大阪線
おおさかせん
概要
大阪府・奈良県・三重県に跨がり、大阪上本町駅(大阪市天王寺区)から伊勢中川駅(三重県松阪市)までを結ぶ。路線記号はD。
営業キロ108.9km(実キロ107.6km)は日本の私鉄(第三セクターを除く)路線としては東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)に次いで長い。なお全線複線以上の路線としては日本の私鉄最長である。大阪上本町~布施間は奈良線との方向別複々線となっている。
また、日本最後の鮮魚列車が走っていた路線でもある。
名古屋線ともども、近鉄の標準軌路線ネットワークの根幹をなす路線であり、本路線と名古屋線を直通する名阪特急や伊勢志摩方面へ向かう阪伊特急は近鉄の看板列車的な存在である。
列車ダイヤ
- 特急:基本的に名阪特急が毎時2本、阪伊特急が毎時1本、計3本運行されるほか、一部の時間帯で大和八木~伊勢中川間を京伊特急が1日4往復走る。しまかぜは阪伊・京伊間を1日1往復ずつ。大阪難波発着列車は大阪上本町駅では地下ホームに停車する。
- 特急以外:最西端は大阪上本町駅で、大阪上本町駅では地上ホームに停車する。大阪難波へは乗り入れない。日中、1時間当たりの運行本数は、大阪上本町~名張・青山町・伊勢中川・五十鈴川(いすずがわ、山田線・鳥羽線直通)間の急行が1本ずつ(計3本)、大阪上本町~五位堂・大和朝倉・榛原間の区間準急が3本、大阪上本町~高安間の普通列車が4本、大阪上本町~五位堂・大和朝倉・榛原間の普通列車が1本(大阪方計5本)、名張・東青山~伊勢中川間の普通列車が1本ずつ(三重方計2本)。朝と夜(18時台~20時台)までは、急行の代わりに快速急行(朝は大阪上本町発1本を除き大阪上本町行きのみ、夜は大阪上本町発のみ)、区間準急の一部の代わりに準急が運行され、運行本数も変わる。大阪上本町~河内国分間の普通列車が増える。
車内放送では、「普通」が「各駅停車」と称される。
運行両数は4,6,8,10両(急行は4両と6両のいずれか。名張以東の普通列車には2両編成も存在)で、列車の増解結が高安、名張、青山町で行われる。これはホームの長さの制限が絡んでくるためである。
臨時列車・臨時停車
大阪線では、受験シーズンや行楽シーズンに臨時列車の運転や定期列車の延長運転が行われたり、臨時停車したりする。停車駅の半数以上が6両編成まで対応するホームを設けているため、6両編成で運転されることが多い。
- 試験関係: 近畿大学で受験や資格試験などが行われる場合は、長瀬駅に急行・準急・区間準急が臨時停車する場合がある。大阪教育大学で受験や資格試験などが行われる場合は急行が大阪教育大前駅に臨時停車する場合がある。
- 行楽関係:2018年に急行の正式停車駅となるまで、長谷寺駅に、春のボタン祭りと秋の紅葉シーズンに一部時間帯で急行の臨時停車を行っていた。過去には快速急行、区間快速急行(現廃止)も停車していたが近年は行われていない。
- イベント関係: 五位堂駅に近い五位堂検修車庫で11月に行われる「きんてつ鉄道まつり」が2012年から高安駅すぐ隣の高安検修センターでも行われているため、来場者の利便性を考慮し、急行が高安駅に臨時停車する。
- 宇陀市はいばら花火大会: 2008年以降の8月は、奈良県宇陀市で行われる「宇陀市はいばら花火大会」への観客向けに、大会終了後に榛原発五位堂行き臨時普通列車が運転される。
- 伊勢神宮関係: 正月3が日には、伊勢神宮への参拝客のために臨時の特急や快速急行が運転される。大みそかから元旦にかけて、大阪難波発着の特急と京都発着の特急が大和八木駅で併結・切り離しが行われる。
特急以外の列車は大阪難波に乗り入れない
特急以外の大阪線列車は大阪難波へは乗り入れない。
これは路線容量の問題で、近鉄難波線は基本的に近鉄奈良線の延伸であるために、大阪線に直通する列車を設定すると、奈良線の路線容量を圧迫してしまうため。
上本町駅自体が大阪線の始発駅として建設され、7面6線の頭端式ホームなため、難波線延伸時にわざわざ地下に2面2線のホームを設置した。
同じ理由で近鉄大阪線と阪神なんば線の相互直通運転は、定期列車では行われていない。
また、山陽電鉄とは神戸高速鉄道を介して線路は繋がり、近鉄線から山陽電鉄まで直通する列車は提案されているものの、未だに実現していない。2009年時点では阪神1000系と阪神9000系が両社へ直通出来るが、近鉄から山陽へ直通した場合、長距離トイレ無しオールロング地獄となってしまう。
全線複線化
大阪線は大阪上本町 - 桜井間が大阪電気軌道、桜井 - 伊勢中川間が大軌の子会社である参宮急行電鉄の手で昭和初期に建設された路線である。参急が建設した区間のうち名張 - 伊勢中川間の41.7kmが単線だった。
山岳線区だったため建設当時は仕方なかったのだが、さすがに戦後になると輸送力のボトルネックになってしまった。
そのため、単線時代の大阪線のダイヤを決めるにはまずこの単線区間のダイヤを決めてからほかの区間のダイヤを組んでいたという。
戦後近鉄はこの単線区間の複線化に乗り出し、1959年12月23日の美旗 - 伊賀神戸間を皮切りに、伊賀上津 - 伊勢中川間の17.9kmを除く区間が1967年までに複線化を完了したが、難工事が予想された青山トンネル付近は手が付けられずにいた。その単線区間が輸送力増強のネックとなっていたため、全線複線化計画が1970年に浮上する。
全長3,432mの青山トンネルの西側に旧・西青山駅、東側に旧・東青山駅があり、列車同士が行き違えたほか、東青山から榊原温泉口(1965年までは佐田)にかけては北へ大きく迂回し、垣内(かいと)西・垣内東信号所が列車交換用にあった。
1971年10月25日、特急電車同士の正面衝突事故が発生した。15時37分頃(発生21分前)、上本町発名古屋行き特急114列車(12200系12202F+12000系12001Fの4両)が青山トンネル内でATS故障により停止した。
運転士がATS解除操作をするもブレーキが緩まず、車輪に手歯止めをはさみ、ブレーキ装置からブレーキシリンダーにエアーを供給するコックをカット、ブレーキシリンダーのエアーを全部抜く措置を行ったが、東青山駅から来た助役が手歯止めを外してしまい、運転士は供給コックのカット解除を怠り運転室に戻ってブレーキを解除した。結果、114列車は走り出してしまい、33‰の下り勾配をブレーキが利かないまま暴走。114列車内では乗務員が乗客に後ろの車両に避難するよう指示した。東青山駅を通過し15時58分頃、東青山 - 榊原温泉口間にあった垣内東信号所の安全側線を120km/hで突破して脱線転覆、後ろの2両が総谷トンネル入口横の壁に激突して止まったが、前の2両が横転した状態で総谷トンネルに入った。直後に対向してきた賢島発難波・京都行き特急1400N/1400K列車(12200系12226F+10100系C編成10116F+18200系18205Fの7両)が異変に気付いた運転士が掛けた非常ブレーキでも間に合わず、両特急電車が正面衝突した。
これにより25名(両列車の運転士・車掌と114列車に乗っていた東青山駅助役の計5名と乗客20名)の死者、224名の重軽傷者を出す大惨事となった。
その後の調査で、ATS故障の原因はATS電源装置のヒューズの締め付けナットの緩みからくる接触不良によるものと判明した。
これを重く見た近鉄は、予定されていた大阪線の全線複線化を前倒しした。まず伊賀上津 - 三軒家信号場間を複線化し、事故区間を含む垣内東信号所 - 榊原温泉口間に新総谷トンネルと新梶ヶ広トンネルの2つの複線トンネルを開通させ、大三駅までの区間を先行して複線化した。そして1975年11月23日、複線トンネルとなる全長5,652mにおよぶ日本の大手私鉄最長トンネル・新青山トンネルが完成、西青山駅も新青山トンネルの西側出入り口付近、東青山駅も垣内トンネルの東側出入り口付近に移転した。これにより大阪線全線の複線化が完成した。この区間は道路とすべて立体交差している。
駅と停車駅一覧
◎:停車、レ:通過、※:一部列車が停車
高安発着列車は区間準急ではなく準急。
普通列車は各駅に停車するため省略。
●駅番号D28〜D38は欠番。これは京都駅を基準にしていることによる。なお京都駅からは、新ノ口連絡線を介して特急が大阪線へ乗り入れてくる。
●近鉄難波線の駅も掲載。
駅番号 | 駅名 | 読み | 区準 | 準急 | 準急 | 急行 | 快急 | 特急 | しまかぜ | 乗り換え路線 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A01 | 大阪難波 | おおさかなんば | ※ | ◎ | ||||||
A02 | 近鉄日本橋 | にっぽんばし | レ | レ | ||||||
| 大阪上本町 | おおさかうえほんまち | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | OsakaMetro谷町線/千日前線(谷町九丁目駅) |
| 鶴橋 | つるはし | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
| 今里 | いまざと | レ | レ | レ | レ | レ | レ | レ | |
| 布施 | ふせ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | レ | ※ | レ | 近鉄奈良線 |
D07 | 俊徳道 | しゅんとくみち | レ | レ | レ | レ | レ | レ | レ | JRおおさか東線 |
D08 | 長瀬 | ながせ | レ | レ | レ | レ | レ | レ | レ | |
D09 | 弥刀 | みと | レ | レ | レ | レ | レ | レ | レ | |
D10 | 久宝寺口 | きゅうほうじぐち | レ | レ | レ | レ | レ | レ | レ | |
D11 | 近鉄八尾 | やお | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | |
| 河内山本 | かわちやまもと | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | 近鉄信貴線 |
D13 | 高安 | たかやす | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | |
D14 | 恩智 | おんぢ | ◎ | レ | レ | レ | レ | レ | ||
D15 | 法善寺 | ほうぜんじ | ◎ | レ | レ | レ | レ | レ | ||
D16 | 堅下 | かたしも | ◎ | レ | レ | レ | レ | レ | ||
D17 | 安堂 | あんどう | ◎ | レ | レ | レ | レ | レ | 近鉄道明寺線(柏原南口駅) | |
D18 | 河内国分 | かわちこくぶ | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | ||
D19 | 大阪教育大前 | おおさかきょういくだいまえ | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | ||
D20 | 関屋 | せきや | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | ||
D21 | 二上 | にじょう | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | ||
D22 | 近鉄下田 | しもだ | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | JR和歌山線(香芝駅) | |
D23 | 五位堂 | ごいどう | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | ||
D24 | 築山 | つきやま | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | ||
D25 | 大和高田 | やまとたかだ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ※ | レ | JR桜井線/和歌山線(高田駅) | |
D26 | 松塚 | まつづか | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | ||
D27 | 真菅 | ますが | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | ||
| 大和八木 | やまとやぎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ※ | ◎ | 近鉄橿原線 | |
D40 | 耳成 | みみなし | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | ||
D41 | 大福 | だいふく | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | レ | ||
D42 | 桜井 | さくらい | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | JR桜井線 | |
D43 | 大和朝倉 | やまとあさくら | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | ||
D44 | 長谷寺 | はせでら | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | ||
D45 | 榛原 | はいばら | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ※ | レ | ||
D46 | 室生口大野 | むろうぐちおおの | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | ||
D47 | 三本松 | さんぼんまつ | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | レ | ||
D48 | 赤目口 | あかめぐち | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | レ | レ | ||
D49 | 名張 | なばり | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ※ | レ | ||
D50 | 桔梗が丘 | ききょうがおか | ◎ | ◎ | ※ | レ | ||||
D51 | 美旗 | みはた | ◎ | ◎ | レ | レ | ||||
D52 | 伊賀神戸 | いがかんべ | ◎ | ◎ | ※ | レ | 伊賀鉄道伊賀線 | |||
D53 | 青山町 | あおやまちょう | ◎ | ◎ | レ | レ | ||||
D54 | 伊賀上津 | いがこうづ | ◎ | レ | レ | レ | ||||
D55 | 西青山 | にしあおやま | ◎ | レ | レ | レ | ||||
D56 | 東青山 | ひがしあおやま | ◎ | レ | レ | レ | ||||
D57 | 榊原温泉口 | さかきばらおんせんぐち | ◎ | ◎ | ※ | レ | ||||
D58 | 大三 | おおみつ | レ | レ | レ | レ | ||||
D59 | 伊勢石橋 | いせいしばし | レ | レ | レ | レ | ||||
D60 | 川合高岡 | かわいたかおか | レ | レ | レ | レ | JR名松線(一志駅) | |||
| 伊勢中川 | いせなかがわ | ◎ | ◎ | ※ | レ | ||||
山田線・名古屋線直通 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ |
現役車両
特急
急行の各駅停車区間の案内
準急・区間準急・普通電車の本数が激減するために急行が各駅に停まる桜井 - 榊原温泉口間は、2021年現在「桜井までの各駅と・・・」や「榊原温泉口までの各駅と・・・」(共に各駅停車区間)、「桜井から榊原温泉口までの各駅と・・・」(大和八木から大阪側の急行停車駅)と放送し、名張、青山町行き急行の場合、「桜井から名張(青山町)までの各駅です」と放送される。
ただし、駅構内の発車標ではすべての駅を案内・表示(LCD発車標では日本語で2段、英語で3段表示)する。ただし各駅区間に入る桜井以東及びパタパタ表式が残る駅に対しては名張、青山町行き急行の場合は連絡案内も加えて「各駅にとまります」の表示や「榊原温泉口までの各駅」もしくはその先の停車駅が表示される。
ちなみに、2020年までの大阪統括部が管理する区間(西青山〜大阪上本町)の放送では、律儀に桜井〜榊原温泉口間の各駅停車区間も含めてすべての駅を読み上げていた為、大阪上本町駅や鶴橋駅では驚くほど長い放送が流れていた。特に、2018年度から大和朝倉・長谷寺に停車するようになってからの放送は現役の放送で一番長いのではと噂されるほどであった。ただし前述のように2021年以降、「桜井までの各駅と・・・」や「榊原温泉口までの各駅と・・・」と放送されるようになったが、以前から各駅区間であった榛原、名張では「青山町(名張)までの各駅です」と放送されていた。なお、名張と伊賀神戸では伊勢中川以遠行きに限りまだ全駅読み上げが残っている。ちなみに榛原は2018年の時点ですでに「榊原温泉口までの各駅と…」だったようである。なお上り(大阪方面)は名張、伊賀神戸とも2018年の変更に合わせて全駅読み上げから榛原共々「桜井までの各駅と・・・」に変更された。
2020年以降も、赤目口 - 青山町間各駅停車の快速急行は駅構内の自動放送と発車標にて赤目口 - 青山町間すべての駅を案内・表示する。
なお、名古屋統轄部(東青山駅〜伊勢中川)の区間では以前より「榊原温泉口から桜井までの各駅と・・・」の放送が使われている。
車内の自動放送では「桜井から榊原温泉口(もしくは青山町、名張)までの各駅」などと放送する。