ヤツらは、君のそばにいる…
概要
2021年8月1日のデジフェス2021で発表された新作アニメ。
2021年10月3日から放送。TVシリーズとしては『アプリモンスターズ』以来5年ぶりの完全新作アニメであると同時に令和最初のデジモン新作アニメ。愛称は『ゴスゲ』。
シリーズが連続して放映されるのは『デジモンフロンティア』以来で、キャラクターデザインはかつて『デジモンアドベンチャーVテイマー01』を連載していたやぶのてんや。
バンダイの育成ギア『バイタルブレス』シリーズと連動しており、劇中で「デジヴァイス」として登場する。
これまでのアニメシリーズが「怪獣もの」の一面を押し出していたのに対し、その前に「怪奇」「ホラー」を置く作風としており、キービジュアルやOPから感じられるおどろおどろしい雰囲気や、時間が奪われミイラ化していく人間が描かれるなど、タイトルに違わぬホラーテイストが感じられるのが特徴。
制作陣曰く、様々なホラー映画のパロディが詰め込まれているとのこと。
それを彩るナレーション「ゴーストナビゲーター」として、俳優の竹中直人が出演している。5月8日の放送では、実際に竹中氏本人が顔出しで総集編を解説した。
主要の6人を演じる声優はいずれもデジモンシリーズ経験者である他、ゲストキャラやデジモンの声を当てる声優もシリーズ経験者が多く、前作前作『デジモンアドベンチャー:』からの続投者も多い。その一方、デジモンシリーズ未経験者の声優も積極的に起用している。
2022年3月には東映アニメーションへの不正アクセス事件によって制作の遅延が発生。20日からは第1話を皮切りに当面の間「デジモンゴーストゲームセレクション」を放送、同年4月17日より新作エピソードの放送を再開。
前作『アドベンチャー:』同様に放送期間は1年を超えているが、前述の一件が放送期間・話数にどのような影響を与えたかは、公表されていないため不明。
『逃走中グレートミッション』に後を託す格好で2023年3月26日放送分を以て終了(なおジェリーモン役の嶋村侑とエスピモン役の小林由美子を始め、キャストの大半がこちらに引き続き出演)。
前作と合わせて2シリーズ・3年間放送されたデジモンシリーズのアニメは再び休止期間に入り、『THE_BEGINNING』が事実上の次回作となった。
話数は特別編1話を含めた全68話となり、フジテレビ系列で放送されたデジモンシリーズのアニメとしては現状最長記録。
あらすじ
新しいテクノロジーが発展した、ほんの少し先の未来。
そんな中SNSでは、「ホログラム・ゴースト」と呼ばれる真偽不明の怪奇現象の噂が飛び交っていた。
中学1年生の「天ノ河宙」は、父が残した「デジヴァイス」という謎のデバイスを起動したことで、普通の人には見えない未知の生き物「デジモン」たちの姿が見えるようになる。
父から預けられたやんちゃな「ガンマモン」と出会ったその日から、宙は様々な怪奇現象に巻き込まれ、仲間たちとともに、デジモンたちが生きる不思議な世界に足を踏み入れていく。
人間の時間を盗む「口縫い男」や、夜な夜な徘徊して人間をさらう「ミイラ男」。
ホログラム・ゴーストは、すぐそばで私たちを狙っているのだ。
ここから先は、誰も知らない世界の裏側の物語。
主な登場人物
メインキャラクター
本作の主人公。皆から頼りにされるしっかり者の男子中学生。
探究心が強く、デジモンの世界にも惹かれていく。
本作のヒロイン。SNSでも人気を博している、活発で社交的な女子中学生。
自分探しに余念がなく、何にでも首を突っ込みたがる。
海外の大学院を飛び級で卒業したという、天才肌な男子中学生。
不遜な性格だが、同時にかなり臆病な面も。
パートナーデジモン
宙のパートナーデジモンで、頑強なボディが自慢。
何にでも噛み付くやんちゃ者で、好奇心も旺盛。
瑠璃のパートナーデジモンで、結構な大柄。
温厚かつ大人っぽい性格で、デジモンの事にも詳しい。
清司郎のパートナーデジモンで、半流体の体を持つ。
気位の高い女王様気質で、清司郎を怖がらせるのが趣味。
その他は、デジモンゴーストゲームの登場人物一覧を参照。
用語
デジモン達が人間界で引き起こす、常人には理解不能な怪事件。デジモンの多様性に比例する形で、その動機や被害度も千差万別。
詳細はリンク先を参照。
- デジヴァイスV→デジヴァイスVV
本作のデジヴァイスで、アニメでは初の腕に巻くタイプ(もちろん普通に腕時計としても使える)。
従来の様にパートナーデジモンを進化させられる他、本作特有の様々な機能を備えている。なお、セイバーズ版の様に話の途中でアップデートされた。
詳細はリンク先を参照。
- 宙のデジモン調査ファイル
第33話から追加された、各話に登場したデジモンを紹介するミニコーナー。物語内でアンゴラモン等が解説した際に表示されていたデジモンデータ画面をコーナー化したもの。
前作『アドベンチャー:』の類似コーナーは泉光子郎が単独で解説を行っていたが、今作では一同の掛け合い形式。
宙&アンゴラモンが解説→瑠璃orジェリーモンがそのデジモンに関係する都市伝説などを話す→清司郎が怖がって締め、の流れが基本ガンマモンは一度もこのコーナーで発言することがなかったが、尺を踏まえれば流石に仕方ないだろう。
今作では初代デジモンアナライザー以来できちんと「データ/ウィルス/ワクチン/フリー/ヴァリアブル」の属性が表示され、『:』で「???」と分類不明にされていた「アーマー体」や後で追加された「ハイブリッド体」もしっかりレベル欄に書かれている。
作風
「メインキャラ3人のパートナーがワクチン、データ、ウィルスに分かれ、主役格がウィルス」「現実世界が主な舞台で、そこに実体化するデジモン達を追う」など、『デジモンテイマーズ』や『デジモンセイバーズ』、『時を駆ける少年ハンターたち』との共通点が多々見られる。
ホラーテイストや近未来的な世界観も踏まえると、『アプモン』を『サイバースルゥース』に寄せた作風とも見れる。
今作のパートナーデジモンは必殺技名を叫ばず、かわりに人間側が技名を指示し、初めて技を発動させた時は人間側のキャラの頭の中に技名が浮かび上がる演出が入る。他のデジモンは当初は必殺技の名を叫ばなかったが、第3話以降から普通に叫んでいる。
また『デジモンクロスウォーズ』程ではないが、今作は人間側の主要キャラが少なく、新たなテイマーも増えずにアニメシリーズ最小だったこともあり、パートナー以外の仲間デジモンの頭数が多めで、状況次第では頼もしい支援をしてくれる場面も多い。
ストーリーは、登場人物達がデジモンが起こす怪事件に巻き込まれながらそれを解決していくものなのだが、専ら人間界を舞台とした1話完結式の日常(?)回がほぼ全てを占めるのが最大の特徴。
『アドベンチャー:』もデジタルワールドの冒険譚であることを除けば近い作風であるが、今作ではこれが徹底されており、連続したエピソードが描かれたのはデジタルワールドを舞台とした最終3話のみである。展開も非常に遅く、物語の核となる謎についてもギリギリまで明かされなかった。パートナーデジモン達が究極進化に至るエピソードも上述した「これまでの日々の尊さ」を意識しており、最終的な結末も「これからもデジモンのいる日常は続いていく」ことを示したものである。
放送期間の2年間で過去のゲストデジモンの再登場はあれど、縦軸の組織のような敵は一切おらず、黒幕的存在は一応いるのだが、その扱いもこれまでのシリーズと比べると少々変わったものであった。
コロナ禍を意識しているという背景もあったのだろうが、『アドベンチャー:』でも一貫した敵対勢力は存在しており、似た構成の『XW3期』が約2クールの物語にしてそれまでの後日談のような側面もあった作品であることを考えると、かなり思い切った作りである。
もう一つの特徴として、怪異の正体=各話のゲストデジモンを少数に絞り、その掘り下げを行う傾向が強いことが挙げられる。
アーマー体やハイブリッド体は一個人として普通に登場するし、設定と差異があるケースもあるが、基本的には前作同様にデジモンの公式設定の再現率が高く、長年披露していなかった能力を今作で初めて披露したデジモンや、元ある設定が別の形で活かされているデジモンも多い。これまでのアニメ作品は公式のデジモン図鑑と比較した設定の改変、敵という立場ゆえに設定とまるで違うような扱いも珍しくなかった(それが本当に作品の質を下げているかは別として)ため、この作風の強みと言えよう。
デザインも公式絵寄りにリファインされている事がしばしば(マジラモンの色が初登場作の『テイマーズ』から元に戻っている、ムシャモンの鎧の造形が細かい、カルマーラモンの左目のメイクがなくなっている、ダークナイトモンが公式絵基準になった等)で、これを機に過去作を見比べるのも面白いかもしれない。
加えて、今まではモブ同然だったり、スポットが当てられる機会が少なかったデジモンの活躍の場がぐっと増えている。中には『デジモンアドベンチャー02』の劇場版「デジモンハリケーン」基準のデザインで登場したアンティラモンや、実質的にオクタモンの設定上のみの存在だったフジツモン等の意外なデジモンや、設定の都合上メディアでの登場が難しいとされていたデジモンの登場も積極的。
その上で次回予告ではメインのゲストデジモンを極力映さないorシルエットを多用するなど、なるべく当日までネタバレ防止を心掛けており、登場デジモンの予想を立てて楽しめるのも今作の魅力である。
前作は言葉を話さないデジモンが多かったのに対し、今作は従来通り殆どが普通に人間の言葉を話せる理性がある。例外もあるが続投したデジモンには「前作で活躍の場が少なかった」「言葉を発さなかった」デジモンが選出されている傾向がある。
今作のデジモンは大半が人間界の適応力や文明の利器を理解・使用できるほど知能が高く、中には人間の姿に化けて社会に溶け込み生活する個体もいる。またイメージと裏腹に怪獣並みに巨大な事が多い従来と比べて現実味があるサイズに設定されており、今作の作風と相まって人間界の身近にいるモンスターだと言う毛色がより際立っている。
デジモンはさながら妖怪の延長線上にいるような描かれ方をされてはいるが、妖怪とデジモンを関連付けるという発想は『02』の頃には既に存在していたものである(ちなみに本作にはあのダゴモンも登場している)。
また、デジモンとは無関係の怪異や心霊現象、人間の霊魂やあの世の概念も存在しており、デジモン側がその悪影響を受けてしまったエピソードも描かれている。
作品自体が都市伝説や怪奇現象=本来なら人智の及ばない事象をモチーフとするためか、序盤からパートナー達のレベルに対し格上、特に完全体が登場することが多かった。
話が後半に入ると究極体、それも七大魔王や十闘士、桁違いの実力を有するラスボス級のデジモンも現れ始めた(詳細はネタバレになるため避けるが、全ての元凶と言える存在に関しても『途方もなく強大な究極の怪異』として描かれており、その正体は謎だらけのまま完結している)。
そうした方針もあってか、気付かない間にデジモンによる大規模な被害が出ていることもザラであり、主要メンバーが被害にあって満足に戦えないパターンも多く、(デジモン含め)死人が出てしまった回もある。
ただ、ホラーが題材の割にはデジモンを斃して解決することは少なく、戦闘の決着は「逃げられる」「和解する」「懲らしめる」「怒りを鎮める」など、比較的穏便な結末が多い。
今作のデジモン達は弱肉強食の価値観が強い分、戦闘後の説得で分かり合えることが多く、あからさまな悪意の元に暴れているパターンも少ない。アンゴラモンの話からすると利己的に殺しを重ねる輩は同じデジモンからも忌避されやすい傾向にある模様。そうした人間やデジモンに危害を加えるデジモンは最悪、穏健派のデジモンによる粛清や逮捕といった措置が下されることもある。
この方向性は物語の根幹になっている。
主題歌
デジモンゴーストゲームの楽曲一覧を参照。
余談
何気にパートナーデジモン全員が浮遊・飛行能力を持っており、その進化系は陸海空それぞれに特化した進化をしている。
これまでのシリーズで「デジヴァイス」を育成ギア化した事は何度かあったが、『アドベンチャー』〜『セイバーズ』までの作品では究極体をネタバレしてしまうという事が度々あった(『テイマーズ』や『セイバーズ』の場合はOPのシルエットで登場を予告していたが)。
本作のバイタルブレスはDimカードによるある種のDLC制を採用していながら、主役3人のパートナーの進化系で発表されたのは完全体までであり、究極体は既存デジモンで構成されている。
過去にデジヴァイスが「デジヴァイスバースト」などの後期仕様を販売したように、今後の商品展開で発表されると予想していたファンもいたが、実際に2022年秋、バイタルブレスBEの発売が決定し、ガンマモンの新たな進化系が先行公開されることとなった(本編にはしばらくしてからデジヴァイスVVとして登場した)。
上記の通り玩具で完全体はネタバレしていたものの、実際にアニメ本編に登場するまでOPのアニメーションには映らないようになっていた。逆に販売時期の点から、ジンバーアンゴラモンとテスラジェリーモンはOPにて初公開される扱いとなった。
今までの作品に比べると、幼年期と究極体、ハイブリッド体のデジモンの登場が抑えられている。究極体は回想でプラチナヌメモン(正式登場はピエモン)、ハイブリッド体はギガスモンが初登場だが、幼年期は第61話でのツメモンが初登場でなんと究極体よりも遅い。近々のアニメシリーズでは早い段階で究極体が登場する事が多かったので、今作の登場率はシリーズを通して比較的普通だが、幼年期が最終盤まで出ていなかったのは非常に珍しい。メタ的な事情としては、強力な力を持たず敵としては弱い幼年期を目立たせることは難しかったのだと思われるが、一応理由付けと取れるエピソードも存在している。
一方で、本作ではデジモンデータ画面を除くと、デジモンの進化レベルについては作中で一切触れられていない(なお、ビーストスピリットのハイブリッド体はバイタルブレスと同じく完全体相当の模様)。
作中では都市伝説では済まないような実害の出ているかなり大規模な事件が多発しており、新島さんなど過去にホログラム・ゴーストの被害にあった人物が、後の話でそれに言及することは全く無いのが少々不自然だったが、第39話でバクモンが「記憶も少し弄っておいた」と言っていたため、もしかしたら他の事件も『セイバーズ』の記憶消去装置の立ち位置としてバクモンがアフターケアをしていた可能性がある。
もっとも、メタ的に見れば6期鬼太郎のように話数によって認識が変わるようなある種のパラレルワールド気味で一貫した設定や描写がないだけの可能性もある。
時折、これまでのデジモンアニメシリーズを意識したような展開や演出がなされることがある。
- 挿入歌「First Riders」の歌詞「オソレさえ愛せるハズBrave Hearts (中略)合言葉はevolution」。(無印)
- 新挿入歌「MAKUAKE」の登場で、成熟期・完全体の進化曲は同じ、究極体だけ曲が違うという演出になった(テイマーズ)。更にその曲の歌詞に「沸き立つ勇気は無限大」というものが含まれている。(無印)
- 進化バンクをよく見るとデジモンが横回転している。(無印、02)
- アルケニモンの擬態能力の設定及び彼女やヴァンデモンの担当声優。(02)
- 宙のパソコンに光子朗のノートパソコンと同じパイナップルのマークが。因みに宙と光子朗(tri)は声優も同じ。(無印/tri)
- ナノモン回の展開。消滅しかけたデジモンが人間に取り憑いて再生、人間に『種』を植え付けるなど、全体的にベリアルヴァンデモンのオマージュととれる。(02)
- ピエモン回の双陣営の布陣(人間側は最大レベルが完全体、敵側の親玉が究極体、配下にメフィスモン及び複数のアーマー体)。(劇場版テイマーズ)
- ムシャモンの刀に乗っ取られて暴走したデジモンの1体に、フロンティアで炎のビーストスピリットに取り込まれて暴走したシャーマモンの近縁種のゴブリモンがいた。(フロンティア)
- デジヴァイスが人間が作ったものであり、更に開発者がデジタルワールドで行方不明になっている『主人公の父親』。(セイバーズ)
- ジンバーアンゴラモンがズバモンを武器として装備して戦った。武器に変形できる設定のデジモンが実際に装備されたのはXW以来。(:のスカルナイトモン/ダークナイトモンのデットリーアックスは「技」なので除外)(クロスウォーズ)
- ギュウキモンをリュウダモンに戻す際の展開(演出)が、ダークボリューモンをバリスタモンに戻す際のものと良く似ている。(XW2期)
- パートナーデジモン達の初超進化の際の展開。
各話リスト
ホログラム・ゴーストの記事内ホログラム・ゴースト一覧が実質的に各話リストを兼ねているため、そちらを参照のこと。
デジモンドリーマーズ
本作と同時期に最強ジャンプで連載中の漫画作品。
作者はやぶのてんや。「ゴーストゲーム」とは登場人物が異なるオリジナルストーリーであり、デジモンシリーズの漫画オリジナル作品は「デジモンネクスト」以来13年ぶり。
登場人物
関連タグ
- デジモンサヴァイブ:放送中に発売されたゲーム作品であり、こちらも怪奇色を押し出している。ただし非常にハードな作風が特徴であり、本作とはむしろ対照的。
- 妖怪ウォッチシャドウサイド:ストーリーとしてはこれのデジモン版。宙役の田村氏は主要キャラの声で出演しており、作風の割にあまり敵を屠らない点も同様。
- 6期鬼太郎:ダーク&ホラー重視という点から、キャッチフレーズや雰囲気が酷似している。ガンマモン役の沢城氏は主人公の声で出演している。
- 仮面ライダーリバイス:放送時期が近かった東映+バンダイ+裏番組。こちらも人間と人外がパートナーを組んで、持ちつ持たれつの関係を築いている。この作品は8月で放送を終了し、翌月の9月からは仮面ライダーギーツが裏番組となる。
- 仮面ライダーゴースト:ゴースト繋がり。敵は別世界から人間界に送り込まれる他、普通の人間からは姿が見えないと言う今作のデジモンの特徴に似通っている。ゴーストナビゲーターを担当する竹中氏は主要キャラクターとして出演していた。
- ONEPIECE:後番組にして、今作に出演する一部の声優が共通。