宇宙世紀0093 君はいま、終局の涙を見る…
作品解説
1988年3月12日に公開された、ガンダムシリーズの劇場用映画作品の第4作目。
シリーズ第1作目である『機動戦士ガンダム』から13年後(宇宙世紀0093年)の世界を舞台に、アムロ・レイとシャア・アズナブルの最終決戦を描いた映画作品であり、それに伴い両者が本編のシリーズで登場する最後の作品である。
ガンダムシリーズとしてはテレビシリーズの映像の再編集ではない、初の劇場用オリジナル作品であり、監督・脚本をガンダムの生みの親である富野由悠季が手がけている。
略称は「逆シャア」、または英題(Char's Counter Attack)の頭文字を取った「CCA」などと呼ばれる事が多い。
『機動戦士ガンダム』『機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムΖΖ』から続く一連の流れに決着を付けた完結編であり、ストーリー自体も基本的に上記3作品を全て視聴していることが前提の内容という珍しい作りとなった。特に『Ζガンダム』の内容が話に大きく関わってくる作品のため、同作品は必ず視聴しておく必要がある。
本作でアムロとシャアの物語は完結を迎えたため、次いで制作された『機動戦士ガンダムF91』は本作の約30年後の時間軸を描いた作品となっている。
また後に富野監督が執筆した本作品の外伝小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が映画化され、2021年に公開された。
キャラクターデザインは『ガンダムΖΖ』に引き続き、北爪宏幸が担当し、MSデザインは出渕裕を初め多数のメカデザイナーによるコンペ形式で行われ、Z/ZZで複雑化したデザインから一転し、ファーストガンダムに原点回帰したかのようなシンプルなものになった。
MS以外の艦船や小道具等のメカニックデザインはガイナックスが制作した。
音楽は『Ζガンダム』『ガンダムZZ』と同じく三枝成章。
主題歌を当時の若者達の間で大人気だった音楽ユニットのTM Networkが手がけたことも話題になった。
本来はTVシリーズでやる予定だったが、製作の都合や諸々の事情によって最終的に映画という形となった。
その他、映画の尺の都合でシナリオが短縮されていたり、大人の事情で没になっている部分があり、この理由から富野由悠季氏は本作についてかなり心残りがあるとも評している。
なお没になった映画用のシナリオは、後に下記の小説版『ベルトーチカ・チルドレン』で復活した。
余談だが、作中のシャアの回想シーンではGファイターでなくコア・ブースターが登場していることから、本作は『1stガンダム』のテレビ版ではなく、劇場版の設定を引き継いでいることが描写されている。
なお、本作の同時上映作品は『機動戦士SDガンダム』であり、全国の劇場窓口では来場者に先着特典として《光る!「SDガンダムの卵」》と題した「蓄光素材の塩ビで成型された、逆シャアに登場するMSや戦艦のガシャポン戦士が2体入った卵形カプセル」がプレゼントされた。
白い卵形カプセルに貼られたピンク色のシールには[●当たり券が入っていたら、その場でゴールドガンダムプレゼント。]と書かれているが、それがどの様な物であったのかは、今となっては不明である。
CCA-MSV
過去作と同じように本編を補完するモビルスーツ・バリエーションを紹介するCCA-MSVがある。
公開時に発売された旧キット説明書初出の機体やMSV大全集のMSを中心に構成されているが、明確な定義はない。
詳細はCCA-MSVを参照。
小説版
二つの小説版が存在する。著者は両方とも富野由悠季。
富野氏が描きたかったが大人の事情で没となった映画用シナリオ第1稿をベースにした『ベルトーチカ・チルドレン』と、アニメ雑誌「アニメージュ」に連載された『ハイ・ストリーマー』をベースにした通称『徳間版/逆襲のシャア』に分かれる。
ベルトーチカ・チルドレンはその名が示す通りメインヒロインとしてベルトーチカ・イルマが登場する事が特徴。初期プロットを基にしているため、アムロに子供がいたり、キャラクターの名前、設定が異なっていたり、映画のキャラクターの一部が登場しなかったりとかなり差異がある。
また出渕裕が手がけた挿絵に登場したモビルスーツ群は、アレンジされているか、全く別の機体も登場しており、独自の人気を博した。のちにリファインされ、アニメに登場する機体とは別のキャラクターとして成立されている。
同じく前述の富野氏執筆による『閃光のハサウェイ』の原作小説及び漫画版はこのベルトーチカ・チルドレンが直接の続編となっている。
詳細はベルトーチカ・チルドレンを参照。
徳間版/逆襲のシャアは、雑誌連載時はハイ・ストリーマーの作品名で掲載。本作の前日談的内容を描いたオリジナル描写が特徴で、概ねアニメに則った物語が展開される。また、SF作家の星野之宣によってオリジナルデザイン/アレンジされたモビルスーツも話題を呼んだ。
あらすじ
宇宙世紀0093年。
先のグリプス戦役以降、消息不明だった元ジオン公国軍エースパイロットにしてジオン共和国創始者ジオン・ズム・ダイクンの息子であるシャア・アズナブルが、ネオ・ジオン総帥として再び人々の前に姿を現し、幾多の戦いを経ても旧態依然としてスペースノイド(宇宙居住民)に圧政を敷き続ける地球連邦政府に対して宣戦を布告した。
手始めにネオ・ジオンは小惑星5thルナを質量兵器として地球連邦政府があるチベットのラサに衝突させようと画策、連邦政府のネオ・ジオンに対する危機感の欠如の隙を突いて電撃的に5thルナを占拠し落下作戦を決行する。唯一、ネオ・ジオンを警戒していたアムロ・レイら連邦軍の外郭部隊ロンド・ベルの奮闘も空しく、5thルナ落下を阻止することはかなわなかった。
この事態に慌てた連邦政府は、スペースコロニー・ロンデニオンにてシャアと密かに小惑星アクシズを引き換えとした和平交渉に踏み切った。停戦に安堵する連邦政府だったが、その思惑と裏腹にシャアは核弾頭を積載させたアクシズを地球に衝突させることを目論んでいた…。
登場キャラクター
地球連邦(ロンドベル)
- アムロ・レイ(CV:古谷徹)
- ブライト・ノア(CV:鈴置洋孝)
- チェーン・アギ(CV:弥生みつき)
- ケーラ・スゥ(CV:安達忍)
- アストナージ・メドッソ(CV:拡森信吾)
- アンナ(CV:丸尾知子)
- トゥース(CV:戸谷公次)
- メラン副艦長(CV:石塚運昇)
地球連邦政府
- アデナウアー・パラヤ(CV:嶋俊介)
- カムラン・ブルーム(CV:村山明)
- ジョン・バウアー
ネオ・ジオン
- シャア・アズナブル(CV:池田秀一)
- クェス・パラヤ(CV:川村万梨阿)
- ギュネイ・ガス(CV:山寺宏一)
- ナナイ・ミゲル(CV:榊原良子)
- ライル(CV:曽我部和恭)
- レズン・シュナイダー(CV:伊倉一恵)
- カイザス・M・バイヤー(CV:村松康雄)
- ホルスト・ハーネス(CV:池田勝)
- ムサカ艦長(CV:秋元羊介)
その他
登場メカニック
地球連邦
ネオ・ジオン
メインスタッフ
- 企画・製作:サンライズ
- 企画:山浦栄二
- 原作・脚本・監督:富野由悠季
- キャラクターデザイン:北爪宏幸
- モビルスーツデザイン:出渕裕
- メカニカルデザイン:ガイナックス(庵野秀明、増尾昭一)、佐山善則
- デザイン協力:大畑晃一
- 作画監督:稲野義信、北爪宏幸、山田きさらか、大森英敏、小田川幹雄、仙波隆綱
- 音楽:三枝成章
- 撮影監督:古林一太、奥井敦
- 美術監督:池田繁美
- 編集:布施由美子
- 音響監督:藤野貞義
- 演出補:川瀬敏文、高松信司
- プロデューサー:内田健二
- 製作:伊藤昌典
- 製作協力:松竹、創通エージェンシー、名古屋テレビ、バンダイ
主題歌
- BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)
- 作詞:小室みつ子
- 作曲・編曲:小室哲哉
- 唄・演奏:TM Network
関連動画
ゲーム
- 本作から10年後の1998年12月17日に「ガンダム20周年記念」として本作を題材にした3Dシューティングゲーム、PS専用ソフト『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』がバンダイから発売された。内容は原作(劇場版)と一年戦争の一部をベースしている。中には隠し要素として『Ζガンダム』から百式とクワトロ・バジーナやシャア専用リック・ドム等までも収録されている。
- ゲームと同時展開としてコミックボンボンにて漫画版逆襲のシャアがときた洸一により連載された。これは単行本も発売されている。
- 劇場版がベースなのにも係らず何故かハサウェイ・ノアは登場しない。そのためなのか、一部シーンが映画本編と異なる。
- 一方で今作のために新しく作られたムービーはクオリティが高く、更に原作ではギュネイの口でしか語られなかった「寝言でララァの名前を呼ぶシャア」のシーンが映像化されていたりもする。
- また「講談社8誌連合企画」として応募企画で当選した方のみに配布された特別版が存在し、こちらではパイロットの顔グラアイコンが新規、バトルモード2PVSで機体がSD化、そして外伝作品『THE BLUE DESTINY』からジム・ブルーディスティニー1号機が本版に限りプレイアブルとして使用可能という点が一般販売版と異なる。
- スーパーロボット大戦シリーズでは初代から参戦しているレギュラー格の1つ。それゆえ「νガンダムとサザビーのみを参戦させるため」のいわゆるいるだけ参戦も多く、シナリオ再現が行われる場合は原作同様シャアが敵として立ち回る。アムロもだいたいは逆襲のシャア設定での参戦が圧倒的に多い。また『Zガンダム』や『ガンダムZZ』など別の宇宙世紀作品と同時参戦してる場合、その兼ね合いからシャアの扱いがどうなるのかがユーザー間で話題になるのがお約束。作品によっては発売前に公式から「クワトロ(シャア)は裏切りません」とアナウンスされるのも有名。
余談
- 1984年の静岡ホビーショーで小説『逆襲のシャア・ガンダム』が発表されている。この企画は後にテレビアニメ『機動戦士Zガンダム』の制作が始まったことで立ち消えとなり、同作の小説版の企画となった。
- 本作はガンダムシリーズでは珍しくタイトルロゴの「GUNDAM」が筆文字になっている。
- 同時上映は『機動戦士SDガンダム』。
- 作中で映画本編に先駆けてνガンダムが登場しており、シャア(仮面の頃)がクワトロに変装してサザビーを建造しつつ、「次は劇場で仕返ししてやるぞ」と言うシーンで幕を下ろしている。
- アムロとシャアの決着を通して「人類への絶望と希望」という難しいテーマを描ききった物語や、戦闘シーンでの緻密で高度な空間演出といった要素から、本作はガンダムファンのみならず当時のアニメ業界人からも非常に高く評価された。特に庵野秀明と押井守が絶賛したことは有名で、押井が後年に製作した『機動警察パトレイバー2theMovie』は押井なりの『逆シャア』への回答作としている。
関連イラスト
関連項目
シリーズ
機動戦士ガンダムΖΖ(1987年)←機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(1988年)→機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争(1989年)
宇宙世紀
機動戦士ガンダムΖΖ(UC88年)←
機動戦士MOONガンダム(UC92年)←機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(UC93年)→機動戦士ガンダムUC(UC96年)
宇宙世紀(富野由悠季担当)
機動戦士ガンダムΖΖ(UC88年)←機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(UC93年)→機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(UC105年)