バジリスク
ばじりすく
幻獣・バジリスクの概要
名称はギリシア語で「王侯」を意味する語basileusに由来し、名前の意味も「蛇の王」である。
全ての蛇の上に君臨する王であり、英雄ペルセウスのメデューサ退治の折、その血飛沫から生まれたと言われている。外見はただの蛇だが、頭に冠を思わせる模様がある。全身のあらゆる箇所に毒を持ち、その視線すら人を殺す(もしくは石化させる)程の力を持つ。その通り道にも人畜を死に至らしめる毒が含まれる、喉を潤したせせらぎは何世紀にも渡って毒の水が満ち溢れ草一本育たない、移動する音を聞いただけで他の蛇が逃げてゆく。バジリスクを槍で殺した者はその毒が槍から伝わって死ぬ、地を這っているだけで空を飛ぶ鳥をも殺す、等と言われ、その毒の力が恐れられていた。
ただ、吸血鬼ほどではないが、バジリスクも弱点がかなり多く知られている幻獣である。
主な弱点として、
・この手の能力持ちの定番として、鏡を見ると自分の視線が反射して自分を殺し(あるいは石化し)てしまう。
・雄鶏の鳴き声を聞くと一目散に逃げ出す、もしくは身もだえして死んでしまう。
・イタチにはバジリスクのあらゆる毒が効かず、それどころかイタチの体臭はバジリスクにとって最大の毒である。これは毒蛇を食らうマングースが元ネタではないかとも言われている。
等がある。これらはバジリスク対策として、砂漠を渡る旅人達の常識であったらしい。
アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの幻獣辞典の当該項目には、中世の文献から引用したと覚しき詩が記載されている。内容は「歩く死亡フラグ」なんで目撃したら生きているはずがない」という旨のものである。これは毛羽毛現(漫画家・薬剤師)の「魔狩人-DEMONHUNTER-」で引用されている。
近年の児童文学やゲームでは、足が複数ある毒トカゲタイプのバジリスクや、蛇体だが全長が10mを優に越す怪獣のようなバジリスクも見受けられる。
毒トカゲタイプの場合、足の数は普通に四本であったり、六本、もしくは八本となることもあるようだ。かつて日本ではこのトカゲタイプが一般的だったが、映画「ハリー・ポッター」の第二作「秘密の部屋」の影響か大蛇としてのバジリスクの方が一般的となった。
その他の特色あるバジリスクとしては、「ソード・ワールド2.0」のバジリスクがある。蛮族(人類に敵対的な人型種族)の一員であり、普段は人型をしているが、巨大なトカゲ型の姿も取れる(ただし知性が落ちるため、こちらの姿になるのを嫌っている)。
フィクションでの扱い
ハリー・ポッターシリーズでのバジリスク
第二作「秘密の部屋」での部屋におけるキー存在として登場。日記に封印された「トム・リドル(=若い頃のヴォルデモート卿)」によって操られて暗躍。
「ハリー・ポッター」の世界観における「バジリスク」の主な特徴は次の通り。
・雄鶏の卵をヒキガエルが孵すことによって生まれる。
・万物を殺すとも言われるほど強烈な腐食性の毒を持つが、それ以上に恐ろしいのは直視した相手を殺すその視線である。
・数百年から数千年の寿命を持ち、高い知能を持つこともある。
劇中では学校の配管を伝って移動し、生徒たちを襲った。ただ、どの被害者もバジリスクの姿を直接見たわけではなく鏡やレンズなどを透して見たり、元から死んでいるゴーストであったため石化しただけで済み、最終的には薬で回復している
間接的にバジリスクの目を見た理由は「バジリスクが彷徨いていることが周知されていたから」等の理由ではなく、最後の犠牲者であるハーマイオニー以外完全に偶然である。
そもそも「秘密の部屋の怪物」の正体がなんであるかは最終局面でハーマイオニーが勘付き、メモを握りしめたまま対策として持ち歩いていた手鏡でバジリスクを確認、石化するまで誰一人として察知していなかった。
こんな状況で一人の死者が出なかったのは奇跡としか言いようがなく、本来であれば夥しい死者が出る事が予想できた
バジリスクの毒は本当に強烈であり、他の似た物品と同様にとある事情で物理的魔術的損傷に強い耐性を持っている(魔法界では一般的な羊皮紙で出来ているにも関わらず、水浸しになっても乾かすことなく書き込むことすら出来た)トム・リドルの日記を容易く破壊してのけた、また、そのことが第七巻「死の秘宝」においては重要な意味を持つことになる。
ダンジョン飯のバジリスク
「尾蛇類」と呼ばれるモンスター。
蛇の尾を持つ巨大な鶏。
通常蛇の尾と石化能力を持つ鶏はコカトリスと呼ばれるはずなのだがこの漫画においてはバジリスクとしての登場である
蛇の牙のみならず鶏の蹴爪にも毒を持つ。二つの脳に対し体は一つであり、二方向から同時に攻められると混乱してしまうのが弱点。
蛇と鶏を生きたまま分断した所、鶏はすぐ死んで蛇が生き延びたという実験結果から「蛇が本体で鶏は尾」というのが定説となっている、コカトリスではなくバジリスクと呼ばれるのはこれが原因だろう。
また、卵も楕円形で殻が柔らかく卵白が無いなど蛇の卵の特徴を持つ。
主人公一行によって身はローストチキンならぬローストバジリスクとベーコン、卵はオムレツおよびかき揚げの材料として料理された。
「狂乱の魔術師」ことダークエルフのシスルがダンジョン内に作った疑似世界「黄金境」では小型(それでも大型犬ほどのサイズ)のバジリスクが家畜化されている。
女神転生のバジリスク
ファミコンの『女神転生』から出演している古参悪魔。『女神転生』では”魔獣”でナーガの色違いの下半身が蛇の獣人、『女神転生Ⅱ』では”怪獣”、『真・女神転生』では”邪龍”でコカトライスの色違いの鶏型。『デビルサマナー』で警戒色のトカゲという独自の姿になった。
ドラゴンクエストのバジリスク
表記は「バシリスク」。初出は『ドラゴンクエスト2』で、毒攻撃が得意なキングコブラ(DQ)の上位種として登場。余談であるが「メイジキメラ」は、「あくましんかん」が「バシリスク」と「ごくらくちょう」を合成して造りだしたと「モンスター物語」で語られた。
ファイナルファンタジーのバジリスク
1作目で天野喜孝によって大きなグルグル目玉の多脚トカゲとしてデザインされ、続編『ファイナルファンタジー2』ではカメレオンのような姿に描かれた。以降のシリーズのものはこれらのデザインのアレンジである。
ゴッドオブウォーのバジリスク
PSPの外伝作『落日の悲愴曲』にて、シリーズ定番の序盤の巨大ボスとして登場。全体的なフォルムはトカゲに似ているが、四肢の間にはムササビのような皮膜が発達し、頭部は兜のような頑強そうなフォルムをしており、口から強力な炎を吐き散らす。
ギリシャに侵攻したペルシャ軍から「ペルシャの意思」「聖なる浄化の力」と称されてアッティカに解き放たれ、クレイトスとサイクロプスの一騎打ちに割り込み、サイクロプスを一飲みにした。残るクレイトスにも襲い掛かるが一瞬の隙を突かれ、サイクロプスの使用していた棍棒で左目を潰されてしまう。それでも怯むことなくアッティカを襲撃し、クレイトスに一矢報いんと再び襲い掛かるが、死闘の末にブレスを吐こうとした際にブレイズオブカオスで口をふさがれてしまい、そのまま炎が暴発して口が吹き飛び死亡した。
ダークソウルのバジリスク
シリーズを通して登場するザコモンスター。通称呪いトカゲ。ただし姿や鳴き声はトカゲというよりカエルに似ている。頭部に巨大な眼球のような器官を持っているがこれはダミーであり、本当の眼はその下にある鼻腔のような部分である。武器は口から吐き出す呪いガス。ゲーム中では閉所に集団で現れ、飛び跳ねながら呪いガスをまき散らしてくる事が多い。プレイヤーが滞留したガスの中に留まると呪いゲージが蓄積、やがて呪死と呼ばれる状態に陥り、石化(即死)する。
特に初代ダークソウルでの活躍が悪名高く、比較的序盤のステージ『最下層』で排水溝に落ちると、バジリスクの巣窟と化した下水道の最深部へ落下してしまう。多くの初見プレイヤーがそこで袋小路に追い詰められ、ワケも分からぬままガスを浴びせられ呪死していった。また、本作では呪死するとHPが半減(アップデート前は更に呪死すると4分の1まで半減)する仕様だった為、呪死の癒し手がいるという情報を基に高難度ステージ『小ロンド遺跡』へ向かい、そのまま詰んだという者も多い。
ダークソウル2では眼球状器官を持たない亜種や巨大化した個体が出現した。巨大バジリスクはガスだけではなく尻尾や腕でも攻撃してくるほか、PS3版では『虚ろの影の森』に配置された巨大バジリスクに近づくと周囲の地面が崩落。装備を溶かす強酸と数体のバジリスクが配置された洞窟へ叩き落とされる罠があった。ただ、2以降は呪死のペナルティが軽減された為、相対的に危険度は下がっている。
※擬人化は二次創作
ONEPIECEのバジリスク
インペルダウン地下2階「猛獣地獄」で飼われている怪獣の1体。鶏が産んだ蛇だという。外見はティラノサウルスほどもあるサイズの鶏に蛇の顔をくっつけたような感じで、巨体意外に目立った特殊能力はない。
1階「紅蓮地獄」から転落してきたルフィを襲うも、ギア3の攻撃を受けて看守室に突っ込んで気絶した(この影響で看守室が破壊され、バギーは2階の囚人の開放に成功している)。
ザ・ドラえもんズスペシャルのバジリスク
22世紀の空想動物サファリパーク(『のび太の日本誕生』に登場したドラコ、ペガ、グリが住んでいる所)で作られたバイオ合成獣の一体。鶏に蛇の首と尻尾をつけたような生物。
観光客のタイムカメラを盗んだスフィンクス軍団に連れられて過去の世界に脱走したが、紀元1世紀のアフリカでオオカミに変身したドラニコフに捕獲される。
騎士竜戦隊リュウソウジャーのバジリスク
バジリスクをモチーフとしたバジリスクマイナソーが登場。
タクティクスオウガのバジリスク
邪眼により石化攻撃を仕掛けてくるLサイズユニット。
敵専用クラスであり「説得」コマンドで仲間にすることは不可能。
説明文では「砂漠に生息するヘビのモンスター」とあるが、登場するのは死者の宮殿と空中庭園のみで砂漠のマップには登場せず、外見もドラゴン(有翼で4足歩行)の色違い。
ニンジャスレイヤーのバジリスク
詳細はバジリスク(ニンジャスレイヤー)を参照。
近縁種、及び別称
コカトリス
上記のとおりバジリスクは雄鶏の鳴き声が弱点なのだが、どうやらその伝承が伝わる際に「バジリスク」という幻獣の性質と「雄鶏」というなじみ深いキーワードが混同されて「コカトリス」という別の幻獣となったらしい。
そのためコカトリスを「バジリコック」と別の呼び方でよぶこともある。
「バジリコック」としてのコカトリスは、伝承的には「バジリスクの同類だ」とか「バジリスクとは雌雄の関係にある(雄雌どちらかは不明)」等と言われている。
また、バジリコックは雄鶏が産んだ卵から生まれると言われているため、「雄鶏と言う弱点を克服したバジリスクの進化系だ」という説も存在する。
ただ、コカトリスが一般にニワトリの姿をしているのは「コカ」という発音からの連想である、と言う説も存在するため確実に「コカトリス=バジリコック」とは言い難いかもしれない。
ゲイズハウンド
Gaze houndとは本来は猟犬の分類であり、嗅覚より視覚で獲物を捉えるものを指す(サイトハウンドとも言う。犬種としてはアフガン、グレーハウンド、ボルゾイ、サルーキ等)。
が、ウィザードリィ#1に麻痺攻撃の能力を持つモンスターとしてゲイズハウンドが登場。FC版において末弥純により八本脚のトカゲとしてデザインされ(それ以前のプラットフォームではカピバラと同デザイン)、事実上バジリスクに相当する存在として扱われるようになる。
#4ではLv3召喚モンスターとして登場。クラシック版・アレンジ版共に優先順位の高い有能な戦力。
#5では同じデザインでめでたく(?)バジリスクとして登場。能力も石化攻撃にパワーアップ。
寺田克也がデザインを担当したBUSINのゲイズハウンドは、顔つきは犬に近いものの脚は六本、体形や体色も犬とはかけ離れており、それでいてバジリスクにも似ていないまったく新種の魔法生物となっている。
余談だが、BUSINの登場人物・爆炎のヴァーゴはお供のゲイズハウンドにゴロとタマという名をつけている。
メデューサリザード
ウィザードリィ#1に登場した石化攻撃の能力を持つトカゲのモンスター。
なぜかメデューサそのものは#5まで登場せず。
SS版リルガミンサーガではボーナスダンジョンにも出現。GBC版リルガミンの遺産では追加ダンジョンにメデューサのお供として出現。
ピロリスク
どちらかといえばコカトリスの亜種、つまり鳥寄りなのだが、名前がバジリスク由来なのでこちらに記載。
初出は『ダンジョンズ&ドラゴンズ モンスター・マニュアル2』で、眼を合わせた相手を焼殺する能力を持つ。
名前は「Pyro-」(火の)+「Basilisk」(バジリスク)が由来。日本では、Pyroは「パイロ」と読む方が多いかも。
現実のバジリスク
中南米に生息する有鱗目イグアナ科のトカゲ。→バシリスク
鶏のようなトサカを持っているためこの名前が付けられたが無毒である。
たまにテレビの動物番組などで(短距離ではあるが)水上を走る姿が紹介される。
漫画作品「バジリスク〜甲賀忍法帖〜」
山田風太郎の小説『甲賀忍法帖』を原作として作られた、せがわまさきの漫画作品。2003年から『ヤングマガジンアッパーズ』(講談社)で連載された。タイトルの由来は主人公とヒロインがともに特殊な眼力を持つことを幻獣バジリスクになぞらえたもの。
なおpixivで「バジリスク」タグはほとんどがこの漫画である。
バジリスクタイムの元ネタの原作。
詳細はバジリスク〜甲賀忍法帖〜へ。
2018年1月から『桜花忍法帖』がテレビアニメとして放送。こちらは甲賀忍法帖から10年後の世界を舞台としている。
キャストは畠中祐、水瀬いのりほか。主題歌は甲賀忍法帖と同様にオープニングテーマは陰陽座、エンディングテーマは水樹奈々が担当する。