データ
別名: | 虚空怪獣 |
---|---|
身長: | 測定不能 |
体重: | 測定不能 |
出身地: | 宇宙 |
スーアク: | 桑原義樹 |
概要
『ウルトラマンX』第21話「美しき終焉」より登場する怪獣。
第1話冒頭でウルトラマンエックスと激しい追走劇を繰り広げ、ウルトラフレアを引き起こす要因となった謎の発光生命体の正体。
本作のラスボスにして、エックスの宿敵。エックスに「今までの怪獣たちとは格が違う」と言わしめる程の実力を持つ恐るべき怪獣である。
『ウルトラマンX』の物語中盤から地球に降り注ぎ怪獣達を強化させていたダークサンダーエナジーとは、強い生体エネルギーを探知するためにグリーザが放ったセンサーのようなものであり、その復活の前兆。とどのつまり、物語のおおよその元凶たるメインヴィランと言える存在である。
なお、「怪獣」と銘打たれてこそいるが、その実態は星の生体エネルギーを求めてその全てを自身に取り込み無に還す「意思なき存在」であり、更に別名の「虚空」怪獣の通り、空間エネルギーが0=存在しない存在、つまり無そのものであり、第二形態まで実体が存在するわけではない(身長と体重が測定不能なのもこの為と思われる)。よって(少なくとも地球の現実的な認識では)生物というより自然現象に近い。
目に見えるゆらめくような球状ないし人型の不気味な姿は、情報の無いものを無理やり脳が視覚化した結果であり、「この付近からダークサンダーエナジーが出ている」ことはわかってもそこには文字通り何も無いため、「見る」ことでしか存在を把握できず、当然観測することは不可能ということになる。実際に目撃するまでダークサンダーエナジーの発生源を各国がいくら調べても突き止められなかったのはその為である。
本当に何も無いが故に、その場所だけ現実というテクスチャにぽっかりと空いた穴が「存在する」形になっており、「何も無いのに確かにそこに存在している」という理不尽極まりないド直球かつ最悪のパラドックスが成立してしまっているのである。
上述した事項やM1号の「都合の悪いことが起こると誰かが悪意を持ってやっていると考える」との発言の通り、この怪獣にもダークサンダーエナジーの発生にも悪意は無く、ゴモラに集中的にダークサンダーエナジーが降り注いだのも、ゴモラの生命エネルギーが飛び抜けて高かっただけに過ぎないとされている。大地も総集編にて「M1号の言っていた通り、悪意ある黒幕なんて始めからいなかったんだ」と回想している。
しかし、その一方で意思はなくとも「喜び」の感情を持ち、吸収の最優先対象の認識や第三形態での技の使い分け等、明確に生物らしい知性を持ち合わせているタチの悪さ、そして、本能の赴くままに「生命を無に変換する」存在であり、あくまで言葉や心を持たず性質や存在自体は無というだけで、悪意は持たずとも(少なくとも生命体にとっては)実害しかない迷惑極まりない存在と言える。
いわば「人間や怪獣などの他の生命との『共存』が絶対に不可能な存在」であり、怪獣との共存を目指すXioやエックスに対する強烈なアンチテーゼにして『X』のラスボスにふさわしい存在であると言えるだろう。
戦闘形態
宇宙高速移動用・地上用の2種類の形態と、作中の戦闘で発生したイレギュラーによる3つ目の形態を持つ。いずれの形態でも感情が全く見えない無機質な雰囲気を漂わせており、人間の笑い声やクジラの歌に似た不気味な鳴き声(?)を発するのが特徴。
第一形態
グリーザの宇宙高速移動用形態で、見た目は紫色に光るトゲトゲの球状発光体。第1話冒頭で太陽系へと飛来しエックスと宇宙空間で激しいチェイスを繰り広げるが、最後は太陽へと叩き付けられてひとまず撃退された。しかしその数年後に復活を遂げ、ダークサンダーエナジーを放ちながら徐々に地球へと接近。アメリカのUNVERネバダ支部へと降り立つと、基地諸共スパークドールズを吸収し、地上用の形態へと変形する。
造形は『ネオ・ウルトラQ』に登場したプラーナ第二形態を改造したものである。本編では一瞬の登場の上、CGで発光している状態の為、造形物自体は雑誌の写真やメイキング映像、更には出番が増えた後述の再登場でないと確認が難しい。
第二形態
グリーザの地上での活動用の姿。黄色く発光する頭部を持つ人型だが、前後の区別がつかない得体の知れない部分がある。本来「無」である存在を無理矢理視覚化している為か、その姿そのものが不規則にユラユラと揺れるのに加え、酔拳のような不規則的な動き、瞬間移動や空間を歪曲させる能力で攻撃を回避し付け入る隙が全くなく、作中では一切ダメージを与えられなかった(文章では非常に形容しがたいので、是非DVDやBDで一見して欲しい)。
というか「無」そのものであるため、避けられたり防がれたりしているように見えたのも、ただ何も無いところを拳や蹴りや飛び道具が空振ったり、ひとりでに軌道が変わったりしただけという可能性も否定できず、先述の能力を本当に持っているのかどうかも怪しい。この考え方だとエックス・サイバーゴモラ・スカイマスケッティの三者は何も無い場所から飛んでくる痛打を受けていたことになり、「無いのに有る」パラドックスの証明にもなり得てしまう。
目らしき部位から放つ「グリーザビーム」、頭部から放つ渦巻き状光線「グリーザボルテックス」、二重螺旋光線「グリーザダブルヘリックス」、鐘の音色に似た怪音波「グリーザアクオン」、胸部から放つ「グリーザダークライトニング」等、飛び道具のレパートリーもウルトラ戦士に引けを取らないほど充実している。
便宜上「第二形態」と呼ばれているが、これがグリーザ本来の戦闘形態であり、更に劇中では無敵に等しい強さを見せていた為、事実上の最強形態とも言える(後述する理由で実体を得てしまった後も、物理攻撃が通るようになった程度の弱体化であった)。
第三形態(最終形態)
グリーザの最終形態(メイン画像も参照)。シンプルな人型だった第二形態から打って代わり、体中に突起物を備えた荘厳な魔人の様な姿(全体的にゼットンを思わせるようなシルエット)になった。本来のグリーザは「取り込んだものを無に変換する」存在であったが、「思いを形にする力」を持つエクスラッガーを取り込んでしまった事が原因で実体化し、吸収したスパークドールズを無に帰せず、体の中に貯め込んでしまうようになった為に、この姿へと変貌してしまった。
実体化した事で、無理矢理視覚化されていた不可解な動きはなくなり、第二形態のように攻撃を回避する事もなくなった。しかし、やはり生半可な攻撃ではダメージを与える事はできず、さらに取り込んだEXレッドキング・EXゴモラ・エレキング・ゼットン・ツルギデマーガ等のスパークドールズの攻撃エネルギーを加えた、様々な攻撃を繰り出すことが可能となっている(怪獣の技の使用時には、元の怪獣の鳴き声を発する)。
スーツ本体は第二形態と共通であり、そこに様々なパーツを付け足してこの姿になっている。
ウルトラヒーローズEXPOのステージでは、不完全体として蘇ったグリーザも登場しており、その際は背中のX型パーツが無い状態で登場している*その後、最終形態と同じ姿となり、完全復活を遂げた)。
活躍
より強大な生命エネルギーを自身に取り込む習性を持っており、エックスによると、地球に飛来する前に3つの生命溢れる星々を滅ぼしたとされる。そして物語が始まる15年前、遂に地球の存在する太陽系へと飛来。阻止すべく飛来したエックスとの壮絶なチェイスバトルを繰り広げ、最終的にエックスに太陽表面へと叩き込まれて倒された(この時に生じた現象がウルトラフレアであり、その影響でエックスも自身の実体を喪失してしまっている)。
しかし実際は消滅しておらず、太陽に焼かれながらも驚異的な再生能力で15年の歳月を得て復活を果たし、ダークサンダーエナジーを放ちながら生命エネルギーを求めて人知れず地球へと移動を開始していた。なお、この移動の際にも周囲の宇宙空間からエネルギーを取り込んでいたらしく、マモル曰く「5以下はあり得ない」とされる空間エネルギーの指標レベルはグリーザが近づくにつれ急激に下がっており、その周囲に至ってはあろうことか「0」を示していた。
地球に飛来後は強大な生命エネルギーを持つ存在である怪獣、つまりスパークドールズが世界で最も多く保管されていたアメリカのUNVERネバダ支部に飛来。ネバダ支部を壊滅させそれら全てを吸収すると、次の目標地点としてUNVERネバダ支部に次いで多数のスパークドールズを管理しているXio日本支部を目指して進撃を開始する。
迎撃に向かったXio海上艦隊からの攻撃を板野サーカスのような動きで難なく避けつつ反撃し、艦隊軍を一瞬にして壊滅させるとそのまま日本へと襲来。Xio日本支部を襲撃するが、迎撃に向かったエックスとサイバーゴモラ、ハヤトの乗るスカイマスケッティに阻まれ、戦闘に突入。1対3というハンデを負ってなお三者を全く寄せ付けない圧倒的な戦闘能力を見せ付けた(しかもこの時のエックスはウルトラマンエクシードX状態である)。挙句の果てに分解吸収光線「グリーザアブソープション」でエックスを一体化している大地ごと取り込むも、内部から攻撃を受け爆散した。
しかし再生能力により短時間で復活し、Xioの日本基地を狙って進撃を再開する。
「思いを形にする」機能を持つエクスラッガーを取り込んだ為実体化してしまい、物理攻撃への耐性を失ってしまったが、それでも変わらぬ圧倒的な力でXioの迎撃を返り討ちにして基地を破壊した後、怪獣吸引放電「ダークサンダーアブソープション」でXio日本支部のスパークドールズを全て取り込み第三形態=最終形態となる。
復活したエックスに対してもその猛威を振るうが、実体化していた為に攻撃を回避出来ず、一瞬の隙を突かれてエクシードXのエクスラッガーを胸部の発光体に突き立てられる。これがきっかけで大地の呼び掛けに応えたゴモラがそこから解放され、さらに取り込んだはずの全ての怪獣のスパークドールズ達も解き放たれ、そして解放されたスパークドールズ達がエックスに力を貸したことで、エックスが全てのサイバーカードと一体化したハイブリッドアーマーが誕生してしまう。
それでも尚応戦するが、スパークドールズを全て吐き出して大幅に弱体化したのもあってか全く歯が立たず、最後は必殺の「ウルティメイトザナディウム」とエクスラッガーの投擲を立て続けに喰らって大爆発し、完全に消滅した。
ウルトラマンZ
第15話「戦士の使命」に登場。
本作では、第14話のブルトンが撃破されたことで開いてしまった宇宙の穴そのものであるという説明がなされている(リク曰く「巨大な宇宙を成立させるためには、様々な不条理を引き受けるブルトンのような存在が必要」とのこと)。この解説により、『X』で登場したグリーザもブルトンのような存在が何らかの形で滅んだ結果生じた「宇宙の穴」だった可能性が浮上した。
『X』の個体と違い宇宙から飛来した訳ではなく地球で新たに開いた「穴」であり、公式サイトでも出身地は地球と明記されている。
またグリーザという「穴」の向こうには、無であるグリーザを唯一止められる力「宇宙の穴を縫う針」が存在するとされている(『無の中には有が存在する』の概念が元ネタだろうか)。
ブルトンとの戦いの後の夜の地球にて、被災地で働いていた災害廃棄物処理の作業員11名を襲撃し(翌日、ユカが「作業員11名が忽然と姿を消したそうです」とヘビクラに報告している)、リクが危険を感じるほどの虚空振動を放ちながら翌日に第一形態の姿で突如出現した。直後に第二形態へと移行、形態変化を繰り返しながら街を無に飲み込んでいく。
ストレイジのヘビクラことジャグラスジャグラーはグリーザの事を知っていたようで、その脅威たるや、前日のブルトン戦での損傷でキングジョーSCが整備中のため出撃できない中ウインダムで出ようとしたヨウコを止めようとした彼に「死にに行くようなものだ」とまで言わしめたほどである。
自らを止めるべく出現したアルファエッジとギャラクシーライジングの2人、そしてジャグラーが変身したトライキングをも圧倒。強化変身したファイブキングのガンQの腕による吸収攻撃さえものともしなかった。
更に『X』の登場時に比べて明らかに技のバリエーションが増えており、
- 背中から触手、もしくは紐状の光線の様なものを出して攻撃
- ビーム光弾や巨大なエネルギーボールを放つ
- 音波攻撃での音の歪みが激しくなっている
- 敵からの攻撃をバリアで防ぐ
等、これらの攻撃はストレインエフェクトと総称される。
「針」を掴むべくジードが物理虚数分解状態となってグリーザにあえて同化したことで「虚無と実体の狭間」に封じ込められ、第一形態の姿で一時的に活動を停止するが、夜になると第二形態の姿に戻り活動を再開。
ジードにより実体化させられたとはいえ、ジードとの同化が進んだことで笑い声にリクの声が混じったほか、体からジードの幻影が見え隠れするようになり、さらにはレッキングバースト(この時レッキングバーストを発射する声はリクを演じた濱田龍臣が声を当てている)を放って街を破壊するなど、更なる強化を遂げる。
しかし、ゼットとハルキが力を合わせてデルタライズクローへと変身し、その攻撃を受けたことで体内のジードを弾き出された。
ゼットと凄まじい空中戦を繰り広げた後、ジードと同化しベリアル因子を取り込んだことで生まれた「新たな針」である剣・ベリアロクをゼットに取り出される。
放った光線を吸収されて跳ね返され、ベリアロクによる連続の斬撃を立て続けに受けた後(よく見ると、ベリアロクによる攻撃を恐れているかのように、背後に回り込むなど大袈裟に避けている)、デスシウムスラッシュの直撃で爆散。宇宙の穴は塞がれた。
尚、本作では第三形態は(実質弱体化の姿な上ファイブキング撃破の際に怪獣メダルが取り込まれなかったのか、尺の都合上変化する必要性がなかった為か)最後まで登場しなかった。そもそも第三形態自体、スパークドールズの存在する『X』本編だからこそ発生したイレギュラーによる形態であるとも考えられる。さしずめジードを取り込んだ時の状態が『X』での第三形態に相当するものとも言えようか。
新世代ヒーローズのラスボスとしてはTVシリーズ初の中盤での再登場となる。しかも、同エピソードに登場するゼットの新形態・デルタライズクローの初陣の相手という重要な役どころでもある。
第14話のラストにて、ブルトン撃破の際に発生した時空の歪みから声を発した(このため、ある意味ではブルトンの置き土産と言えなくもない)。ブルトンに次いで市街地戦も初めて行われた。
動画配信では聞き覚えがありすぎる笑い声と次回予告を見て、早くも戦々恐々する視聴者も少なくなかったという。『Z』本編第14話は闇のトイレだったりブルトンが作り出すカオスな四次元空間に右往左往するストレイジだったりハルキが迷いを振り切るきっかけだったりと、沢山の見所があったのだが、ラストにグリーザ特有の笑い声の様な鳴き声が聞こえてくるという不穏すぎる描写とともに幕を閉じた。
『X』本編を見た者は当然グリーザの存在のヤバさを知っており、配信版のコメント欄は「それまでの内容を全部持っていかれた」と絶望感を感じた者、「あの理不尽な存在をどうやって倒すのか楽しみだ」と言った期待の声の2極化する事態になっていた。
大空大地役の高橋健介氏も、グリーザの再登場に対し、「エックスと結構な想いでグリーザ倒したと思ってたんですけど」と複雑な心境をツイートしている。
事実、劇中ではウルトラマン2人と強力な合体怪獣を圧倒的な力でねじ伏せており、『X』で見せた強さと絶望感は健在で、デルタライズクローおよびベリアロクがなければどうしようもなかった状況だった……というより、ジードとの融合で実体化+デルタライズクローで同じ土俵に立つ事ができ、ベリアロクで漸く互角に戦えるレベルであった(正攻法でコイツと戦っても倒すことは不可能で、ウルトラマンが相当な無茶をした上で封印的な処置を施し、時間を稼ぐのが精一杯の模様)。
またエクスラッガーで「有」を得た『X』の個体と比べると倒されたというよりもベリアロクの力で穴でなくなったために姿を保てなくなった…ともとれる。
いずれにせよ、新フォームおよび新武器が相手にも拘わらず、互角な戦いを繰り広げた事もあり、伊達にラスボスを務めていたわけではない事を、視聴者に見せつけていた(YouTubeでは、後日にウルトラマンX第21話『美しき終焉』、つまりグリーザの初登場話が公式配信されている。……最終回の方ではなくこちらを配信する辺り、円谷プロとしても新規視聴者にグリーザのヤバさを知って貰いたかったようである)。
この第15話の監督は『X』登場時にも監督を務めた田口清隆氏。
マガタノオロチを「かませ犬になるくらいなら」と2度と使えないのを承知で改造するなど怪獣への思い入れがある田口氏は、今回のグリーザを登場させるにあたり、専用BGMが流したことや話の展開と倒し方、終盤でEDが流れる等、『X』最終盤のオマージュを至る所に散りばめた。『X』で見せた歴代最強クラスの格を落とさないようにという工夫も随所に見られ、ウルトラシリーズの中でも非常に大事に扱われた再登場怪獣であったと言える。
『Z』第15話の時点で撮影用スーツがくたびれており、改造に回される状態となっていたため、田口が演出した最強怪獣の最後の花道として第15話に登場することとなった。グリーザが登場する理由として、前回登場したブルトンが砕け散った影響で宇宙にゆがみが生じて出現するというものとなり、グリーザを倒すためにゼットも最終パワーアップを果たすものとなった。
小説『ジャの道は蛇』
アルカナ星人ドーマンセイマンがグリーザの力を宿す怪獣カードを所持する。
ドーマンセイマンはルーレットの様に無作為に発動する怪獣カードから、
バードンなら火炎放射、プリズ魔なら光線発射など恩恵を受けられるのだが…
グリーザのカードは使用者であるドーマンセイマン自身を無に還す制御不可能な代物だった。
グリーザへの対処法?
絶望的なまでに強すぎるグリーザだが、あくまでも「針」が存在しない、もしくは持っていたとしても有効な手立てと分からなかった場合でもある程度ではあるが有効な手段が無いわけではない。
①わざと一体化(実体化)させる
初手でもう無理難題な気もするが、他の生命体(グリーザに「生命」という概念があるかは謎だが)と一体化できるウルトラマンの特性、及び強い生命エネルギーに反応を示すグリーザの習性を利用した作戦であり、エックスとジードの初戦がこれに該当するだろうか。
エクシードXはエクシードエクスラッシュによる突撃で(半ばアクシデントだが)自分ごと一体化、内部からグリーザを破壊したほか、ジードは「針」を回収すべくわざと自身を吸収させることでグリーザを第一形態に封じ込めた。しかしこれに関しては双方のパターンでも多少時間を稼げただけに過ぎず、一体化すると自力ではほぼ脱出不可能なうえに時間が経つと完全に取り込まれてしまうため、「限られた時間内に仲間に救出される」という形でしか脱出できない。また、復活後のグリーザが取り込んだ者の力を利用して能力を更に進化させていることも考えると、非常にリスキーな戦法と言える。
②理屈を超えたパワー
誤解されがちだがグリーザは物理攻撃が全く効かない訳ではない。『X』においてはサイバーゴモラのサイバー超振動波は直接防御していた上に、前述のエクシードエクスラッシュそのものはバリアで防いでいた。あくまでもゼットが「無に飲み込まれないためには、理屈を超えたパワーが必要だ」と言及していたように、強大な力という「有」を「無」に直接ぶつけることで、グリーザに対し物理的にダメージを与えることは可能である(言うなればゴリ押しである)。『Z』登場時にてヘビクラが見せていた「キングジョーSCの出撃の可否を確かめてからストレイジの対応を決める」という『無そのもの』であるグリーザ相手には不可解にも見える対処の仕方も、これで説明がつく。
実際、エックスも本編の前には太陽にグリーザを叩き込むことで一時的に勝利し、3戦目においてはハイブリッドアーマーのウルティメイトザナディウム、デルタライズクロー形態のゼットも格闘戦では直接ダメージを与えることができていた。ただし、これらのケースでは太陽に撃墜された後も15年程度で全快、ウルティメイトザナディウム単体では完全に倒しきれなかったほか、デルタライズクローもダメージを与えられたというだけでベリアロクなしでは決定打を打つことができなかった。①と比べると単純な対処法でかつ大きなダメージを与えられているが、こちらも大概安全な策とは言いがたいだろう。
③不条理に不条理をぶつける
こちらはやや変化球な方法だが、ジャグラーがファイブキングのガンQの力を利用してグリーザを丸ごと吸収しようとした。生命反応が存在しない不条理の塊と言えるガンQの力を利用したファイブキングならではの作戦だったが、存在自体が無であるグリーザを完全に吸い込むことはできず、逆にジャグラー側がダメージを受けていた。
無論ファイブキング自体は多くのウルトラ戦士達を苦しめてきた実力者であり、状況が悪化する前に短期決戦で即座にガンQの力を使用したジャグラーの判断自体は的確だったのだが、純粋な怪獣としての地力が如実に出てしまった勝負とも言える。
結論としては②が劇中で一番ダメージを与えられているパターンだが、根本的からグリーザを倒すにはやはり強大な力と「針」の存在が必要ということなのかもしれない。エクスラッガーやベリアロクはこれらの方法を使えない、あるいは使ってさえも倒せない状況でのグリーザに対する専用のカウンター武器とも解釈できる。「宇宙の穴を縫う針」の名前は伊達ではないということなのだろう。
余談
名前の由来は「強欲(グリード)」と「喜び(グリー)」。共に劇中でグリーザの行動に表されている。
登場に先駆け、2015年11月下旬に第三形態がウルトラ怪獣DX枠でソフビが発売された。更に2019年3月より第三形態が、2020年10月より第二形態が500サイズでソフビが発売されている。
シリーズ構成の小林弘利氏によると、「無から有へと進化していくグリーザは有を手にした途端に滅んで行くことになる。夢が自分の『喜び』だけだったため、本来は無限で無敵だった自分の可能性を限定してしまい、限界が生まれ、有を手にした途端に、その重さに身動きが取れなくなり滅ぶことになった」とのこと。
監督の田口清隆氏によると、グリーザの光線作画は初代ウルトラマンのスペシウム光線を作画した飯塚定雄氏に手掛けてもらったとのこと。
田口氏は滅茶苦茶すぎるグリーザを形容する表現として「そこで一番ハマる言い表し方が判明する訳です。「怪獣」」とツイートしている。
モチーフはゼットン。思い出補正により増幅されたトラウマを田口監督が全力で映像化したとのこと。デザイン面でも黄色く点灯する頭部と胸部の発光体などゼットンを思わせる意匠が組み込まれている。
当初はスーツアクター2人が背中合わせに入る形で検討されており、背中の形状はその名残である。
シリーズ構成の中野貴雄氏によると、第三形態のデザインモチーフには世界遺産にもなったスペインのサグラダ・ファミリアの天井を見上げた形も含まれているとのこと。
劇中の圧倒的な描写とその不可思議な表情の読めないデザインから、ファンの間では第二形態の人気が特に高い。『X』放送時は商品化に恵まれなかったが、その後墨絵スイングやアルティメットルミナスにて第二形態の商品化が決定し、上述した通り『Z』での再登場に合わせて500サイズでソフビ化もされている。
グリーザを迎え撃った艦隊のCGはジオマスケッティを縦にしたものを流用している。
第21話では、『ウルトラマンギンガS』第12話のゾアムルチ戦でも行われた、1分もの戦闘シーンを場面転換なしで撮り続ける超長回しが行われている。
最終話放送後、とあるユーザーがtwitterにグリーザの擬人化イラスト(上の画像)を投稿したところ、田口監督がそのツイートをいいねするという珍事が発生。監督、何やってんすか。(このイラストに「田口監督巡回済み」のタグが付けられたのは言うまでもないだろう)。監督直々にお墨付きをもらったということで、グリーザがこちらの企画に出張する日も、そう遠くはない……かもしれない。
『グリーザ』のみで画像検索すると『仮面ライダー龍騎』のバイオグリーザも引っかかってしまう為、『グリーザ ウルトラマンX』等と検索したほうがいい。
当初、『ウルトラマンジード』第18話で伏井出ケイが召喚する怪獣として、初稿の段階ではグリーザも候補に挙げられていた。その後、ジードの対決は上記の『Z』第15話で実現する事になった。ほかにもエンペラ星人も上がっていたらしい。
尚、あのウルトラマントレギアですら無であるグリーザを「どうする事も出来ない」として放っておいた事が判明した為、(目的が全く異なるとは言え)太陽に叩き落す事で15年間も封じ込める事に成功したエックスは「一体何者なのか?」との話題が出るようにもなっている。
ただ文面としては「どうする事も出来ない」とふられているのはグリーザではなく「無」の方であり、「お前は自由にしていいよ」と使役自体は可能と思われる発言もしていた為、「無」をどうする事も出来なかっただけで、意図的に放棄した可能性もある。そもそも虚無を求めていたトレギアがガチの「無」そのものであるグリーザに無理に干渉する意味がなかったのでは?という意見もある。
あるいは単なる現象として悪意無く災厄を齎すグリーザを自分を比べることで、自分の行動の核となった矮小な悪意(親友へのコンプレックスにより拗れた自己無価値感を策謀で貶めた相手に外化する)を直視するのを恐れたとも考えられる。
鳴き声は、円谷プロから独立したスタッフが中国で製作しようとして失敗した『五龍奇剣士メタルカイザー』に登場する侵略宇宙人カエラの流用である。
『Z』第15話においてハルキが読んでいるグリーザの解析データをよく見ると、なんと上記のグリーザの概要の文面がそのまま使われている。その為「第二形態まで実体が存在するわけではない。」という、まるで実態を持つ第三形態が存在するかのような文章がある他、「身長と体重が測定不能なのもこのためと思われる。」と解析してる当人が推定するという妙な事になってしまっている。更にその横にはこの時点で存在するはずのない兵器の名前も確認できる。あまり読んではいけない部分なのかもしれない。
関連タグ
ウルトラマンX ラスボス ラスボス(ウルトラシリーズ) 全ての元凶 どうあがいても絶望
完全生命体イフ…いずれも球状の形態から変化していく、生物なのか正体不明な存在。
ハイパーゼットン(イマーゴ)…どちらも初代ゼットンモチーフ。こちらは「滅亡の邪神」と称される。
ビクトルギエル…前作のラスボス。身長と体重が測定不能という共通点がある。こちらはその前のラスボスと同一人物だが、後に同じく両方の形態の再登場は果たしている。
ウルトラマントレギア…こちらも主人公の新たな力に対して初登場補正を無視して互角に渡り合った。
グリムド…上のトレギアへ一体化していた「虚無」の化身である邪神。“喜びと欲望の情動に突き動かされる存在しないもの”のグリーザに対し“情動の一切を有さず太古から宇宙の深淵に存在し続けているもの”で、似ているようで対称的な面を持つ存在。グリーザが有を無に帰そうとする「0」なら、こちらは(干渉が無ければ)ただ無の状態で居続ける「-0」と表現すべきか。
オーガ(ファントム)…取り込んだ他の怪人の能力を使えるという共通点がある。
グリード(仮面ライダーOOO)…同じく強欲が語源の怪人集団。
フリーザ…一文字違い。
クリーザ…濁点違い。フリーザの息子。
クリーム…球体型で、存在を探知出来ず、飲み込んだものを全て消滅させる共通点がある。視覚的な表現として紫色でもある。