概要
カタカナ表記の場合、ニンテンドーゲームキューブやニンテンドーDSと違い、ニンテンドウ64である。
名前の由来は本体に搭載されている64ビットCPUより。しかしこのCPUは32ビットモードに対応しており、ほとんどのタイトルでは32ビットで駆動していたのは秘密。
開発時のコードネームは「プロジェクト・リアリティ」。正式名前が決定する前の名称は「ウルトラ64」、ゲームユーザーからは「ウルトラファミコン」と呼ばれていた。
ソフトについては少数精鋭主義をとり、良質なゲームソフトの供給を目指した。
本ハードから韓国を除く全世界で名称が「NINTENDO 64」に統一された。韓国では1997年にヒョンデ電子から「Hyundai Comboy 64」という名称で発売されたものの、アジア通貨危機によるヒョンデ電子のゲーム事業撤退により、ソフトが4本発売されただけで展開を終了した。次世代機から韓国での販売はテウォンC.I.が担うことになる。
性能
CPU | MIPS 64bitRISC R4300iカスタム93.75MHz | 32bitモード対応 |
---|---|---|
GPU | SGI RCP (Reality Co-Processor) | サウンド処理も担当 |
メモリ | Rambus DRAM 4.5MB/9MB(メモリー拡張パック搭載時) | システム・グラフィック共用 |
メディア | ROMカセット 最大容量64MB | 転送速度5.3MB/s |
プレイステーションやセガサターン、PC-FXといった次世代機に比べ大幅に発売が遅れたが、上記3機種と比べ頭一つ抜けた性能を持っていた。
奥行きを計算し、手前のオブジェクトから効率よく描画する「Zバッファ」や半透明処理の「アルファブレンド」、メタルマリオ等に用いられた物体に金属のような反射効果を持たせる「環境マッピング」等当時の家庭用ゲーム機としては先進的な機能が搭載されている。
コントローラにアナログコントローラの「3D(さんでぃー)スティック」を標準装備しており、スーパーマリオ64等で3D空間をより直感的に自由に動き回ることが可能になった。
前世代の覇者であるスーパーファミコンの後継機として巻き返しが期待された。
高い3D描画性能、特徴的なコントローラ、多人数プレイを前提とした設計、ロードの短いROMカセットの採用などが特徴。しかしながらROMカセットは容量あたりのコストが高く、「低コストで大容量なCD-ROMによるムービーを多用した大作RPG」という当時のトレンドに合わず、有力RPGの獲得に至らなかった。
『ファイナルファンタジーVII』がプレイステーションにて発売されたこともあり、ソフト販売各社の多くはプレイステーションに注力。『ドラゴンクエストVII』がプレイステーションにて発売されることの発表に至って趨勢は決し、64は完全にプレステの後塵を拝する結果になり、ゲーム業界のトップシェアひいては主導権をソニーに渡すこととなってしまった。
トップシェアこそ奪われたが、欧米ではスーパーファミコン並みに普及したこともあり、ハード事業としては十分な成功を収めた。ポケモンブームによるゲームボーイの人気再燃とあいまって社としては当時の過去最高益を出している。主力とはならなかったがこの64がハード事業の利益に貢献していたことは確か。
ちなみに任天堂では初めて据え置きハードで本体定価を値下げしたゲームハードで、価格改定は二度行われた。
ソフトは少ないものの、代表的ソフトとしては前述の「大乱闘スマッシュブラザーズ」、「スーパーマリオ64」、「ゼルダの伝説 時のオカリナ」、「ゴールデンアイ007」など。記憶に残るソフトが多く、発売から二十五年以上経ってもいまだに語られることの多いハードである。
任天堂看板タイトルであるスマブラやどうぶつの森はこのハードから生まれた。
2003年、中国向けにiQue Player(別名神遊機)が発売された(ただし、ソフトはダウンロードのみで外観も大幅に異なる)。
2007年、スーパーファミコンと共に修理サービスを終了した。
実はカートリッジスロットで物理的にリージョン判別を行っていた任天堂のゲーム機としては最後となる。分解してカートリッジスロットにある判別用金具を外すと、北米版も挿入できた。
また、マルチタップ無しで多人数プレイが標準で可能になるコントローラーポートを4つ搭載した初のゲーム機である。
ターミネーターパック
「はがさないでください」の下にあるアレ。
一見なんの意味もないように見えるが、実は64に使用されているメモリである。
RDRAMの信号反射を防ぐ重要なパーツでターミネーターパックかメモリー拡張パックを差しておかないとゲームが起動できないようになっている。
いわばパソコンで言うCRIMMに近い。
周辺機器
コントローラ
特徴的な三叉の形。左部に旧来の十字キー、中央に新しい3Dスティック、右部にボタン類を配置する。
3Dスティックはいわゆるアナログスティック(2軸なので3Dではなく2Dなのだが)で、その後プレイステーションのデュアルショックやセガサターンのマルチコントローラーにも取り入れられた。
右表面のボタン類はファミコンから続く伝統のA・Bボタンに加え特徴的なCボタンユニットを追加。単純ボタン数としてスーファミに勝る6ボタンであるとともに、A・Bの2ボタン+4方向指示としても使用できる。右側の方向指示器としての「C」の名はのちにゲームキューブ・New3DSのCスティックに受け継がれる(ヌンチャクのCボタンは…他にいい文字が無かった?)。
中央には伝統のSELECTボタンを排しSTARTボタンのみを配置。中央に1つの赤く丸いボタンは見た目によいアクセントになっている。
左右上面にスーファミから受け継いだL・Rボタン、加えて中央を持つ場合にL・Rの代わりになるよう、背面にアルファベットの最後であり格好良い「Z」の名を持つZトリガーボタンを配置。以降ゲームキューブ・Wii・3DS拡張スライドパッド・WiiU・New3DS・Switchと「Z」の名は受け継がれていく。
また裏面に32ピンの拡張端子を持つことも特徴。コントローラパックなどを接続する。
この特徴的なコントローラは、状況&ゲームシステムによって、以下の3種類の持ち方を使いわける。
左手 | 右手 | |
---|---|---|
レフトポジション | 十字キー | 3Dスティック |
ファミコンポジション | 十字キー | ABCボタン |
ライトポジション | 3Dスティック | ABCボタン |
64のコントローラに装着して使用する。
今で言うメモリーカードのようなもので、容量は256kb(32KB)で123ページ分保存できる。
64のコントローラに装着して使用する。
バイブレータが内蔵されたパックで単4電池を2本使用する。
64のコントローラに装着して使用する。
ゲームボーイのソフトを接続して64のソフトと相互で連動させる事ができる。
ちなみに初めて対応されたソフトは任天堂ソフトではない。
メモリー拡張パック
ターミネーターパックを差し替えることで本体のメモリ(RAM)を拡張することができる。なおドンキーコング64などの対応ソフトでは64に拡張パックを差し込まないと遊ぶことが出来ない。また、64DDも使用する場合も必要である。
だが、拡張パック必須ソフトでなくともフレームレートの安定化や解像度の向上が見込めるソフトも存在する。
なお、後期生産ロットでは「ターミネータパック」ではなく最初からこの「メモリー拡張パック」を搭載していた。
64DD
本体下部に装着する“ディスクシステム”、周辺機器64DDが会員制通信販売のかたちで発売されたが、販売がかなり遅れたこと、その販売形態、ソフト不足などにより64ユーザーにも普及は進まず、約1年後にサービスは終了した。
廉価版
ピカチュウNINTENDO64
2000年7月より国内で発売。64DDの接続に必要なEXTポートが排除されている。
Nintendo Switch online
2021年10月26日に新課金プラン「Nintendo Switch online+追加パック」が追加され、メガドライブと共にNINTENDO64が追加された。配信当初は8作品のみだが、今後も順次タイトルが不定期に追加される予定。
スマブラの参戦が影響したのか、中にはこのタイトルも…。
なお、版権かれこれで困難とされた「ゴールデン007」が奇跡ともいうべきラインナップ入りが発表されたが、なんとCEROレーティングはCERO-Zである。それまではリメイク版含めN64版もCERO-Cだったのだが、2022年になってレーティングが引き上げられる事態に。なお、ベースとなるN64版のパッケージには流血表現を多く含んでいる記述があり、実際のプレイでそうだった為、妥当な措置と言える。
今後は同様の事情を抱える「ディディーコングレーシング」「ブラストドーザー」の動向についても注目されるものと思われる。
なお、「ファミコン」「スーパーファミコン」「メガドライブ」のラインナップの中で、NINTENDO64はコントローラーのキー配置が特殊故に実はジョイコンもしくはPROコンではAボタンBボタンの配置の関係上一際慣れが必要となる。またCボタンユニットは一応右スティックに割り振られているが、CボタンをABXYで再現した使い方もできるのだが操作が特殊である為、スイッチ用N64コントローラーが人によっては必要であるかもしれない。なお、このスイッチ用64コントローラーは振動モーターが内蔵されており、コントローラーパックは挿入できない(挿入部は再現すらされてない)。
余談
- 電源を入れた時点での3Dスティックの位置を中心点として認識するため、スティックを倒したまま電源を入れるとエラい事になる(ちなみに中心点は電源をつけてるときにL+R+STARTボタンでいつでも変えられると公式が紹介している)。
- 64の3Dスティックは使い続けるうちに中の軸受けが削れていき最終的にスティックの中心がブラブラになっていく。特に初代マリオパーティのとあるミニゲームやスマブラは3Dスティックを最も酷使するゲームで、コントローラを潰した人もいると思われる(そしてスマブラ発売対象となるハードの恒例行事となる)。
- 現在はボロボロになったスティック部分のみを換装できるキットが購入できる。
- 64のGPUを開発したSGIのグループは後にArtXを設立し、GCのGPUの開発を担当した。因みにArtXはGC発売前にATIに買収され、そのATIも後にAMDに買収された。
- 初期ロットの一部のみ映像出力チップにアナログRGB出力があり、アンプ回路を通すだけでスーパーファミコン用のRGBケーブルが使える。
- N64互換のAC基板にセタが任天堂の許諾を受けて開発した「Aleck(アレック)64」がある。N64からACに移植された「スターソルジャー・バニシングアース」、「イレブンビート」の他、スーパーリアル麻雀シリーズの外伝作である「スーパーリアル麻雀VS」などに使われた。
- スイッチ用の復刻コントローラーはオリジナル版と内部構造が異なっており、コントローラパックコネクタは塞がれている。その代わりその内部に振動用のモーターが内蔵されている。また3Dスティック自体はオリジナル版とほぼ同一らしいが、部品形状が微妙に違う上に基板に接続されているケーブルが異なる為、オリジナル版との互換性は無い。なおN64用Bluetoothアダプター自体は同人ハードとして登場したため特に不自由はない。
- NINTENDO64影の立役者はNECである。CPU(R4300カスタム)、メディアプロセッサ(R3000カスタム)、メインメモリ(RAMBUS DRAM)など主要チップの殆どの製造を担当しており、採用チップのメーカー比率は同時期の子会社製品PC-FXを遥かに凌ぐ。