概要
ドゥーガル・ディクソンというスコットランドのサイエンスライターが書いた、未来の動物の生態の本である。
以前のアフターマンで、(多分、二十世紀初頭辺りに)人類が絶滅した五千万年後の地球上の生物達を描くという構想で描くという形式をとっていたが、
フューチャー・イズ・ワイルドも同様の構想で、数千年後の氷河期で人類が絶滅したあとの五百万年後、一億年後、二億年後の地球はどうなるかを予想し、CGアニメで表現するという企画付きの作品である。
二億年後は普通の未来の大陸説である、アメイジア、ノヴォパンゲアの両説(両方南極は不動が一般的)とも違う、「第二パンゲア」(全部の大陸が集まる)を採用している。
新恐竜でも、「コアラニッチとパンダニッチを制した、もふもふ恐竜」をやっているのだが、本作では「アザラシサイズのウミウシ」、「あらゆる海の生き物を捕食する巨大なクシクラゲ類」、「陸上をのしのし歩く、8トンのイカ」、「成虫は24時間の命で幼虫の餌となる魚の死骸を探すだけの役目の昆虫」(幼虫は変態して出産)という昆虫、「鳥に変わって空を飛んだ魚類」などなどが多く、哺乳類や爬虫類は少ない。
登場生物
500万年後
氷期により地球全体が乾燥・寒冷化している。哺乳類、鳥類はじめ、現在でも栄えている生物の子孫が多い。
北ヨーロッパ氷原
- スノーストーカー:クズリの子孫。長大な一対の牙を持つ。
- シャグラット:牛ほどまで巨大化したマーモットの子孫。
- ガネットホエール:カツオドリの子孫。体は巨大化してアザラシの様な流線形になり飛べないが泳ぎに優れる。
地中海盆地
アマゾン草原
- バブカリ:南米に生息する猿ウアカリの子孫。最後の霊長類であり、罠で魚を獲るなど高い知能を有する。
- カラキラー:カラカラ(ハヤブサの一種)の子孫。巨大化したことで飛行能力を失い走るのに適した体になるという、恐竜や恐鳥類へ先祖返りしたような生態を持つ。
- ラトルバック:げっ歯類の子孫。体毛が変化した鱗に覆われた体を持つ。
北アメリカ砂漠
- スピンク:地下で暮らすウズラの子孫。真社会性の性質を持つ。モグラではない。
- デザートラトルバック:ラトルバックの亜種。寒さに耐えられるよう体が大きく体毛を残している。雑食性のラトルバックに対しこちらは草食で地下茎を掘って食べる。
- デスグリーナー:昼行性のコウモリ。ラトルバックの穴掘りで巣を壊されたスピンクを襲って捕食する。
1億年後
温暖化により北極と南極の氷は融け海水面が上昇し地表の9割が海に沈む。高温多湿な気候。昆虫はじめとした節足動物などが大型化し温暖な世界で大繁栄している。鳥類は健在だが哺乳類は温暖化著しい環境に適応できず、かなり衰退。
大浅海地
- 紅藻リーフ:サンゴ礁のように「リーフ(礁)」を形成する紅藻類。現代の海藻には無い花のような器官を持ち、動物に蜜を与える代わりに胞子を運ばせる。
- リーフグライダー:リーフに住むウミウシの子孫。幼体時には紅藻の蜜を吸うが成体は肉食になる。
- オーシャンファントム:クダクラゲの子孫。様々な役割を持つ個体が集まって巨大な群体を形成している。
- スピンドルトルーパー:ウミグモの子孫。オーシャンファントムの体内で飼われており、リーフグライダーに襲われた際に体外に飛び出して戦う。
ベンガル沼地
- スワンパス:陸地でも活動できるように進化したタコ。
- トラトン:体高7m、体重120tにも及ぶ超巨大リクガメ。史上最大の陸生動物であり幼体ですらゾウ並みに大きい。
- ルークフィッシュ:放電能力を持つ魚。倒木に擬態し近づいた獲物を電気で仕留める。
南極森林地
- フラッターバード:南極の密林に生息する鳥類のうち最も繁栄しているミズナギドリの子孫の総称。
- ローチカッター:スズメほどの大きさで小回りが利く。
- スピットファイアバード:ローチカッターより少し大きい。外敵に襲われると鼻孔から酸性の熱い液体を噴射する。
- スピットファイアバードモドキ:敵に狙われぬようスピットファイアバードに似た姿に進化した鳥。酸は持たない。
- スピットファイアツリー:樹木。スピットファイアバードは体内で酸を合成するためこの木の雄花と雌花から化学物質を摂取し、木はその行動により受粉するという共生関係にある。
- スピットファイアビートル:肉食性の甲虫。4匹一組で行動し、翅を広げてスピットファイアツリーの花に擬態することでスピットファイアバードを捕らえる。
- ファルコンフライ:巨大なジガバチ。鳥を襲って肉を幼虫の餌にする。
グレートプラトー
- グラスツリー:標高1万mの高原に生息する竹の子孫。綿毛で種子を飛ばす。
- シルバースパイダー:女王を頂点とする社会性のクモ。巣に掛かったグラスツリーの種子を集めてポグルの餌にする。
- ポグル:げっ歯類の子孫で最後の哺乳類。シルバースパイダーの家畜として生かされている。
- グレートブルーウィンドランナー:ツルの子孫。脚にも羽毛を持ち翼として使える。名前の通り体色がすごく青い。
2億年後
全ての大陸が一体化して超大陸となっている。広大さゆえに海から離れた内陸部まで雨雲が届かず多くが砂漠である。超大陸形成にあたっての超巨大火山噴火による大量絶滅後の世界であり、この大量絶滅で生態系上位の動物≒脊椎動物は大ダメージを受けた。特に四足類(両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)は全て絶滅して久しく、一部の魚類や軟体動物などがその後釜におさまっている。
中央砂漠
- テラバイツ:シロアリの子孫。蟻塚は頂上部では太陽光を取り入れて藻類を栽培し、下は地下水のある層まで達するほど深い。群れの中で役割が細かく決まっており、運搬を担当する者以外はみな脚が退化している。
- ガーデンワーム:ゴカイの子孫である環形動物。体内の藻類と共生しており光合成で栄養を得る。テラバイツに藻を狙われる。
- グルームワーム:地下水の中に住む環形動物。主食は硫黄化合物を分解するバクテリア。
- スリックリボン:地下水の中に住む環形動物。他の環形動物を捕食する。
地球海
- シルバースイマー:ネオテニー化した甲殻類。硬骨魚類が消えた海で多種多様な進化を遂げており、クジラほどに巨大化したものから、他のシルバースイマーに寄生するほど小さいものまで存在する。
- フリッシュ:飛行能力と陸上で生活できる体を得た魚類の総称。書籍の表紙を飾る。多様な環境に適応しており、海辺に住むのはオーシャンフリッシュである。
- レインボースクイド:巨大なイカ。体内の3種類の色細胞を組み合わせて様々な色に変化し、擬態や捕食に役立てる。
- シャークオパス:発光器官を持つサメ。光で信号を送りあい群れで狩りをする。
レインシャドー砂漠
- バンブルビートル:甲虫の一種。成虫の寿命はたった1日であり、動物の死骸(主に嵐で打ち上げられたフリッシュ)を見つけるとすでに体内で孵化した幼虫を植え付ける。
- グリルワーム:バンブルビートルの幼虫。幼虫の段階で交尾をし、成虫になるのは雌のみ。
- デザートホッパー:飛び跳ねながら移動する巨大なカタツムリ。体表は水分を逃さないように鱗状になっている。
- デスボトルプラント:肉食植物。根元の部分が落とし穴になっており、内側の毒針で獲物を麻痺させ消化する。また、葉はフリッシュの死骸に似ており、おびき寄せられたバンブルビートルに種子を運ばせる。
北部森林地
- フォレストフリッシュ:森に適応したフリッシュ。爪のある腹鰭で枝をつかみ逆さになって眠る。主食は昆虫。
- テラスクイド:陸上に進出したイカ類の総称。2本の長い触腕と8本の強靭な足を持つ。
- メガスクイド:テラスクイドの中でも最大の種で体重は8tにも及ぶ。雑食性で歩きながら手あたり次第なんでも食べる。
- スクイボン:猿のごとく樹上生活に適応したイカ。知能が高く道具を扱える。
- スリザーサッカー:粘菌の塊。全身で包むように獲物を捕食する。繁殖期にはメガスクイドに食べられることで寄生し別の場所へと移動する。
関連タグ
ドゥーガル・ディクソン:作者。
アフターマン:フューチャー・イズ・ワイルド以前の書籍。こちらはウサギとネズミが多い。
進化予想:本来の意味で。