熊本県
くまもとけん
概要
茶臼山にあった隈本城を基に熊本城が築かれるまで地名は「隈本(くまもと)」であったが、慶長11年(1606年)に城が完成したことを契機に加藤清正の命により現行の「熊本」に改められた。
県庁所在地は熊本市、20番目に制定された政令指定都市であり、道州制制定の暁には九州の州都となることを目指している。隣接県は北部に福岡県、東部に大分県、東南部に宮崎県、南部に鹿児島県、海をはさんで長崎県、佐賀県である。
「肥後の石工(ひごのいしく)」という言葉が残されているとおり、県内各地には多くの石造物が残されており、通潤橋・霊台橋など多くの石橋が今も現役として活用されている。
2018年7月には国際教育科学文化機関(ユネスコ)に天草市崎津集落と長崎県を含む「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が世界文化遺産に登録されている。
- 熊本城…安土桃山時代の武将・加藤清正の築いた熊本城は石垣の雄大さ、城郭の壮麗さで知られた日本三大名城のひとつであったが、平成28年熊本地震(2016年)において倒壊、再建に多くの費用と時間がかかるものと懸念されている。現在、2021年春、修復を優先させた天守閣が完成、他の建築物の修復工事も随時予定され、2036年頃の完成が予定されている。
- 水前寺成趣園(水前寺公園)…熊本藩主・細川家による大名庭園。豊富な湧水量で知られていたが、「平成28年(2016年)熊本地震」の影響で湧水量が激減、しかし、同年8月を過ぎると湧水量も回復、往時の姿を取り戻しつつある。
- 熊本大学…旧制五高、夏目漱石、小泉八雲が赴任したことで知られる。
- 本妙寺…加藤清正が建立した日蓮宗六条門院流寺院。清正の菩提寺であったが、加藤氏の改易後も細川氏の崇敬と保護を受け、現在に至る。
- 通潤橋…上益城郡山都村にある石橋。江戸時代後期に作られた農業用水路橋で橋中央からの放水は迫力満点。「平成28年熊本地震」における2度の激震にも崩れることなく耐えたが水路が損壊、水路橋として現役であるため、2020年3月に修復を完了、コロナ流行のため同年7月21日に放水が行われた。
- 阿蘇山…日本第2位を誇る阿蘇の大カルデラは直径30キロに及んでおり、大観峰から望む阿蘇五岳(根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳・杵島岳)は「大涅槃像」の異名で有名である。
- ミルクロード…肥後大津町から大観峰まで登ることができる道路と阿蘇市へとつなぐ道路が交差しており、久住山、黒川温泉へと続く観光道路としての役割と国道57号線の代わりのライフラインとしての役割を同時に果たす。
- グリーンロード…益城町から阿蘇の大カルデラを南方へ経由して南阿蘇村へとつなぐ道路。もとからあった路線でありかなりの回り道となるが俵山トンネルの被災後、代替通路として重要視された。
- 白川水源(南阿蘇村)…一級河川・白川の源泉。湧水量の豊富さで知られる。
- 阿蘇神社…初代天皇・神武天皇の孫・健磐龍命を祭神とする肥後一宮、神職は豪族・阿蘇氏の末裔である。「平成28年熊本地震」により国の重要文化財である楼門と拝殿が倒壊、倒壊した資材も保管、活用しての再建を目指している。阿蘇神社の楼門は国の重要文化財である。
- 内大臣橋…下益城郡美里町と山都町を結ぶ陸上橋、全長199.5M、水面までの高さ86M、幅5.5M。
- 菊池水源…熊本県北部を流れる菊池川の水源。雄大な自然に恵まれた清流はハイキングコースとして飽きることがない。夏の陽射しを浴びる新緑もいいが、秋の紅葉もおすすめ。
- 菊池市…北東部に位置する市。南北朝時代に活躍した菊池氏の本拠。菊池神社は南北朝時代に活躍した菊池武時・武重・武光を祀り、桜の名所としても有名。
- 山鹿市…北部に位置する市。県内有数の温泉地として知られ、「山鹿灯籠踊り」も有名。古い建築様式で知られる芝居小屋・「八千代座」には坂東玉三郎が毎年公演に訪れる。
- 玉名市…北西部に位置する市、後述するマラソン選手・金栗四三の出身地としても知られる。熊本ラーメンは久留米ラーメンを基にここで発祥したとされていることから、今も多くのラーメン屋があり、町おこしの元ともなっている。
- 南関町…最北部にある町、作詞家・北原白秋の故郷。
- 天草諸島…中西部に位置する宇土半島の先に連なる諸島、北に有明海、南に八代海がある。島原の乱の舞台のひとつとなったことから、過去には教会が各地に建てられており、キリスト教徒も多数いたが、現在はキリスト教徒は一部地域(崎津地区等)を除き多くはない。
- 天草五橋…天草初冬を結ぶ海上橋。
- 天草空港…天草エアラインが就航、「熊本-天草」間、「福岡-天草」間を結ぶ。
- 八代市…中南部に位置する熊本県第二の市。江戸時代、幕府によって定められた「一国一城令」の例外として「八代城」が置かれ、細川氏の家老・松井氏が代々城主を務めた。また、畳の原材料であるい草の大生産地でもある。
- 水俣市…南部に位置する市。負の遺産として公害病・「水俣病」が発生したことで知られるが、水銀の封じ込め、水質の浄化により、現在、魚の放流が行われている(ただし、現在も患者認定訴訟が行われており、完全に解決したわけではない)。
- 人吉市…最南部にある市。平安時代から続く相良氏の本拠として知られる。人吉城、人吉阿蘇神社などがあり、温泉地としても有名。
- 球磨川…「五木の子守歌」で知られる五木村、人吉から八代を経て八代海へと流れる一級河川。日本三大急流のひとつ。
熊本県はまた農業県、酪農県でもありトマト、スイカの生産も全国一、ナス、メロン、デコポン、牛乳などが有名であり、牛肉・豚肉・馬肉の生産も多く(特に馬肉の生産量は全国一)。産地が近いため農産物、海産物の価格が安い。
ラーメンだけでなくイタリアン・フレンチレストラン、唐揚げ屋とカレー屋も異様に多い。その中でもジョイフル、ココ壱番屋が特に多い。フルーツや小麦粉の産地であることを生かしたケーキや菓子パンなどの甘味系も人気店舗が多くある。
食べ物の美味しい都道府県で北海道などと並び名前が挙がることも珍しくないほど美味しいものに恵まれている。有名どころはやはり馬刺し。
東京や大阪などの県外拠点の日本企業のみならず、アジア諸国の外食産業チェーンからも攻略対象として注目を集めており様々な飲食チェーンも度々進出を試みているが、「美味しいものを食べつけている上に遠慮がなく飽きるのも早い県民性」を納得させる味を提供するのは困難も大きく、有名チェーンでも短期撤退の憂き目にあった企業は多い。
熊本から他県に進出した飲食チェーンもあり、餃子を中心とした居酒屋「弐ノ弐」やラーメン屋「魚雷」「味千ラーメン」などが県外進出を果たしている。
水の国と呼ばれるだけあって湧水池の多さで有名。水道水が綺麗で「蛇口をひねるとミネラルウォーターが出てくる」と言われるほど。
修学旅行などの学校行事で県外に出る際、先生から「他県の水道水はお腹を壊すので飲んではいけません」と注意される学校が多く、このことは県民の間でよく話のネタにされる。
平地部は全国屈指の不快で強烈な蒸し暑い夏と厳しい冬の寒さで知られ、その点でも暮らしにくい土地柄である。阿蘇などの山間部は夏も涼しいのだが、冬はそれ以上の寒さで吹雪くこともある。
災害と復旧
熊本県は観光地として、熊本城、水前寺成趣園(水前寺公園)、本妙寺、通潤橋、阿蘇山、菊池水源、温泉など、多くの観光資源を持つが、平成28年熊本地震(2016年)によって国道57号線、菊池・阿蘇スカイライン、俵山トンネル、阿蘇大橋などの道路、橋梁が損壊・崩落、国道57号線と並行する豊肥本線、南阿蘇鉄道も寸断、施設にも大きな被害を被ることにもなり、復旧のめどが立っていないところもあったが、同年12月24日には俵山トンネルが開通、菊池・阿蘇スカイラインも応急復旧、12月28日より片側交互通行が再開されることとなった。
令和2年(2020年)8月8日、JR豊肥本線が全面復旧を果たした。
令和2年(2020年)10月3日、新たに二重峠トンネルを通過する国道57号線が開通。
令和3年(2021年)3月7日、崩落した阿蘇大橋から600M下流に新阿蘇大橋が開通。
平成28年熊本地震は、八代・宇土・人吉各市の市庁舎に致命的な打撃を与え、南阿蘇村・西原村・益城村など熊本県中東部に多大な被害を与えたものの、熊本市を中心とする都市中枢部は致命的打撃を免れ、現在、復興の道を着実に歩んでいる。
令和2年(2020年)7月3日、令和2年7月豪雨がはじまり、7月9日、熊本県県南から鹿児島県県北にかけて豪雨が降りつづき、球磨川が決壊、死者65人、行方不明1人を出す惨事となった。
この豪雨の結果、陸橋、線路が破壊された肥薩おれんじ鉄道が全面停止、建設計画が中止されていた川辺川ダムの建設も再び検討されることとなった。
熊本県の社会
基本的に保守の気風が強く、自民党の政権復帰後は県選出の国会議員は完全に自民党で占められており国政選挙ではほぼ全員がゼロ打ち当選するほど。自衛隊に対する県民意識も好意的。
日本維新の会やれいわ新撰組などの野党も度々宣伝に訪問しているが勢力を得ることはできていない。日本共産党も市町村レベルだと若干の議席数があるものの共産アンチの県民も多く、2020年台に入ると県議会に共産党の議席がゼロになるほどである。
このような気風からか台湾有事への対策も国から真っ先に諸計画協力の依頼が入っている。
長野県と双璧をなす強烈な高校閥社会であり、公立高校の上位校やスポーツ強豪校の私立高校のOBの結束は強い。一方で校則が全体的に厳しい傾向にあるが2020年以降はコロナ対策や時勢の変化により体育会系校の「シメ」や「朝課外」の廃止が県レベルで推進されている。
高校閥についても絶対のものとは言い切れず、他の要素があれば県内ブランド高校卒以外でも首長当選は不可能ではない。熊本市のブランド高偏重に加え少子化もあり熊本市外の高校の定員割れが深刻化している。
2008年の蒲島県政以来、後述のアニメ・漫画タイアップイベントやくまモンなどのプロジェクトが積極的に行われている。また蒲島の引退後の後継となった木村敬をはじめ中央付近の首長の若返りが進んでいる。
令和以降は菊陽町を中心に半導体メーカーの進出が相次ぎ、周辺の大津町・合志市も含めた再開発、大学や高校での半導体系学科の新設が進んでいる。TSMCの進出や台湾有事への備えなどの国家レベルのプロジェクトもあり、台湾人の移住も増えている。ただ、在県外国人で最も人数が多いのはベトナム人である。
オタク事情
中心地でもある熊本市は政令指定都市となっており、アニメイトや同人誌専門店なども少々ある。
…が、熊本は貨物列車輸送のせいか本の入荷が遅い(少年ジャンプの看板作品ほどの有名漫画だったとしても発売から早くて2日後くらいからやっと書店に並ぶ。熊本市内だとしても中心地から離れた本屋ならもっと悲惨)。
テレビは民放4系列あるがアニメの地上波放送が極端に少ない。有料の動画配信サービスにでも加入しない限り熊本で話題のアニメを追いかけるのは非常に困難となる。
放送も遅れている。例を出すと、尾田栄一郎の出身県であるにもかかわらず、「ONE PIECE」の放送は49日も遅れている。九州で2番目に遅れている宮崎県ですら21日遅れだというのに熊本はその倍以上。熊本より南にある鹿児島にも遅れをとっている。ただし、それ以外は4つの民間テレビ局があることから深夜アニメの放送には比較的恵まれている。
アニメ映画も、ジブリ作品や「君の名は。」ほどの一般向け有名作品でも無い限り、まともに上映してくれる映画館があるかは怪しく、たとえ上映されても枠をすぐに減らされ、全国に先駆けて上映が打ち切られるありさまである。深夜アニメ出身のアニメ映画の上映にまあまあ積極的な映画館が県中北部に1つだけあるにはあるが、中心地から離れた場所にあってバスと鉄道の便も悪いという、県民の誰もが行きやすい場所にあるわけではない。
以上のことから、熊本は田舎であると嘆く県民は非常に多く、とてもじゃないがオタク産業的に恵まれた土地であるとは言い難い。
漫画家では尾田栄一郎、吉崎観音などが出身者でこれらを町おこしに使おうという動きが近年起こり、尾田栄一郎の代表作「ONE PIECE」に至ってはルフィやサンジら麦わら海賊団のメンバーを銅像化する企画が進行、平成28年熊本地震の被害に遭った熊本市や益城町など8市町村に建立された。
また、出身者の一人である堀江信彦の協力もあり高森町にある公立高校「高森高校」に漫画家育成コースである「マンガ学科」および寮設立され県外からの受験者も受け入れている。
漫画専門図書館も合志市の「合志マンガミュージアム」をはじめとして複数県内に存在する。
熊本市以外でも漫画とのタイアップイベントは行われており人吉市が「夏目友人帳」とのタイアップ、湯前町などではコスプレイベントも開催されている。
方言ではないが、県独自の用語
- 市内
熊本市内のことを指す。
- 街(まち)
熊本市中心部のアーケード繁華街「上通り」「下通り」及びその近辺。
- リバテープ
絆創膏のこと。県内の製薬会社「リバテープ製薬」の販売している絆創膏から。他メーカーのものでもこう呼ぶ人が珍しくない。
公立高校のトップ4、熊本高校、済々黌高校、第二高校,第一高校を指す。