エール団
えーるだん
『ポケモン剣盾』の舞台であるガラル地方で活動するトレーナーの集団。
主人公のライバルであるマリィの過激ファンで、彼女の応援だと称してガラルの各地でホテルの受付妨害や道路の封鎖などの迷惑行為をしている厄介者集団。前作の悪の組織のようにヤンキーのような風貌が特徴で、全体的には黒とマゼンタで構成された腹部の開いたパンクロッカー風の服装を着ている。
ついでに男性は小太り体型でY型のブブゼラを持っており、女性はマリィがデザインされたタオルを持っている。(※)
話し方にもやや特徴があり、「ありえる」等、語尾に「える」と付く言葉では、「ありえーる」といった具合に伸ばして話す癖がある(恐らく、組織名の“エール”団とかけているのだろう)。英語版では特徴的な語尾はない代わりに、マリィと同様ウェールズ訛りのイギリス英語で話している。
平然と迷惑行為を行うならず者の集まりであることに間違いはないが、その一方で世界征服等の大それた野望や危険な思想を掲げて行動していたり、何らかの脅威的な技術力を所有していたりする訳ではないようなので、前作の悪の組織のように彼らのバックに黒幕(リンク先ネタバレ注意!)がいるのではないか、若しくは黒幕の都合の良いように利用されているにすぎないのではないか…と考察する向きもある。
(※あくタイプのポケモン達を使ってバトルしたり、人々のポケモンを奪う悪い奴らがいたこともある。)
モチーフはサッカーの試合会場で過激な迷惑行為を行うファンの総称である『フーリガン』では無いかと言われている。(ちなみに、サッカーの発祥もガラルのモデルであるイギリス(厳密にはイングランド)とされている)
一部ファンからはマリィが現れた際の反応から『厄介オタク』や、日本のプロスポーツ観戦においても見られる球場やスタジアムで過激なヤジを飛ばすような迷惑なファンに例えられるが、元ネタとされるフーリガンはそんな生温いものではなく、場所を問わない、凶器で武装しているなど手段を選ばない傾向にある上に、対戦相手の選手たちが利用するバスやホテルを襲撃したり、国民戦線やネオナチ等の極右やテロリストなどの過激派組織に組したり、国内の反社会的勢力から活動の援助を受けていたり、外国人や人種への差別的言動や単に暴れる事そのものが目的になっている者も多く、イギリスやイタリアなどのヨーロッパ諸国では大きな社会問題になっている。
悪の組織のモチーフに使われてもおかしくはないだろう。
実際作中でも、ジムチャレンジャーたちの宿泊するホテルロビーで暴れてチェックインを妨害したり、ジムチャレンジャー追跡のため通りすがりの人物から自転車を強盗しようとしたり、ジムチャレンジャーたちの襲撃や妨害に勤しむなど、今までの悪の組織に比べれば不良の非行同然ながら、文句なしに悪の組織と言って良く、不良のような外見に反しない犯行を繰り広げている。
本作におけるオフィシャルなポケモン勝負は地方をあげてのスポーツという位置付けである為、エール団がスポーツ関係の過激派を元ネタにしているとされるのはある種の必然だったのかもしれない。
また、日本も発売の直前までラグビーのワールドカップが開催されていたり、翌年には東京オリンピックの開催を控えていたりと、スポーツの祭典が立て続けに開催される予定が組まれていた事から、ある種の時事ネタとも言えるかもしれない。
組織名は、英語版の綴りだと『Team Yell(チームエール)』。
『Yell』(エール)は「強く叫ぶ」といった意味の単語。特に『shout』よりも強い叫びを表す。
日本語の感覚で訳すなら「応援隊」などとなるだろうが、本来の英語の意味としては少し異なる。
『Yell』はアメリカやカナダでは「歓声」や「声援」などの状況で使われ、日本では転じて「応援」を意味するとてもポジティブな言葉として扱われているが、元々は「特に強く大きな声を発する」という意味の単語で、ネガティブな使われ方もよくあり「怒鳴る」「わめく」といった表現にも用いられる。
例えば短く「yell at」と言うだけでは「怒鳴りつける」と言う意味合いにもなる。
特に日本では応援することを「エールを送る」とも表現するがこれは日本独特の使い方とされる。本来Yell単体で応援を意味する言葉ではなく、英語で「日本語でのエール=声援を送る」ことは「cheer(チアー)」(チアリーダーのチア)と言う。
『Yell』の言葉の主体は「強く叫ぶこと」なので、『Team Yell』をあえて直訳するなら「大声団」や「叫び隊」などとなるだろう。
なお中国語でのエール団は「吶喊隊」。中国語での「吶喊」の意味も「叫ぶこと」で英語のYellに近い。ただ吶喊という表現は概ね、大声をあげて掛け声をかけるときなどの「勢いをつけるための叫び声」に対して使われる表現とのことで、応援というニュアンスもある。
ちなみにガラル地方モデルのイギリスではスポーツ観戦のお供に上面発酵で醸造されるビールの一種【エール】が好まれて飲まれる傾向があるなど、あるいは「アイルランド語でアイルランドの国名"Eire"(Éire/日本語表記でエール)」など、もしかしたらそうしたものとのダブルミーニングなのでは?とも考えられている。
特に応援対象のマリィは訛りのあるキャラ≒典型的な地方出身のキャラ付けで「英語の訛り」に当てはめることでアイルランド関係の推理も浮かぶ。
ただしガラル地方はブリテン島モデルの部分のみでアイルランド島にあたる部分は今回無く、マリィの出身地とされるスパイクタウンのモデルと推測されている場所は、地図上の位置関係からウェールズのランディドノーである可能性が高い。
何らかの大きな目的や、あるいはその裏に危険な黒幕の存在があるのではないかと思われていたエール団。
しかしその正体は、スパイクタウンジムのジムトレーナーであり、エール団のマークは、このエンブレムを縦向きかつ鏡像反転させているに過ぎない。エール団のしたっぱのほとんどがあくタイプ使いなのもスパイクジムがあくタイプのジムだからであり、パンク風の衣装もパンクロッカー風の格好であるジムリーダーのネズに合わせた物である。(ちなみに、今までは悪の組織の団員との戦闘が実質的なあくタイプのトレーナーとの戦いの役割を占めていたため、あくタイプを専門とするジムの登場はシリーズ初。)
ジムトレーナー故にしたっぱながら実力はそこそこで終盤ではマニューラやドラピオンと進化が遅かったり、進化条件が特殊なポケモンを繰り出す者もいた。
彼らはマリィの事は勿論、ジムリーダーであるネズの事も純粋に慕っているのだが、自分達の暮らすスパイクタウンが徐々に寂れていくのを憂いていた。これは、スパイクタウンにはダイマックスを行えるスポットがなく、他の街に見られる大量の観客を収容できるジム戦用の巨大なスタジアムが存在しないことも理由の一つだと考えられる。ローズからは別の場所にジムを移すなどの提案も受けたらしいが、ジムリーダーのネズはそれを拒み、スパイクタウンの奥にあるコートのような場所でジム戦を行なっていた。
そんな中、ポケモントレーナーになったばかりのマリィがポケモンリーグチャンピオンになれば、一種の町興しになると考えた彼等は、彼女を熱狂的に応援する集団・エール団に扮し、主人公を始めとする他のリーグ出場を目指すトレーナー達の妨害行為をしていたのである。
すなわち、彼らの素性としては初登場時に説明されていた通り「ただの超熱狂的なマリィ応援団」であり、それ以上でもそれ以下でもなかったというのが真相である(英語版でマリィと同じ訛りで話しているのも、ある意味では彼らの正体の伏線の1つだったと言える)。隠された野望も裏から糸を引く黒幕も存在せず、表向きのリーダーすら存在しない、到底悪の組織とは言えないような単なるチンピラやゴロツキの集まりだったのである。
あくまでもマリィとネズを立てるためだけにあるというのがエール団の実態で、団員たちが自主的に彼女らをサポートするために生まれたボスを持たない組織であるが、強いて挙げるなら彼らの所属するジムのリーダーであるネズが、実質的なボスだったとも言えなくもない(本人は事の詳細について、スパイクタウンでの騒動が起きるまで全く気付いていなかったようだが…)。
今作にも壮大な野望を秘めた組織としてはマクロコスモスが存在しているが、前作のスカル団とエーテル財団のように「団員が意図せず利用されていた」と言ったこともなく、エール団の団員たちは「マリィに勝って欲しいからマリィを応援し、マリィの敵は妨害する」という主義に徹頭徹尾準じていただけ、実際の活動もただその主義をひたすら貫いていただけ、それによる影響なども彼らが意図していたものそのものであった。(強いて言うならマクロコスモスの総帥も彼らも「愛する故郷の危機をなんとかしたい」と思うあまり暴走していたという点では共通している。)
ポケモンとの仲間意識も本物で、悪の組織であるにも拘らずポケモンを虐げたり、道具扱いしたりはしておらず、主人公やホップにバトルで負けた際には捨て台詞等も吐かずに潔くその場から退散したり、中盤ではスナヘビの邪魔をしないよう気を遣い、主人公にもそのことを注意する等、悪人にしては不自然な点も散見され、早い段階から彼らが本当に悪人なのか疑問に思い始めたプレイヤーも多かったことだろう。
当のマリィは、エール団の妨害行為が自分の為だった事は知らなかったようで、団員がスパイクタウンの入り口のシャッターを閉めてマリィ以外は入れないようにした際も、マリィに思惑が見透かされ、あくまでも正々堂々と勝負することを望んでいたマリィにやり方を「そんなの応援じゃないし!」と叱責される事になった。
その後、マリィと共に主人公がネズにジムバトルを挑むのを見届け、彼が主人公に負けた際には本気で悲しんでいる姿からも、ネズがどれだけエール団となっていたジムトレーナー達に慕われていたのかが理解できる(その一方で、ネズに勝利したことを素直に称賛してくれる人物もいた)。
すべてが発覚した後、エール団のメンバーは、マリィがチャンピオンになるのを純粋に応援する集団となっており、またトーナメント終了後に発生したとある事件で、ダンデがローズの元へ行ったきり戻らなかった際は、ネズの号令に従って人数の利を活かす形でローズタワーへ行く為の協力もしてくれる。
以上の事からも、エール団としての非行が迷惑行為で、決して許されないものであったのは確かだが、彼等自身は基本的には根っからの悪人ではなかったと言える。
その暴走は、「寂れていく自分達の故郷を何とかしたい」という切実な郷土愛が、行き過ぎた方向へと進ませてしまったものだったと言え、何処の国でも寂れて人がいなくなっていく町は必ずあるという事実を踏まえると、決して他人事の様に考えてはいけないかもしれない。
エール団の所属団員はスパイクタウンジムのジムトレーナーであり、そういう意味ではジムリーダーであるネズがボスと言えなくも無いが、当のネズ自身はエール団の活動を全く把握しておらず認知も指示もしていない為、明確な名ありの主導者が存在しないシリーズ初の悪の(?)組織といえる。
とはいえ彼らは熱狂的なマリィファンであると共に、その目的はあくまでも町興しであるという事から、ある種のステルスマーケティングを目的とした組織だともいえる。
自分たちの応援したい物のために、ファンを装って他者を貶めて、あちこちのファンフォーラムなどを荒らし回る集団は、昨今のネット上でも良く見かける自然発生的な「悪の組織」だろう。
その上で、自分の好きなもののためなら無関係な人々へ迷惑をかけ、他人を妨害し、その夢や目標を踏みにじっても良いなどという悪にならぬよう、しっかりと我々は自戒していく必要がある。
アニポケでは新無印編第99話で登場。ポケモンWCSのためガラル地方にやってきたサトシとゴウに対して、(マリィを不戦勝にしたいがために)「試合会場がシュートシティからスパイクタウンに変わった」と嘘をつく。その後、何とか本当の会場に辿り着いたサトシを見てブーイングを起こすも、マリィに一喝される。
サトシとの接戦の末にマリィは負けてしまったものの、「とてもカッコ良かった」と感動していた。
なお、新無印編の舞台の都合かエール団の出番はこの回が最初で最後となってしまっている。
ポケモンマスターズではそのなんとも言えない立場ゆえか悪の組織としてカウントされたりされなかったりしている。メインストーリーの悪の組織編をクリアした際に取得できるエンブレムには各世代の悪の組織のエンブレムが入っておりそれはガラル編でも例外ではないのだが、ガラル編のエンブレムは黒幕のマクロコスモス共々エール団のマークが入っている。また悪の組織編最終章のPVにこれまでの悪の組織の行動や関係図がまとめられているがエール団もしれっと入っていたり、最終章で勢力が拡大したロケット団に対抗するために各悪の組織が戦うシーンではネズとマリィ達も戦力に入っている。
一方でゲーム内のキャラクターのチームスキルに「悪の組織」というものがあるのだが、エール団と深い関係のあるネズやマリィはそのチームスキルを所持していない(元スカル団用心棒だったグラジオや組織として大々的に動かなかったローズ一派はこのチームスキルを所持している)。パシオでもエール団は基本的にマリィとネズの熱狂的な応援団として動いているようでエール団が厄介者や敵対者として描写されることはない。
ビート、シーソーコンビ、クララ、セイボリー…同作におけるヴィラン仲間。
俺ら…画面の前にいるプレイヤーを含めればポケモン史上でも最大規模の敵組織とも言える。
キュアエール…エールの名を冠したプリキュアであり、応援繋がり。次作ではスターの名を持つ者が登場している。また、彼女の過去の境遇はあちらに近い。
歴代の悪の組織
ロケット団 第一 / 二世代
ギンガ団 第四世代
プラズマ団 第五世代
フレア団 第六世代
スカル団 第七世代
荒廃した街を拠点にし、目的の為なら他者に迷惑を掛ける事も辞さない敵組織。
レインボーロケット団 第七世代(ウルトラサンムーンのみ)
野盗三姉妹 第八世代(LEGENDSアルセウスのみ)
スカル団やエール団同様本当の敵が別にいると言う共通点があるが、こちらは特定の拠点を持たず、自分勝手に生きるべく各地の物品や所有ポケモンを盗もうと行動している敵集団。
スター団 第九世代
スカル団やエール団と同様の不良集団でストーリーにおける本当の黒幕が別にいると言う共通点もあるが、こちらはパルデア地方各地に拠点を持っている。
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