「この『ワノ国』の 守り神となれ!!!」
概要
“新世界”ワノ国の郷の一つ「白舞(はくまい)」を統治していた元・大名。
モモの助の実父・光月おでんとは縁の深い人物であり、彼からは「オジキ」「ヤスさん」等とも呼ばれていた。
本編の時代ではこれまで“太鼓持ちのトの康”として正体を伏せて活動していたが、麦わらの一味含む光月家の同盟者たちの作戦が破綻しかねない事態にともない、自らオロチたちの縛に付き正体を晒すことで、彼らの掴んだ情報を再び撹乱し、光月家の作戦継続の目処を立てて処刑された。
プロフィール
本名 | 霜月康イエ |
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異名 | ハリネズミの康 |
年齢 | 享年71歳 |
身長 | 155cm |
所属 | ワノ国白舞大名→えびす町太鼓持ち |
悪魔の実 | SMILE(失敗作) |
出身地 | 偉大なる航路 新世界 ワノ国 |
誕生日 | 4月2日(し←4、も、つ←2、き) |
星座 | おひつじ座 |
血液型 | F型 |
好物 | 白米 |
初登場 | 単行本92巻 第929話『ワノ国将軍 黒炭オロチ』 |
CV | 島田敏 |
人物
大名時代
“ハリネズミ”のあだ名の由来にもなっている、毛が逆立ちアフロのような球体を描いた特徴的な髪型をしており、その他、眉尻が同じく逆立った太い眉毛にうっすら赤みを含んだ頬、無精髭に熱い唇と、中々に個性的な風貌をしている。
大名時代は郷を守る郷長として厳格な性格で、問題行動ばかり起こすおでんを叱咤できる数少ない人物であったが、それも彼が将軍家の嫡男としての自覚を持ち、立派な後継者に成長することを願っての態度であり、実際、大名となったおでんが有事の際には金銭、兵力それぞれで助力を惜しまない人格者であった。
また、彼の一族である霜月家は、現在も“刀神様”として祀られている剣豪・霜月リューマをはじめ、武勇に優れた一族としても知られ、康イエの治めた白舞も、国内屈指の堅牢な武士団を従えていたと現在まで伝えられている。
こうした責任感の強い性格から、おでんも度々ドヤされながらも強く信頼を向けており、また領民からも名君として敬愛される存在であった。
「トの康」時代
おでんが死に、他の大名たちと決起しオロチやカイドウに挑むも敗走し、以後は現在までの20年間“トの康”という偽名で一庶民として暮らしてきた。
特徴であった髪を手ぬぐいを巻いて隠し、また20年という長い時間の経過により、おでんや錦えもんらのような屈強で風格ある巨体だったかつての姿から、大きな頭にヒョロっとした細身の小柄体型まで縮こまり、貧しい生活から歯も欠けボロボロの身なりとなるなど、当時「厳格な大名」だった頃の面影は殆どなくなっている。
またオロチがえびす町に散布した人造悪魔の実SMILEの失敗作(能力の発現しないハズレ)を、他の住民たちが何も知らずに食したことで、常に張り付いたような笑顔を浮かべ、怒りや悲しみなどの感情を表せない身の上となってしまう。康イエも、同じくSMILEを食した娘のおトコを憐れみ自らも敢えて食し境遇を受け入れた上で、周囲に愛想を振りまき民たちに寄り添いながら生活を続け、身分を失って尚、心根の優しさは変わることはなかった(皮肉な話だが、寧ろ表情の分そうした良心が顕著に現れるようになったのかもしれない)。
その変貌故に20年経過した現在ではかつて交流があったカン十郎やしのぶも、唐突に自身らの元を訪れて事情を把握しているように振る舞うトの康が、主君や自身らの恩人・康イエであることに真っ先に気づくことができなかった。
“太鼓持ち”ということもあって、剣士として腕の立つゾロに対して絶えずヨイショを行っていた。その態度は強い者に媚びるいわゆる『虎の威を借る狐』としてのものではなく、自分の物を他の人に分けるなど優しさに溢れており、街の住民からは「顔も体もふざけてるけど愛されてた」と慕われている。口も達者で、カン十郎やしのぶたちと一通りの会話を終えた去り際、入れ替わりでアジトに戻ったウソップ、ナミ、住民のおばあさんの三名に対し、すれ違いざまにそれぞれの肩を叩きながら褒め言葉を贈って上機嫌にさせていた。
人間関係
光月おでん
若い頃からおでんの事を未来の将軍と見込んでおり、当時はおでんが破天荒が過ぎるあまりに民衆から彼を差し置いて次期将軍と呼ばれながらも、おでんを真正面から叱り付け将軍になるように鼓舞していた。傾奇者のおでんのことを叱責できる数少ない人物の一人にして盟友、そして良き理解者でもある。
「お前こそが『光月家』を背負って立つ男!!」「スキヤキ様の勘当は“愛のムチ”にすぎぬ!!」「応えてみせねェか!!」
赤鞘九人男
おでんの家臣となった若かりし頃の錦えもんたちが、おでんのために大金を盗もうと自身の屋敷に侵入した時は、己の家臣たちに捉えられた彼らにそのまま金を(上乗せして)譲り、「(おでんが好きなの)だったらこの金で身なりを整え礼儀を学び本を買い学問を身につけろ」「お前たちは都の」「いや ゆくゆくはこの『ワノ国』の守り神となれ!!!」と強く諭した。
これを機に、これまでチンピラ気質の抜けきらなかった錦えもんたちは、言われた通り知識と礼儀、そして武芸に勤しむようになり、数年後には皆立派な侍へと成長を遂げた。
黒炭オロチ
41年前、身分や理由を偽って自身のもとで働きたいと身を寄せてきたオロチを不憫と思い、小間使いとして迎え入れる。しかし、その後オロチは金を持ち逃げして失踪し、次に顔を合わせたのはおでんの弟分として将軍代理に就こうとしたときであった。
彼が将軍となってからのワノ国は荒廃の一途を辿り、20年前には先んじてオロチたちを討たんと動いたおでんが処刑されてしまう。そして今度は他の大名たちに従属か死かを迫るオロチに対し、康イエ含む4人の大名は反旗を翻し戦うも、彼と結託した百獣海賊団の力は圧倒的で、あえなく敗走。康イエはなんとか落ち延びたものの、他の3名(後のヤマトの回想に登場する“なにがし”たち)はカイドウの本拠地である鬼ヶ島で幽閉された後、命を落とすことになった。
このため康イエはオロチのことを「害虫」と称する程に嫌悪していた。
おトコ
娘のおトコとは実は血の繋がりはなく、本来は義理の父と娘という関係である。
しかしおトコはその事実は知らず、康イエも本当の娘としておトコを育て上げた。おトコがSMILEを口にしてしまった際は娘だけが辛い目に合わないようにと自身もSMILEを口にし、2人揃って笑うことしかできないようになってしまったが、なんとか前向きに受け入れるようにしていた。
ロロノア・ゾロ
なけなしの銭でゾロの寿司代を補填してその縁からゾロに助けられしばらく行動を共にする。その後は彼をえびす町まで連れて行った。
原作では省略されていたが、アニメではゾロと船で出会った後に行動を共にし、宿場町で丁半に参加しながら交流を深める場面が補完されている。
生涯
過去
スキヤキ存命時~おでん処刑後の反逆
光月スキヤキの政権下では霜月の大名として次期将軍と目されるほどの評判となる。この時期に当時まだ肩書も何もなかった黒炭オロチを自分の下で召し仕えさせた。その後、オロチがスキヤキからワノ国の実権を任された際は納得いかないながらもそれに従う。
九里の大名にして光月家の当主であった光月おでんが処刑され、完全にワノ国の実権を握った黒炭オロチが各郷の大名に「黒炭に仕えるか戦うか」を問うたところ、残る四人の大名は全員オロチとカイドウに仇討ちをせんとする。しかし、カイドウとその軍勢はあまりに強く仇討ちは叶わず大名は彼一人を除き無念のまま捕らえられ死ぬこととなった。
その後、康イエはトの康と名前を変えてえびす町に隠れ住むようになる。また、詳細な時期は不明だが両親を失った当時赤ん坊のおトコを拾い、父親として共に過ごす生活を送り始める。
えびす町での生活
えびす町には黒炭オロチの手によって用無しになったSMILEが廃棄されており、生きるためにその残飯を食べたえびす町の住民たちは、笑顔以外の表情を浮かべることのできない中毒状態にされるという地獄という他ない環境に置かれていた。
康イエはSMILEを口にしないよう過ごしていたが、ある日おトコがSMILEを口にしてしまったことで、娘が不本意にも笑い続けるというあまりにも非情な現実を少しでも耐えられるよう自分自身もSMILEを食べる。そして笑うことしかできなくなったことを無理矢理前向きに受け取り、「笑っている顔はえびす顔、だからこの町もえびす町」と言って住民たちを励ましながら上記の様に自分の少ない財産でさえも住民たちに分け与えるなどの行動を見せ続けた。
第2部 最後の海 新世界編
ワノ国編
第二幕
九里の船着き場から出港した船に乗っていた所、仲間と逸れて船に乗り込んだ浪人ゾロ十郎と出会う。ゾロは払う金も持ち合わせていないにもかかわらず大量のわさび寿司を平らげていたが、太鼓持ちトの康はその代金を肩代わりする。
下船後に立ち寄った希美の宿場で狂死郎一家によって開かれていた丁半でゾロは大勝ちし、トの康は先刻の寿司代を返金された。ゾロはその後勝負を続ける中でイカサマがあることを見抜き、それに怒り絡んできた三下を一蹴。あわよくば斬り捨てる所であったがトの康はそれを抑え、今までの勝ち金を過不足なく頂くという形で騒ぎを収めた。
宿場出発後、トの康はお礼としてゾロをえびす町に招き、住民たちと一緒にもてなした。
翌日、ゾロは刀を盗まれたと町を飛び出してしまうが、入れ違いで町に潜伏を開始したトラファルガー・ローたちをもてなし、数時間後にはかつて交流があったしのぶと20年前と姿が変わらないカン十郎と邂逅。自身の正体はバレなかったものの、光月モモの助と赤鞘の侍たちが生きていることを知り、協力を申し出た。
白舞大名、えびす町の人気者の偉大なる最期
錦えもんが作成した判じ絵が敵方に露見したために多くの同志が投獄されたことを知ると、ワノ国で手配されている大泥棒丑三つ小僧は自分だと名乗り、羅刹町で磔にされるも、判じ絵はいたずらで自分が作ったと偽証し、同志たちには密かに新たな集合場所を示す。
そして、オロチを「害虫」と強く非難しながらモモの助や錦えもん達にカイドウとオロチの討伐を託し、最後はオロチとその部下の手によって処刑される。
「器の小さき男には 一生食えぬ おでんに候」
その後遺体は処刑場に駆けつけたフランキーとカン十郎に回収され、供養のため九里の編笠村に送られた。討ち入り前日には、麦わらの一味に希望を託した男の墓の隣に埋葬され、戦いに勝ったらもっと立派な墓を立てる事を誓い、小さな墓が立てられた。
そして迎えた火祭りの日、天狗山飛徹とともに花の都の祭りに参加したおトコからは「お父ちゃん ありがとう」と
武士としては最高の誉れの言葉が書かれた空船が飛ばされた。
余談
- 異名
その経歴から彼はハリネズミの康(当時は大名)とヤス(当時は町人)以外にも多くの異名(呼び名)を持つ。
- ヤスさん・康さん(過去。光月おでんから呼ばれた)
- カス(現在。ロロノア・ゾロから呼ばれた。悪意あってのものではなく純粋に間違えた。後にゾロはトノヤスと呼ぶようになる)
- ヤス・ヤスさん・トのヤっさん・トノヤスさん(現在。他のえびす町の町人から呼ばれた)
- ドブネズミ(過去。処刑が終わった後に黒炭オロチから呼ばれた)
- 死者
前述のとおり彼はオロチに処刑されているが、実のところONEPIECE作中においてこういったシーンはあまりない。
これは作者である尾田栄一郎が「少年漫画なので死亡シーンや殺人シーンをなるべく描かない」という制約を課しているためで、既に存在する死者の掘り下げを行う回想シーンを除けば本編内における死者からしてそもそも極端に少ない(一見明らかに死亡しているキャラクターでも、何らかの方法で生き残って扉絵連載や本編でその後の活躍が描かれるのがお決まりのパターンである。アニメなど、ある程度視聴者が先の展開を把握しているであろう別のメディアで生存描写が差し込まれることも少なくない)。
そんな中、名無しのモブ(海賊、海軍、村人、他多数)を除き、名前やどういう人物か明確に示された上で死亡したのは、頂上戦争で戦死したエース並びに白ひげ、黒ひげ海賊団に殺されたアブサロム(黒ひげ陣営で死体が確認され、スケスケの実の能力も他キャラが使っているので確定と思われる)、ペロスペローを巻き込んで自爆したペドロの四名くらい。
作中リアルタイムで死亡が確認された珍しいキャラクターでもある。
(名無しのモブについてだが、頂上戦争で逃げようとしてサカズキに焼き殺された海兵や、ピーカの声を笑ったが故、ベビー5によってハチの巣にされた下っ端が該当。勿論、他にも数えきれない程いる。)
関連タグ
赤鞘九人男 錦えもん カン十郎 雷ぞう ネコマムシ イヌアラシ お菊 アシュラ童子 河松 傳ジロー イゾウ
中の人繋がり
その他
徳川家康…名前の由来と思われる。因みにおでんは織田信長、オロチは豊臣秀吉がそれぞれモデルと言われてもいる。
変なおじさん…お笑いタレント志村けんの演じたキャラクター。トの康のメイクや口調が酷似。また、本編ではおでんも25年~20年の期間中に民から「バカ殿」と蔑称されていた。さらに余談だが、チョッパーがテレ隠しする際の小躍りにもこの変なおじさんのダンスが盛り込まれている。