制圧出来る」ため、そこまで大きな弱点になっていない。
とはいえ、相手の人格なり能力なりを良く知らないと発動できない他、まさかの事態「自分を好きになった相手を乗っ取る」を齎したUMAクローゼスに対して否定能力は使用ができない戦況となった。つまり、視認対象の好感度へ左右される類型の否定能力ということ。
この理屈から、始めは好意を抱いていた相手がシェンにとって不快な言動をした場合、彼の好感度が下がり相手へ不敬を抱いてしまうとUNTRUTH-不真実-は効果を発揮しない。
その他の弱点としては「煙幕などで視界から逃れれば解除される」「単純に強力な攻撃に対しては来る方向のみを真逆にしたところでモロに食らってしまう」などが描写される。
シェンは功夫の系統である架空の武術「真八極(しんはっきょく)」を体得しており、上記で触れた否定能力「UNTRUTH-不真実-」も組み合わせた戦闘法を編み出している。また下記でも触れる棒術も得意としている。
捌廻山靠(はっかいざんこう)
鉄山靠を発展させた必殺技。
高速で空中回転した後、その勢いのまま相手に背中からぶつかることで8連続の衝撃を1度に与える。
技が決まると『ド』の擬音が8回入り体が浮き上がるほどの威力を発揮する。
相手に背中を向けて用いる技の為、UNTRUTH-不真実-との併用は不可能だが、裏を返せば視界に頼らない戦闘をすることが可能といえる。
アニメ版では原作よりも前動作が誇張され、某機動武闘伝に登場する格闘流派の奥義みたいな回転動作で表現された。
五不苦星(ごふくせい)
シェン独自の真八極流奥義。
相手の頭、両肩、両膝を踏み込みと同時に一気に破壊し戦闘不能にする。
これはUMA「銀河(ギャラクシー)」が世界に追加され、現実改変の一つで〝星〟が認知された際に生まれた記号「☆」に着想を得てシェンが編み出した。
ほぼ同時破壊の打拳だが、砕く順番は―
順番 | 攻撃部位 |
① | 頭:意識を混濁させ次弾を避けさせない |
② | 膝:利き足を砕き逃がさない、相手によっては左膝からの場合有り |
③④ | 肩:②が右膝なら左肩、左膝なら右肩へ |
⑤ | 膝:肩を砕き反撃の目を潰した上で残りの膝を砕く |
という連撃(原作漫画8巻に図解付きで解説あり)。
如意金箍(にょいきんこ)
古代遺物のひとつで、中国から出土した伸縮自在の棒(つまり中国の説話「西遊記」に登場する有名な如意棒)。
中国語による命令で、最短で金箍のみの手のひらサイズ~描写されている限りの最長で宇宙まで伸縮する。この他、命令ひとつで使用者の手元に戻る、太さの大小を変換、伸縮・膨張も併せて湾曲できる性能もある。
現行では両先端に金箍(かなたが)を追加しており、これはニコ製の金属「ヒヒイロカネ」を一心が加工したもので、如意金箍の変幻自在さを備えながらも不壊の付与がなされている部品。そのため攻撃力も増しているが、元である如意金箍自体は一心の制作物ではないため不壊ではない。
シェンは伸縮する性質と強固な両端を活かし、巨人だろうが人間だろうが関係なく巧みな棒裁きで叩き伏せる。
金斗雲(きんとうん)
古代遺物のひとつで、人を乗せて空を飛ぶ雲(つまり中国の説話「西遊記」に登場する有名な伝説の雲)。
名称にある通り金色の雲で、数人が乗れる程の大きさをした乗り物。使用には「心が清い者」である条件が必要で、組織(ユニオン)の円卓否定者は全員が搭乗条件を満たしている。
現行では柔和な一面もある好人物な武闘家であるシェン=シアン。
そんな彼からは想像できないような、不真実(ウソ)のような過去を背負っていた。
龍の目を宿した少年
シェンは中国の治安が悪い田舎で育ち、両親はなく、妹のメイと共に暮らしていた。当時の一人称は「オレ」で、性格は不良(やさぐれ)ていた。髪は一つ結び、薄汚れた軽装、両方の靴には穴があいて足指が露出しているなど、かなりの貧困者だったことが窺える。
毎日の食事も満足にできず痩せ細っていたが、喧嘩は大人(チンピラ)をボコボコに出来る程に強かった。要するに生意気な小僧だったシェンは、大人数人でも喧嘩を売っては殴り倒し、それで金を脅し取るような不道徳を繰り返して日銭を稼いでいた模様。
それらは全て最愛の妹・メイのためであり、貧しく荒れた生活の中でも妹を懸命に守り、稼ぎは全て彼女の服やご飯などへ貢いでいた様子。そして叶うならばメイを真っ当な学校へ通わせることを目標に置いていた。
進んだ武の道は修羅
そんな貧困生活の中、高額の賞金が懸かった武道大会を知り、金目当てで参加を決める。
自分は大人にも負けないと意気込んでいたが、当時は無名流派だった武闘家・ロウに決勝戦で敗北。それでも立ち上がろうとするシェンの精神力、強さに飢えた龍の目を見抜いたロウの師匠・ファン=クーロンから勧誘を受け、条件付きで彼らの門弟となる。
シェンは妹・メイとの生活や、メイの通学を保証する事を条件に門弟となることを受け入れ、老師匠・ファンの下で、武術の門下生として鍛錬を重ねる日々を過ごした。
ささやかではあるものの安らかな生活を手に入れたシェンは、自身の夢『天下無双になる野望』を追い、その過程として恩師の条件「師匠を超えること」を達成するため武術を磨いていくことになる。
しかし兄妹に悲劇が訪れる。
実はファン=クーロンという男は、狂気的な戦闘狂(ゴアバトルジャンキー)であり、シェンのみならず妹・メイにも武の才能があると知るや否や、なんと兄妹で命懸けの死闘を強制させた。それは老人の持論「大切なものを失い、憎しみと絶望を宿すことで強くなれる」を実践するためであり、その挙句に敗れた妹を崖から突き落とすという凶行に出た。
すんでのところで妹の手を掴んだシェンだが、まさにそのタイミングで否定能力「UNTRUTH-不真実-」が発現してしまい、発動条件を満たしていた妹は自ら手を放してしまい、帰らぬ人となってしまった。
以降は間接的な妹の仇であるファンの殺害を目標に、姿を消した怨敵(ししょう)を探しながら各地の強者たちとの戦闘を通じて、強さを求める修羅の道を歩むことになる。そして修業時代の温和の性格から一転、彼はかつての貧民時代よりも荒んだ性格へ変わってしまった。
いわゆる復讐者でもあったシェンは、その放浪から組織(ユニオン)の女ボス・ジュイスと邂逅し、強き否定者として誘いを受けUNION(ユニオン)の一員となったのである。
それまで鍛え上げてきた武術をぶつけるも、ファンの圧倒的な強さに追い詰められ、敗北しかける。全ては師匠(ファン)を殺すための道であったと再び立ち向かうが、仲間達のアンディ・風子・ムイに諭され、今は皆と力を併せて皆を守る闘いなのだと猛省する。
しかし仲間たちとの連携技を駆使した交戦中、ファンの古代遺物「随心鉄桿」による一撃からムイを庇うべく、シェンは身を挺して彼女を守り、胴体へ大穴を穿つ致命傷を負ってしまう。
腹を巨大な随心鉄桿で貫かれ瀕死のシェンは、亡き最愛の妹・メイと臨死体験の末に再会する。妹との対話によって現状打破の奇策を思いついたシェンは、傍らで泣きじゃくるムイに告げる。
ムイちゃん… ボクを… 殺してくれるかい?
シェンの奇策とは、「ファンの持つ古代遺物、死者を使役する死亡遊戯を奪い、ムイのキョンシーとして復活する」ことだった。
ムイはシェンを殺すことを初めは拒否するものの、シェンが既に瀕死状態で長くはないこと、そして妹を失った自分の心を癒してくれたムイを、もう一度守りたいのだというシェンの真実の気持ちを知ると、意を決して彼の体に刃を突き立てる。
「……不思議だね」
「死んでよみがえっただけなのに」
「きっと今のボクが 今までで一番強い!」
結果、否定者としてのシェンは死に、死者である殭屍(キョンシー)・シェンとして復活を果たす。
鍛えた肉体とは異なる別の力も糧に、仲間たちと共に強敵・ファンを打倒する。
以後は主人・ムイの従者(キョンシー)として、彼女と片時も離れずな行動をする死者(アンデッド)・シェン=シアンとなるのであった。
『シェン』だけならば他作品に登場するキャラも指す。
そのためpixivにイラストを投稿・タグ付けするならば、本記事の『シェン=シアン』や『シェン(アンデラ)』を使用したり、関連タグとして『アンデッドアンラック』や『アンデラ』など合わせて適用(タギング)することが絞り込み検索を助ける。
否定者は否定能力と関連性のある名前が付けられている……が、実はこの法則が決まったのは偶然。
作者・戸塚慶文は主人公達・風子とアンディ以外の名前は適当に決めていたのだが、ボイドの名前が「UNA『VOID』ABLE」と被ったのを読者に能力由来だと思われ、同時期に登場したジーナとシェンも名前が能力にこじつけられなくもなかったことから命名法則が決定したらしい。
🥟参考:公式Ⅹ(Twitter)リンク
2022年12月。本作『アンデッドアンラック』がアニメ化決定した時期には、アニメ制作関連の扉絵も描れている。
中には声優・花江夏樹を模したシェンと、一緒に登場するボイド(声優・乃村健次を模した外見)が声を収録する現場という、本編では見られない場面が描写されている。
🥟参考:公式Ⅹ(Twitter)リンク