概要
元ネタは恐らく、長らく重賞戦線で安定して掲示板入りしながらも勝ち切れないことから独自の人気を博し、引退レースで悲願のGⅠ制覇を成し遂げた競走馬・ステイゴールド。劇中においては台詞の一つも無いモブキャラクターである。
また、他のキャラと違いデザイン自体は他のウマ娘のデザインと一緒である(1期第3話から第5話まで登場するマッシヴコウテイなど、勝負服の色違い以外はまったく見た目が同じ娘も多々いるため、そのモブウマ娘たちはファンの間で『2Pカラーリョテイ』などと呼ばれることも)。
しかし、他の声無しモブウマ娘が一瞬だったりするのに対し彼女は何回か登場している。
デザイン
ほぼ黒の勝負服に所々金縁で左右の靴が白くなっている。
ステイゴールドは左前肢が白斑であり、他のデザインに倣うなら左手が白いはずだが、言い訳できるようにか他のウマ娘に比べると勝負服や星がデザインにあまり反映されていない。
また、元馬が約430kgと小柄だった体格も並程度になっている。
と、いうか前述の通り、アニメのモブウマ娘は基本的にいくつかのデザインを使い回しているため、彼女と同じデザインのウマ娘も複数存在する。
設定画ではピンクの勝負服となっているが、こちらはボールドエンペラーが元ネタと思われるマッシヴコウテイに使われている。
他にも、1期第13話のゴールドシップの宝塚記念連覇のシーンにいる白い勝負服の娘はカレンミロティック、2期第1話冒頭のシンボリルドルフの日本ダービーにいる青い勝負服の娘はハーバークラウン、2期第9話の安田記念のシーンでヤマニンゼファーの後方にいる茶髪で緑色の勝負服の娘はキットウッドと思われる。
名前の由来
元ネタの競走馬であるステイゴールドが、香港ヴァーズにてラストレースを行った。
その際の現地表記である『黄金旅程』をもじったものだと思われる。
劇的なラストレース、またそれまでの競走馬生活を慮るに、この現地表記はあまりにも的確にステイゴールドを表現しており、数ある関連本や産駒名もこの表記に倣っている。
このウマ娘も例外ではない。
戦績
元ネタと同じくGIで勝ちきれないレースが続いている。
第6話冒頭の宝塚記念ではエアグルーヴに先着するもサイレンススズカを捕らえられず2着。
第8話の宝塚記念で馬名が判明。先行態勢でレースを進めるも、グラスワンダーとスペシャルウィークに大差をつけられ敗北。
第10話の天皇賞・秋では最後の直線で先頭に立ち、悲願のG1タイトル奪取まであと一歩もゴール寸前でスペシャルウィークに差されて2着。
話数 | レース場 | 競走名 | 格 | 距離 | 枠番/馬番 | 着順 | 1着ウマ娘(2着ウマ娘) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
6話 | 阪神 | 宝塚記念 | GI | 芝2200m | ? | 2着 | サイレンススズカ |
8話 | 阪神 | 宝塚記念 | GI | 芝2200m | ? | ? | グラスワンダー(スペシャルウィーク) |
10話 | 東京 | 天皇賞(秋) | GI | 芝2000m | ? | 2着 | スペシャルウィーク |
12話 | 東京 | ジャパンカップ | GI | 芝2400m | 6/10 | ? | スペシャルウィーク |
なお、ステイゴールドは1998年の天皇賞・秋にも出走しているが、そのレースを描いている第7話ではヒシアマゾンがステイゴールド役で登場しているため、キンイロリョテイは登場していない。
アプリでは
アプリでは代役による出走などレースを走るウマ娘としての出番はないが、その代わりと言わんばかりにステイゴールドの存在を示唆する描写が描かれている。というか匂わせの数が他の馬と比べて圧倒的に多い。
- ゴールドシップの育成シナリオ
ゴールドシップの育成の中では、夢の中で彼女を導く謎の存在が示唆されている。正体こそ明かされないものの、「黄金の旅路」というワードが出ている。
- 2021年後期CM
2000年ジャパンカップを元にした第3・4弾と1999年有馬記念を元にした第5弾のCMにて、キンイロリョテイとはデザインが異なるもののステイゴールドと思わしきモブウマ娘が登場。それもゲーム内に登場するどのモブとも異なるカラーリングである上に背中のデザインやリボンのような装飾、どこか威圧感ある吊り目など明らかにただのモブとは思えない待遇がされている。
- メインストーリー5章
この章では1998年天皇賞(秋)を元にしたレースに真っ黒な影のウマ娘が登場するのだが、その中の10番・2番人気の「小柄なウマ娘」がステイゴールドを思わせる要素を持っている。ステイゴールドは実際のレースでも枠が10番、着順は2着であり、(性格はさておき)彼の戦績を思わせる「くじけぬ精神」と自身の子であるナカヤマフェスタがサポカで持っている「決死の覚悟」を所持している。
また、宝塚記念のイラストでは、サイレンススズカとエアグルーヴの間に黒髪のウマ娘が挟まっている。エアグルーヴのいちから考えるとイラストはゴール版前のものになり実際のレースと合わせるとこの娘はステイゴールドになるが、勝負服の色は第4コーナーでスズカの後ろに控えていたテイエムオオアラシと一致するため、このイラストは両場面を合わせたものと推測されている。
- キタサンブラックの夏合宿
なんとキタサンブラックのシナリオでも登場。史実においては血縁や年代としてはほぼ関係はないものの、ヒーロー列伝ではどちらも「愛された」ことがフィーチャーされている。ウマ娘としてゲーム内で言及されるのはこれが初。話によると、長年レースで勝ちきれないながらも注目を集め、およそ5年を掛けて遂にG1を勝った時には大騒ぎになったという。その愛されっぷりは現実さながらに凄まじいものらしく、この場面ではゴールドシップとナカヤマフェスタが登場しているが、ゴールドシップに関しては感動でズビズビに泣いたという普段の彼女からは考えられない様子だったことが語られている。本人は、トゥインクル・シリーズのことを長い旅のようと後輩たちに話している。
キンイロリョテイの存在そのものもそうだが、サイゲームズとしてもステイゴールドは何としても実装したいウマ娘の一人であることが窺える。
人気と余談
上記の通り史実のレースを反映して多くのGⅠレースで上位に食い込んでおり、(おそらくは大人の事情で)実在馬名を持つキャラクターとして登場できないことを惜しむ声が多い。
投稿されている画像の殆どは、この一介のモブに人気競走馬ステイゴールドのイメージを重ね合わせたものである。
後に漫画「ウマ娘 シンデレラグレイ」に同じく実在馬名を持たないが、モブではなく他のライバル達と同格に扱われるメインキャラクターとしてディクタストライカが登場している。
こちらの元ネタはサッカーボーイと思われ、ステイゴールドから見て同じ馬主(社台レースホース)の先輩かつ伯父に当たる。
競走馬「ステイゴールド」
愛さずにいられない。
時代に新たな最強馬が生まれるたび、いつも果敢に挑んでいくあなたの姿がある。
黒鹿毛に輝く小さな身体を力いっぱい弾ませて、最後の直線にすべての勝負を懸けて、
先頭でゴールを駆け抜ける一頭がどの馬だったとしても、
あなたのその姿にたくさんの声援が送られるだろう。
ステイゴールド、もう誰もがあなたのことを、愛さずにいられない。
- JRA「ヒーロー列伝」より
元ネタとされるステイゴールドは、父サンデーサイレンス、母ゴールデンサッシュ、母父にディクタスを持つ1994年生まれの黒鹿毛の牡馬(97世代)。「ステゴ」の愛称で知られる。
父は日本競馬の歴史を文字通り塗り替えた説明不要の大種牡馬、母は上述の通りサッカーボーイの全妹にあたる良血馬。なのだが、兄サッカーボーイ、父ディクタスともども気性の荒さにも定評があった。繁殖牝馬になった後も種牡馬に噛み付いたりと、かなり凶暴だった。
そこにこれまた気性難に定評のあるサンデーサイレンスの血が入ったわけで……その結果は、まあ、お察しください。
「肉を与えたら食べるんじゃないか?」「とにかく『自分が一番偉い』ということをいつもいつも主張している」「自分のペース、自分のやり方に徹底してこだわり、やりたくないことは頑としてやらない」などと言われるほどに気性が荒いことで有名。
もともとは大人しかったが馴致を始めたら途端に暴れ始め、1998年のジャパンカップではスペシャルウィークに噛み付いたこともある。
その小柄な体格に反しボス馬で、牧場に鹿が侵入すると他の馬が逃げ惑う中ステイゴールドだけは逆に追い回していたという。
また、関係者の証言から勝ちに貪欲だったか疑わしい面も浮かび上がっており、他の善戦マンと異なり、やる気のなさが描かれることもある。
ただウマ娘第10話の元になった1999年天皇賞(秋)ではステイゴールドのタイムもレコードを上回っており(スペシャルウィークとの差は0.1秒)、単に勝負根性が不足していたという意見には反論もある。
競走馬としては中央50戦、GⅠ20戦、重賞36戦をこなし、中でも天皇賞・2大グランプリ・ジャパンカップを3年間欠かさず出走するという異常なまでの頑健さ・息の長さが持ち味。海外遠征の関係で2001年の春天や有馬記念は出走しなかったが宝塚記念、秋天、ジャパンカップは普通に出走していた。
デビュー戦から善戦の日々
1996年12月の新馬戦でデビューするがなかなか勝てず、初勝利は翌年5月の未勝利戦。
その後は500万下のすいれん賞、900万下の阿寒湖特別と順調に勝ち鞍を上げ、10月のGⅡ京都新聞杯で重賞に初挑戦するが、結果はマチカネフクキタルの4着。
そこから長らく重賞レースでは善戦するも勝つことが出来ず、長らく「主な勝ち鞍:阿寒湖特別(900万下)」の日々が続く。この事からネット上ではステイゴールドを指して「アカン子」と引っ掛けて「阿寒湖」と呼ばれることもしばしば…
とはいえ、コンスタントに出走しては掲示板入りしてその分の賞金を得ていたため、勝ちに恵まれない日々を送りながら約5億5500万円を稼いでいる。
そして、遂に2000年5月のGⅡ目黒記念にて重賞初勝利。以後はGⅠの勝利を目指すが、この年は世紀末覇王ことテイエムオペラオーが無双状態。G1の勝ち鞍を席巻され、ステイゴールドも鞍上が目まぐるしく変わった影響か、どれもこれも勝つことが出来なかったばかりか目黒記念以降2、3着に入ることもできなかった。
あるときから「誰が勝とうと2着、3着はステイゴールド」と誰もが口ずさむようになり、当り馬券を狙う競馬ファンからは人気が出る物の、ステイゴールドを勝たせようと燃えていた当時の厩舎は苦い思いをしたのだとか…
ちなみにジャパンカップでは後述のドバイにも出走したファンタスティックライトが参戦していたが、このレースではやる気のない逃げを打って超スローペースのレース展開を作り上げており、デットーリ騎手のコメントから推察するに間接的にオペドトウのワンツーフィニッシュに貢献したようだ。
世界のステイゴールド
そして2001年、馬齢の表記が変わったことで2年目の7歳馬シーズンを迎えたステイゴールド。同世代はおろか98世代の面々も軒並み引退した中、衰えを全く感じさせず日経新春杯で勝利を収め、陣営は勢いに乗って当時国際GⅡ競争であったドバイシーマクラシック(現GⅠ)への挑戦を発表。
最もその実情はドバイWCに挑むトゥザヴィクトリーの付き添いポジで、「ついで」「おまけ」といった感じだった。なおこれによりステイゴールドの戦歴が海外の競馬関係者にも知られたのだが、そのときの反応は「ステゴは置いといて、テイエムオペラオーって馬は一体何なんだよ」というものだった。まあともかく、GⅡとは思えない錚々たる面々が揃う魔窟に身を投じることになる。
本番では輸送による疲弊により、元々小さな体がさらにガリガリに痩せて400kgあるかないかという誰が見ても絶不調の状態で参戦することになり、勝利や善戦はおろか、最後まで走りきれるかどうかの心配をされる程だった。
しかし、そのレースでは世界王者ファンタスティックライトを驚異の末脚で差し切り一着。
奇しくもこの日はステイゴールドの誕生日であり、海外重賞勝利は最高の誕生日プレゼントとなった。
帰国後は休養を挟み、宝塚記念に挑戦するがメイショウドトウの悲願の勝利の前に阻まれる。続く天皇賞(秋)ではアグネスデジタルの7着、ジャパンカップではジャングルポケットの4着とGⅠの勝ち鞍を取ることは出来ずにいた。
このままステイゴールドはGⅠを勝てずに終わるのか?誰も彼もが思っていた。
なお、ドバイSCの後に種牡馬入りが予定されていたが、ただでさえ父SSの種牡馬を沢山抱えている上にアグネスタキオンが種牡馬入りして売却を検討、しかし話が纏まらずそのまま現役続行となったという逸話がある。
黄金の旅路の終わりに
そして迎えた12月、ステイゴールドは有馬記念には出走せず、香港の沙田競馬場で行われる国際GⅠ競走・香港ヴァーズへと参戦。陣営はそれと同時にこのレースを持ってステイゴールドの競走馬引退を表明。泣いても笑ってもこれが最後のGⅠ挑戦となった。
そして本番、現地にて付けられた現地表記の馬名は「黄金旅程」。まるで長い旅の結末を予感させる馬名に、人々は心を躍らせた(ただ、現地の人々にはあまり語感が良くなかったせいでこの呼び名は好まれなかったらしい)。
鳴り響くファンファーレ、各馬収まり開くゲート。ステイゴールドは一番人気に推される。
ステイゴールドは中段に付けてレースを進める。だが先頭集団はエクラールが逃げを打ち、ハイペースかつ正確無比のラップで惑わしレースを進めてゆく。
終盤で2番手集団に上がってきたステイゴールド。しかし、先を行くエクラールは既にセーフティーリードの距離を確保しており更に突き放していく。ついでにステイゴールドは今までの左へヨレる悪癖を徹底的に矯正していたのだが、今度は右にヨレた。
勝てないのか…?やはり勝てないのか…?誰もがそう思った。しかし…
奇跡は起こった!!
残り300m、大きく離された2番手集団を抜け出し、ステイゴールドは前に駆け出す。蹄鉄が落ちたのにも構わず、驚異の末脚でエクラールとの差を縮め、ゴール寸前で遂に並んだ!
そしてアタマ差でエクラールをかわし、見事に一着!ステイゴールドと3着インディジェナスとは6と3/4馬身にも及ぶ開きがあった(ここでの着差は全て1位との差)。
鞍上の武豊は後年、ディープインパクトは飛んでいると例えたが、ステイゴールドは背中に羽が生えたようだったと例えている。
その猛追ぶりの凄まじさは、ラジオ日本の加藤アナウンサーが放った実況にも現れている。
「残り300m、しかし前まではまだ5馬身ある、200を切った! さあステイゴールドがくる! ステイゴールド追ってくる! ステイゴールドくる! 前まではまだ3馬身ある! ステイゴールド! ステイゴールド! 差し切れ! ステイゴールド! ステイゴールド! エクラール! ステイゴールド! ステイゴールドぉ! 差し切ったぁ!」
ゴール前で皆がデッドヒートしている残り300mを絶望的距離で引き離された状況から一気に追い上げるステイゴールドの姿に、もはやアナウンサーとしての公平さを失って実況ではなく応援をしてしまう。最後の展開はもはやステイゴールドの連呼に申し訳程度のエクラールが混じっているという有様で、言い訳しがたいほどステイゴールドに熱が入っている(まあこれに限らず海外遠征の実況では多少日本馬を贔屓するのはよくあることだし、このレースに出走していた日本馬はステイゴールド一頭だけなので特に批判されることもないが)。
英語実況もエクラールが実際は3位以下を更に突き放しているにも関わらず「Stay Gold's lifting!Ekraar is stopping!(ステイゴールドが飛んでくる!エクラールは止まっている!)」と実況してしまうほどの劇的なものだった。
なお、エクラールの鞍上はファンタスティックライトと同じランフランコ・デットーリ騎手で、彼は武豊からステイゴールドがこれで引退だと聞き「ユタカは寂しいだろうけど、私にとっては朗報だ」と答えた。また何の因果か、エクラールも後の引退レースがGI初制覇となった。
ステイゴールドは最後の最後でGⅠの勝ち鞍を、そして日本馬としても初の国際GⅠ競走の勝ち鞍を激戦の末に取り、黄金の旅路は大団円で幕を下ろした。
帰国後はそのまま種牡馬入りする予定だったが、JRAからの要請もあり急遽京都競馬場で引退式が行われることとなった。当日は香港ヴァーズで着用したゼッケンを付けて登場し、馬名の元となったスティーヴィー・ワンダーの「ステイ・ゴールド」が流れる中、詰めかけた大観衆に別れを告げた。
この楽曲は「The OUTSIDERS(ならずものたち)」という映画のテーマソング。道を外れて町中を屯し、しかし本物の悪党にもなりきれない子供たちが、暮れなずむ夕日を見つめながら過去の思い出や今おかれた現状、そして未来への予感と不安を寂しげに呟く歌である。
追憶と哀愁たっぷりに歌い上げるスティービーの甘い声は、同世代達に揉まれ次々とターフを去って行くところを目の当たりにしながらも、がむしゃらにただひたすら走り続け、最後の最後の本当の最後に栄光を勝ち取ったステイゴールドの一生を鮮やかに讃えているようにも聞こえてしまう。
But can it be when we can see so vividly a memory
(僕らはとても鮮明に覚えていられる、けれども)
And yes you say so must the day too, fade away
(そうさ、君は言うんだ、「すべては過ぎてしまう、一日の終わりのように」)
and leave a ray of sun
(「一筋の閃光だけをのこして、沈んでいく太陽のように」)
so gold
(「その光が、どれほど黄金に輝いていたとしても…」)
続く黄金の系譜
その後は予定通り種牡馬入りする。
当初は期待されていなかった種牡馬としての価値も、香港ヴァーズでの大勝利で評価が急上昇。
海外遠征も含めて50戦を戦い抜いたタフネスに加え、廉価な種付け料(テイエムオペラオーやアグネスタキオンの1/3以下だったそうな)のサンデーサイレンス系種牡馬ということで一躍人気種牡馬に。
特にメジロマックイーン産駒の牝馬と掛け合わせた所謂「ステマ配合」の産駒が活躍を残し、注目を集めた。…性格面ではどいつもこいつもステゴに似たクセ馬揃いになってしまったが。
主な産駒はウマ娘となっているゴールドシップやナカヤマフェスタの他に「黄金の暴君」こと三冠馬オルフェーヴルとその兄ドリームジャーニー、「障害競走の絶対王者」こと障害GⅠ9勝を挙げたオジュウチョウサンなどを輩出、また受け継がれたのは単純な強さだけでなく、中には生涯戦績わずか1勝ながら獲得賞金2億円以上を稼いだエタリオウのような馬も存在する。産駒の合計勝数は1000を超え、重賞勝利も100を超えるという大活躍を残している。
だがステイゴールドの種牡馬としての恐ろしさは「牝馬の質に左右されにくい、或いはされない。そして自身の成績と合致しない産駒が発生する」という近代競馬の血統論を真っ向から否定するかのような産駒成績を出す点にある。例としてステマ配合で知られるドリームジャーニーの勝鞍である朝日杯フューチュリティステークスであるが、このレースは2歳限定の芝1600m戦である。つまり典型的なマイル戦であり、早熟傾向の馬かつマイラーが求められるがステイゴールドは晩成型中長距離。そして母父メジロマックイーンは晩成寄りの明確なステイヤーである。2000m戦で勝利するならばともかくマイル戦で、しかも2歳限定G1を勝利するなど血統面で行けば考えられない結果と言えるだろう。無論、勝つために陣営が努力した結果でもあるのを忘れてはならないが。
そして晩年でも母父キングカメハメハの牡馬インディチャンプとステイフーリッシュを輩出したが前者はマイラーであり、後者はステイヤーという同じ母父でありながら適性が逆という、これまた首を傾げるような事態となってしまっている。
因みにこの時点においてドリームジャーニーの母オリエンタルアートは当初繁殖牝馬としてのランクは低く、ドリームジャーニーの成績次第では売却される予定だった。つまりオルフェーヴルは社台が売却予定だった2頭から誕生したことになる。そしてステイゴールドが種付けした繁殖牝馬の多くはやはりランクは低く、なぜこの繁殖牝馬の質でこれだけの勝馬が出てくるのか説明がつかないというありさまである。
元より種牡馬としての期待値が低く、それに合わせたかのように繁殖牝馬の質もディープインパクトやキングカメハメハに比べて明らかに劣るというハンディキャップを背負った状態でありながら、ステイゴールドは気が付けば2022年8月時点でG1勝利馬を計14頭も輩出している。このため、当初はステイゴールドを外部に売却するつもりでいた社台グループは手元に権利を残していたためその恩恵をあずかったこともあり「あの時、危うく売却するところだったんだ」と言い、種牡馬成績に関してもバックアップなく自力でのし上がって見せたことを「奇跡に近い」と称した。
ちなみに、種牡馬としての成功とメジロマックイーン産駒との相性の良さについては、「素晴らしい競争能力と引き換えに脚部不安を抱えることが多い(特にアグネスタキオン等に顕著だった)」というサンデーサイレンス系には珍しい頑健さが、大柄な馬体故にやはり脚部不安を抱えやすいメジロマックイーン系牝馬の欠点を補い合った結果と言われることが多い。
産駒傾向としては芝に非常に強い一方、ダート路線ではパワー不足で活躍できる産駒が少なかった……と言われているが、三冠馬オルフェーヴルが「ダートが本来の主戦場だったのでは」などと言われる上、地方でも数多くの勝ち星を重ねているため重賞勝ちは難しくとも馬主孝行な成績を残した馬は数多く存在している。
特にタフネスに関しては、4~5歳で引退する競走馬が多い中で、平然と6~7歳まで大過なく一線で走っている産駒が多いことからも窺える。また産駒自身が本格化を迎える前に繁殖の都合で引退する例も散見されており、それでいながらクラシック戦線でも活躍する戦闘力を誇るなどその成長曲線は異質の存在と言える。
(5歳で引退したオルフェーヴルも、引退後に一回り体が大きくなって「全盛期はこれからだったのか」と関係者が頭を抱えたというエピソードがある)
その代表格が、中山グランドジャンプ5連覇を成し遂げた『100年に1頭の障害馬』ことオジュウチョウサンであろう。
かくして、「無尽蔵のスタミナ」「パワーとスピードを両立させた競走能力」「長年の競走生活でも衰えや故障の少ない頑丈さ」「自分でレース運びを判断できる賢さ」「見栄えの良い雄大な馬体」「独特の感情表現であるディクタスアイ」、そして「マイルール全開のフリーダムすぎる気性」と、なんかもう両親から色んなものを受け継ぎまくった集大成として生まれたのがゴールドシップということになるのだろうか。
ちなみに、メジロマックイーン系以外ではダンジグ(ダンチヒ)系牝馬との相性も良く、こちらはフェノーメノ、ナカヤマフェスタ、シルクメビウスらが代表として挙げられる。
子供たちが輝かしい成績を残していく中、ステイゴールドは2015年2月5日に種付けを終えた後に容態が急変。
一度落ち着き馬房へ戻るものの、再び苦しみ始めてそのまま倒れ、永遠の眠りについた。21歳没。
死因は大動脈破裂だった。
早世することが多いサンデー産駒としては長めとはいえ競走馬の平均寿命よりやや早く、今後も期待される中での突然の死であった。
この時、ステイゴールドは最期の瞬間まで『人間に弱みを見せない』という自身に課したルールを頑なに守り続けたらしく、獣医師は『本当に強い子でした』と語っている。
その僅か1ヶ月後、ドリームジャーニーとオルフェーヴルの兄弟を産んだ『ステイゴールドの正妻』オリエンタルアートが亡くなる。ステイゴールドとの間に設けた最後の仔を出産して3日後の出来事であり、まるでステイゴールドの後を追うような形での死であった。
彼女なくしてステイゴールドの種牡馬としての大成はあり得ず、またディープインパクトすら三度拒んで彼に三冠馬をもたらし、そしてステイ以外の種牡馬に種付けされる事を拒むかのように彼の旅路に付いて行ったオリエンタルアートの墓には、向こうの世界でまた彼に出逢えるよう祈りを込められたのか、ステイゴールドの遺髪が納められている。
現在は産駒も繁殖に入っているものが多く、サンデーサイレンス父系としてはディープインパクトと双璧を為すほどの存在感を見せている。
ステイゴールドは天国より子供たちや、ユーバーレーベンやメロディーレーンなどの孫が進む黄金の旅路の先を見つめている。
なお、リーディングサイアーは種牡馬デビュー同期のディープインパクトがず~っと1位に君臨し続けていた(2011年のみ1位キングカメハメハ、2位ディープインパクト。こちらも以降ず~っと2位に君臨)ので1回も獲れなかったというオチがついている。
こいつらに次いでの3位を二度(2012年、2017年)獲っており、死去から5年経った2020年に14位になるまでずっと一桁順位をキープし続けていたところまで含め、ここでも彼らしいというか何というか……
そして2021年には孫の1頭であるオルフェーヴル産駒マルシュロレーヌが「他の馬の付き添いポジで海外遠征し、オマケ扱いでレースに出たと思いきや大金星を上げる」という祖父のドバイ遠征そっくりなことをやり話題になった。
しかもその舞台がアメリカの最強牝馬決定戦ブリーダーズカップ・ディスタフであり、日本調教馬による海外ダートGI初制覇というとんでもない偉業である。
ついでにレース後のドヤ顔(のように見える表情)にステゴの面影を見る人もいた。
そして2022年。事実上のラストクロップにあたる世代の1頭ステイフーリッシュが突如として覚醒。世界の名だたるトップステイヤーたちが集まったサウジカップレッドシーターフハンデキャップで後続を突き放す圧勝劇を決め、更にステイゴールドも勝利したドバイの地で開かれたドバイゴールドカップでゴドルフィンが有し、5戦無敗を誇る新進気鋭のステイヤーであるマノーボを撃破し海外重賞2連勝を飾る。
社台レースホースの勝負服を背に乗せたステイゴールドの息子が、ゴドルフィンの勝負服を背負った馬を差す姿は、まさにステイゴールドの再来と言わしめるほどのものだった(そして案の定ディクタスアイも披露した)
果たしてステイゴールドが切り拓いた旅路はどこまで続いて行くのだろうか……?
これからも子孫たちの活躍にますます目が離せない。
ウマ娘ファンたちの期待
ウマ娘のファン間では、元ネタとなるステイゴールドのまるでアニメか漫画のような活躍から「実名で出れないのがすごく惜しい」、「戦績だけで劇場版アニメが作れそう」など感嘆に溢れた意見が出ているという。
Pixivでも、ゴールドシップやナカヤマフェスタ、彼の産駒を模したオリジナルのウマ娘たちと共にキンイロリョテイが一緒に描かれているイラストも多い。
ただし、アプリでのプレイアブルとしての実装は「活躍した期間が長くて出走レースも多い上に、海外レースが実装されていない」ことから、現状では非常に難しいという見方が強い。
まずは名前の件をクリアしたうえで、サポカでの実装が待たれる。
尤も、実装された暁には「ステマ配合」としてマックイーンの娘たちに1人ならず複数人手を出してる点をどう描写されるのかは楽しみにも思えるが。
完全な余談だが、ウマ娘のマックイーンがあんだけつんつるてんなのに対して、ゴールドシップがパーフェクトボディな事を受けて、「ウマ娘世界におけるゴルシの豊満因子はリョテイ側から来たのではないか?」という予想をする者もいるとかいないとか…
……なお、前述の関係者の発言のみならず、競走馬生活ワーストの体調で世界最高レベルのライバル達相手に勝ったドバイシーマクラシック、引退レースでようやく見せた末脚(その後騎手を背に5分以上暴れられる余力を見せた)、そして産駒の大暴れっぷりから「現役時代はサボってばっかで真面目にレース走ってなかったんじゃね?」などとファンからは囁かれる。
特に散々関係者を悩ませた斜行癖は「ヨレれば騎手が追えなくなって楽できるからじゃないか?」「香港ヴァーズで勝てたのはヨレた先に内ラチがあって真っ直ぐ走るしかなくなったからじゃないか?」などという意見もある。とは言え「手を抜いていた」からこそ、6年間で50戦ものレースを大きな故障もなく走り抜く事が出来たのではないか?という説もある。
その辺も踏まえてか、二次創作においては「実力はあるがマイペースの気分屋」「傲岸不遜にして唯我独尊な俺様気質」「すぐに手や足(+噛み付き)が出る暴れん坊」「モチベーションがレースや勝利・ライブに向かっていないサボり魔」といった問題児である一方、モデルの種牡馬実績からか「トレーニングやレースについてはトレーナー顔負けレベルの知識・見識を持ち、意外と面倒見も良い」「ねこだいすき(※史実です)」といったキャラで描かれることが多い。
また、ゴールドシップにとっては史実での血縁関係や「これでも仔の中では気性がマシな方」という声から、数少ない『全く頭の上がらない(怖くて下手にイジれない)相手』という力関係で描かれることが多い。
関連タグ
リョテイさん:キンイロリョテイを主人公にした二次創作漫画。
元ネタの馬の血縁者及び血縁者がモデルと思われるウマ娘たち
イクノディクタス(ウマ娘)-母親であるゴールデンサッシュの「腹違いの姉」で「母方の従姉妹」にあたる。また、メジロマックイーンの種付け相手でもある。
キングヘイロー(ウマ娘)-ステイゴールドの父方の従兄弟にあたる。
ディクタストライカ(ウマ娘)-ウマ娘シンデレラグレイに登場したウマ娘。
モデルが母親の全兄(両親ともに同じ兄)であるサッカーボーイと思われる。なお、ステイゴールドとサッカーボーイは初対面で互いに全力で威嚇し合っていたらしい。
元ネタの馬の子孫であるウマ娘たち
ゴールドシップ(ウマ娘) ナカヤマフェスタ(ウマ娘)‐元ネタ同士の血縁上では息子らに当たる存在。しかし大人の事情もあってかウマ娘内公式ではまだこの二人と対面したことはない。
ちなみに馬の方のフェスタと馬房が隣だった時があり、生前に使っていた馬房は現在、ゴルシが使っている。
元ネタの馬と対戦経験のあるウマ娘たち
98世代より先にデビューし、後に引退(96年冬~01年冬)と活動期間が非常に長いため対戦した馬はかなり多い。
黄金旅程の名の通り、90年後半を代表する名馬たちと戦いを繰り広げ、栄枯盛衰の歴史をともにした。
マチカネフクキタル(ウマ娘)…同い年で菊花賞馬。最初に立ちはだかったライバルと言える。
サイレンススズカ(ウマ娘)…同い年で同じサンデーサイレンス産駒。アニメでも史実と同様一着争いを行った。また、意図的なのか偶然なのか目の色が同じ緑系である。
温和な気性ながら『先頭』に拘るレースに対する対照的なスタンスや、エルコンドルパサーをして「影を踏むことすら出来なかった」とまで言われた本格化以降に0.1秒の勝負にまで迫ったこと、
そして『沈黙の日曜日』において二着に入っていることから、特に因縁の深い相手とされることが多い。
ちなみにタイキシャトル(ウマ娘)も同期だが、こちらは距離適性の違いから対戦する機会は無かった。
スペシャルウィーク(ウマ娘)…後少しのところで抜かされたり、レース中に噛み付いたりなど、実はレースにおいてはスズカより因縁がある。また、戦った回数も7回と多い。また、この子も同じサンデーサイレンス産駒でスペは1歳下。
その他、対戦経験のあるウマ娘たち
ナリタトップロード(ウマ娘)…2001年の京都大賞典ではオペラオーとの叩き合いの最中に外側に大きくヨレたことで2頭の間に挟まれる形になったトップロードが驚き、その鞍上・渡辺薫彦騎手を落馬させてしまうという大事故一歩手前の事態をやらかし、このときの鞍上・後藤浩輝騎手は激怒したオペラオーの馬主に激しく詰め寄られることとなった(ちなみにレースはオペラオーに先着こそしたものの当然ながらステイゴールドは失格となり、後藤騎手も騎乗停止処分を受けている)。
そのため、ウマ娘的にも相性が良くないとされることが多い。
ちなみに史実ではサッカーボーイ産駒であり、血縁関係的には従兄弟同士になる。
アグネスデジタル(ウマ娘)…対戦しただけでなく、ステイゴールドと共に香港へ遠征した戦友の1頭で、香港カップを勝利した。
対戦経験は無いが関わりの多いウマ娘たち
メジロマックイーン(ウマ娘)…『ステマ配合』の相方。関係としては姑になるためか、産駒たち(をモチーフにしたウマ娘)の破天荒な行動や育成方針に対するツッコミ役になることが多い。余談だがステイの父サンデーサイレンスと引退牧場ではお隣さんで、恋人呼ばわりされるほど仲がよく、オルフェやゴルシは「孫の代で成就した恋」と言われることも…
あまり話題にならないが実は元馬は(時期は違うが)同じ池江厩舎だった。
オリエンタルアート(ウマ娘)…ドリームジャーニー、オルフェーヴルの母で、『ステマ配合』を世に知らしめたもう一方の功労者。多くの産駒を遺したことや、アートが毎年ステイに会う時は妙にテンションが高かったこと、アートがステイの後を追うように翌月亡くなったことから、しばしば正妻扱いされる。史実では00世代の競走馬としてダートを中心に23戦3勝。因みにステイゴールドが2001年の日経新春杯を勝利した際、同じ日に同じ競馬場でダートを走り勝利を収めているという縁がある。主戦騎手は池添謙一氏で、後にドリームジャーニーとオルフェーヴルの主戦騎手も務めることになる。
ポイントフラッグ(ウマ娘)…こちらはゴールドシップの母で、さらに母方の血統は辿っていくとクレオパトラトマス(月城)や星旗といったとんでもないところへたどり着くモノホンの御令嬢。気性は大人しく、また現役時代はアートとも対戦歴がある。01世代で競走成績は15戦1勝(2着4回)。騎手を担当した須貝尚介氏は、その後フラッグ産駒ゴールドシップの調教師となった。
シャドウシルエット(ウマ娘)…障害の絶対王者オジュウチョウサンの母。父はシンボリクリスエスとステマ配合以外で最大のホームランをたたき出した。非常に気性が荒くステイゴールドにも勝るとも劣らないほどで、牧場関係者が世話をしようと近づくとすぐさま襲い掛かってくるなどステイゴールドと同じようなことをしていた。オジュウチョウサンはその母の姿を見て、なんと関係者に母親と一緒になって襲い掛かるようになったといい、オジュウチョウサンの気性難はステイゴールド以上に彼女の影響が大きいと言われる。そういった気性だったためかレースには出走しないまま繁殖に入り、以後ステイゴールド。ステイ没後はオルフェーヴルが種付けし続けている。