概要
本来は「世界とは何か」「世界における人間の位置付けは何か」という哲学的思想であるが、創作業界においては、創作で用いられる仮想世界の設定をこう呼ぶ。
転じて、その作品がジャンルの上で持っている雰囲気、その作家、作家の分身の主人公が持っている個性(作風)を指す言葉としても使われる。
創作における『世界観』
設定としての世界観(universe)
フィクションなどの作品で登場する世界が「どのような世界であるか」という設定を明らかにすることは、特に小説や漫画といった創作においては非常に重要な要素である。
すなわち、物語における世界観とは「作中の世界を定義・構成する明確なルール」に他ならない。どんなに劇中の登場人物の描写が秀逸で、彼らの織り成すドラマが感動的であっても、台詞や造形・所作などが世界観から逸脱もしくは乖離した瞬間、物語に没入していたはずの読者や視聴者は一気に興ざめしてしまうことになるだろう。
特にファンタジーやSFなど、我々が住む世界と異なる論理・法則を有する(魔法など)場合は、それに沿った世界観が構築されていることが重要であり、世界観がしっかりしていないと物語の中で設定が破綻する、ということも珍しくない。
その一方でキャラクター設定と比べると比較的地味であるわりに設定量が膨大であることが多く、なかなかこちらに注力しないという書き手は比較的多いのではないか、と思われる。
例えばファンタジー作品でよく登場する魔法を例にして世界観を考えようとすると――
- なぜ魔法は存在するのか? それはどんな原理で成り立っているのか?
- 魔法で「出来ること」と「出来ないこと」とは?
- 魔法が人間(または他種族)に与えている恩恵や影響とは?
- 魔法はストーリーにどのように関わるか?
などが挙げられる。
さらに「どこまで設定すればいいのか」という際限を見失い、世界観を多く設定しすぎた結果、没設定となってしまうこともある。その一方できちんと細部まで作り込まれ、おもに登場人物の行動や舞台装置や美術などにその一端が表現されているにもかかわらず、作者自身だけが承知していればよい、あるいは劇中における説明の煩雑さを避ける、などの理由で“あえて明文化されない”設定は「裏設定」と呼ばれる。
構築にあたってはモチベーションも必要となる作業であるが、この世界観がしっかりしている作品は個人であっても商用であっても評価材料の一つではある。
作風としての世界観(context)
上記のような意味とは異なり、物語の作風やジャンルを作る上での表現的制約を意味する場合もある。
たとえば現代の日本を舞台とした『けいおん!』には、物語の設定上は男性が存在するはずだが、《女子高生の他愛もない日常を描く》という作風のために青年男性が登場しない。他に、女性キャラクターが全員似た系統の容姿という特徴も持つ。
これは、《すべての人類が女性として生まれる》というファンタジー的設定を持った『シムーン』のような作品とは異なった制約で、作者の意図や市場の要請で形作られている世界観である。
『けいおん!』は俗に《日常系》と呼ばれ、男女間での恋愛を挟まないのが作風であるといわれている。男性が登場しないのは、《日常系》の世界を描く上で不要と作者側に判断され、受け手にもその姿勢が伝わっているためである。だが、主要キャラの家族など、一部の男性キャラの存在は明示されている為、傍観者としての男性キャラたちは存在し、『刀剣乱舞』『あんさんぶるスターズ!』のような男性のみの作品と繋がっているという説もあり、オリジナルキャラクターを使った二次創作やそれに類似した妄想で各ファンが原作で描かれていない部分を補っている。二次オリに登場するオリキャラは男性キャラからそれ以外まで様々で、オリキャラはネームレスや作品に強い影響を与えないキャラが多い(その為、強い影響を与えるオリキャラ『メアリー・スー(二次創作用語)』が二次創作界隈で問題になった時期もある)。他にも、女性キャラを異性化、異形化、年齢操作する二次オリ、作品のファンの視聴者が作中キャラに転生してしまうメタネタなど、様々な解釈がなされている。
別の例を挙げると、同じ魔法をモチーフにした存在でも中世ヨーロッパ風のハイファンタジー(剣と魔法の世界)に魔法少女は登場しない。するとすれば、それはギャップを意図したパロディであり、あえて「世界観の破壊」を狙っていることになる。
なぜそういった受け入れられ方をされるかといえば、同じファンタジーであっても、ハイファンタジーと魔法少女ものは、それぞれ個別のジャンルとして派生・消費されてきたからである。剣と魔法の世界に魔法少女が登場しないか、類似した存在がいても魔法少女と呼ばれない理由は、多くの女児向け作品の魔法少女の役割(成長、世界平和)や、『魔女の宅急便』『ファイナルファンタジー4』などで少女が大人になる過程で白魔法が使えなくなってしまう理由を考察してみよう。ハイファンタジーには、魔法少女である女魔法使いが物理攻撃を使う勇者に同行し、同類項の魔王を倒すという矛盾が含まれているのである。勇者と魔王が主人公ともう一人の主人公の関係性で、表裏一体の世界観の作品もある。
『スカッとゴルフパンヤ』は剣と魔法の世界が舞台だが、主題がスポーツなので、勇者と魔法少女と魔王がすべて同じ空間にいる(パロディのパロディになるのだろうか)。
女児向けアニメや夢の国(テーマパーク)は、様々な年齢層の人物がいるにも関わらず、目の毒になるもの(暴言、暴力、下ネタ、パンチラ、乳揺れなど)が含まれておらず、これも一種の世界観である。
乙女の精神世界を描いた乙女ゲームもこれに似ており、現実と関わりを持たない「夢」の世界なので「男性の性的目線が殆ど入らない」「事件以外で鈍器や突起物がぶつかる表現がない」「意図した場合を除き、乙女の仲間が裏切らない」などの特色を持つ。
維持が大変なことから、「着ぐるみの中の人が出た」などのメタなギャグが使われることもある。
夢の国だからといって、現実を無視し過ぎる訳にはいかないようである。
閑話休題という形でのみ日常シーンを扱うバトル漫画、作品の中に出て来る作品をフィクションと割り切ったメタフィクション等もある種の世界観として完成されている。
これらの制約は、ある種のお約束であり、各ジャンルの物語を描くにあたっての指標や枠組みとなる一方、表現上の足かせにもなりうる。
またイラストに関しては、「そこに描かれている空間の雰囲気が統一されているか」、という意味合いも含まれる。その機能として、たった一枚の絵に時代背景や物語や人物の感情、作品のテーマやメッセージなどを詰め込み、しかもそのすべてを最初の数秒で見る者に瞬時に理解・納得させることが求められるからである。
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