概要
ギリシャ神話を題材にしているがストーリーはほぼオリジナルであり、一部の国ではタイトルが変更されるなどの賛否両論を呼んだ(とは言え、原作のギリシャ神話を再現しようものなら現代の昼ドラも真っ青のドロドロ愛憎劇をディズニー作品で映像化しなければならないという事情も考慮すると、オリジナルのストーリーを展開せざるを得なかったのかもしれないが……)。
その辺り『ヘラクレスの栄光』や『光神話パルテナの鏡』も似た系譜にあると言った所か。
ストーリー的にはスーパーマンのそれにとても近い。
『キングダムハーツ』ではこの作品をモチーフにしたワールドが『KH3』までの『KH』シリーズにおいて1作品(『KH3d』)除くの全ての作品で登場している。それ以外のディズニー作品ではあまり注目されていない若干不遇な作品でもある。
しかし本作のヴィランであるハデスは例外的に人気が高く、ほかのディズニー番組にも結構な頻度で登場している。特にヴィランズをメインに置いたツイステッドワンダーランドではマレフィセントやジャファーなどの有名なヴィランズと並んで、彼をモチーフにしたキャラ達が登場している。
主人公の日本語吹き替えの声はTOKIOの松岡昌宏が務めたことで話題になった。
1988年公開『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』で初めて主人公の吹き替えが声優以外を起用し、それ以降も何度か著名のタレントを起用されていることが多いが、本作では日本語吹き替えの主演声優で初めてジャニーズ事務所の所属アイドルが起用された作品である。
テレビシリーズでは他のディズニー作品からゲストが登場する事があり、『アラジン』からはジャファーが登場している。
あらすじ
世界が誕生した頃、タイタン族が暴れ世界は荒れ果てていたがオリュンポスの神々の王ゼウスによって封印された。
長い月日が流れゼウスに息子のヘラクレスが生まれ、多くの神々が集まりヘラクレス誕生を祝った。しかしオリュンポスの支配を企む死者の国の神ハデスは将来邪魔になるのではないかと思い快く思っていなかった。
そこに現れた運命の女神の話によるとタイタン族を復活させればゼウスを倒せるとのこと。しかし同時にヘラクレスがその邪魔をする事を知らされる。
そこでハデスは手下のペイン、パニックにヘラクレスを暗殺のため下界に誘拐させ薬で人間にしてしまったが、最後の一滴まで飲まなかったため暗殺に失敗。下界で人間夫婦に拾われそこで育てられることになった。
成長したヘラクレスは自分の怪力を制御できずトラブルを起こしてしまう事に悩みながら過ごしていたが、両親に本当はゼウスの子と言う事を知らされた。ゼウスの神殿で実父ゼウスと再開したヘラクレスは神になるには本当の英雄になるしかないと知らされ、修行が始まった。
キャスト
CVは上段がオリジナル、下段がKHシリーズの担当者
ミューズ
挿入歌と物語の語り手担当。ヘッドバンドで髪をまとめたカリオペ、小さなポニーテールを作ったクレイオー、長い巻毛のメルポメーネ、縮れ毛のテルプシコーラ、小太りなタレイアの5人が登場。
CV:松岡昌宏(TOKIO)、秋山純(ジャニーズJr.)(少年時代)
ゼウスの息子で神々の一族だが、ハデスの策略で殆ど人間に変えられてしまいオリュンポスを追われ下界で暮らしている。愛称はハーク。一生懸命で誠実な性格だが、怪力のためそれを制御できずトラブルを起こす事もザラ。本人にとっても周囲にとっても悩みの種。自分がゼウスの息子と知らされ、ゼロからヒーローを目指す修行に出る。
神話的には、例えばアリエル等とも親戚になる。
メグ
CV:工藤静香
CV:松本梨香
川の番人ネッソスに囚われていたところをヘラクレスに助けられた謎の美女。その正体はハデスの部下。恋人の命を救うためハデスに魂を売ったが、裏切られて男性不信になりハデスに下った経緯がある。
しかし次第にヘラクレスの誠実さと優しさに惹かれていき頑なな心を開いていく。ヘラクレスの事を「ワンダーボーイ」と呼んでいる。色仕掛けで様々な男や怪物をハデス側に回していて、フィルからは性悪と言われているが根は純真無垢な恋する乙女。
モデルは神話におけるヘラクレスの初妻メガラ。
ちなみにKHシリーズに登場時の名前はメガラになっている。
フィル
CV:永井一郎(KHでも担当しているがKH3では永井氏が死去しているためセリフ無し)
本名ピロクテテスのサテュロス。過去に多くの英雄を育て上げてきたがことごとく失敗。諦めかけていたが彼の前に現れたヘラクレスに最後の夢を託し彼をヒーローに育てる事にした。女好き。
原典においてピロクテテスはヘラクレスの弓を受け継いでトロイア戦争に参加した英雄であり、本作のフィルの役回りは完全にケイローン先生のそれである。(過去の教え子にアキレスがいたと語っているが、原典の時系列的にはアキレウスがヘラクレスの弟弟子ある。)
ヘラクレスの忠実な愛馬。ゼウスがヘラクレスのために雲から作った。身も軽いがちょっぴり頭も軽い。
本来はヘラクレスのご先祖様であるペルセウスの愛馬。
なお、原点の神話で雲から作られたのはケンタウロスである。
CV:若山弦蔵(KHでも担当)
神々の王でヘラクレスの実父。神話の様な浮気っぷりは見せない。どうしてこうならなかった。ヘラクレスがさらわれた際連れ戻そうとしたものの、すでに人間の姿になってしまったため、あきらめざる得なかったが、18年後、ヘラクレスが訪れた神殿のゼウス像に宿ったことで再開を果たす。
CV:池田昌子
ゼウスの妻で、神話と異なりヘラクレスの実母。ゼウスに浮気性がないためか、性格は残忍だった神話と打って変わって温厚。息子の名前の由来(ヘラの栄光)が神話以上にしっくり来るのは何とも皮肉である。
こうした大胆な改変が行われたのは、全世代が見るディズニー映画に原典のキャラクター性がそぐわなかったからだろうか…?
原典の神話でヘラクレスの母親だったのはアルクメネという人間の女性である。
アンピトリオンとアルクメネ
ヘラクレスの人間界での養父母。子供に恵まれなかったがハデスの企みにより人間界へ落とされたヘラクレスを保護し養子にする。自身のあり方に思い悩むヘラクレスを受け入れ、快く旅へと送り出した人格者である。
アルクメネは原典ではヘラクレスの実母、アンピトリオンは義父の関係にあたる。
CV:嶋田久作(KHでも担当)
死者の国の神。ゼウスを敵視しており彼を蹴り落としオリュンポスの王になる事を企む。半人間になったヘラクレスを部下が殺し損ねたため怪物をけしかけ抹殺しようとする。実質的に神話におけるヘラ役。髪の毛は青い炎になっており怒ると赤くなるが、ペガサスに吹き消された際にはスキンヘッドになってしまった。性格はどこぞの冥府神ばりに軽いが残忍。
キングダムハーツでは隠しボスでありその時期の関係でオピニオンリーダーやラスボスよりも強い。
初期には数々の個性的なデザインも存在した。
ディズニーのハウス・オブ・マウスシリーズには比較的多く出演しており、彼をメインゲストにした回や眠れる森の美女のマレフィセントとの恋愛も描かれたこともある。
原典のハデスはここまで残忍ではなく、むしろヘラクレスの十二の試練ではケルベロスを貸し出したいというヘラクレスの要求を承諾してくれた協力者である。
ペイン&パニック
CV:チャップ(ペイン)、パグ(パニック)(フーリューズ)
ドジで間抜けな頼りないハデスの手下。赤いほうがペイン、青い方がパニック。変身が得意。前述の性格のため作戦はことごとく失敗している。
パニックの語源については、テュポーンを参照。
CV:津田延代(ラケシス)、京田尚子(クロト)、磯辺万沙子(アトロポス)
ラケシス、クロト、アトロポスの三女神で一つの目を3人で使っている。過去、現在、未来を見通せる。ハデスが遅刻した理由もお見通しだった。ハデスに助言をする。外見は女神というより魔女に近い。
冥府の番犬で3つ首。今回では活躍の場が殆どないがキングダムハーツではクラウドを蹴散らす等少しは活躍の場を見せた。
ハデスがヘラクレスを倒すために誘き寄せた谷に住む魔獣。首を切断するたびに増えて行く。体内には毒があるらしくヘラクレスはこの毒で意識がもうろうとした。
河の番人たるケンタウロス。メグにちょっかいを出していたところをヘラクレスに退治された。
なお、原典だとヘラクレスが死ぬ原因を作った張本人である。また、この時の妻はメグのモデルとなったメガラではなく、ニンフのディアネイラである。
モブとして登場する神様達
作中にモブキャラとして登場する神様達。キャラクターデザインにはそれぞれの神様に関する逸話が反映されていることが多い。
- アフロディーテ:ナイスバディな女神。
- アテナ:全体的に体が青暗く、梟を侍らせた女神。
- アレス:全身が真っ赤な鎧を着た戦神。
- アポロ:赤い鎧を見にまとう紫色の肌をした神。肌が紫色なのは太陽の黒点を意識したからだろうか。ちなみに名義はローマ神話でのもの。
- ヘルメス:羽根兜を被った小柄な神。サングラスがトレードマークで今作のコメディリリーフの一人。
- バッカス:原典が酒の神様なのか、小太りで鼻が赤い。アポロ同様にローマ神話名義での登場。
- ポセイドン:肌が青く、頭から魚のヒレが生えた槍を持つ神。顔は意外と可愛い。
- デメテル:頭から野菜の葉が生えた緑色の女神。
- アルテミス:鹿を世話している、狩の女神。
- ヘパイストス:アフロディーテの隣にいた褐色肌の神。あまり容姿がよろしくないとされる神話から一転、中々のイケメンに魔改造されている。
- ヘスティア:頭にフルーツを乗せた女神。
- ナルキッソス:紫色の肌をした神。手鏡片手に自分の姿にウットリしていた。元ネタの神話では神様ですらない人物。
- キューピッド:天使の姿をしており、弓矢の手入れを行う。
この他にも実に多くの神様が登場し、中にはマイナーな神様もちらほら。
その他の怪物達
ご存知獅子座のモデルたる人喰いライオン。最後はヘラクレスにぶん投げられて退場した。
出番はこれだけで、ヘラクレスの被る毛皮役としては後述の通りスカーが出演した。
原典ではヘラクレスの武器を悉く無効化し、肉弾戦に持ち込まざるをえなかった程の強敵。
アルカディア地方に住んでいる巨大な猪。神話では生け捕りにされたが、本作ではヘラクレスにより射殺され、フィルのご馳走になってしまった。
ドラゴンの様な怪物
ギリシャ神話には竜が多数登場するが、どの竜がモデルなのかは不明。原典の神話におけるヒュドラの役回りで登場する。ヘラクレスに倒される。
なお、原典の神話にはラードーンというドラゴンも登場するが、彼は水に棲むドラゴンではない。
集団で生活する原典とは異なり一体だけ登場。ペガサスに乗ったヘラクレスに勝負を挑むが、生け捕りにされてしまった。ちなみに原典だと矢で射殺されている。
原典でヘラクレスが倒してすらいないモンスター達。3人仲良くヘラクレスに敗れて山積みにされた。
なお、ミノタウロスを倒したのはテーセウス、メドゥーサを倒したのはペルセウスである。というかグリフォンはギリシャ神話にあまり登場しておらず、精々が神々の戦車を引く聖獣扱いである。
ただしこの中で密接にヘラクレスと関わりがあるのがミノタウロスで、彼の父親はヘラクレスがクレタ島で生け捕りにした雄牛である。
テレビシリーズでは、美女のメデューサが登場している。
タイタン族
かつて下界を荒らし回っていた巨神族。ゼウスに封印されたがハデスが運命の女神の助言に従い復活させた。最後はヘラクレスによって宇宙に放り出されて爆発したが、彼らも神々なので死んでいない可能性もある。そもそも、幽閉されていた際も密閉空間に一緒にいたため、トルネードタイタンに吸い込まれただけで爆発して死ぬ方が変かもしれない。
一応はオリンポスの神々の親類であり、ゼウス・ハデス・ポセイドン等からしたら叔父たちになる。劇中での行動は子孫である巨人族のそれに近い。テレビシリーズでは他のタイタン族も登場している。原典のように特定の神名が与えられているわけではなく、名称はサイクロプスを除いて全て属性名で統一。
ロックタイタン
キングダムハーツによると頭が2つなので一つの事を考えるのが苦手らしい。また、ハデスを差し置いてハデスカップ1位に輝いている。能力値だけなら作中最強。しかしFMで追加されたセフィロスには敵わない。
アイスタイタン
氷でできた細身の巨神。冷気を吐く。ラーバタイタンとタッグを組んでゼウスを閉じ込めた。
キングダムハーツではFMで追加された。ロックと並び能力値はセフィロスに次いで二番目。
ちなみに、BbSではハデスによって生み出された「アイスコロッソス」という偽物が登場するが、シナリオ進行上必ず倒す敵という事もあって本物と比べると非常に弱い。
ラーバタイタン
マグマでできた巨神。マグマを吐く。アイスタイタンとタッグを組んでゼウスを閉じ込めた。
トルネードタイタン
竜巻の様な巨神。腕をより小さな竜巻に変えることもできる。オリンポスの神々を捕えた。
CV:郷里大輔
一つ目の巨人でタイタン族で唯一有機的な体を持つ。ハデスにヘラクレスを倒す様に依頼された。
原典では神々の武器を作る鍛冶屋さん…要はオリュンポスの神々の味方である。敵役となったのはオデュッセイアの影響だろうか。
余談
- スカーの毛皮が登場するが、一瞬だけ登場したネメアの獅子がスカーの先祖ではないかという考察を行う者もいる。
- 劇中ではさまざまなパロディシーンが登場する(例:劇中歌「恋してるなんて言えない」では、歌担当のミューズ(ムーサ)がホーンテッドマンションの歌う胸像に扮している)。他には『アラジン』のスタッフが製作した為か、劇中でヘラクレスとメグがデートをした場所に酷似したところが、アラジンとジャスミンの魔法の絨毯デートの途中にも出ている。
- 東京ディズニーランドでは映画公開に合わせて、スペシャルイベント「ヘラクレス・ザ・ヒーロー」が開催されたことも。但し声優は大人の事情で映画版とは異なりヘラクレスは松本保典、メガラは松本梨香が演じており、KHシリーズでも続投している。その後、東京ディズニーランドにおいてヘラクレスは「ディズニー・オン・パレード/100イヤーズ・オブ・マジック」(メガラも登場)「ワンス・アポン・ア・マウス」(前期のみ)に登場したが現在行われているショーやパレードには登場していない。一方でハデスは、ディズニー・ヴィランズとして「ミッキーのギフト・オブ・ドリームズ」、「ディズニー・ハロウィーン」などで主人公のヘラクレス以上にショーやパレードに登場している。ハデスの声は映画版の嶋田が続投しているが、初期は千葉繁が代演していた。
- 本作の監督を務めたジョン・マスカーとロン・クレメンツがその他の声の出演に参加している。
- 1998年にテレビシリーズも制作された。2005年夏にリリースされたDVD「ディズニー・ヒーローズ ヒーローへの道」にもターザンと一緒に収録されている。
関連項目
キングダムハーツ:毎回この作品のキャラが本作のキャラと共演している。
サイコメトラーEIJI:ヘラクレスを演じた松岡は本作でも主役を務めた。メグ役の工藤静香は、後に1999年に放映された『サイコメトラーEIJI2』でも松岡と共演している。