日本鉄道建設公団により建設されていた日本国有鉄道(国鉄)の未成線野岩線のうち、建設工事が進んでいた区間を引き継いだ会津鬼怒川線を運営する第三セクターの鉄道会社。
由来は栃木県の旧国名である下野国と福島県中通り及び会津地方の明治初期の旧国名である岩代国。
以下は運営路線である「会津鬼怒川線」について記載する。
路線データ
路線名 | 会津鬼怒川線 |
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路線区間 | 新藤原〜会津高原尾瀬口 |
路線愛称 | ほっとスパ・ライン |
路線距離 | 30.7km |
軌間 | 1,067mm |
駅数 | 9駅 |
電化区間 | 全線(直流1,500V) |
単線区間 | 全線 |
最高速度 | 80km/h |
閉塞方式 | 特殊自動閉塞式 |
第一種鉄道事業者 | 野岩鉄道 |
概要
新藤原駅(栃木県日光市)と会津高原尾瀬口駅(福島県南会津郡南会津町)を結ぶ鉄道路線。
前述の通り国鉄の未成線である野岩線を引き継いで開業した。
国鉄の構想では、野岩線・会津線(現・会津鉄道会津線)・日中線(廃止)の3線を総称した野岩羽線として栃木県(旧)今市市(現・日光市)と山形県米沢市を結ぶ路線とされていたが、諸々の事情から別々に建設される事となった。
なお、国鉄時代は今市駅〜新藤原駅間に関して東武鉄道との交渉が決裂した場合に備え、並行新線や西那須野への支線の計画も立てられていた。
川治湯元駅から北の区間は人家がほとんど存在しない区間を走る。そのため利用客の殆どは定期外旅客(観光などで乗車する旅客)である。総延長30.7kmのほとんどがトンネルあるいは鉄橋、高架橋で構成されており普通列車でも所要時間はおよそ35分と平地の鉄道と大差ない。
交通系ICカード乗車券には対応しておらず、東武鉄道から継続して乗車する場合は事前に乗車券を別途購入する必要がある。なお起点の新藤原駅は東武鬼怒川線の駅でもある為、野岩鉄道管理駅であるが東武線方向に向かう場合に限りICカード乗車券が利用できる。
山岳路線
栃木県と福島県の県境区間の急峻な山岳地帯を貫いている為、全体的に標高が高い位置を走行している。新藤原駅の標高は425.3m、会津高原尾瀬口駅の標高は722.5m。駅として最も高い場所にあるのは男鹿高原駅で標高およそ765m。
なお同駅は周囲にヘリポート以外何もない為秘境駅としても知られる。
2022年(令和4年)3月12日ダイヤ改正までは辛うじて特急「リバティ会津」も停車しており、周りに何もないだけで毎時1本程度確保されていた為比較的容易に訪れる事が出来たが、同改正で普通列車が大幅に削減。最長7時間程度列車が停車しない時間帯が存在し、訪問の難易度も大幅に上昇した。
クラウドファンディング
2022年8月10日〜10月7日に、唯一の所有車両である6050系100番台改修工事の為のクラウドファンディングを実施。9月13日に目標金額の1,500万円に到達した為、残りの期間でネクストゴールとして2,300万円を目標金額に設定して引き続き行っている。
車両基地
新藤原駅構内に留置線があり、日常検査等の簡易的な作業はここで行われる。東武線との直通運転を行っていた頃は東武鉄道南栗橋車両管区新栃木出張所(現・新栃木派出所)に常駐していた為、同所で行っていた。
しかし大規模検査を行う施設が自社にない為、南栗橋車両管区本区にて検査・修繕を行う。
直通運転
普通列車が1往復だけ東武鬼怒川線に直通する他、東武の特急「リバティ会津」と会津鉄道の快速「AIZUマウントエクスプレス」がそれぞれ乗り入れる。
直通区間は以下の通り。
東武鉄道
会津鉄道
- 会津線:会津高原尾瀬口駅〜西若松駅
東日本旅客鉄道(JR東日本)
2022年3月12日ダイヤ改正まで以下の区間でも直通運転を行っていた。
- 東武日光線:下今市駅〜東武日光駅
なお野岩鉄道には甲種内燃車運転免許(気動車の運転免許)を保有する運転士がいない為、気動車列車は会津鉄道の乗務員が野岩鉄道・東武鬼怒川線まで乗務する。
また電車列車については2003年(平成15年)3月19日以降会津鉄道から乗務を受託されている為、直流電化区間の北端である会津田島駅まで野岩鉄道の乗務員が乗務する。
沿革
- 1922年(大正11年):今市駅〜田島駅(仮称。現・会津田島駅。当時未開業)間が鉄道敷設法による敷設予定路線となる。
- 1966年(昭和41年)5月25日:日本鉄道建設公団工事として着工。
- 1979年(昭和44年)5月11日:運輸省が栃木県・福島県両知事に対し第三セクター方式での運営を打診。
- 1980年(昭和45年)9月22日:栃木県・福島県知事が第三セクター方式での運営を了承。
- 1981年(昭和46年)11月20日:野岩鉄道株式会社設立。
- 1986年(昭和61年)10月9日:会津鬼怒川線新藤原駅〜会津高原駅(現・会津高原尾瀬口駅)間開業。新藤原駅、龍王峡駅、川治温泉駅、川治湯元駅、湯西川温泉駅、中三依駅(現・中三依温泉駅)、下野上三依駅(現・上三依塩原温泉口駅)、男鹿高原駅、会津高原駅開業。東武鉄道との直通運転開始。
- 1988年(昭和63年)10月19日:下野上三依駅を上三依塩原駅に改称。
- 1990年(平成2年)10月12日:会津鉄道会津線会津田島駅〜会津高原駅間直通電化に伴い、同線との直通運転開始。
- 2003年(平成15年)3月19日:会津鉄道から電車列車の運行を受託。
- 2006年(平成18年)3月18日:「ほっとスパ・ライン」の愛称使用開始。中三依駅を中三依温泉駅に、上三依塩原駅を上三依塩原温泉口駅に、会津高原駅を会津高原尾瀬口駅にそれぞれ改称。
- 2011年(平成23年)3月11日:東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響で全線運休。
- 2011年3月12日:全線運転再開。
- 2011年3月14日:東京電力・東北電力管内の計画停電の影響で、東武・会津鉄道との直通運転中止。
- 2011年3月20日:東武・会津鉄道との直通運転再開。
- 2015年(平成27年)9月20日:豪雨の影響で土砂流入及び東京電力送電鉄塔の倒壊による停電が発生し、全線で運休。
- 2015年9月18日:新藤原駅〜上三依塩原温泉口駅間で運転再開。
- 2015年9月19日:全線運転再開。但し上三依塩原温泉口駅〜会津高原尾瀬口駅間は気動車のみの運行。
- 2015年12月11日:全線で電車の運行を再開。
- 2022年(令和4年)3月12日:普通列車の会津鉄道への直通運転終了。ダイヤ改正で大幅減便実施。
- 2023年(令和5年)8月10日:6050系電車改修の為クラウドファンディング開始。
現在の運行形態
前述の通り、観光客の減少を理由に2022年3月12日ダイヤ改正で優等列車を含む全列車の往復の運行本数が17本から10本に大幅減便された。
特急「リバティ会津」
浅草駅〜会津田島駅間に4往復設定されており、快速・区間快速廃止後唯一浅草駅に乗り入れる定期列車である。
また野岩鉄道線内は男鹿高原駅以外の全駅に停車し、鬼怒川温泉駅〜会津田島駅間の区間内相互利用時に限り座席指定を行わなければ特急料金が不要になる事から、事実上普通列車の代替として機能している。
詳細は当該項目を参照。
尾瀬夜行
夏季・秋季・冬季に浅草発会津高原尾瀬口行として片道運行される夜行の団体列車。
2022年度以降は東武500系「リバティ」が使用されている。
浅草駅を23時55分に発車していた頃は「尾瀬夜行23:55」「スノーパル23:55」と名乗っていたが、23時45分発に変更されて以降は「尾瀬夜行23:45」と案内状の名称が変更された。
快速「AIZUマウントエクスプレス」
鬼怒川温泉駅とJR東日本只見線会津若松駅を結ぶ快速列車。2022年3月12日ダイヤ改正以降は1往復のみの運行で、土休日や繁忙期の特定日は下り列車の運行区間を磐越西線喜多方駅まで延長運行する。
「リバティ会津」同様に野岩鉄道線内は男鹿高原駅以外の各駅に停車する為、普通列車の代替として機能する。
詳細は当該記事を参照。
普通
2022年3月12日ダイヤ改正以降は5往復のみ運行され、1往復は東武鬼怒川線に直通し鬼怒川温泉駅発着で運行される。
ほぼ全ての列車が新藤原駅で東武鬼怒川線と、会津高原尾瀬口駅で会津鉄道会津線と接続している。
なお「リバティ会津」が運行される時間帯には設定されていない。
過去の運行形態
臨時特急「スカイツリートレイン南会津」
東武634型「スカイツリートレイン」を使用して会津田島発浅草行として特定日に運行された臨時特急。
快速急行「おじか」・急行「南会津」
快速急行「おじか」の会津田島駅発着便を前身とし、東武の有料急行の特急格上げ直前まで浅草駅〜会津田島駅間で運行されていた列車。快速に統合される形で廃止された。
快速「AIZU尾瀬エクスプレス」
「AIZUマウントエクスプレス」も参照。
会津鉄道のAT-600形・AT-650形を使用して運行された快速列車の愛称。
「AIZUマウントエクスプレス」に統合された。
快速・区間快速(東武直通)
浅草駅〜会津高原尾瀬口駅・会津田島駅間を結んでいた列車。
野岩鉄道線内は各駅に停車し、普通列車の代替として機能していた。
区間快速(会津鉄道)
2021年(令和3年)3月13日ダイヤ改正で誕生。会津田島発新藤原行の1本のみで、会津鉄道線内は各駅に停車し野岩鉄道線内は無停車だった。2022年3月12日ダイヤ改正で廃止。
区間急行
東武の種別再編が行われた2006年(平成18年)3月18日ダイヤ改正で会津田島発浅草行1本が誕生。東武動物公園駅まで各駅に停車し、伊勢崎線内は現在の区間急行停車駅に停車していた。
2009年(平成21年)6月6日ダイヤ改正で東武日光線新栃木駅発着に短縮された。
駅一覧
優等列車の特急と快速は停車駅が同じ為纏めて記載
●:停車 レ:通過
駅名 | 優等 | 備考 |
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↑東武鬼怒川線・日光線経由伊勢崎線浅草まで直通運転 | ||
新藤原 | ● | |
龍王峡 | ● | |
川治温泉 | ● | |
川治湯元 | ● | |
湯西川温泉 | ● | |
中三依温泉 | ● | |
上三依塩原温泉口 | ● | |
男鹿高原 | レ | |
会津高原尾瀬口 | ● | 会津鉄道管理駅 |
↓会津鉄道・JR只見線経由磐越西線喜多方まで直通運転 |
現在の使用車両
自社車両
- 6050系100番台
元南栗橋車両管区新栃木出張所常駐車。
自社が保有する唯一の車両で、2022年3月11日まで東武の0番台及び会津鉄道の200番台と共通運用だった。
現在は普通列車のみで使用されるが、かつては快速急行「おじか」や快速・区間快速でも使用された。
東武鉄道所属
- 500系「リバティ」
南栗橋車両管区春日部支所所属の特急型電車。
特急「リバティ会津」及び尾瀬夜行で運用。
- 634型「スカイツリートレイン」
南栗橋車両管区本区所属の波動用電車。
臨時列車や団体列車として入線する。
会津鉄道所属
- AT-600形・AT-650形・AT-700形・AT-750形
田島車両基地所属の気動車。
快速「AIZUマウントエクスプレス」として運用。AT-600形・AT-650形は「AIZU尾瀬エクスプレス」としても運用されていた。
過去の使用車両
東武鉄道所属
南栗橋車両管区本区所属の急行型電車。
300系は6両編成で尾瀬夜行で、350系は4両編成で急行「南会津」で運用された。
- 6050系0番台
南栗橋車両管区新栃木出張所(現・新栃木派出所)所属の電車。
野岩車、会津車と共に料金不要の列車で使用された。
南栗橋車両管区新栃木出張所所属の電車。
一部の快速や普通列車で使用された。
会津鉄道所属
田島車両基地所属の特急型気動車。
元名古屋鉄道(名鉄)のJR東海高山本線直通特急「北アルプス」用の車両で、会津鉄道転籍後は「AIZUマウントエクスプレス」で使用された。
- 6050系200番台
田島車両基地所属の同社唯一の電車。
東武の0番台や野岩の100番台と共通運用だった。運用離脱後に廃車された。
関連項目
鉄道 日本国有鉄道 秘境駅 東武鉄道 会津鉄道 只見線 磐越西線 第三セクター