概要
大怪獣バトルを元に制作された特撮作品。宇宙の開拓惑星を舞台に、怪獣使いのレイとZAP SPACYの活躍を描く。
全13話。後に続編である『NEVER ENDING ODYSSEY』(通称NEO)が全13話放送された。
当初はネット配信とBSで放送されたが、後に地上波でも放送されている(予告はなし)。
原作と同じく怪獣同士の戦いがメインとなっているがウルトラマンはほんの少ししか登場せず(1期は初代マン、2期はセブン)、その役目は専ら主役怪獣たるゴモラが担っている。この為、放送期間中はヒーローショーでゴモラがヒーロー扱いで登場する機会が多かった。
本作最大の特徴としては王道体系の怪獣から人型寄りの怪獣まで様々な怪獣が人間顔負けのアクションを繰り広げる事。
例えばゴモラが飛び蹴りやフライングヘッドバットをかましたり、ゼットンがフライングプレスをかましたり、レッドキングがマウントパンチやネックハンギングを使ったりとプロレス技を普通に使うのである。
しかも市街地ではなく、開けた自然環境での戦いなので安心(?)して怪獣たちのガチンコマッチを楽しめるというわけだ。
もちろん、怪獣を主役に据えるだけあって、怪獣の個性を活かした展開も存在する。エレキングは小型化して非常用電源として使われ、バキシムは空間の裂け目から狙撃を行い、アントラーは血中鉄分をも吸い寄せ、ガルベロスは幻影で巧みに勝利をもぎ取るシーンが見られる(ただそれでも、戦う相手が悪すぎた為にあっさり倒される怪獣がいる点は否めない)。
スーツが残っている(あるいは新造できれば)昭和・平成両方にも登場機会が回ってくる仕様であり(平成怪獣は『ネクサス』や『メビウス』のものが中心)、リトラ、マグラー、ジュラン、ゴメスといった懐かしの怪獣も複数復活し、ドリームマッチが実現しているのも見逃せない。
1期は野良怪獣との戦いが中心であったが、2期はレイオニクスバトルを主軸にしているだけあって過去作(M78スペース作品に限る)の宇宙人がレイオニクスとして登場している。
怪獣が登場すると大怪獣バトルアーケード版のカードの裏面で怪獣の解説を行うのが特徴。
NEOからはステータスが詳細に表示されるようになった。無論、ゲーム版では技カード止まりであった怪獣も本作では前線に出て戦うため、ステータスが割り振られている。ウルトラマンの解説時にはスーパーコンボカードのデザインが流用されている。
更に『大怪獣バトルファイル』というEDコーナーが前作共通で設けられており、該当回で活躍したヒーローや怪獣を解説する。
また、『NEO』の後日談としてヤプール人との戦いを描く『大怪獣バトルNEO ウルトラモンスターズ ギャラクシーレジェンド』のストーリーモード『ギャラクシーサーガモード』(現在は視聴困難)、ウルトラマンゼロが初登場した『ウルトラ銀河伝説』、ウルトラマンゼロシリーズと密接な関わりのある『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』や『キラー・ザ・ビートスター』がある。
時系列について
舞台は『Q』から『メビウス』までの作品と同じM78スペースだが、『ギャラクシークライシス』という事件の発生以降、並行世界のウルトラマンや怪獣の情報、ひいては『ネオマキシマエンジン』といった技術も齎された(劇中ではあまり触れられていないが、一期でブルトンが怪獣を呼び出す能力を使うという形で間接的に示唆されている)。
時系列はウルトラマンメビウスの時代から「近未来」とされているが、後年に発表されたウルトラマンタイガの超全集にて最低でも4000年以上は経っている事が判明している。(後に登場するゼロの登場時期と年齢を考慮したら彼の年齢分ほどの年月が経過しているのが自然と思われるが)しかし、当時は現在ほど整理されていなかったようで、ウルトラマンゼロ黎明期に発表された「ウルトラマンプレミア2011」の時系列はキリヤマ家とゼロとの交流を描く都合上、現実の2011年と同じぐらいになっていたりする。(まあ、近未来って本来はそういう意味なんだけども)
大怪獣バトルウルトラコロシアムは25年後、アーケード版大怪獣バトル(または漫画版『ウルトラアドベンチャー』)は更に25年後を描く。このアーケード版の時代こそ、ペダン星人たちが暮らしていた「50年後の未来」の事である。
また、裏設定ではAC版のキャラクターが時空を超えて惑星ボリスや惑星ハマーに来ており、本シリーズで起こった出来事の補完がなされている。特に『NEO』はその要素が強い(ババルウ星人RBがなぜアントラーを失ったか、アーマードダークネスをなぜセブンが装着していたかなど)。
ただし、「地球の怪獣が絶滅した」という設定や現在よりも技術の進んだ未来を描いてしまった弊害で、M78スペースの地球を舞台にした作品が現在全く制作されていないという状況になっている。(少なくとも漫画版を見る限り大阪城は現存しているようだが)
なお、『大怪獣バトル』シリーズが現役であった2007年〜2008年には『ウルトラマンメビウス外伝』(超銀河大戦〜アーマードダークネス)や『大決戦!超ウルトラ8兄弟』が公開されているが、そちらはギャラクシークライシス以前の設定で制作された作品群となる。
登場人物
ZAP SPACY
主人公。開拓惑星ボリスでZAP SPACYが出会ったレイオニクスの青年。使役怪獣はゴモラ、リトラ、エレキング(陸海空を意識した構成である)。
記憶を失っているが、怪獣への強い敵対心からバトルナイザーで怪獣を倒して回っていた。当初はZAPへの協力を「俺には関係ない」と拒んでいたが、なりゆきで行動を共にするうち、仲間との強い信頼関係を築いていく。自分の使用怪獣に対しても、当初は戦うための道具としか見ていなかったが、次第に掛け替えのない相棒として接するようになった。瀕死の重傷を負ってもたちどころに回復し、一跳びで長距離移動する人間離れした身体能力の持ち主。
ヒュウガ
ハルナ
クマノ
オキ
以上の人物はZAPを参照。
レイオニクス
レイと同じくバトルナイザーを持つレイオニクスの女性。初登場時はアズサ マキという女性の姿を借りて登場した。レイと何か因縁があるらしく、彼が加入したZAP SPACYの敵として自らもまた様々な怪獣を呼び寄せて彼らに戦いを挑む。アズサ マキという偽名を名乗ってペンドラゴンに潜入したこともある。残酷な性格をしており、使えない怪獣は容赦なく切り捨てる冷徹さを持つ。使役怪獣はファイヤーゴルザ、ガンQ、ゼットン。
『NEO』に登場。レイのライバルとなるキール星人のレイオニクス。ボスタング型の宇宙船に搭乗している。飄々とした掴めない性格であり、常に相手を煙に巻くようなふざけた言動をとるが、その本性は極めて好戦的で残虐。レイオニクスの中でも最強クラスの実力を持っており、その証である「ネオバトルナイザー」を所持している。しかし、レイブラッドの後継者争いには興味が無い。よく耳のピアスを鳴らす癖がある。使用する怪獣はタイラント、レッドキング。
ペダン星人
『NEO』に登場。レイオニクスハンターであるペダン星人の一人でレイオニクスハンターの中でもトップクラスの実力者。50年後の未来からにおけるレイオニクスバトルによって故郷のペダン星が滅びたので、その歴史を変えるために未来から派遣された。レイオニクスを激しく憎んでおり、レイを初めとして全てのレイオニクスを抹殺しようとする。
しかし、レイやZAP SPACYとの幾度にわたる戦いの末に少しずつその心に迷いが生じ…
ZAPSPACY
ザップスペーシーと読む。名称は「Zata Astromical Pioneers Spacy」の略。本作において防衛チームの役目を担う。
用語
『バトルナイザー』、『レイオニクス』、『ZAPSPACY』、『アイスラッガー』は各項目を参照。
- 惑星ボリス
『ZAPSPACY』が開拓している荒野の広がる惑星。
地球人が活動できるぐらいの大気がある他、海や湖といった水が豊富な惑星である。ただし、湖底には電気エネルギーに反応するソリッド鉱石(人工太陽のエネルギー源である)が埋まっており、最悪の場合星ごと吹っ飛びかねないという危険性を秘めている。
ある時を境にブルトンが時空を歪めて怪獣たちを召喚した事で研究施設のあった首都:ベラルゴシティが壊滅。怪獣惑星ともいうべき危険地帯になってしまった。テラフォーミング用の発電エリアにはネロンガ、エリアQポイント77にある輸送基地にはベムスターが出現している。
ペンドラゴンクルーは惑星アヴァルへ物資を届ける最中に救難信号をキャッチ。謎の干渉波を受けてこの惑星へと不時着し、この惑星で育った青年レイと行動を共にする事に。
生存者はゴースタードラゴンのクルーらと共に怪獣の現れないヴィンセント島に身を隠しており、ウルトラの谷(AC版での表記)でレイブラッド星人により石化したウルトラマンの発する結界に守られていたが、突如現れた怪獣軍団や暴走したキングジョーブラック、レイを一人前に鍛え上げようとするケイトなどの出現により事態は混沌を極め、暴走した人工太陽の爆発により惑星は炎上、死の星となってしまった。寸前にクルーは脱出でき、封印から解かれたウルトラマンもキングジョーブラックとの戦いに勝利して生存していた。
実はAC版の主人公である『御蔵イオ』もババルウ星人の歴史改変を止めるべく、未来から来訪していた。
なお、この星にはそのイオの曽祖父(演:渋谷浩康)と祖母のカレン(演:山田夏海)が住んでいた。
- 惑星ハマー
レイオニクスハンターによる基地の爆破を逃れたレイとヒュウガが時空間の歪みに呑まれた末に辿り着いた荒涼とした荒野の広がる惑星でペンドラゴンクルーも後に合流。
宇宙中のレイオニクスがレイオニクスバトルを繰り広げている激戦区であり、彼らの命を狙うレイオニクスハンターやバトルナイザー狩りを行なっているザラブ星人も暗躍している。
何らかの事情でダークネスフィアと一緒にアーマードダークネスがこの星に降り立っており、グローザムやザラブ星人の思惑が絡んだ結果、アーマードダークネスが起動。ウルトラセブンが自らを人柱にアーマードダークネスを封印している。ネオフロンティアスペースの派生世界からワームホールを通ってやってきたAC版『NEO』の主人公『アサマ・アイ』も戦いに巻き込まれ、グランデやババルウ星人(のちのギャラクシーレスキューフォース所属のRB)に影響を与えていく(AC版とそのコミカライズ版より)。
黒幕であるレイブラッド星人の精神体がレイを体を乗っ取ろうとアーマードダークネスに取り憑くが、グランデやZAPの加勢により敗北。最後の悪あがきとしてレイブラッド星人がZAPを惑星の崩壊に巻き込もうとするが、駆けつけた初代マンとセブンの攻撃により、ZAPは無事に脱出する事が出来た。
- ブレイブバースト
AC版『NEO』でも搭載されているシステム。
怪獣が赤いオーラを纏ってパワーアップする現象のこと。レイのゴモラが第3話や第12話で変転したのはこちらの姿である。
- レイオニックバースト
怪獣の全身が真紅に染まり、能力が劇的に向上する現象のこと。
この形態になる際にはレイモンもバーストモードに変化し、暴走状態に陥ってしまう。
ウルトラセブンのアイスラッガーの力を受けて、次第に力を制御できるようになり、任意で発動が可能になった。
AC版『NEO』でも搭載されているシステムでそちらではブレイブバーストが前段階となる。
同作ストーリーモードの主人公『アサマ・アイ』のパートナーレッドキングもこの姿に変転し、EXレッドキングを思わせる高熱を纏った攻撃が使えるようになった。
各話リスト
無印
話数 | サブタイトル | 登場怪獣 |
---|---|---|
1 | 怪獣無法惑星 | レッドキング、サドラ、テレスドン、ペギラ、チャンドラー(画像と骨格のみ) |
2 | 五人目のクルー | ゴルザ、テレスドン、ジュラン、ムカデンダー |
3 | 透明怪獣襲撃! | ネロンガ、グドン |
4 | ベムスター参上! | ベムスター |
5 | ベラルゴシティの罠 | ファイヤーゴルザ、バンピーラ、サドラ、ガンQ |
6 | もう一人の怪獣使い | ガンQ、ツインテール |
7 | 怪獣を呼ぶ石 | ブルトン、レッドキング、ネロンガ、テレスドン、フログロス |
8 | 水中の王者 | エレキング、アーストロン、ケルビム |
9 | ペンドラゴン浮上せず! | ゾアムルチ、アングロス、グロマイト、アリゲラ、リムエレキング、キングジョーブラック |
10 | 予期せぬ再会 | ノーバ、サラマンドラ、ルナチクス、キングジョーブラック |
11 | ウルトラマン | ベロクロン、ドラゴリー、アーストロン、レッドキング |
12 | レイブラッド | ゼットン、キングジョーブラック |
13 | 惑星脱出 | ゼットン、キングジョーブラック、EXゴモラ |
NEO
話数 | サブタイトル | 登場怪獣 |
---|---|---|
1 | レイオニクスハンター | ピット星人(RB)、ゴメス、マグラー |
2 | レイオニクスバトル | ゴメス、ドラコ、ベムスター、フック星人(RB)、ガッツ星人(RB) |
3 | 大暴走!レイオニックバースト | ガルベロス、ナックル星人(RB)、アーストロン、ゼラン星人(RB)、ゼットン(幻影) |
4 | 困惑の再会 | アントラー、ババルウ星人(RB)、ドラゴリー、メトロン星人(RB)、グランゴン(尻尾)、ナツノメリュウ(尻尾) |
5 | 暴走の果てに | バキシム、メトロン星人(RB) |
6 | 史上最強のレイオニクス | タイラント |
7 | 第二覚醒 | タイラント |
8 | 潜入者を撃て! | ザラブ星人(NRB)、にせウルトラマン |
9 | 暗黒の鎧 | アーマードダークネス、メフィラス星人(RB)、アーマードメフィラス、アリゲラ、ダダ(RB)、テンペラー星人(RB) |
10 | 新たな戦いの地平で | キングジョーブラック、再生ドラコ、テレスドン、レッドキング、ガッツ星人(RB)、フック星人(RB)、ケルビム、ゼットン星人(RB)、ペダン星人ハーラン |
11 | ある戦士の墓標 | キングジョーブラック、バードン、リフレクト星人、キングジョースカーレット、ペダン星人ハーラン |
12 | グランデの挑戦 | アーマードメフィラス、レッドキング、レイブラッド星人 |
13 | 惑星崩壊 | レイブラッド星人、アーマードダークネス、アーマードメフィラス、メフィラス星人(RB)、EXレッドキング |
主題歌
無印
作詞・作曲・編曲:大門一也/歌:Project DMM
怪獣が大地を踏みしめるようなイントロから始まるOP主題歌。アーケード版やWii版ではファイナルラウンドでのBGMとして使用された。
OP映像で戦っている怪獣はゴルザVSベロクロン→ネロンガVSテレスドン→ケルビムVSバンピーラ→アーストロンVSベムスター→サラマンドラVSエレキング→サドラVSドラゴリー→グドンVSガンQ→ゴモラVSレッドキングの順。
- ジャンプ アップ
作詞・作曲:ベーナー/編曲:田靡秀樹・烈火斬/歌:烈火斬
ED主題歌。最終話ではEDにOP主題歌が使用されている。
NEO
- 誓い
作詞:中西圭三、田角有里/作曲:中西圭三/編曲:小西貴雄/歌:中西圭三
OP主題歌。アーケード版ではファイナルラウンドでのBGMとして使用された。
OPで戦っている怪獣はゴモラVSドラコ→ドラゴリーVSアントラー→ベムスターVSガルベロス→アーストロンVSゴメス→ゴモラVSバキシム→エレキングVSマグラー→ゴモラVSマグラーの順。
- 愛のしるし
作詞:中西圭三、田角有里/作曲:中西圭三/編曲:小西貴雄/歌:中西圭三
ED主題歌。歌詞はどちらかといえば怪獣よりもウルトラマンを想起させるものになっている。
最終回ではOP主題歌がEDに使用されている。中西氏はのちにファミリー劇場で放送された『大怪獣バトル体操』の歌も担当(歌名は『La La La 最高じゃん!』でゆうおねえさん、えりおねえさん、ミクラス、ゴモラ、レイモンが出演)。
漫画版
テレまんがヒーローズで掲載された河本けもん版と大怪獣バトルウルトラファンブックに掲載された「ウルトラギャラクシー大怪獣バトル外伝 スペシャルクルーズ」が掲載された。
放送後の扱い
上述したように当初は地上波放送されていなかった事(のちにサンテレビなどの地方局で放送はされた)、またウルトラマンがメインを張らない作品である事や、当時はウルトラシリーズそのものが不作の時期だった事もあって、本作は他のウルトラシリーズと比べると知名度が低くなってしまっているのは否めない。
しかし世界観そのものはこれまでのウルトラシリーズ全てと繋がっており、直接世界観が繋がるウルトラマンゼロシリーズへの橋渡しをしたという意味では、本作の立ち位置は決して小さくはない。
本作でスーツが新造されたおかげでニュージェネに出演を果たして知名度を大きく上げた怪獣も少なくは無く、怪獣だけでも十分に世間に通用するコンテンツである事が再確認できる作品でもある。
『ウルトラマン列伝』でも直接取り上げられる事はなかったものの、『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』放送の際はヒュウガが前回までのあらすじのナレーションを務め、劇場版である『ウルトラ銀河伝説』放送時はレイがナビゲーターを務めた。
そして、『新ウルトラマン列伝』では遂に本作の総集編が放送された。
『大怪獣バトル』そのものが稼働終了した後はさらに出番が控えめになってしまったが、『ウルトラファイトオーブ』から『ウルトラマンジード』といったウルトラマンベリアルが関わる作品では本作の要素に触れられている他、『ギャラクシーレスキューフォースボイスドラマ』では『NEO』に登場したババルウ星人がまさかの再登場を果たしている。
余談
大怪獣バトルのメディアミックス作品である為、制作協力が『バンダイナムコグループ』となっている。
脚本は荒木憲一(シリーズ構成も担当)、長谷川圭一(代表作:『ウルトラマンネクサス』他)、赤星政尚氏(代表作:『ウルトラマンメビウス』他)、小林雄次氏(代表作:『ウルトラマンマックス』他)、増田貴彦氏(代表作:『ウルトラマンダイナ』第31話他)のウルトラシリーズ経験者が担当。