概要
大手私鉄や準大手私鉄のように、公的にはっきりした定義づけがされているわけではないが、ここではこれら以外の私鉄を指すものとする。
日本においては大都市部を走る鉄道を除けば、概ね経営基盤が弱く状況が良いとは言えず、新型車両の導入もままならず、路面電車主体の会社以外は1980年代以前の大手私鉄(主に東急、西武など)の中古車両を走らせていたりすることが多い。
なお、中小私鉄とは言うものの中小企業との概念とは若干離れており、比較的広範囲に地域輸送を行っている私鉄を中心に中小企業基本法上では「大企業」に属する中小私鉄もいくらかある。これはそもそも「大手私鉄」という概念が経営規模ではなく1950年代の労使交渉における区分として誕生したためで、そのときリストアップされた企業を大手と呼ぶ慣習が一般に定着したからである。
毎年のように路線が廃止され、年々その数を減らしつつある。廃止される理由は様々で、利用客の減少というもっともな理由もあれば、地方自治体の財政悪化による補助金打ち切りなど大人の都合による場合もある。旧国鉄時代末期の貨物列車の大幅整理の煽りを受けて、貨物が廃止されたために、経営悪化が進み廃止された例も多く、また台風などの災害や戦争が起こったために不通となり、そのまま復旧しないまま廃止となった例も多く存在する。
一方で、SL列車などを走らせるなど、観光客や鉄道ファン向けの誘致イベントに積極的な会社も多い。多くの中小私鉄では鉄道事業の不振を補うべく観光事業や不動産事業、バス事業など副業に力を入れ、富士急行に至っては鉄道事業の事業規模は全体の5%程度でしかない。なお、不動産や観光事業において「鉄道会社」のネームバリューはやはり魅力であり、紀州鉄道のように赤字経営を承知の上で、鉄道会社のブランド力を評価して中小私鉄を買収する企業も存在する。
現存し、旅客営業を行う中小私鉄
第三セクター・路面電車・地下鉄・モノレール・新交通システムはそれぞれ当該項目を参照されたい。
※太字は中小企業基本法上における「大企業」に該当する私鉄を表す。
※★は日本民営鉄道協会に加盟する第三セクター鉄道
※()内は路線愛称名、あるいは所属する企業系列などを示す。
東北
福島交通(みちのりHD系)
関東
上毛電気鉄道(東武系)
関東鉄道(京成系)
筑波観光鉄道(筑波山ケーブルカー)
秩父鉄道(太平洋セメント系)
小湊鐵道(京成系)
山万(ユーカリが丘線)
高尾登山電鉄(高尾山ケーブルカー)
御岳登山鉄道(御岳山ケーブルカー。京王系)
箱根登山鉄道(小田急系)
江ノ島電鉄(小田急系)
大山観光鉄道(大山ケーブルカー。小田急系)
甲信越
アルピコ交通(旧松本電気鉄道)
北陸
北陸鉄道(名鉄系)
福井鉄道(かつては名鉄系だったが離脱)
★万葉線
黒部峡谷鉄道(関西電力系)
関西電力(トロリーバスを運行)
立山黒部貫光(トロリーバス・ケーブルカーを運行。富山地鉄系)
東海
伊豆箱根鉄道(本社と駿豆本線・十国鋼索線は静岡県にあるが、大雄山線は神奈川県に存在する。西武系)
大井川鐵道(名鉄・中部電力系だったが離脱)
岳南電車(富士急系)
伊豆急行(東急系)
豊橋鉄道(名鉄系)
養老鉄道(近鉄系)
三岐鉄道(太平洋セメント系)
伊賀鉄道(近鉄系)
近畿
近江鉄道(西武系)
比叡山鉄道(坂本ケーブル。京阪系)
京福電気鉄道(嵐電、叡山ケーブル。京阪系)
叡山電鉄(京阪系)
嵯峨野観光鉄道(JR西日本系)
水間鉄道(グルメ杵屋系)
能勢電鉄(阪急阪神系)
北神急行電鉄(阪急阪神系)
神戸電鉄(阪急阪神系。2004年までは準大手)
和歌山電鐵(両備系)
丹後海陸交通(天橋立ケーブルカー、阪急阪神系)
WILLER TRAINS(京都丹後鉄道。WILLER ALLIANCE系)
中国
★水島臨海鉄道(JR貨物)
四国
四国ケーブル(八栗ケーブル)
九州
筑豊電気鉄道(西鉄系)
皿倉登山鉄道(皿倉山ケーブルカー、旧帆柱ケーブル)
岡本製作所(別府ラクテンチケーブル)
現存し貨物営業のみを行う中小私鉄
北海道
東北
岩手開発鉄道(太平洋セメント系)
関東
東海
鉄道路線を第三セクターに移管した中小私鉄
加越能鉄道(鉄道事業は新湊線を万葉線に譲渡。現:加越能バス。富山地鉄系)
路線廃止した中小私鉄(一部)
北海道
旭川電気軌道(現在はバス事業。)
十勝鉄道(現在は運輸業。ただし、自社の鉄道廃止後も日本甜菜専用線の列車運行を受託していた)
夕張鉄道(現在はバス事業。)
定山渓鉄道(現:じょうてつ)
東北
下北交通(大畑線を国鉄より引き継いでいた。同線廃止によりバス専業に戻る)
南部縦貫鉄道(現:南部縦貫。タクシー業)
十和田観光電鉄(現在はバス専業)
秋保電気鉄道(仙南交通を経て現在は宮城交通に統合)
関東・甲信越
鹿島鉄道(現在は不動産専業。関東鉄道及び京成系)
九十九里鉄道(現在はバス事業)
新潟交通(現在はバス・不動産業)
蒲原鉄道(現在は高速・貸切バス専業)
善光寺白馬電鉄(現在はトラック運送業。鉄道は戦前に廃止されている)
日立電鉄(会社は解散し、子会社がバス・タクシー事業として残る)
北陸
尾小屋鉄道(現:小松バス)
関西
加悦鉄道(現:カヤ興産。タクシー業)
野上電気鉄道(鉄道廃止とともに解散)
別府鉄道(現在は不動産業)
有田鉄道(現在はバス・旅行事業)
中国・四国
下津井電鉄(現在はバス専業)
岡山臨港鉄道(現・岡山臨港。物流・倉庫業)
琴平参宮電鉄(鉄道廃止後、バス専業だったが琴参バスに事業を譲渡し解散)
九州
鹿児島交通(現在はバス専業)
朝倉軌道(伝説のナローゲージ。国鉄甘木線の開業に伴い廃止)