概要
山梨県大月市の大月駅と、山梨県富士河口湖町の河口湖駅間を結ぶ鉄道事業、バス事業、富士急ハイランド等の観光施設事業、不動産業などを行っている。通称「富士急」。
売上の大部分は観光事業によるもので占められており、鉄道事業の売り上げはバス事業よりも少なく、全体の売上のおよそ5%ほどにすぎない。
それもあり山梨県外(特に首都圏)においては運輸業よりも観光としての「富士急」のイメージが強いといわれる。
閏日である2月29日は語呂合わせから「富士急の日」となっている。
昭和30年代までは「富士山麓電気鉄道」という社名であった。長いだけでなく「山麓」という非常に画数の多い字が入るため、証券業界などの通称略記では「√5」(=2.2360679だから)と表現されることがあったという。
ここでは主に同社の鉄道路線を主とした運輸業について記述する。
同社の観光レジャー施設としては富士急ハイランドを参照。
路線
1929年(昭和4年)に大月線が富士吉田(現富士山)まで開業。
戦後の1950年(昭和25年)に路線を延長する形で河口湖線が開通した。
なお2路線は完全な1路線として運行されており、JRの時刻表や路線図、富士急行公式HPなどでは大月-河口湖間を「富士急行線」と案内されている。
地形上全線において片勾配の線形、かつ昭和期の中頃に踏切事故に端を発したブレーキ故障脱線転覆事故が発生し乗客に死傷者を出した経緯などもあり、地方私鉄でありながらワンマン運転は導入せず全ての列車に車掌を乗務させる方針をとっている。
近年はインパウンドによる外国人旅行者の利用が多くなりドーンデザイン研究所水戸岡鋭治デザインの導入、富士山ビュー特急の投入など海外に対して富士観光を取り込むイメージ戦略を図っている。
運行形態
線内列車
基本は終点の河口湖まで線内通し運行の普通列車が中心。毎時1-2本運行されているが、21:45大月発の列車のみ途中の東桂止まりである。
また21:18河口湖発の普通列車は上大月駅を通過する。
「富士登山電車」
1000形改造の観光列車、着席券(200円)が必要となる。木曜日は運休。
2020年3月のダイヤ改正まで快速として単独運行を行っていたが、改正後からは一般車両を併結した各駅停車としての運行となった。木曜日は観光車両は連結されず、一般車両の各駅停車として運行される。
なおこれにより富士急行線内での定期快速運転は廃止され、通常の運転形態は特急と普通のみに整理された。
フジサン特急・富士山ビュー特急
1号車が指定席、2・3号車が自由席。JRのそれと同じく特急券が必要であり、指定席特急券は車種、自由席特急券は乗車距離によって金額が設定されている。なお河口湖線区間は自由席特急料金は不要となる。
「富士山ビュー特急」では沿線ホテルとの提携によりスイーツが車内で食べられるプランがある。
JR直通列車
大月駅から先、JR東日本中央本線東京駅方面に直通する列車を毎日運行している。特別快速(中央特快)、通勤快速、快速列車合わせて1日2往復、高尾駅発着の普通列車1日1往復が運行されているほか、E353系使用の特急「富士回遊」が1日3往復設定されている(定期列車。追加で設定されている臨時列車1往復はE257系使用)。なお「富士回遊」はJR中央線特急での新しい特急料金制度に準じているため線内特急料金は上記のフジサン特急とはまた異なっている。
車両
普通列車用
1000形(1200形)
1993年運行開始。元京王5000系。2両編成。1000形はロングシート車、1200形はセミクロスシート車。9編成18両が導入されたが、経年により6000系に置き換えられ現在は3編成6両のみ残る。なお引退した1200形の内の1編成(2両)が岳南電車へ譲渡された。
6000系
2012年運行開始。元JR東日本205系を3両編成に改造したもの。
導入にあたり、パンタグラフのシングルアーム化及び増設、乗降扉の開閉ボタンの設置、暖房設備の強化などの耐寒耐雪工事が施行されている。
上記の1000形に代わり、普通列車の主力となった。現在7編成21両が在籍。標準色は水戸岡鋭治デザイン。
(※ヤテ=山手電車区・山手線、ケヨ=京葉車両センター・京葉線、ハエ=川越車両センター・埼京線または川越線/八高線・ウラ=浦和電車区・京浜東北線)
編成 | 塗装 | JR205系時代の編成 | 備考 |
---|---|---|---|
6001F | 標準色 | ケヨ25編成(←ヤテ2編成) | 量産先行車 |
6002F | 標準色(※1) | ケヨ26編成(←ヤテ3編成) | 量産先行車 |
6003F | リサとガスパールラッピング電車 | ケヨ27編成(←ヤテ4編成) | 量産先行車 |
6501F | マッターホルン色 | ケヨ22編成(←ヤテ11編成) | 小窓ドア |
6502F | トーマスランド号 | ハエ28編成(←ウラ91編成) | 大窓ドア |
6701F | 富士急行90th記念色 | ハエ85編成(←ヤテ13編成) | 先頭車化改造車 |
6702F | NARUTO&BORUTO富士 木ノ葉隠れの里号 | ハエ81編成(←ヤテ8編成) | 先頭車化改造車 |
※1…6002Fは、ラブライブ!サンシャイン!!やBang_Dream!等、ドア横に期間限定ラッピングをされることがある。
特急列車用
8000系
フジサン特急用。2014年運行開始。元小田急電鉄20000形20052編成を3両編成にしたもの。車体塗装とバリアフリー改造以外、車内設備はほぼ小田急時代のままの姿となっている。
8500系
富士山ビュー特急用。2016年運行開始。元JR東海371系X1編成を3両編成にしたもの。水戸岡鋭治デザインに大改装されている。
乗り入れ車両
- 211系:高尾発着の普通列車で使用。
- E233系:東京発着の快速列車で使用。
- E353系:特急「富士回遊」定期列車用。3両編成。
- E257系500番台:特急「富士回遊」のうち、土・休日運行の臨時列車で使用。5両編成。
保存車両
- モ1形…河口湖駅に保存。開業時の車両
- 2000系(クロ2001)…下吉田駅に保存。初代フジサン特急の展望車。JR時代は「パノラマエクスプレスアルプス」として知られていた。
- 5000系(クモハ5001)…下吉田駅に保存。最後の自社オリジナル車両。トーマスランド号。
- 14系(オハネフ14 20)…下吉田駅に保存。JR東日本より購入したブルートレイン。
- 169系(クモハ169-27)…下吉田駅に保存。かつてのJR東日本からの乗入れ車両。運転台部分のみのカットボディ。
- 旧形貨車(ワフ1・2、ト104)…下吉田駅に保存。
駅一覧
●:停車、|:通過
駅番号 | 駅名 | 特急 | 快速 | 乗り換え | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
FJ01 | 大月 | ● | ● | JR東日本中央本線 | |
FJ02 | 上大月 | | | | | 一部の普通列車は通過 | |
FJ03 | 田野倉 | | | | | ||
FJ04 | 禾生 | | | | | この付近をリニア山梨実験線が通っている。 | |
FJ05 | 赤坂 | | | | | ||
FJ06 | 都留市 | | | ● | ||
FJ07 | 谷村町 | | | | | ||
FJ08 | 都留文科大学前 | ● | ● | ||
FJ09 | 十日市場 | | | | | ||
FJ10 | 東桂 | | | | | ||
FJ11 | 三つ峠 | | | ● | ||
FJ12 | 寿 | | | | | ||
FJ13 | 葭池温泉前 | | | | | ||
FJ14 | 下吉田 | ● | ● | 保存車両が展示されている。 | |
FJ15 | 月江寺 | | | | | ||
FJ16 | 富士山 | ● | ● | スイッチバック駅、車両工場隣接。 | |
FJ17 | 富士急ハイランド | ● | ● | 富士急ハイランド最寄り駅 | |
FJ18 | 河口湖 | ● | ● | 車両基地がある。 |
2020年3月改正以降は定期列車としての快速は廃止されており、イベント開催などの波動輸送時のみ臨時列車として運行される。
備考
- フジサン特急・富士山ビュー特急に使用されている8000系、8500系は元は両車共にJR東海⇔小田急の御殿場線特急「あさぎり」に使用されていた車両であり、短編成化されるも同一系統を走る特急電車として相方同士で再び活躍することになった。(さらに言えば両車の引退後に列車愛称が「あさぎり」から「ふじさん」に改称されている)
- 「富士急行線」ではあるが1986年(昭和61年)11月の国鉄急行「かわぐち」廃止以降、線内では急行列車は運転されていない。
- JR線と比較して賃率が高いこともあり観光客はともかく沿線住民が休日などの日常の足に使用するには割高感があるのは否めない。そのため土曜・休日のみではあるものの上大月駅を除いた全駅で正規運賃よりも最大割引率が3割引きという「大月往復きっぷ」を沿線向けに発売している。
- 新型コロナウイルスの感染拡大の影響、及びそれに起因する外国人観光客の急減により2020年4月下旬から減便ダイヤで運行されている。(2020年9月現在)
具体的にはフジサン特急・富士山ビュー特急・富士登山電車の全面運休
普通列車の間引き運転(なお富士登山電車もこれに含まれるため列車そのものが運行されないので注意)
最終電車の1~2時間の繰り上げなど(平日は大月発22:05、土休日は21:11)
後述する高速バスにおいても減便や運休が相次いでいるので利用前には確認が必要。
バス事業
主に富士山周辺の静岡県北東部、山梨県、神奈川県西部を中心として路線バスや高速バスを運行している。
高速バスは上記の方面から東京駅やバスタ新宿へ向かう便が多いが、逆に富士駅や東静岡駅を経由して大阪京都方面に向かう夜行バスも運行している。なおこの便は通常便に加えて4列シートの格安設定車を続行運転させており、最安例として東静岡⇔京都を4400円で移動できる。
最近ではJR会社間のICカードの弊害でスムーズな移動が難しい沼津・三島から首都圏方面への路線などに力を入れてきている。
また東京芝浦の車庫から・東京駅~盛岡駅・久慈を結ぶ「岩手きずな号」も運行している。
このうち御殿場市にある御殿場営業所管轄の路線以外は全て地域ごとに分割された子会社による運営となっている。なおこの御殿場営業所も2020年10月を持って子会社への移管が発表されており、これで全営業所の子会社化が完了となる。
また、上記の港区芝浦に高速バスの営業所がある関係で東京都港区・渋谷区のコミュニティバスや横浜市の路線バスの運行も行っている。
なお同社の運転訓練車にはフジサン特急と同じく、富士山のキャラクターイラストが描かれている。
スケート部
富士急行は企業スポーツとしスケート部に力を入れており、特に女子スピードスケート競技においてトップレベルの実績をもつ。冬季五輪出場選手も多い。
富士急行スケート部出身人物
関連タグ
- ヤマノススメ:作中に三ツ峠、富士山が登場。タイアップも行なわれている。
- 岳南電車:グループ企業。また、岳南9000系は1000形1206Fを譲渡したもの。
- ドーンデザイン研究所水戸岡鋭治デザイン(水戸岡鋭治)
- 全国登山鉄道‰会参加事業者:南海電気鉄道・神戸電鉄・大井川鐵道・叡山電鉄・箱根登山鉄道