概要
仏教に帰依したとされる神々。
大抵の場合「天部」と呼ばれるのは仏典にも登場する
インド神話由来の神である。
天部の像も仏像と称されるが、実際のところ
彼らは仏でも何でもなく人間と同じただの衆生である。
中世には日本神話の神々を仏教の守護者と位置づける神仏習合の伝統もあるが、
これは一般に天部ではなく、神仏と呼ぶ。
単に(特に天龍八部衆において)「天」と呼ぶ場合は
デーヴァ系の神々をさす。
仏教における天(デーヴァ)の起源
仏教ではインド神話の最高位の神々ですら、輪廻転生の中でたまたまそのように転生できた衆生であると説く。
『サンユッタ・ニカーヤ』では、過去世で善行を積んだバラモン学生マガがサッカ(帝釈天、インドラ)に転生したと語られる。
『起源経』や『梵網経(同名の大乗経典とは別物)』等に記された世界起源神話では、ヒンドゥー教の四ユガ説のように世界紀が一周し、宇宙がいったん滅んで新たに生成される際、光音天という天界に避難していた衆生の一人が最初に新たな「この世界」に転生したたものの孤独に苛まれて他の生命の誕生を望んだあと、後続組が転生してきたのを「自分が生類を創造した」と誤認したのが「大梵天」という神であるとする。
また、大乗経典では仏教の尊格から神々が生まれたという記述がある。『大乗荘厳宝王経』では観世音菩薩の眼の中から日と月が出たという文のあとに、額から大自在天が、肩から梵王天が、心から那羅延天が、牙から大辯才天が、口から風天が、臍から地天が、腹から水天が、他にも観音の身から諸天が出生したという記述がある。
天部
天部の神として紹介される場合は、漢訳経典で用いられる
以下のような表記が用いられることが多い。
デーヴァ系
梵天(ブラフマー)、帝釈天(インドラ)、弁才天(弁財天、サラスヴァティー)、大黒天(マハーカーラ)、吉祥天(ラクシュミー)、韋駄天(鳩摩羅天、スカンダ)、摩利支天(マリーチ)、歓喜天(ガネーシャ)、金剛力士(ヴァジュラダラ)、伎芸天
大自在天(伊舎那天、シヴァ)、毘紐天(那羅延天、ヴィシュヌ)、火天(アグニ)水天(ヴァルナ)
日天(スーリヤ)、月天(チャンドラ)、烏摩妃(パールヴァティー)、焔摩天(閻魔大王、ヤマ)、地天(プリティヴィー)、他化自在天(マーラ)、黒闇天(アラクシュミー)
夜叉系
四天王:持国天・増長天・広目天・多聞天(毘沙門天、クベーラ)
十二神将(※)、鬼子母神(ハリティー)、荼枳尼天(ダーキニー)、摩尼跋陀羅(マニバドラ)
※彼らのうち、宮毘羅大将がマカラ、迷企羅大将がミスラ、伐折羅大将が金剛力士、頞儞羅大将がヴァーユ、因達羅大将がインドラ、摩虎羅大将がマホーラガ、真達羅大将がキンナラ、毘羯羅大将がドゥルガーに相当する。
その他
種族を問わない総称
天龍八部衆:天(デーヴァ)、龍(ナーガ)、夜叉(ヤクシャ)、乾闥婆(ガンダルヴァ)、阿修羅(アスラ)、迦楼羅(ガルーダ)、緊那羅(キンナラ)、摩睺羅(マホーラガ)