会社概要
千葉県の房総半島南東部に路線を持つ第三セクターの鉄道会社で株式会社。略称はい鉄。
日本国有鉄道(国鉄)時代に第一次特定地方交通線に選ばれ、廃止が承認されていた東日本旅客鉄道(JR東日本)木原線を引き継ぐ為1987年(昭和62年)7月7日に設立された。
千葉県や沿線自治体、千葉銀行が株主である。
木原線を転換したいすみ線を運営し、本社は夷隅郡大多喜町のいすみ線大多喜駅敷地内にある。
また同駅には車両基地や乗務区・運転指令所があり、いすみ鉄道の拠点となっている。
最近二代続けて社長を公募したり、車齢が遥かに古いキハ52形とキハ28形を1両ずつ西日本旅客鉄道(JR西日本)から譲り受けたり、キハ30形を1両JR東日本から引き取ったり、萌えキャラを投入してみたり、といろいろ取り組んでいる。
世間を賑わす話題として「訓練費700万円を自腹で支払い、試験に合格することで気動車運転士になれる」という採用プランを実施している。
路線データ
路線名 | いすみ線 |
---|---|
路線区間 | 大原〜上総中野 |
路線距離 | 26.8km |
軌間 | 1,067mm |
駅数 | 14駅 |
非電化区間 | 全線 |
単線区間 | 全線 |
最高速度 | 65km/h |
閉塞方式 | 特殊自動閉塞式(電子符号照査式) |
保安装置 | ATS-SN |
第一種鉄道事業者 | いすみ鉄道 |
路線概要
大原駅(いすみ市)と上総中野駅(夷隅郡大多喜町)を結ぶいすみ鉄道の鉄道路線。貨物線を除くと千葉県内に3線ある非電化の路線の一つである。
元は国鉄木原線として運営されていたが、慢性的な赤字により第一次特定地方交通線に選ばれ、民営化時にJR東日本が継承した後1988年(昭和63年)3月24日にいすみ鉄道に転換された。
転換後も赤字が続いた為廃止が何度も検討されたが、列車の増発や駅の命名権販売、新駅開業等の経営努力により経営状態の改善が認められた為、廃止を免れて今日に至っている。
かつての名称通り、当初は木更津駅と大原駅を結ぶ計画だった。木更津駅〜上総亀山駅間は久留里線、上総中野駅〜大原駅間は木原線として開業したものの、未成区間は着工すらされずに計画倒れで終わってしまった。
大原駅で接続しているJR東日本外房線とは、かつて同じJR東日本の路線だった事もあり線路は繋がっている。
国鉄時代は旅客列車の直通運転が行われていたが、転換後は行われていない。なおキハ30形をいすみ鉄道が授受する際に連絡線が使用された。
上総中野駅で接続している小湊鐵道小湊鉄道線とは線路こそ構内の側線が繋がっているが、直通運転は計画こそされたものの一度も行われていない。
なお2011年(平成13年)と2020年(令和2年)にこの側線を利用していすみ鉄道から小湊鐵道へモーターカーの譲受が行われた。
また小湊鐵道と共に房総半島の横断路線である事から、両社で大原駅〜五井駅間の片道のみ乗り放題のフリー切符を発売している(大原発はいすみ、五井発は小湊のみ)。
沿線に観光地を多数抱え、春先には菜の花と桜が咲き乱れる中を列車が走行する事でも知られている。
事故・災害
2013年(平成25年)脱線事故
2013年(平成25年)12月28日の昼過ぎに、西畑駅〜上総中野駅間の庄司川橋梁上で大原発上総中野行下り第63D普通列車(いすみ300型302号)が脱線した。
国土交通省の外局である運輸安全委員会による調査の結果、枕木の腐食及びそれに伴う犬釘の劣化によりレールの固定が不十分となり、レールの間隔が拡がった事が直接的な原因とされた。
この時にいすみ鉄道は同委員会による調査前に現場及び車両の修復を行なってしまった。
事故発生時は現場検証が行われるまでは事故現場を発生当時のまま保全する事が大原則であり、許可を得ず勝手に現場の修復を行うと事故原因が分からなくなってしまい、再発防止に繋がらない。
当然いすみ鉄道は委員会から大目玉を喰らい、事故調査報告書にもしっかりとその旨が記載された。
2023年(令和5年)台風13号による被災
2023年9月8日に千葉県に接近した台風の影響で大雨が発生。これにより大多喜駅〜上総中野駅間の複数箇所で土砂崩れや路盤崩壊等の被害を受けた。
大原駅〜大多喜駅間は9月13日に復旧したが、大多喜駅〜上総中野駅間は復旧まで時間を要し、3ヶ月半後の12月25日に運転を再開した。なおキハ52形125号による急行列車の運行は2024年(令和6年)1月6日から再開される予定。
台風の影響により数日間運休した事は2019年(令和元年)にもあったが、不通区間が長期間存在していたのは木原線時代を含めて初のケースである。
2024年(令和6年)脱線事故
2024年10月4日に国吉駅〜上総中川駅間を走行中の下り第5D普通列車(いすみ350型351・352号)が異音を感知した為緊急停止。運転士が確認した所2両編成のうち1両目の3/4と2両目の全車輪が脱線していた。
2013年の事故同様に枕木の腐食が直接の原因と見られている。
発生後は全線で運休となり代行バスによる輸送を開始。10月中の運転再開を目指して復旧作業が行われている。
沿革
木原線開業〜いすみ鉄道転換まで
- 1930年(昭和5年)4月1日:官制鉄道の木原線として大原駅〜大多喜駅間開業。上総東駅、国吉駅、上総中川駅、大多喜駅開業。
- 1933年(昭和8年)8月25日:大多喜駅〜総元駅間延伸。総元駅開業。
- 1934年(昭和9年)8月26日:総元駅〜上総中野駅間延伸に伴い木原線全線開通。
- 1937年(昭和12年)2月1日:東総元駅、西畑駅開業。
- 1945年(昭和20年)6月10日:東総元駅営業休止。
- 1946年(昭和21年)6月10日:東総元駅営業再開。
- 1960年(昭和35年)6月20日:西大原駅、新田野駅、小谷松駅、久我原駅開業。
- 1968年(昭和43年)9月4日:国鉄の赤字83線に指定される。
- 1974年(昭和49年)10月1日:貨物営業廃止。
- 1981年(昭和56年)9月18日:第一次特定地方交通線に選ばれ廃止が承認される。
- 1987年(昭和62年)4月1日:国鉄分割民営化に伴いJR東日本が継承。
- 1987年7月7日:いすみ鉄道株式会社設立。
いすみ鉄道転換後
- 1988年(昭和63年)3月24日:JR東日本が木原線の第一種鉄道事業を廃止。いすみ鉄道が第一種鉄道事業を継承し、いすみ線として開業。
- 2008年(平成20年)8月9日:城見ヶ丘駅開業。
- 2013年(平成25年)12月28日:西畑駅〜上総中野駅間の庄司川橋梁上で下り普通列車が脱線。
- 2019年(令和元年)9月9日:台風15号の影響で倒木や停電が発生し、全線で運転見合わせ。
- 2019年9月14日:全線運転再開。
- 2023年(令和5年)9月8日:台風13号により沿線各地が被災し、全線で運転見合わせ。
- 2023年9月13日:大原駅〜大多喜駅間運転再開。
- 2023年12月25日:全線運転再開。
- 2024年1月6日:急行運転再開予定。
- 2024年3月16日:急行運転及びキハ52形の定期運用終了。
- 2024年10月4日:国見駅〜上総中野駅間で下り普通列車が脱線。
運行形態
2024年(令和6年)3月16日ダイヤ改正以降は普通列車のみ運行されている。基本的には全線通しで運行されるが、一部は大多喜駅を始発・終着とする。上総中野駅では小湊鐵道の列車と接続する。
列車本数は上下線共に同じ。
大原駅〜大多喜駅間は平日は13往復・土休日は12往復、大多喜駅〜上総中野駅間は平日は12往復、土休日は8往復設定されている。
前述のダイヤ改正以前は土休日に観光列車である急行が運行されていた。急行運転は大原駅〜大多喜駅間で行い、大多喜駅〜上総中野駅間は普通列車として運行し、また土日はヘッドマークが装着されていた。
なお、土休日の上総中野駅の始発は8時前で、首都圏の路線の中では非常に遅い。また全線で一番遅くても21時台に営業を終了する為、営業時間が他の路線に比べて短い事が特徴。
駅一覧
●:停車 レ:通過 ※:転換後に開業した駅
駅名 | 命名権 | 乗換路線 | 備考 |
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大原 | FreeWi-FiならWi2大原 | JR外房線 | |
西大原 | |||
上総東 | |||
新田野 | サンテック新田野 | ||
国吉 | |||
上総中川 | |||
城見ヶ丘※ | 大多喜ハーブガーデン城見ヶ丘 | ||
大多喜 | デンタルサポート大多喜 | 当駅発着あり | |
小谷松 | |||
東総元 | 週刊バイクTV東総元 | ||
久我原 | 三育学院大学久我原 | ||
総元 | GSK総元 | ||
西畑 | momo西畑 | ||
上総中野 | 小湊鐵道 |
使用車両
全て大多喜運輸区所属の気動車
現在の使用車両
- いすみ200'型206号(メイン画像)
転換時から運用されており、全国で数少ないレールバス。登場時はセミクロスシートで形式は「いすみ100型」だったが、ロングシート導入時に「いすみ200型」に、床の張り替え時に現在の形式に改番された。最多7編成が所属していたが、現在は206号のみ残っている。
- いすみ300型
いすみ200'型置き換えの為2012年(平成24年)に導入された。301号と302号の2編成が所属しておりどちらもセミクロスシートを導入。
302号は前述の脱線事故の当該車両。
- いすみ350型
2013年(平成25年)に導入された気動車。351号と352号の2編成が所属しておりどちらもトイレ無しのロングシートである。
- キハ20形1303号
国鉄キハ20系気動車を模した車両。2015年(平成27年)に導入された。車体の外観は「いすみ350型」に近いが厳密には「いすみ300型」の派生車両。その為「いすみ300型」同様に車内はトイレ有りのセミクロスシートである。
当初は「キハ20形303号」となる予定だったが、当時の社長である鳥塚亮の意向でモデルとなった国鉄型気動車に敬意を表し、「キハ20形1303号」を名乗る事となった。
国鉄気動車一般色で塗装されている。
- キハ52形125号
元JR西日本富山地域鉄道部富山運転センター車両管理室(廃止)所属の気動車。大糸線で使用されていた。2010年(平成22年)にキハ120形への置き換えに伴い廃車された車両をいすみ鉄道が観光列車用に譲受し、国鉄気動車標準色に塗装した上で2011年(平成23年)から急行列車として営業開始した。一時期首都圏色に塗り替えられたが、現在は国鉄気動車標準色に戻されている。
2024年ダイヤ改正で定期運用を終了し、以降は臨時列車として運用されている。
過去の使用車両
- キハ28形2346号
元JR西日本富山地域鉄道部富山運転センター車両管理室所属の気動車。高山本線で使用されていたが、キハ120形への置き換えに伴いいすみ鉄道が観光列車用に譲受した。
四国旅客鉄道(JR四国)から譲渡されたヘッドマークを装着して急行列車として運転されていたが、2023年(令和5年)に貸切も含めた全ての運用を終了した。
保存車両
- キハ30形62号
元JR東日本幕張車両センター木更津派出所属の気動車。久留里線で使用されていたが、いすみ鉄道転換まで木原線でも運用されていた。
営業運転では使用せず普段は国吉駅の専用側線で静態保存されており、時折側線で運転体験会が行われる。
なお鳥塚元社長はキハ52形・キハ28形と共に旧国鉄気動車3両を連結して昭和40年代の房総半島の列車を再現する事を計画していたが、鳥塚社長が辞任しキハ28形が引退した今、キハ30形の車籍が復活するかどうかは不明である。
公認キャラクター
2024年8月30日、いすみ350型をモデルとする「ステーションメモリーズ!」の新田野なのかが公認キャラクターに就任した。
関連タグ
ウマ娘プリティーダービー(アニメ):第3シリーズにおいて劇中で登場し、公式アカウントや千葉県知事が言及する等話題となった。