「現実を見ろクルーガー! 宇宙には正義などという見えないものよりズッシリ重い札束が大好きという奴等がまだ掃いて捨てるほどいる!」(Episode.49)
「私を倒して終わりと思うな! この宇宙に人類がある限り絶対に犯罪はなくならない!! 誰の中にも私と同じ欲望があるのだ!!」(Episode.50)
データ
概要
住人は雨が大好きだというレイン星出身の死の商人。一人称は「私」。
知能に優れた宇宙人は数いれど(ゲルマー星人等)、彼等レイン星人はとりわけ秀でていて「宇宙一頭が良い」と言われる程。
アブレラはレイン星人の中でも特に優れた頭脳を持っているが、その知性は全て悪事と金儲けのために使われている。
ちなみに脳以外全ての部分を改造したサイボーグで、頭部にシリンダー状のカプセルを被った奇妙な恰好をしているのはその内部が脳を守る培養液で満たされているから。
通常形態ではきちんと腕が存在しており、飛行形態に変化すると腕とマントが同化して翼になるという仕組みである。
宇宙犯罪者アリエナイザー達に巨大ロボ「怪重機」や戦闘員「ドロイド」の販売・レンタルを行う他、様々な武器を売りさばいて荒稼ぎしてきた結果、間接的に7つの銀河で惑星間戦争を引き起こし、第12銀河を消滅させたという事態を招いてきた。
金儲けのために時には顧客のアリエナイザーや善良な宇宙人すら利用し、捨て駒に使うことも辞さない。なお、あくまでエージェントに過ぎないためか、顧客の犯罪行為にはノータッチ。露骨に嫌悪感を抱いたのはサウザン星人ギネーカのみ。
また巨大化保険のサービスも行っており、実験と称したジューザ星人ブライディの巨大化やギガンテスに巨大化に必要な体力増強剤を渡している。
表立って行動することはほとんどなく、アリエナイザーの派手な暴れっぷりの陰で暗躍し続けてきたため、デカレンジャーも中盤を過ぎるまで、その存在を把握できなかった。
ちなみに使用する通貨単位は「ボーン」。
宇宙一頭のいいレイン星人はその頭脳を駆使し、技術を次々と開発し星を発展させた。同時にドーピング(決して悪いものばかりではない)などで肉体の強化も行って来た。
そのようにして長い歴史の中で超進化を繰り返していく中、レイン星人は皆違った見た目になり、皆違った理由で星を離れるようになってしまった。そのため、レイン星人程統一性のない宇宙人は存在しないらしい。
宇宙警察が当初彼の出身惑星を特定できなかったのもこのためと思われるが、この点は彼以外のレイン星人が登場していない(近年のように種族名の流用がない限り同族が登場する確率は低い)のでやや説得力に欠け、統一感の無さなら寧ろヘルズ3兄弟やアルゴル星人の皆さんも大概である。それともこいつらを凌駕するくらいに共通点がないのだろうか?(一応リバーシア星人は一人っ子が存在しない、アルゴル星人は全員が機械の体に魂を宿しているという点で共通点が見出せるが)
後のシリーズに登場するカイト・レイドリッヒは出身惑星が不明なままである為、同種族とみる事も出来ない訳ではない上、麻薬王タレワラーネの出身惑星のチーマ星も様々な容姿をした宇宙人の種族の一つだったりする。
「エージェント(仲介業者)」とはいうが結構強く、黒いマントからは衝撃波を発生させ身を守ったり、無数のコウモリになり姿を眩ましたりすることが可能。また腕からの電撃や火球を放つ。
しかし戦闘が本職というわけではない(というか裏で暗躍するのが本分のコイツが表だって暴れることは少ない)ため、実際デカレンジャーと直接戦闘になった回数はEpisode.44、50の2回だけ。
テレビ本編のラスボス担当だが、本人の強さ自体は他のアリエナイザーと大差ないレベルである。
傷害巨大化保険
Episode.06で使用された巨大化手段で、対象をコウモリに噛みつかせることで巨大化させるが、それと同時に我を失ってしまう欠点もある。
リドミハ星人カーサスからの依頼でジューザ星人ブライディに対して使用するが、デメリット故あまり人気・需要がないのか、それ以降は使用されなかった。
劇中での活躍
宇宙全体としては後進の惑星である地球をマーケットにしようとするも、デカレンジャーにより次々とビジネスや顧客のアリエナイザーを潰される。
それでも、中盤まではあくまでも自らの商売を優先し、デカレンジャーや地球署との干渉は必要最低限避けるスタンスを崩さなかったが、Episode.43で「大きな商売」となるはずだった宇宙生物ブラウゴールを使った陰謀をデカレンジャーに阻止されたことで、彼等や宇宙警察に対して本格的な敵愾心を向けるようになる。
結果、Episode.44では「宇宙警察なんて怖くないキャンペーン」を行い、自ら雇ったボクデン星人ビスケスを使って、地球署やデカレンジャーを標的にしたゲリラ的なテロを仕掛け、自らもデカレンジャーと直接交戦すると、宇宙警察に対して真っ向から宣戦布告をした。
そして最終的に地球において被った損失額が100億ボーンを越えるに至り、遂に堪忍袋の緒が切れてEpisode.48において、かねてから計画していた「商売度外視の地球署壊滅作戦」に乗り出した。
クラーン星人ジェリフィス討伐のためにデカレンジャー達が出払っていた隙を突き、この作戦のためだけに開発した最強の怪重機アブトレックス(の移動形態アブトレーラー)でデカベースに突入すると多数のドロイドや、かつてドギーに逮捕されて特殊刑務所に投獄されていた最強最悪のアリエナイザー達で編成した傭兵軍団を率いてデカベースをジャック。
デカベースロボで街を破壊したばかりでなく、それによっておびき寄せた宇宙警察の主力部隊を、衛星軌道上に仕掛けた大規模なバリアトラップで一掃することを目論むという、宇宙警察の信用失墜と壊滅を狙った前代未聞の大犯罪であった(デカベースに関する機密情報はディアマンテ星人ドン・モヤイダ、ギガンテス、ウージョン星人ジンチェ、スピリト星人ビョーイから契約の一環として入手していた)。
しかしバン達デカレンジャーの決死の活躍により、デカベースを奪還された(ジンチェの一件から白鳥スワンが「占拠された際に署内の制御を取り戻す隠し機能」を組み込んでいた)末に「銀河消滅及び惑星間戦争における大量殺人の罪」でデリート判決を受け、デカレンジャーの動揺を誘うために冒頭下段の台詞を口にするが彼等は動じず、レッドは堂々と
「それでもオレ達は信じてる…宇宙に生きてるみんなの中に、正義の心だって永遠に燃え続けてるってな!」
「それがある限り、悪の栄える未来はないんだ!!!」
と反論。そしてディーバズーカでアブレラを撃破。ついに最期を迎え、ようやく引導を渡したのだった。
成り行き上、物語最後の敵=ラスボスになってはいるが、全ての黒幕というわけではないし、彼の関与しない犯罪やアリエナイザーも作中には多数登場する。
アブレラも数あるアリエナイザーの一人でしかなく、彼が言い残したように「宇宙に人間が存在する限り」犯罪は起こり得るし、犯罪が無くならない限り宇宙警察の活動は終わらない。
デカレンジャーの敵は特定の組織ではなく、「宇宙に蔓延する全ての犯罪」なのである。
後続作品にて
『魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー』ではインフェルシアを飛び出した冥獣人デーモンのアボロスを弟子に迎えていたことが判明した。後述の再登場が可能だったため、アブレラの着ぐるみ自体はこの時期でも残っていたはずだが、アボロスとの共演シーンは撮られていない。
『劇場版海賊戦隊ゴーカイジャー 空飛ぶ幽霊船』では、ロスダークにより怨念が呼び寄せられ、イーガロイドらを引き連れてゴーカイジャーを襲撃した。
『特捜戦隊デカレンジャー 10YEARSAFTER』では、カイト・レイドリッヒの手によってクローンとして復活しており、デカレンジャーに復讐すべく巨大化して襲い掛かるも、デカブレイクが操縦するライディングデカレンジャーロボが駆けつけたことで妨害され、ジャッジメントクラッシュとジャスティスフラッシャーの連続攻撃を受けてあっけなく倒された。
彼自身に対する言及はないが、麻薬組織の残党であるジウジッソ星人ロットメンがバーツロイドやアーナロイドを使用していたので生前の彼やその関係者と関りがあると思われるが、アブレラが亡くなった後もその製造工程自体が健在の疑いもある。
余談
通常、スペシャルポリスによるデリートはアリエナイザーを一片の細胞すらも残さずに消し去るのだが、先述のように『10YEARSAFTER』にて彼のクローンが登場していた。そのことから、アブレラの生前に彼と接触したカイトがその細胞を採取し、それを基に培養・改造して作り出したものと思われる。とはいえ、アブレラの唯一生身である脳から採取できた(もしくはサイボーグ化前に採取したと思われるが)あたり、両者の合意があったのかもしれない。
脚本の荒川稔久は初期のインタビューで「徐々にアブレラの背後にある組織を出していく」と語っていたが、最終的にはアブレラ自身が黒幕ということになった。先述する断末魔のセリフはその設定の名残である。デザイナーの森木靖泰も黒幕がいることを前提でデザインしていた。また、実際に海外版では彼の背後にボスがいたりする。
名前の由来はumbrella(英:雨傘)。種族名のレイン星人(英:雨)や彼が劇中で使っていた金額の単位・ボーン(英:骨。恐らく傘の骨とかかっていることから、レイン星の通貨単位と思われる)と併せて、蝙蝠傘に引っ掛けたネーミングである。
また、「レイン星人アブレラ」の本名(「街を引き起こされた悪事に曇らせ、嘆き悲しむ人々の涙雨に泣き濡れる中咲き誇る蝙蝠傘」の意か)は事件が解決した際のバンの決め台詞「これにて一件コンプリート!メガロポリスは日本晴れ!!」(「街が取り戻された平和に晴れ渡り、人々に笑顔が戻った光り輝く晴れ空なら蝙蝠傘はもう必要ない」の意か)と対句になっているととれるかもしれない。
また、『特捜戦隊デカレンジャーVSアバレンジャー』で読んでいた書籍は小学館から販売されていた公式書籍『愛蔵版 爆竜戦隊アバレンジャー超全集』である(いわゆるメタネタ)。
声を担当した中尾氏は『電子戦隊デンジマン』第26話にて吹雪豪役で俳優としてゲスト出演しており、スーパー戦隊シリーズへの出演は24年ぶりとなる。怪人の声優としての出演はこれが初であり、6年後の『天装戦隊ゴセイジャー』では流感のウチュセルゾーを、11年後の『手裏剣戦隊ニンニンジャー』では晦正影の声を担当した。
作中で登場するアリエナイザーに『怪重機の提供』という形で犯罪幇助を行っているためか、デカレンジャーのOPでは歌い出し(Aメロ)に入る前の段階で映し出される地球の背後に大きく映っている。
関連タグ
レイン星人アブレラ:表記ゆれ。公式サイトの紹介ではこの表記も名前として併記されており、作品終盤でアブレラの正体が明らかになった際宇宙警察側はこの名称で呼称している描写もあった。