曖昧さ回避
概要
がおー / ガオー は、猛獣の咆哮(咆え叫ぶこと。獣などが咆え猛ること。また、その声。)を表現した日本語オノマトペの一種。擬声語の一種。
動物の種類の違いやその動物の置かれた状況に応じた使い分けなどがあって、咆哮にもいろいろあるが、おおむね、日本人が「がおー/ガオー」と音写した声は、食肉目(ネコ目)の大型種と中型種のいくつかの種が威嚇する際に発する声を文字化したものである。具体的には、大型種では大型クマ科(ヒグマなど)と大型ネコ科(トラとライオン)が、中型種では中型ネコ科の中でも比較的大きなジャガーとヒョウ(※この2種を大型種に含める捉え方もある)が該当する。
ただ、最初の音写が何であれ、「猛獣」と呼ばれる危険性の高い動物の多くが「がおー」と咆えるのではないかと、少なくとも動物にそれほど詳しくない一般人の多くはイメージしており、それをもって、生態学 (cf.Wikipedia) 的事実とはかなり乖離して「猛獣の咆哮を表す擬声語」と捉えられている。
最も顕著な例としてオオカミがいる。実際の彼らの吠え方は英語で "bowwow(バウワウ)" と表現される声の反復が主で、そのほかには「ガルル」と聞こえる喉鳴りの声をよく発する。彼らがトラやライオンのように「ガオー」と吠えることはなく、最も近しい吠え方では、「バウワウ」や「ガルル」に「ガオー」を混ぜたような声とその反復になる。要するに彼らはトラやライオンと全く同じようには吠えられないのであるが、イメージが先行して彼らも大型肉食獣と同じように吠える描写をされることが多い。
ネコ科でも、ピューマやユキヒョウなど、ヒョウより小さい種では、彼らより大きな種と全く同じ吠え方をしながらも「ガオー」と吠えることができず、このあたりからイエネコに近しい鳴き声「ニャオー」になってくるにもかかわらず、創作の世界では「ガオー」と吠えさせていることがある。例えば上に咆哮するピューマとユキヒョウと例示しているが、生態的に正しいからと言ってこれらのイラストに擬声語「ニャオー」を書き足したなら、折角の迫力が台無しになるに違いない。なんなら、生態を知らない人から「ニャオーってなんだよwwwwwww そこはガオーだろwwwwwwww」などと嘲笑されるまである。
また、声を再現することの難しい恐竜のような古生物や、怪獣などの架空生物でも、ヒグマやトラのように捕食性やそれでなくとも攻撃性の高いと思われる証拠ないし設定があれば、その古生物や架空生物は「がおー/ガオー」と咆哮することが多い。
上に例示したイラストは、左から順に、ティラノサウルス(肉食恐竜)、ガメラ(怪獣)、マンティコア(伝説上の怪物)、ウェアウルフ(同左)。
ネコ科動物の咆哮
ネコ科動物の咆哮は、体格の違いによって「ガオー」と「ニャオー」の2系統に大別できる。
これについて、喉の構造の違いなどと解説する向きもあるが、体格差に起因する発声の周波数の違いが生み出す差異とする説が有力。
上図であれば、一番下に描かれているジャガーだけが「ガオー系」で、それより小さいピューマからは「ニャオー系」である。この図では示せないが、実際の境目はヒョウとピューマ(ヒョウより一回り小さい)の間にある。動物園でも、ヒョウの咆哮はいかにも迫力があって畏怖を感じるが、ピューマのほうは来園した子供に真似されるような可愛らしさがある。
- ガオー系
トラ(※c)… 体重は雄で90~306kg。大型。世界最大のネコ科動物。
ライオン(※c)… 体重は雄で150~225kg。大型。
ジャガー(※c)… 体重は雄で56~96kg。中型(または大型)。ジャガーとヒョウは体格において第2グループを構成している。
ヒョウ(※c)… 体重は雄で70~90kg。中型(または大型)。
- ニャオー系
ピューマ(※c)… 体重は雄で39~80kg。中型。
チーター(※c)… 体重 35~72kg。中型。
ユキヒョウ(※c)… 体重は雄で22~55kg。中型。
オオヤマネコ … 体重は雄で11.7~29kg。中型。
ウンピョウ … 体重 16~23kg。中型。
サーバル … 体重は雄で7.9~18kg。
クロアシネコ (cf.Wikipedia) … 体重は雄で1.60~2.45kg。「世界最小のネコ科動物」と称されることがある。
サビイロネコ (cf.Wikipedia)… 体重 0.9~1.6kg。世界最小のネコ科動物。
ほか。
表記揺れ等
k = 完全一致検索結果、b = 部分一致検索結果。作品数は2023年12月4日調べ。
がおー(k, b|作品数:k=1,987, b=4,009)… 本項。
嗷呜 / 嗷鳴(k, b|作品数:k=8, b=9)… 日本語の「がおー」や「うおー」に相当する中国語の擬声語で、pixivでは、「ガオーのポーズ」をして「嗷呜」と吠えているイラストや、同じく「嗷呜」タグを設定されている作品がある。「嗷(アォ|cf.Wiktionary)」の字義は「やかましく鳴くさま」。
pixivでは
pixivではこのタグを用いる場合、両手の指を曲げて前に出すポーズのイラストがよく投稿されている。
また、次の年が寅年ともなると、pixivに投稿される年賀絵は当然ながら虎や虎娘などで溢れかえり、「がおーっ」「ガオーッ」ととにかく賑やかになる。
ほかにも、ハロウィンでジャック・オ・ランタンに扮した女の子や男の子の絵が描かれる場合、かなりの確率で「猛獣のガオーのポース」をやっており、「がおーっ / ガオーッ」の文字も珍しくない。襲ってくる凶暴な存在は猛獣と同じように「がおーっ」と咆えながら爪を立てて迫ってくるという連想が働くのであろう。
それ以外にも、見た目に反して実際には猛獣であるジャイアントパンダや、いかにも「がおー」と吠えそうな架空生物を描いた作品に、作者や閲覧者がタグ付けしていることもある。
メトロ・ゴールドウィン・メイヤー (cf.pixiv, cf.Wikipedia) も、この映画会社を象徴するオープニングロゴで雄ライオンが吠えている(※a)ことから、pixivではそのパロディ作品が数多く投稿されている。「関連イラスト」節を参照のこと。
関連イラスト
表記揺れタグで設定されている作品や、ロックされていたり設定枠が足りないなどしてタグ付けできない作品、既存のタグと差し替えることを控えている作品も、例示対象とする。
ガオーのポーズ
左から順に解説する(以下同様)。
1. 寅年の「GAオー!!」
2. 猛獣のふりをするサーバルちゃん(『けものフレンズ』)の「ガオーッ!!」
5. 同じく、ただの女子高生の可愛い「がおー」
6~7. 肉食恐竜になりきって「がおー」
8. 承認欲求モンスターもガオーッ。キャラは『ぼっち・ざ・ろっく!』の後藤ひとり。
9. ハロウィン娘もガオーッ。キャラは『アイドルマスターシャイニーカラーズ』のノクチル。
10. 口裂け女までもがガオーッ。
猛き獣のガオー
1. 危険で可愛いジャイアントパンダ。作者自ら「がおー」タグを設定している。
2. サーベルタイガー。作者が「ガオー」タグを設定。
3. 猛獣系の架空動物種。作者が「がおー」タグを設定。
4. ドラゴン。作者が「がおー」タグを設定。
5. 元ネタは『となりのトトロ』で、サツキとメイが夢の中でトトロと出会う「夜の森」のシーン。
メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
鉄人28号
鉄人28号は、ファイティングポーズを執るなどしてパワーが漲った時に「ガオー」という独特の駆動音がする同名作品の主人公ロボットで、アニメ主題歌でも「ビルのまちにガオー 夜のハイウエーにガオー」と歌っている(※b)。
がうる・ぐら
バーチャルYouTuberでゲーム実況者の「がうる・ぐら (Gawr Gura)」は、凶暴なサメを造形とキャラクターのモチーフにしており、ガオーのポーズを決めポーズにしている。サメは鳴かんやろとか、そういうのは関係ないらしい。検索キーワード「がうる・ぐら がおー」推奨。
よつばと!の〝がおー〟
原作4話でジャンボが恵那に「がおーっ」とうなって恵那をびびらせてしまっている。その際に綾瀬家にて「ジャンボさん/竹田さん/きりんさん」と呼ばれたに続いて、
恵那「でもがおーって言ってた」
風香とあさぎと母「がおー?」
最古シリーズ
pixivの「最古シリーズ」には以下の作品群が該当する。
虱潰し調査完了範囲:ID1~883(現存作品の 1~497番目)。
- 九「リダ」(2007年9月14日投稿、作品ID 623)
「最古のガオー」(ガオーを表現した現存最古の作品)。pixivの現存作品中362番目に古い。
キャラは作者のうちの子(作者が創作したオリジナルキャラクター)であるため、本作は「最古のガオー(オリジナル作品)」でもある。
- ひがし「ビルーの町ーに」(2007年9月23日投稿、作品ID 18120)
「最古のガオー(版権物)」かもしれない作品(版権物でガオーを表現した現存最古の作品かもしれない作品)。全くそうは見えないものの、作者によると鉄人28号(第1期)とのこと。作者の説明に反して敵方のロボットを描いていると思われるが、それっぽいのがいたような気がしないでもない。
関連事象
- 『百獣戦隊ガオレンジャー』
「ガオレンジャー」という名は、咆哮する猛獣の「ガオ」とスーパー戦隊シリーズに定番の接尾辞「~レンジャー」を組み合わせたもの。
なお、『勇者王ガオガイガー』のほうは、猛獣の「ガオ」と関係ないとのこと。
- 「かいじゅうガオーにきをつけろ!」
絵本作家・宮西達也の手になる紙芝居用作品で(※d)、交通安全の観点から子供にとって危険なトラックのエンジン音を、地面などに夢中で描きがちな怪獣の咆哮「ガオー」と重ね合わせて警告する、児童向けの画劇(※d)。
脚注
出典
※a 「あのオープニングロゴがリニューアル、どこが変わったかわかります?」 ギズモード・ジャパン「Gizmodo」 2021年3月13日作成。※オープニングロゴの咆哮する雄ライオンのYouTube動画もあり。
※b 「鉄人28号 / デュークエイセス」 株式会社ページワン「Uta-Net」
※c 「ネコ科猛獣「ガオー」勢と「ニャー」勢は何故違う?比較動画でギャップに萌え死ぬ人続出!~追加動画と東京ズーネットさんの解説付き~」 Togetter、2017年8月5日作成。※咆哮する様子を収録したYouTube動画を視聴可能。
※d 「かいじゅうガオーにきをつけろ!」 おすすめ紙芝居(ウェブサイト)
関連タグ
pixivision
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