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概要編集

那須正幹の児童文学シリーズ。刊行はポプラ社


同社のハードカバー児童書レーベル「こども文学館」→「新こども文学館」によってシリーズが初出展開された。のちにポプラ社の児童新書レーベル「ポプラ社文庫」(レーベル名は「文庫」だがサイズ種別としては「青い鳥文庫」と同じく新書扱いである事、のちにポプラ社から出された「カラフル文庫」「ポプラ文庫」とは全く異なるレーベルである事に要注意)より出された。

のち、ポプラ社では「ポプラ社文庫」から分離させる形で本シリーズ作品のみを収録対象としている「ズッコケ文庫」が出されている。


1978年の第一作から2004年の最終巻まで50冊続いた。シリーズ終了直後より番外編シリーズが始まり、こちらも2005年から2015年まで続いた。


作者にとっては結果的にではあるものの、その生涯をかけて全てを書ききったと言えるほどの超長期展開作品(シリーズ展開年数27年、本編巻数50巻、後述の続編をも含めればシリーズ総展開年数37年、本編総巻数61巻)であり、シリーズ累計発行部数は2021年時点で2500万部を越えた。

作者・那須の事実上のライフワークとなった作品で、同時に昭和・平成期における日本児童文学界の金字塔ともなった名作である。


当然、アニメ化もされたが本作のアニメ版は原作の挿絵担当イラストレーターがアニメ版のキャラクターデザインを直接手掛けたこれまた稀有な作品となった。


続編として2005年から2015年まで展開された「ズッコケ中年三人組」全11巻(ただし最終巻のタイトルは「ズッコケ熟年三人組」)が存在するが、これはシリーズ最初期作品の読者たちに向けた作品であるため一般文学作品となっており、児童文学ではなくなってしまっている(ただし未成年の読者が読んでもある程度の問題は起きないように、婉曲表現を駆使し構成も工夫している。もっとも誤解が無いように、子どもが読むときには大人の解説が求められるケースもあるが)。



シリーズの特徴編集

八谷良平ハチベエ)、山中正太郎ハカセ)、奥田三吉モーちゃん)の小学6年生男子3人組が主人公の物語群。


「稲穂県ミドリ市花山町」という架空の地方都市が作品の舞台となっているが、その地理的位置としては西日本の中国地方瀬戸内海沿いの山陽)であることが作中で概ね示されている。

ミドリ市のモデルは作者の那須の出身地である広島県広島市西区(西広島駅周辺)である事は明言されている(実は2006年似た名前の市群馬県に爆誕していたりするが、もちろん本作とは無関係である)。

ただし作中においては、少なくとも広島市に関しては現実の世界通りに存在することが描かれており、史実通りに大戦末期に原爆の投下があった事が明記されている。

とはいえ、主人公達などの大半の人物は概ね、標準語に近い言葉で喋っているなど、あまり、地域性を意識せずに読むことが出来る。


展開は多種多様で、日常に起こるちょっとした事件を取り上げた話、文化祭修学旅行といった学校行事を扱った話、選挙起業商売といった大人の社会にも直結する内容の話、宝探しや怪盗との対決といった非日常もの、さらにはタイムスリップ幽霊などの超常現象に至るまで何でもあり。

しかも同じネタでも扱いのバリエーションに富んでいるので、いわゆる「ネタかぶり」の作品でもそれぞれに物語単体として独自の魅力を持っている。

また、どの作品にも言えるのは「高度成長を達成した後の日本社会」の「日常」を舞台とし「基本的な事」に絞って扱っているので話の題材が普遍的であり、どれだけ時代が過ぎても現実との齟齬が起こりにくい。つまり世代を超えても話が色褪せない。人によっては「大人になっても(あるいは、大人になってから)読みたい」という評もある。


ただ27年(『中年三人組』を入れると37年)にもわたる長期展開作品(しかも『ズッコケ三人組』の頃は、ほぼサザエさん時空)であるため、前期・中期・後期の各作品間で設定の齟齬は起こりやすくなっている(これは同様の児童文学ではよくある事でもある)。


上述の続編である『ズッコケ中年三人組』からは、児童文学から一般(大人)向け娯楽小説にシフトした事もあり、不倫生殖商売選挙などにおける印象操作、地方利権の対立(中央vs地方、地方vs地方)、思春期努力の末の過労死痴呆家族いじめの構造と教師の立場、など児童文学においては扱い難いグレーゾーンダーティーなテーマも取り上げられるようになっている。

一方で『ズッコケ三人組』で謎のままで終わっていた内容が『ズッコケ中年三人組』で解決(伏線回収)されているケースもある(『(秘)大作戦』や『山賊修行中』など)。


そして何よりも作者の那須が生前よりシリーズの原則として最も強調し言及していた事がある。それは、「ズッコケ三人組は戦後民主平和主義本土空襲原爆投下そして日本国憲法高度経済成長がもたらした絶対的戦争放棄の概念)の申し子である」という大前提である。

シリーズの完結に関しても「政治家改憲を臆面もなく声高に叫び、世界情勢が緊迫して戦後がむしろ戦前に転化してしまいかねない世界には、三人組の物語は届かないかもしれない」という作者の危惧があった事が明言されている。

この危惧が現実となる事が、本作のファンにとって何を意味するか。作者が逝去した現在でも、ファンは常に本作の存在する意義を守れるか否かを試されている、と言ってもいいかもしれない。


世代層とファンクラブ編集

リアルタイムの読者層はおおむね団塊ジュニア世代の後期からミレニアル世代までであり、ポスト団塊ジュニアがリアタイファンの中核世代となる。これはほぼ、いわゆる氷河期世代に重なる。

ただし、リアルタイム世代の読者が大人になったのち、自身の子どもに本作を買い与えたり、あるいは学校図書館や公立図書館にも置かれていたりするのでZ世代でもそれなりに愛読者はおり、実際には世代を超えて読まれ続けている普遍的作品でもある。

またテレビアニメ(日アニ)版は原作の最後期時の展開であり、こちらのリアルタイム世代の中核はミレニアル世代の後期からZ世代になる。

時代が進めば同じポプラ社から出されている少年探偵団江戸川乱歩)のように児童文学界の古典として扱われる可能性は十分にある。


なおリアルタイム展開時には公式ファンクラブがあった。その名もズッコケファンクラブ。しかし、このファンクラブの入会のためには、新書単行本(最新刊が望ましい)巻末にある「ファンクラブ入会試験」に挑戦(受験)し80点以上を取る必要があった。しかも出題はシリーズ全作品から満遍なく出ており、その問題の内容は重箱の隅をつつくようなマニアックなものばかり。正直、小学生には(知識的にも経済的にも)ハードルが高いものと言えた。

(なお後述もするが、本作はその人気とは裏腹に図書館への導入は遅かったため、ファンクラブ結成初期はシリーズを勉強するためには本を買うしかなかった)

……おそらくはシャーロキアン(日本シャーロック・ホームズ・クラブ)やアサミスト(浅見光彦倶楽部→浅見光彦友の会)を参考にしたのであろうが。

往年には、このファンクラブに入りたくてシリーズを必死に読み込み学校の勉強以上に入会試験勉強に入れ込んで、親から「学校の勉強も同じようにやれ」と呆れられたり叱られたりした子どもも多かった。


受賞編集

1999年、巖谷小波文学賞・受賞作品(那須個人への賞だが受賞理由のひとつに本作の打ち立てた功績がある)

2000年、野間児童文芸賞・受賞作品(『ズッコケ三人組のバッグ・トゥ・ザ・フューチャー』に対する受賞)

2005年、日本児童文学者協会賞・特別賞受賞作品

2019年、JXTG児童文化賞(那須個人への賞だが受賞理由のひとつに本作の打ち立てた功績がある)


挿絵について編集

挿絵イラストは前川かずお(25作目まで)→高橋信也(26作以降)。

ただし、キャラクターデザインやアートタッチは前川によるものがほぼ踏襲されており、作画交替に伴うリデザインなどは基本的にはされていない。

そのため26作以降の挿絵に関しては、現代風にいうなら「キャラクター原案:前川かずお、イラスト:高橋信也」といったところか。実際には「原画:前川かずお、作画:高橋信也」となっている。


初代挿絵担当となった前川の本職は幼年向けの漫画家かつ絵本画家(馬場のぼるの弟子)であり、前川の漫画を読んだ那須からの直接指名による。

本作の登場まで、漫画家が児童文学の挿絵をシリーズ単位で受け持った例は希少であった(単発作品であったなら、前川の師である馬場、あるいは雑誌挿絵ならやなせたかしのように先駆者はいた)ため、本作がヒットを飛ばすと同時に保守層作家(当時の業界の重鎮たち)からは「児童文学を漫画にするな」「児童文学は幼稚な絵本じゃない」と、偏見著しい(作家にあるまじき)とんでもない批判を巻き起こし、複数の公立図書館への導入にも一悶着を起こした事もあった。が、本作の最初の愛読者世代が大人になった(同時に那須も本作のヒットや各文学賞の複数受賞で児童文学界の重鎮の仲間入りができた)事により、その議論は沈静化していった。

挿絵担当が途中交代となったのは前川の体調が思わしくなくなったためだが、前川自身は交替に関しては最初は承諾せず、病室のベッドにかじりついてでも描く心積もりで、その覚悟を知っていた那須も作品の発表を遅らせる(あるいは、執筆分をお蔵入りにして「完結」させ、やめてしまう)事も視野に入れていた。しかしシリーズを楽しみにしている子どもたちの期待の声は無視できず(またズッコケ自体の売り上げも会社存続の大きな柱になっていて)困り果てたポプラ社が方々に手を尽くして連れてきたのが高橋である。高橋は寸分の狂いもなく前川の指示と教えに従って彼の絵柄を再現してみせ、作者の那須を驚かせた。そして前川も高橋の絵に納得を見せ、自らが戻るまでのつもりで高橋にシリーズを任せた。

しかし前川はシリーズ完結を見ることなく、急性白血病のため、1993年1月13日、55歳で逝去した。シリーズ第25作「ズッコケ三人組の未来報告」が遺作となった。

結局、後任の挿絵担当となってしまった高橋は前川の遺志を慮り、彼の衣鉢を継ぐために「原画」担当という形で前川の名を残し、自らは「作画」担当としてクレジットしてもらった。これは、のちにシリーズが『中年三人組』に移行しても変わることはなかった。

ちなみに高橋の本職はアニメーター東映動画出身。月岡貞夫の弟子にあたり、宮崎駿の同期。宇宙戦艦ヤマトIIIいじわるばあさんのキャラデザで知られ、近年でもアンダーニンジャの総作監を務めている)であった。


登場人物編集

※キャストはテレビ東京版。


アニメ編集

1988年にOVA『ズッコケ時空冒険』が作成された。制作はタマプロダクション。監督はうえだひでひと、脚本は小山高生と立川元教の連名、キャラクターデザインが前川かずお、音楽は山本正之と武市昌久。(2003年にポプラディアから発売された学習用のビデオ『ズッコケ三人組の図書館で調べよう』、2014年に安全教育アニメ『ズッコケ三人組の火あそび防止大作戦』『ズッコケ三人組のこうつうあんぜん いつも あんぜんかくにんの巻』も制作された。)


1995年11月11日の午前にはJ.C.STAFF制作の単発作品『ズッコケ三人組 楠屋敷のグルグル様』が日本テレビ他にて放送された。監督は鈴木行、脚本は高橋良輔と鈴木行の連名、キャラデザおよび総作画監督は高橋信也。


2004年には4月4日から10月3日かけて、日本アニメーション制作の『それいけ!ズッコケ三人組』全26話がテレビ東京系列にて放送された。このテレ東版では、主人公三人組と共に安藤圭子、新井陽子、榎本由美子の三人がメインヒロイン的立ち位置となっている(同時に高橋の手によって三人娘のキャラデザが、よりアニメ映えするデザインにマイナーアップされている)。

監督は腰繁男。シリーズ構成は西園悟、キャラクターデザインは高橋信也。


主題歌編集

ズッコケ三人組 楠屋敷のグルグル様

エンディングテーマ

心の中のエバーグリーン

作詞 佐藤ありす / 作曲 葦澤伸太郎 / 編曲 葦澤伸太郎 / 歌 堀江美都子


それいけ!ズッコケ三人組

オープニングテーマ

↑UP3

作詞:スズトモ・河村隆一 作曲:河村隆一 編曲:田屋雅章 歌:ズッコケガールズ(高乃麗・横山智佐・スズトモ)

エンディングテーマ

ギュッとしたいな

作詞・作曲:河村隆一 編曲:田屋雅章 歌:ズッコケガールズ(横山智佐・スズトモ)


各話リスト編集

話数サブタイトル
第1話ズッコケ三人組 出動!!
第2話ズッコケ花の児童会長
第3話ズッコケ心霊学入門
第4話ズッコケ夢のゴールデンクイズ
第5話ズッコケ時間漂流記
第6話ズッコケ推理教室
第7話ズッコケ文化祭事件
第8話ズッコケ宇宙大作戦
第9話ズッコケ学校の怪談
第10話ズッコケ三人組対怪盗X
第11話ズッコケお菓子戦争
第12話ズッコケダイエット講座
第13話ズッコケ大追跡! 怪盗Xを追え!!
第14話ズッコケ地底王国
第15話ズッコケ妖怪大図鑑
第16話ズッコケ三人組ハワイへ行く
第17話ズッコケ忍者軍団
第18話ズッコケ財宝調査隊
第19話ズッコケ恐怖体験
第20話ズッコケ発明狂時代
第21話ズッコケ結婚相談所
第22話ズッコケ探検隊 あやうし!!
第23話ズッコケ バック・トゥ・ザ・フューチャー
第24話ズッコケ怪盗Xの大逆襲
第25話ズッコケ未来報告
第26話ズッコケ芸能界情報


実写ドラマ編集

出演者に安藤圭子役で岡村英梨(現:喜多村英梨2001年のスペシャルまで)、奥田タエ子役で渡辺明乃(第1のみ)がいる。

  • 2002年、全出演陣を一新、舞台も関西に変更した『新・ズッコケ三人組』が、これまたNHK教育テレビにて放送。

 

その他、1991年1998年には映画化もされている。


人形劇編集

1990年代から人形劇団ひとみ座によって、複数作が人形劇化されている。


関連イラスト編集

ズッコケなひとびと


関連タグ編集

ハチベエ ハカセ モーちゃん ズッコケ3人組


地獄堂霊界通信:同じくポプラ社を版元とする、小学校高学年で同級生の3人の男子が主役の児童文学。地獄堂霊界通信は、版元が後に講談社に変更している。


外部リンク編集

公式サイト

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