概要
クラベル校長は、『ポケモンSV』の主要人物の1人で、主人公の通う学校の校長。
言うまでもなく、主人公とは密接な関係にあり、立場上も主人公を見守り、支援する立場にある人物である。
しかし、近年のポケモンシリーズでは、物語開始当初は主人公の味方であった人物が実は事件の黒幕であることが発覚したり、思想の違いから対立関係になったりといった展開が多く、発表と同時に、「実は本作の黒幕なのではないか?」「最後の最後で主人公と敵対するのでは?」と一部のファンから疑われてしまうことになった。
その結果、彼が黒幕であった場合、どのようなストーリーが展開されるかというストーリー妄想が、(主にTwitterを中心に)盛んに行われることになった。
“エアプ”と付けられていることからもわかる通り、本来はストーリー発売前のファンの想像だったのだが、発売後は実際にプレイしてみて明らかになった要素をさらに付け加えるなどして盛り上がりは継続。
ここまでは良かったのだが、その後この話題は「今後登場する人物の誰かが黒幕なのではないか」という一部のファンによる過剰なまでの黒幕考察に発展していくこととなり、多くのプレイヤーから顰蹙を買うことにもなってしまった。
主な登場人物
- エアプクラベル
この二次創作の中心的存在。
表向きはオレンジアカデミーの校長として善良な人物を演じているが、その裏で、伝説のポケモン:ミライドンの力を使い、世界を征服しようという大それた野望を企てている。
本性を現すと、普段の落ち着いた言動をかなぐり捨て、ハイテンションで狂気的な言動を露わにする。
独特の笑い声が特徴(「コーッチョッチョッチョ!」「クーラベルベル!」等、創作する人によって若干の違いがある)。
なお、ミライドンには強い執着を見せる一方、対になるコライドンのことはほぼ完全にスルーしている。
「クラベル」という名前から、生徒の出来の良さを比較するような発言をするパターンも。
また、未来でも古代でもなく現代モデルのゲンダイドンなるポケモンを求めるパターンも。(モトトカゲではないのか…?)
- エアプミライドン
この二次創作のもう1つの中心的存在。
パルデア地方に古くから伝わる、強大な力を秘めた伝説的存在で、時空を大きくかき乱す程の凄まじい力を秘めている。
伝説ポケモンらしく人間に対しては傲岸不遜な態度を取る。一人称は「我」もしくは「わたくし」。主人公のことも「人の子」と呼ぶ。
一度はクラベルの手に落ち、彼の忠実な戦闘マシーンと化して主人公たちに襲い掛かってくる。
しかし、終盤で…?
- エアプコライドン
古代のパルデア地方に君臨した王者で、ミライドンとは対をなす存在。
強大な力を持ち、脆弱な人間や現代のポケモンを見下しているが、実力を認めた相手には力を貸すことも。一人称は「俺」もしくは「俺様」。胸のタイヤを使いパルデアの大地を疾走する。
ミライドンに比べると設定が固まっておらず、「豪放磊落で主人公に快く力を貸す」設定と「最初は脆弱な主人公を認めないがストーリーを通じて徐々に主人公に心を開いていく」設定が混在している。
ミライドン同様クラベルの手に落ちて古代の闘争心を暴走させられ狂戦士と化して主人公たちに襲いかかる事もあれば、最後まで主人公の味方として操られたミライドンに果敢に立ち向かい続けるという内容にされることもある。
- エアプネルケ
しかし、兄弟仲は険悪であり、クラベルは彼のことを毛嫌いしている(コンプレックスを抱いているという設定にされることも)。
クラベルの本性と真の目的を早くから察知しており、主人公と共に彼の悪事を止めるべく奔走する。
いわば、本作における主人公の相棒ポジション。
- エアプスター団
こちらもあまり設定が固められていないが、存在を疎ましく思ったor己の野望の障壁になると判断した校長により何かしらの手段で粛清されるという展開にされることが多い。
- エアプオモダカ
こちらもあまり設定が固められていない。
裏でクラベルを操っていた真の黒幕とされることもあれば(この場合、最終盤で用済みとなったクラベルを見限ってミライドンを強奪するという展開になる)、クラベル側に付いているように見せかけて、実は陰から主人公たちをサポートするという役回りにされることも。
- エアプ教師陣
こちらも設定が固められていないが、「最後までクラベル側につく」か「主人公との交流の中で改心しクラベルに反旗を翻す」かは創作者やキャラクターによる。
- エアプフトゥー博士
校長の依頼を受け、彼自身も知的好奇心からミライドンを研究していたが、終盤で研究データが揃うや、校長からは用済みと見做され、口封じも兼ねて始末されそうになってしまう。
すんでのところで主人公とネルケに助けられ、ミライドンの力を悪用すれば、時空を超えて別の時代のポケモンたちが押し寄せ、生態系が破壊されてしまうことを指摘し、校長を止めようとするが…。
関連項目
ムゲン団:前作における似たような二次創作。こちらは主人公がもしも悪の組織のトップになったらというIF創作。
ルザミーネ、ローズ(ポケモン)、ウォロ:この概念の誕生にあたりプレイヤーに疑心を植え付けていた元凶。
ダイパリメイク・BWリメイク - 一部のファンが異常な盛り上がり方をしているという点では共通するか。
非ポケモン作品
エフィリン:星のカービィシリーズにおいてエアプクラベル同様のネタで散々弄られた子。
マホロア:上記3人もそうだが、元を辿ればこの手の疑心(と、それをネタにするユーモア)をプレイヤーに植え付けた真の元凶といえる。
外部リンク
関連動画
…で、実際のところはどうだったの?
以下に『ポケモンSV』のネタバレがあります。ストーリー未クリアの方は注意! |
- クラベル
「えっ! 校長ショック!」
最初から最後まで悪事とは一切無縁の善良な人物である。一応、ストーリー終盤である事情で主人公とバトルをする一幕はあるが、あくまで実力を確かめるためという意味合いが強く、主人公を排除することが目的ではなかった。
特にスター団の問題に関しては内情を探ろうと主人公と行動を共にし、最終的には団員たちに対してかなり温情な処分を下している(詳細は後述)。
また、博士とは親交があったものの、ミライドン(およびコライドン)については、博士から伝えられたこと以外は一切知らなかった模様で、博士の企てていた恐るべき計画も、エリアゼロから帰還した主人公たちから事情を聞かされるまではまったく把握していなかったようだ。
なお、クラベルとミライドンが接触するのはバイオレット版のグレープアカデミーである。スカーレット版のオレンジアカデミーでは接触するのはコライドンであり、ミライドンとは接触しない。つまり前述のエアプ版はオレンジアカデミーなのにミライドンというエアプ感を増すためのネタである。
尤も、BW以降の本編作品では、そのバージョンで手に入らない方のパケ伝も何かしらストーリーに絡んではくるということがままあったため、発売後ならともかく発売前の時はエアプというよりは通例に沿ったストーリー予想だったと言える。
彼自身はいたって真面目な人物なのだが、それ故にコメディリリーフ的な役回りを宛がわれることも多く、ファンの間では「ぶっちゃけエアプクラベルよりも本物のクラベルの方が段違いでおもしれーやつだった」という共通認識が広まっている。
- ミライドン/コライドン
「アギャス」
衰弱して倒れていたが、主人公が差し出したサンドウィッチに釣られて仲間になり、ペパーがサンドウィッチを作ると勝手にボールから出てきて食べに来る。伝説ポケモンの威厳はどこへやら、終始メシをねだる大型犬のような雰囲気で主人公たちと親しげに交流する。
ちなみに、コライドンは胸のタイヤは使わず、四肢を使ってパルデアの大地を駆け巡る。(ちなみにタイヤの正体は浮袋であり、よって回転はしない)
その正体はフトゥー博士/オーリム博士が別の時代からタイムマシンで呼び寄せたパラドックスポケモンの1種で、ミライドンはモトトカゲの未来の姿、コライドンはモトトカゲの古代の姿とされる。
つまり実のところ伝説のポケモンでもなんでもなく、エリアゼロにゴロゴロいるパラドックスポケモンと同質の存在ということになる。(ただし、モトトカゲという明確なルーツを持つのはミラコラだけであり、他は姿形が類似してる故の予想や噂でしかない)
モトトカゲ…は元より、現在の一般的なポケモンとは比べものにならない程の強さを誇るが、未来の世界においてはごくありふれた普通の生物であるらしく、世界を手中に収めることができるほどの大それた力はさすがに持っていない。これは他のすべてのパラドックスポケモンも同様である。(もっとも禁止級故の種族値を抜きにしても、伝説らしく他のパラドックスポケモンとは一線を画す能力は確かにあるため、パルデア地方くらいなら制圧できるかもしれないが)
なお、実はミライドン/コライドンは2匹存在しており、もう1匹は博士の事実上の配下となり、最終盤で主人公たちに牙を剝いてくる。「もう一方の登場」でこそないが、この点に関してはファンの予想通りになったと言えるかもしれない。
- ネルケ
「今のオレは ネルケ…… そういうことに しておいてくれ」
クラベルが主人公と共にスター団の内情を探るべく変装した姿。
つまり、双子でも何でもなく、校長とは完全に同一の存在である。
そもそもネルケの存在は発売に至った今も公式からの言及が極めて少なく、ネルケを知っている時点でちゃんとプレイしている可能性が極高。
「お前エアプじゃねえだろ!!」と突っ込まれる所も織り込んだかなりハイコンテクストなネタと言える。
- スター団
実はただの不良の集まりというわけではなく、いじめ(および追及を恐れた学園側によるいじめ問題の揉み消し)により学内で居場所を失った生徒たちの最後の居場所という複雑な背景を抱えていた。
その事情を知ったクラベルは彼らに、迷惑行為に関しては見過ごせないが、情状酌量の余地はあるとして、奉仕活動に従事するという条件つきではあるが退学処分の取り消しと復学を認める決定を下した。
- 教師陣
クラベル校長の部下というのもあり一緒に疑われていた人たちだが、蓋を開ければなんと殆どシナリオに絡んでこない(その代わり、物語の本筋とは別に教師陣と絆を深めていくイベントがある)。
- オモダカ
学園の理事長兼ポケモンリーグ委員長という立場と、見るからに怪しげなオーラを纏っていることからファンの間では警戒されたが、こちらも最後の最後まで悪事に加担することはなく、善人ポジションを貫いている。
ただ、こんな御大層な立場でありながら、劇中では(DLCも含めて)そこまで彼女のことがクローズアップされないため、ある意味謎の多い人物となっている。
- フトゥー博士/オーリム博士
「邪魔者ハ ハイジョ スル!」
「仮称▓▓▓」と称される謎の存在の力を使ってタイムマシンを開発し、それを使ってミライドン/コライドンをはじめとする多数のパラドックスポケモンを現在に呼び寄せ、パルデア地方の生態系崩壊の危機を招いた。
つまるところ、校長ではなく彼/彼女こそが今回の事件の元凶とも言える存在なのであった(一応、悪人とは思えなかった人物が最終的に悪人になったというここ最近の流れは踏襲したと言えるか)。
なお、上記の創作では博士は最後まで存命するが、実際の物語の中においては、博士はとある事故からミライドン/コライドンを庇って命を落としており、物語開始時点で既に故人ということになっている。劇中で主人公たちに接触してきたのは博士が生前に自分の情報を元に作り出したAIロボット(アンドロイド)であり、ストーリー本編では本物の博士は最後まで登場しなかった(しかし、DLC後編で…?)。
世界征服などは画策していなかったものの、別の時代から呼び寄せたポケモンたちが現在の生態系を破壊することに関しては懸念するどころか「それも生態系の1つの形である」という傲慢で身勝手極まりない見識でまったく意に介しておらず、研究活動を引き継いだ博士のAIも「合理的ではない」と断じていたほど。
しかも、万が一妨害する者が現れた時に備えて、AIに防衛用のプログラムを仕込んでおいたり、それすらも打ち破られた時の“保険”としてモンスターボールをロックして妨害者がポケモンバトルを行えなくしたところを用心棒に一方的に攻撃させて始末させるという狂気染みた防衛システムまで密かに構築していた。
ある意味では、世界征服を企む悪役よりも質の悪い人物だったと言えなくもない。
前述のエアプフトゥーも、本編のAIフトゥーとして見た場合、予想通りになったと言える。
ゼロの秘宝では
DLCストーリーであるゼロの秘宝でも、怪しい雰囲気の登場人物に対して「こいつ黒幕じゃね?」と疑うプレイヤーが続出した。
- クラベルと同様の理由で、真っ先に疑惑の対象となったシアノ校長
しかし、先のクラベル校長の一件から否定的な意見も多く、実際に「ゼロの秘宝」が配信されてから、事件に一切関わってない善良な人物だったり(→タロ、管理人)、何かしら企んではいたが悪事とは無縁だったり(→ブライア)、単なるファンキーなおもしろジジイだったり(→シアノ)と、黒幕と疑われた人物達の潔白が尽く証明されるオチとなった。
タロに関しては、ヤーコンと親子関係であることがネモとの特殊会話で確定し、同時に先祖がキャプテンのキクイである可能性が浮上した。
- そもそも彼女はイッシュ地方のライモンシティ出身であり、キタカミの里とは縁も所縁もない上に、後編や番外編でもともっこさまとは一切関わりがなかったというオチとなった。
- 彼女やヤーコンの先祖と考えられるキクイも、バサギリの世話で忙しいことに加え、性格や立場上ポケモンを使って強盗を働けるとは到底思えないため、「タロの先祖がともっこと関わりがある」という考察も外れることになった。
つまり、胡散臭い人物が多数存在していたことは事実だが、結局「ゼロの秘宝」の登場人物達に黒幕など存在しなかったのだ(一応、番外編にて碧の仮面の黒幕的な存在は出てきており、公式動画にて事件の首謀者であることがはっきりと明かされた)。
むしろ今回のクラベル校長の件で、実際に対面するまで憶測で人を疑ってはいけないという良い教訓になったと言えるだろう。
一方で、ポケモンシリーズには逆に疑う余地が無いレベルで露骨すぎた上に予想通りだった人物も存在し、上記の関連項目でも書かれていたように、ここ最近のポケモンでは善人と思われていた人物(もしくはプレイヤーから見れば明らかに悪人なのがバレバレでも作中世界では世間的に善人として慕われていた人物)が最後の最後で豹変して本性を表すというパターンが続いており、プレイヤーが開発陣に疑惑の目を向け、疑心暗鬼に陥っていたというのも事実である。
- 補足しておくと『本当は悪人じゃないか?という疑惑を持たれていたが、そんな事は無かった』前例がこれまでにいなかった訳ではない。該当キャラ達はエアプ概念が浸透する前だったのであまりネタにされていないが。
- 結果的に悪人ではなかったとはいえ、ブライアに関してはファイナルトレーラー公開後のキービジュアルの中で、不敵な笑みを浮かべながら何かを見上げているという意味深な描かれ方をされており、プレイヤーからは、「開発側が意図的にミスリードを狙ったのではないか」と指摘されている。
- ただし、ブライアは悪意こそなかったものの、下手すれば生徒たちに危険を及ぼしかねないことをスグリに焚きつけるような形で指示していたため、「黒幕だった方がまだマシだった」「むしろ悪人ではなかったばかりに明確に処分を受けるような描写もなかった分、殊更に質の悪さが際立った」という手厳しい意見もあったりする。
こういった事情があるため、恐らく今後も、かつてのように明確に悪人とわかる人物と主人公が表立って対決するような構図に回帰するようなことがない限り、今回と同じようにプレイヤーが誰かを黒幕ではないかと疑う風潮が生まれることは避けられないだろうと思われる。
注意点
だが、疑うことはまだいいとしてこのエアプネタを不快に感じて嫌う人もいることも一応留意はしておこう。
特にエアプネタに使われる珍妙な笑い声は、元を辿ればONEPIECEが起源であり、ポケモンとは一切関係がない。
そのため、ネタを知らない人からすれば「キャラクターのことを(引いては作品そのものを)バカにしている」と受け取られても言い訳できない。
そのため、あくまでもネタとして、時と場所を良く考えて使うことを心掛けなければならない。