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表現の自由戦士

ひょうげんのじゆうせんし

日本国憲法第21条第1項および第2項において規定されている国民の権利である「表現の自由」を守るために活動している人々の事を表すネットスラングである。
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概要編集

日本国憲法第21条第1項および第2項において規定されている国民の権利である「表現の自由」を守るために活動している人々のことである。

表自戦士または表自戦の略称も散見さる。


主に漫画やアニメなどの萌え絵の表現の自由を主張したり、アダルトビデオ規制に反発するなど、性的表現の発表・閲覧の個人の自由を哲学としている。

その他のあらゆる表現規制検閲言葉狩りに反対する立場を取る事を信条としている。


尤も「表現の自由」についてはありとあらゆる表現が憲法で保証されている訳ではなくいくつもの判例が存在している。例えば誹謗中傷に当たるような表現は名誉毀損損害賠償の対象となりうる。

例として柳美里の小説第1作(『新潮』1994年9月号初出)『石に泳ぐ魚』(いしにおよぐさかな)は、同年12月、柳はこの作品のモデルとなった女性により、プライバシー権及び名誉権侵害を理由として損害賠償、出版差止めを求める裁判を起こされている。

言論・表現の自由に関する裁判(Wikipedia)

石に泳ぐ魚(Wikipedia)


また、近年はAIイラスト等の登場により、著作権侵害等著作権者に不利益をもたらす表現の是非や、「決済ブランド(クレジットカード会社)による表現規制」により「決済仲介停止」と圧力をかけてプラットフォームに対して事実上の表現規制をさせる事例も起こっており(FANZAやpixivもその影響を受けている)議論の対象となっている。



その変遷(日本国内)編集

権力者が風紀を取り締まる名目で出版物を規制する歴史は古く、表現の自由を求める者の戦いもまたここに書かれている以上に存在する。


チャタレー事件(1951年~1957年)編集

イギリスの作家D・H・ローレンスの作品『チャタレイ夫人の恋人』を日本語に訳した作家伊藤整と、版元の小山書店社長小山久二郎に対して刑法第175条のわいせつ物頒布罪が問われた事件。日本国政府と連合国軍最高司令官総司令部による検閲が行われていた占領下の1951年(昭和26年)に始まり、1957年(昭和32年)の上告棄却で終結した。わいせつと表現の自由の関係が問われた。


『石に泳ぐ魚』裁判(1994年~)編集

柳美里の小説第1作(『新潮』1994年9月号初出)『石に泳ぐ魚』(いしにおよぐさかな)は、同年12月、柳はこの作品のモデルとなった女性により、プライバシー権及び名誉権侵害を理由として損害賠償、出版差止めを求める裁判を起こされた。

訴訟は最高裁判所で柳側敗訴の判決が言い渡され確定した。

最高裁は被害者の精神的苦痛が倍増され、平穏な日常生活を送ることが困難になる事を指摘し、文学的表現においても他者に害悪をもたらすような表現は慎むべきである旨を、最高裁は判決理由で述べている。


東京都青少年健全育成条例改正案騒動(2009年~)編集

2009年11月、東京都HPに掲載された第28期東京都青少年問題協議会答申素案に、将来的な創作物規制につながる可能性のある記述が盛り込まれていた事から反対運動が活発化した(詳しくは東京都青少年健全育成条例改正案青少年健全育成条令改悪反対の記事を参照)。


2010年頃までは旧民主党や社民党などのリベラル政党が表現規制に対抗していることが多かった。


京都アニメーション第1スタジオ放火事件(2019年)編集

2019年7月18日、京都アニメーションの第1スタジオが放火され、36人が死亡するという痛ましい事件が起きた。

詳細は該当項目記事を参照して欲しいが、表現者の命を奪う事は最大の表現の自由の侵害行為であり、この事件をうけて、世界各国のオタク達が『PrayForKyoani』のタグなどで追悼の意を表明する中、テロ・暴力による表現の自由の侵害に対し『テロには屈しない』というオタクの強い意思を『OtakuWouldNeverYieldToTerror』と表明した。


漫画家・赤松健参議院議員誕生(2022年~)編集

2021年12月16日、漫画家赤松健氏が表現の自由を守るために、2022年夏の参院選自民党から立候補の意志を表明。かつてであれば自民党は規制派のイメージが強く驚かれたものの、2010年代頃より規制派の中心勢力は過激派フェミニスト団体等に移っており、時代の変化を象徴しているといえる(過激派フェミニスト団体については後述の戸定梨香コラボ動画削騒動も参照)。

批判もあったが2022年夏での参議院選挙で赤松健氏は比例トップの52万8千票を集めて当選を果たした。

この結果は表現の自由戦士が本来は規制派である自由民主党などを自主的に支持したこと、自民党なども表現の自由戦士の票を無視できなくなっている事実を表している。


近年では日本共産党などは人権擁護の観点から規制派に回っている。


埼玉県水着撮影会直前中止問題(2023年)編集

2023年6月に埼玉県の県営公園で開催予定だった水着撮影会が、共産党(日本共産党埼玉県議会)の申し入れで開催直前に中止となったことがSNS上で波紋を呼んだ。この中止要請が各方面に損失をもたらすドタキャンに等しい時期だったことで論争を呼び、仕事を奪われる格好となったグラビアアイドルコスプレイヤー達だけでなく、弁当の注文を受けて仕入れも済ませていた弁当店等から抗議の声が上がりSNSで拡散された。損害額の補償が税金で支払われる可能性も考えられている。


しかしながら、この以前から行われていた水着撮影会において事前の取り決めで禁じられていた未成年参加者による過激なポーズによる撮影などがされていたことから市民から予てから苦情が寄せられていたことが判明しており、共産党からの申し入れ以前の問題だったことも判明している。

関連記事(朝日新聞デジタル・2023年6月9日 23時02分)

紆余曲折の挙句結局埼玉県の公営施設での水着撮影会は主催者が規定を守ることで再開される見通しになったが、この際に公園の管理者である県公園緑地会が改めて示した衣装やポーズの規定が発表された。

参照埼玉県公園緑地協会(埼玉県営公園運営団体)が2023年度の水着撮影会開催の許可条件を発表

概ね「小さすぎる水着」や脱ぎ掛けポーズなどがNGとされている。(→さいたまNGポーズ


共産党が求めた中止理由について、法的な観点からも議論が起きている。弁護士の平裕介氏はTwitterで「『都市公園法第1条に反する』という理由で『貸し出しを禁止するよう県に申し入れ』をしたようだが、これは、同法1条の解釈・適用を間違った違法な申入れだと考えられる。不法行為の疑いもある権力者の暴走だろう」、同じく弁護士の戸舘圭之氏も「その論法でいけば下手すりゃメーデーとか赤旗祭りだってダメにされかねないですよ。」と指摘した。


埼玉県公園緑地協会は水着撮影会へのプール貸し出しを禁止した理由について、(1)成人女性であっても過激な衣装や過激なポーズをしていたこと、(2)未成年の出演が確認できたことの2点のルールを守らない水着撮影会があったこと、を理由であるとしている。


ただ埼玉県公園緑地協会の担当者に話を聞くと、(1)の過激な衣装やポーズを禁止するルールは今年1月に決まり、(2)の未成年の出演にいたっては、それまでの利用規約に禁止する項目がなく、県民からのメールを受け、6月頭に急遽決まったものだという。


近代麻雀水着祭が(1)に抵触すると思われる画像はネット上で見つかる一方で、近代麻雀水着祭は6月頭には開催されていない。つまり近代麻雀水着祭が過去に未成年を出演させていたとしても、その時点ではルールを破ってはおらず、そこを問題視するのは後出しじゃんけん、ゴールポストを動かしていることになると、法の不遡及の点から問題視する声も上がっている。

関連記事(デイリー新潮・6/9(金))


これまで県が出してきたルールを厳守してきた団体のイベントも中止を余儀なくされたことに撮影会運営元は怒りを露わにしている。

関連記事(Sirabeeリサーチ・2023/06/09)


『トランスジェンダーになりたい少女たち』出版妨害事件(2023年~)編集

近年はヘイトスピーチ・ヘイト本問題というのがある。

2023年~2024年には翻訳書である『トランスジェンダーになりたい少女たち』の出版を巡り、様々な賛否両論があったが、出版者に対する脅迫事件にまで発展している。

「ヘイトスピーチは確かに社会問題化しているが、ヘイト本のレッテル貼りをして出版妨害をすることは許されるのか?」という問題提起を社会に投げ掛ける事となった。

「トランスジェンダーになりたい少女たち」 発行元や複数の書店に放火の脅迫、被害届提出(産経新聞・2024/3/30)



関連人物編集


VTuber編集

  • おぎの稔東京都大田区議会の荻野稔(みのる)議員が、バーチャルYouTuberVTuber)として動画配信を行うためのキャラクター・おぎの稔(みのり)を発表している。荻野稔議員は漫画・アニメ・ゲームに造詣が深く、政治家として表現の自由に関わる活動をしており、2010年に東京都で起こった表現の自由を巡る問題(東京都青少年健全育成条例改正案)では、市民団体側に参加した。
  • 戸定梨香:一時期千葉県警とのコラボ動画を出していたが、「性的で不適切だ」という理由で全国フェミニスト議員連盟という国会・地方の議員連盟の抗議により、コラボ動画が削除されてしまう。これに対してネットでは日本国憲法第21条第1項および第2項において規定されている国民の権利である「表現の自由」の侵害であると、全国フェミニスト議員連盟への批判・抗議が相次いだ。

規制派編集

  • 石原慎太郎:(1932年-2022年)は、日本の元政治家・作家。漫画・アニメ方面では、東京都青少年健全育成条例などの関係で反発が根強く、アンチも多かった。表現の自由戦士が漫画・アニメ等を重視してそれ以外を蔑ろにする遠因でもある。なお、彼が元作家であったため彼の書いた作品の性描写に対しても「漫画は卑しい仕事だが、太陽の季節は高尚な芸術であるとでもいうのか」と批判の矛先が向かっていた。

関連キャラクター編集


日本国外編集

米国編集

ゲーマーゲート(2014~2015年)編集

アメリカ合衆国で2014~2015年頃起こったゲーマーゲートのように、アメリカでは性表現と差別表現の自由を望む集団による蛮行など、表現の自由戦士を標榜する問題行動を起こす者が多く、ドナルド・トランプ支持者にも多く存在している。しかし後述のように性表現やLGBT表現を規制し弾圧する側にも問題行動が多い旨報道されている。


フロリダ小中一貫校校長辞任事件(2023年)編集

2023年米フロリダ州タラハシーの小中一貫校で小学6年生の美術の授業中にダビデ像の写真を扱ったところ、一部の親から苦情が入った。ある保護者は彫刻がポルノだと訴えたという。


同校では「物議を醸しそうな内容」を教える場合は事前に親の同意を得る方針になっているが、校長はこの手続きをとらなかった。重く見た理事会から辞任か解雇の2択を迫られ、辞任を選んだ。

参照記事


この決定はミケランジェロを生んだイタリアで反響を呼んだ。ダビデ像を展示するフィレンツェのアカデミア美術館のセシリエ・ホルベルグ館長は、AFP通信に「美術史に対する大いなる無知だ」と批判。フィレンツェのダリオ・ナルデラ市長もツイッターで「芸術をポルノと勘違いするのは、ばかげている以外の何物でもない」と非難し、「芸術を教える人は尊敬に値する」として、この学校の教師を招待する意向を示した。

参照記事


この件は米国での性表現への弾圧の根深さ、深刻さを物語っている。


保守派とリベラル派の対立編集

近年アメリカでは保守派とリベラル派の対立により学校の図書館から本が次々と撤去されており、2024年の大統領選挙に向けてもこの問題は争点の1つとなっている。

参照記事(NHK・2023/06/19)


中国編集

治安管理処罰法関連編集

2023年9月6日、香港メディアの星島頭条は、中国の新たな法律が「中華民族の感情を傷つける服装」を禁止することで、中国国内でコスプレが危機に瀕する可能性があると報じた。


東京電力福島第一原発の処理水海洋放出が中国本土で大きな不満を引き起こす中、中国当局は「治安管理処罰法」の修正草案を作成し、人々に公共の場所で「中華民族の感情を傷つける服装」を禁止しようとしており、日本アニメのコスプレや和服が好きな人からは影響を懸念する声が出ている。


中国では昨年、江蘇省蘇州市で日本のアニメキャラクターのコスプレとして浴衣を着て写真撮影をしていた女性が「挑発行為」との名目で警察官に連行される事件が起きたほか、「夏祭り」など日本関連のイベントにも批判が殺到し、相次いで中止となった。

参照記事(ニコニコニュース・2023/09/06)


「表現の自由戦士」を蔑称として使うことの是非編集

純粋に表現の自由を守りたいという理念で活動している表現の自由戦士からは「表現の自由戦士」を蔑称として使うことに批判の声がある。

2023年6月6日、毎日新聞の記事で「キャンセルカルチャーを奪い返す 「表現の自由戦士」は正しいか」という高千穂大学教授の五野井郁夫氏への取材で「弱者の武器であったキャンセルカルチャーが、リベラルな価値の攻撃に使われています。」との内容で


本来ならばキャンセルされる側の人たちがキャンセルカルチャーの手法を用いる逆転現象が起きています。たとえば、女性差別的な表現を守ろうとする、いわゆる「表現の自由戦士」と言われる人たちはその典型です。


との記述があり、表現の自由を守る活動をしている有識者からは、創作物にまで矛先が向かうキャンセルカルチャーを擁護している、表現の自由を最も重視すべき社会の公器新聞が「表現の自由戦士」と揶揄しているとの批判がある。


関連記事(毎日新聞・2023年6月6日)


「表現の自由を守ること」は憲法に定められている国民一人一人の自由と権利の問題であるのに、結局は世間に「保守派とリベラル派の対立」と矮小視されているのでは、という懸念もある。


もっとも、言論の自由・精神の自由・表現の自由などは政治とは切っても切り離せないものなので、このようなことになるのは必然なのかもしれない。


関連イラスト編集

なぜ表現規制に反対しないといけないのか


関連タグ編集

ネットスラング


表現の自由日本国憲法第21条第1項および第2項において規定されている国民の権利。精神的自由権の一種とも言え、この概念は近代憲法の根幹をなしている。


表現規制:社会通念上好ましくないとされる表現を法令などで規制すること。あるいは業界による自主規制により実質表現が規制されること。


表現規制反対 架空創作表現規制反対 リアル図書館戦争 焚書 禁書

こうなっても知らんぞ、という話


有害図書不健全図書:性・暴力・自殺・犯罪などに関して、露骨な、もしくは興味本位の取り上げ方をし、青少年の人格形成に有害である可能性があるとして政府や地方自治体などによって指定される出版物(ゲームソフト等も含まれる)。しかしその有害図書指定の基準に疑問を抱かれるケースもある。


ポリティカル・コレクトネスキャンセルカルチャー:過剰なものは表現規制ではないかと批判がある。


文化戦争:表現の自由戦士が戦っている戦場。


不謹慎厨自粛警察:一部は表現の自由を守ろうとする活動をする者の敵対勢力。彼らのためにテレビがつまらなくなったり自衛隊員レーション赤飯を食べられなくなったりしている。


ゲーマーゲート:アメリカ合衆国であった表現の自由戦士的存在による事件。2014年8月に4chanで始まった運動。「ゲーマーゲート問題はなんと言っても叩かれる、スルーするのがベスト」と言われるほど、ありとあらゆる意見をもつ人が論争に参加し、とてもセンシティブな問題となっている。


OtakuWouldNeverYieldToTerror:2019年7月18日に起こった京都アニメーション第1スタジオ放火事件を受けて、表現の自由を守りテロに屈しないとするオタク達の決意表明である。


sjw:Social Justice Warrior。社会正義の戦士。近年では侮蔑的な意味が強く、表現の自由戦士というネットスラングの語源ともされる。

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