「この非国民めッ!」
「いいか竜崎、考えてみろ?! お前が救ったのは戦いには何の役にも立たん非戦闘員、つまり足手まといだぞ! 連中にできることといったらせいぜいベッドを塞いで無駄飯を食うことだけだ!」
CV:大木民夫
概要
国連地球防衛軍太平洋本部司令長官で、45歳。
異星人であるバーム星人の侵攻に対して、防衛軍を率いて立ち向かうと、一応は主人公側の人間なのだが……極端に偏った軍事至上主義者である。
二言目には「非国民!」を連呼し、兵士でない地球人を「犬畜生以下、無駄飯食い」と罵り、敵のバーム星人を倒すためには、味方の地球人をも平然と攻撃に巻き込むことも辞さない。
口では「地球の防衛と殺された人々の敵討ちを使命」としているかのように語ってはいるが、実際は己の手柄と保身を第一とした行動ばかり取り、戦争をわざと長引かせようとした事例まである。
邪魔になったガードダイモビック(主人公チーム)を切り捨てるために、国連に対しダイモスの操作権限剥奪を進言するも失敗し、数々の作戦失敗・失言の責任を取らされ司令官をクビにされる。それでもバームへの無意味な攻撃を繰り返したため、最後は主人公である竜崎一矢に叩きのめされた揚句に逮捕され、物語から退場する。
バーム星人側のゲロイヤーからは「無能な奴で実に戦い易い相手」、総監督の長浜忠夫ですら*「戦うこと以外何にも出来なかった哀れな人間」と酷評されている(この点は第四次スーパーロボット大戦でも、シーラ女王、またはエレ女王からも「戦う事しか知らない哀れな人」と同情された)。
スパロボ三大フリー素材として
『スーパーロボット大戦』シリーズにおいては原作同様、開始当初は主人公サイドの陣営の上官として登場。
民間人中心の部隊を快く思っておらず、度々圧力や恫喝をかけては衝突する展開はお約束である。本シリーズでは表現規制の問題で「非国民」とは言っていない。
分かり易い嫌われ担当キャラであるため、主人公サイドからの人望もゼロもしくはマイナス以下なのもあり、『第3次α』では『機動戦士ガンダムSEED』のムルタ・アズラエルからは顎でこき使われた挙げ句、あからさまに無能扱いされていたが、その極端な思想や悪い意味での行動力は非道な手段による弾圧(核攻撃など)を躊躇わず実行させるにはうってつけであったのだろう(本人は南極条約を理由に躊躇していたが)。そのため、主人公側もしくは地球軍に当たる中での超タカ派、すなわちティターンズやブルーコスモス、ゼーレなどの目的のために手段を選ばないタイプの組織では、幹部として違和感なく収まっていた。なお、上述のクロスオーバー要素から「三輪長官ってどの作品のキャラだっけ?」という質問に「○○のキャラだろ」というジョークも存在している。(例を挙げるとGoogle検索で「三輪長官」と入力すると「三輪長官 ダンクーガ」とサジェストされる)
一部ユーザーからは「三輪長官が味方陣営の悪役無能上司としての利便性が圧倒的に高過ぎるために、三輪が出したくてダイモスが参戦しているのではないか?」と疑われるレベルである。
尚、原作では死亡するシーンがなかったにも拘らず、参加5作品中3作で死亡する(シリーズ物のαシリーズを一括にすれば生存したのはAのみ)と、スパロボシリーズでは稀な扱いをされている。死ぬキャラが生存するパターンが多い同シリーズとしては珍しい例だが、後述する「本来想定されていた末路」を知るファンからは「軍人として戦場で死ねただけまだマシだっただろう」との声も挙がっている。
スパロボでは一応「過激だが仮にも愛国者」のキャラ付けがなされ、ジャミトフ・ハイマンやムルタ・アズラエルの凶行にドン引きしたり彼等の凶行を一度は制止しようとするなどまともな感性を持った一面も描かれたり、ごくまれに正論を述べたりすることもある。(一矢や京四郎も「今回ばかりは奴に一理ある」と言うほど)また敵サイドも「対話の余地など微塵も無い外道ども」の割合が多かったりする(こいつらとか)ので、手柄と保身ばかり考えていた原作に比べれば、僅かにまともな人間として扱われている。
※補足
上述のようにネタキャラのような扱いを受けてはいるものの、一方で愛国心で動いているというキャラ付け故に対比か比喩かは定かではないがUXにおけるハザード・パシャの所業に対して一部ファンから「三輪長官がキレて自軍の味方になるレベル」と評されることがあったりする。また、実際には杞憂で済んだもののスーパーロボット大戦BX初報時に機動戦士ガンダムAGEのフリット・アスノ(彼の場合過激な発言こそあったが一線を超えることは遂になかった)が同類扱いされないか心配されていた。
その他、近年の参戦作品においてはクロキ・アンジュや諸星弾のような「自軍に三輪のような人物を否定出来なくさせるためのようなキャラ」も増えてきており(弾に関しては正に「三輪が自軍入りしたら」というシチュエーションそのものと評する場合もある)、もしかしたら今後味方側組織の過激派の腰巾着から脱却しうる可能性も否定できないと思われる。
第4次スーパーロボット大戦
ティターンズの台頭によって地球連邦軍を離れ、反逆者となるロンド・ベルと袂を分かちティターンズに移る。
そしてダカールにて戦艦ダブデに搭乗し、ロンド・ベルに挑むも撃墜されてそのまま死亡。
獣戦機隊と関わりがあったり、ジャミトフに「ロンド・ベルを解体すれば苦戦は免れない」(この判断自体は正しい)と進言したりと、『超獣機神ダンクーガ』のイゴール将軍の役回りも兼ねている。
またロンド・ベル隊に同行している際は過激な言動を指揮権のあるブライトから咎められた(後々の作品とはブライト艦長との立場が逆転している)際に引き下がっていたりと立場は弁えている節があり、上述のジャミトフに対してロンド・ベルを必死に擁護する場面も含めて功名心や私欲で動く描写が殆ど無く頑迷ではあるが地球圏防衛の意思を持ち合わせた軍人としての面が強調されており少なくとも原作よりは遥かにまともな人物として描かれている節がある。
とある界隈では遂に頼りにならない自軍部隊を見限り、鹵獲した(?)レストグランシュに自ら乗り込み出撃する男前(?)な長官の御姿が拝める。ただ、翻訳機の調子が悪いのか日本語が怪しい。
「ドラャーミサイル発射!!」
なお声優の大木氏は2017年に逝去しており、今後のスパロボに『ダイモス』が参戦しても三輪に音声が付く可能性は極めて低いと思われる。
αシリーズ
『第2次α』では行方不明の岡防衛長官(『ボルテスV』)の後任として極東支部長官に赴任するが、スペースノイドを侮蔑するティターンズのような過激派として描写される。
人質が居るマシーンランドに毒ガスを仕掛けようとしたり、ミケーネ帝国またはゾンダーとの最終決戦で、エリカとリリーナを殺そうとしたが、ヒイロと一矢が駆けつけてきてボコられた挙句、岡長官に逮捕状を突きつけられて退場する。
しかし『第3次α』でアズラエルに拾われブルーコスモスの一員となり、前作の逆恨みから一矢を一方的に殴るなどの悪行を行う。
しかしヤキン・ドゥーエの攻防戦にて、多数のクラップを引き連れアズラエルの救援に来たものの、ジェネシスの第1射を受け「う、うおおおっ⁉うわあああああっ‼」という断末魔と共に艦隊諸とも爆死、その呆気ない最期には一矢も呆然としていた。
なおジェネシスの発射を命じたパトリック・ザラも「ナチュラルを殲滅出来るなら同胞であるコーディネイターがどうなろうと構わない」という危険思想を孕んでいるという点では三輪と五十歩百歩で、そんな彼に殺されるのはある意味皮肉であった。
その他作中でナタル・バジルールが彼女の軍事優先の物言いに対してビーチャ・オーレグから「ああいうのが道を間違えると三輪のオヤジみたいになっちゃうんじゃないか?」と言われる一幕があるが、ナタルの場合堅物ではあっても私利私欲や自己保身に動くような人間ではないのでとんだとばっちりである。
また、作中における一部の行動に関しては『SEED』原作におけるウィリアム・サザーランドの立ち位置も担っているといえる。
尚、αシリーズにおいて『第2次α』のみ『超獣機神ダンクーガ』が参戦していない理由について、獣戦機隊が極東支部赴任直後の三輪と大喧嘩して左遷されたからと、とんでもない経緯が『第3次α』で明かされている。
……だが、結果的にこれが『第2次α』終盤のミケーネ帝国による総攻撃に対して、有利に働いたのではないか……との説がある(作中でユリシーザー・バーダラー・ハーディアス以外の四将軍が、αナンバーズ以外に討たれた旨の発言があり、いずれかにダンクーガが関わっている可能性が高い)。
スーパーロボット大戦MX
『ダイモス』が原作終了後の設定のため、原作同様に逮捕されていたが、終盤にゼーレの子飼いとして、ネルフ本部襲撃の指揮を執る形で登場を果たす。
その次のシナリオでプレイヤー部隊を追ってギルガザムネに搭乗(但しパイロットは捕虜となったギガノス兵)。撃墜するとパイロットのギガノス兵が死亡したために脱出出来ず、そのまま死亡した。
この原作改変については批判が出るどころか、むしろ「よくやった」「今度はどんな風に死んでくれるのか」などの声の方が大きく、そのキャラぶりが分かるものだが、シリ-ズきっての名物ネタキャラとして確立しているのも確かだろう。
碇ゲンドウからも「あの男と話すことなどない」と切り捨てられている。
ちなみに、シナリオを書いた寺田プロデューサーには後の生配信でMXに三輪が出ていたことをすっかり忘れられていたことが発覚している…
スーパーロボット大戦A
αシリーズを一括りにした場合は唯一生存する作品。
バーム兵が大勢参加している平和解放軍や、投降したマリーメイア兵を全員処刑しようとしたところをロンド・ベルに咎められ、それでも聞く耳を持たなかったために激怒した一矢に叩きのめされた挙句、逮捕されそのまま退場している。
原作同様に逮捕という形で制裁がなされており、殴られただけで死んではいない描写……なのだが、実際は空手の達人である一矢に何度も殴られ(会話シーン内で、殴打する音が確認できるだけで7回も響く)、かつその一撃一撃が急所を的確に捉えているものなので、恐らく無事で済んではいないであろう(後に一矢も「あれはやり過ぎたと思っている」と反省している程)。
スパロボにおけるまとめ動画
余談
アニメでは逮捕を境にフェードアウトする形で消えていった彼だったが、それは『ダイモス』本編が放送途中で打ち切りを迎えた事によって、かなり詰め込んだ形で後半ストーリーが展開されたからである。
打ち切られずに続いていた場合の彼の行く末も実は考えられており、その内容は悲惨な末路であった。
戦争中は指揮官として強硬的な発言を繰り返していた三輪長官だが、戦争が終わったからといって彼が改心して真っ当な人間になるはずもなく、残された資料によると本来想定されていたエピローグにて次のような末路を遂げる予定だったという。
地球とバーム星の火星開発団は、素晴らしい早さで結成された。多数の科学者、技術者からなる地球始まって以来の大がかりなこの事業は、両星の科学の粋を集めたものとなった。そして、いよいよ今日は、その開発団が宇宙港から火星へ飛び立つ日である。国連前の広場では、全世界同時中継のテレビの前で華やかなパレードが行われている。白ぬりのオープンカーで先頭を切っているのは、火星開発団長であり、地球側の代表者の竜崎一矢である…。そして、そのかたわらに寄りそっているのは、副団長であり、バーム側代表者のエリカである。彼女の胸には兄、リヒテルの遺影が抱かれている。「ばんざい!地球とバームの友好、バンザイ!!」色とりどりの旗が打ち振られ、熱狂した人波はどよめいた。その時、人々の陰からよろよろと一人の男が歩み出る。汚れた服をまとい、浮浪者風の男は、手に玩具のガンを持っていて、しきりに何かつぶやいている「バン!バン!バームチェイジンヲコロセ!バームチェイジンハ、ミナゴロシダ!バン、バン!!」男は無邪気にガンをかまえては、引き金を引いている。玩具のガンはガラガラと空しい音をたてて廻り、チカチカと点るあかりは、切れかかった電池を示して眠そうな色をしていた。ーーこの男こそかつて国連軍アジア方面軍最高司令官と呼ばれた、三輪防人であったが、それを知るものは誰ひとりとしていなかったーー |
このように彼は「生きる事」と「戦う事」以外のすべてを失ってしまったのだ。
アニメ以外の媒体からも設定や話を引用するスパロボだが、この末路だけは今まで再現されていない。
尚、原作第1話では特に過激な言動は取っておらず、「主人公の亡父と旧知の仲で司令室に写真を飾っている」描写がある、設定画では穏やかな表情をしている事実などから、最初からここまで過激な人物になることは予定されていなかったのかも知れない。
もっとも、バーム星人を憎む地球人は三輪以外にも作中内に登場しているし、敵側のバーム星人の真の黒幕であるオルバン大元帥も、バームと地球の戦争を引き起こすために、バーム側の指導者であるリオン大元帥を毒殺し、更にその罪を一矢の父に着せるなど、彼と五十歩百歩の小悪党ぶりを発揮していたのだが。
原作終了後が舞台の『ゴッドバード(漫画作品)』にも登場する。
やはりそのキャラクターぶりは本編と変わらず……いやそれ以上か。
バラオ(『勇者ライディーン』に登場する悪の存在)に見込まれるほどであった。
リヒテル達と会った時には、根底は全く変わっていないと評価されていた。
三輪長官の余りに時代錯誤なセリフの数々が、色々問題になってDVD化が遅れたとする、全く根拠のない噂もある。
関連タグ
個別
スパロボ補正:上述の通り死亡することが多いとはいえ、思わぬ活躍をする場合もあるのである意味では当てはまっているのかもしれない。
クズモブ:フィクションにおける腐敗した一般人の総称であり、足手まといで役に立たないぱかりか、守られる立場を悪用して軍人やヒーローを苦しめる等、三輪とはある意味では正反対、ある意味では似た者同士と言える。
関連キャラクター
- 小柴防衛長官:吉岡平原作の小説鉄甲巨兵SOME-LINEに登場する自衛隊長官。派閥の力を利用して、引退後の年金を目当てに防衛長官になった小市民だったが、ツイミ星人の侵略でホワイトハウスとクレムリンが壊滅したため、地球防衛の任を背負う羽目になる。
それだけでなく、SOME-LINEを所有する協力者のライナーチームが破壊した建物の損害賠償で破産してしまい、挙げ句の果てに航空ショーに来ていた別居中の娘を救うため、F104戦闘機で向かうも犬死にしてしまう、本当に損な役回りだった。
作者曰く「三輪長官を反転させたキャラクター」とのことで、その後史実で似たような人物が出て来たのに卒倒したに違いない。