概要
中国の漢民族(回族などの少数民族料理を含むことがある)本来の料理である料理が描かれている絵に付くタグ。
中国由来の日本化した料理については、中華料理へ。中国で育った中国人にとって、日本の中華料理店の料理は、見た目が似ていても香りや味がまるで異なり、「同じ名前の料理でも中国とは別物」と感じられてしまうことが多いようだが、在日中国人の増加に伴い、東京などの大都市圏では本場そのものの味を出す店が現れてきた(ガチ中華)。
全体的な特徴
「中国本来の」と言っても、長い歴史の間に色々な要素が流入しているし、変化したものも多い。
現在は箸を縦に置くが、元々は日本と同じく横置きだったし、ご飯は韓国料理のように匙(スプーン)で食べていた(古代では指でつまんでいたという)。味付けも、油脂を多用するのは比較的新しい時代で、宋の頃は味付けも淡白で、むしろ日本料理に近かったらしい。またその頃までは肉や魚の生食の習慣もあった。
犬を食べる習慣のように、長年にわたり衰え続けたのが近代になってリバイバルしたものもある(犬食はコロナ禍に伴う当局の取り締まりでほぼ見られなくなった模様)。
ともかく、日本料理との分かりやすい違いは以下の通り。
・油脂の使用が多い。
特にラードが多く、お菓子にまで使用している(例:月餅)。炒め物も日本の感覚からするとたっぷり油を使う。
・炒め物が多い。
石炭と鉄の生産(特に鋳鉄)において先進国だったため、コークスを使った強火と厚手の鉄鍋が早くから普及した。
・生食はしない。冷たい料理が少ない。
冷たいものは身体に悪いと考える思想から。中国は日本に比べ衛生状態が悪かったこともあり、熱々の食事をとることが重視された。
・保存食品を使った料理が多い。
シイタケ、昆布、アワビ、フカヒレなど。古くから北海道産の海産物が中国に盛んに輸出されてきたため、日本の産物とも縁が深い。
・魚料理は川魚が多い。
海から遠い地方が多いため。鯉やソウギョなどが人気があり、海の魚も白身魚の方が馴染みがある。ただし、広東料理など、海鮮で知られる地方料理もある。
・直火調理は原則的にやらない。
もちろん、上記の特徴は現在はその限りではない。
実は一つじゃない中国料理
中国料理と一言に言っても、唐辛子や花椒をたっぷり使った辛い物や、塩味がメインの物とその味付けや調理方法には非常に幅がある。これは漢民族自体が多様な民族文化を基盤とした混成民族だからであり、地方の気候等によって、好まれる味付けや特産品が変わってくるためである。
北方系代表「北京料理」
主に「北京料理」と呼ばれるタイプ。
パオ(包)系の料理が多く、餃子や肉まん(饅頭:マントウ)はこの地方発祥。
宮廷料理も大部分がこの北方系に含まれる。味付けの特徴としては寒冷な気候を反映し、塩辛く、脂っこい。
西方系代表「四川料理」
麻婆豆腐やエビチリを始めとした、唐辛子などをふんだんに使った辛目の味付けが特徴の「四川料理」がコレ。
冬は非常に寒く、夏は非常に暑いと両極端な気候のため、その気候に負けない味付けとして唐辛子や山椒(花椒)を多く使うようになった背景がある。
麻婆豆腐のほか、担々麺もこの地方発祥。日本でメジャーな汁あり坦々麺は、陳建民が日本向けにアレンジした物なので、「汁なし担々麺」と言う呼び方は実はあまり正しくない。
南方系代表「広東料理」
大人気フカヒレや海老餃子はこの南方系に属し、主に「広東料理」と呼ばれる。海鮮が非常に豊かかつ新鮮なため、食材その物の味を活かすための薄めの味付けが特徴。この地域は早くから外国との交流が多く、西洋の料理法が取り入れられ、広東料理は海外でもよく食べられる中華料理である。その一方、ゲテモノ料理の本場でもある。米を使った料理も得意とする地域。そして、中華料理屋では外せない叉焼(焼豚)はこの地方発祥。
東方系代表「上海料理」
「上海料理」が東方系に属する。
江蘇省の「江蘇料理」と浙江省の「浙江料理」が源流。
実は最もポピュラーな料理が多く、代表的な物だけでも、八宝菜に小龍包にワンタンと定番とも言えるメニューを数多くそろえている。また江蘇省の揚州炒飯・浙江省の東坡肉など日本で一般的な料理の原型になっているものもある。
味付けの特徴としては、豚や魚介を甘めの味付けで仕上げる事にある。
それ以外の料理
日本で比較的よく見るのは「台湾料理」と「東北料理」だろう。
台湾料理は福建料理や客家料理から枝分かれした料理だが、日本統治時代に日本特有の食材や調理法が導入され、中華民国政府が大陸から移ってからは大陸各地の料理から影響を受け、近頃では台湾原住民の料理も取り込んでいる。そのため、「台湾料理」を称する店でも、所によってその趣を異にしていることが多い。
東北料理は北京料理の系列に属する料理で、餃子、ジャージャー麺などが名物。中国東北地方(満州)は、日本が影響力を及ぼしていた時代が長い事から、日本における中華料理の成立に大きな影響を与えた。なお、朝鮮半島に接する地域であるため韓国の中華料理はこの系統に属するものが主流。
他に「山西料理」「雲南料理」とかもあり、東京でも食べる事ができる。また、中国に居住する回族や他のムスリムの料理を指す「清真料理」が有り、豚肉由来食材や一部の魚介類由来食材を使わない、酒で味の下ごしらえをしないのが特徴。こちらは北京・広東など漢民族多数地区に溶け込んでいる場合もある。こちらは蘭州拉麺(蘭州牛肉面)が東京でも食べる事ができる。
実は判りやすい中国料理
フランス料理やイタリア料理に比べ、中国料理のメニューはポイントさえ抑えておけば、たとえ中国語で書かれていても、どんな料理か一発で読み取れる物が非常に多い。
最も判りやすい処では炒飯。これを読み解くと、「炒」とは文字通り炒めると言う意味で、「飯」とはご飯を指す物なので、炒めた米料理と言うことになる。
基本的にメニューの成り立ちは、食材・切り方・調理方をそれぞれ1文字ないし2文字で表しているので、食材と調理方法の読み取り方さえ抑えれば、とんでもない料理にブチ当たる事は殆どない。
ただ、特に香港などで、縁起担ぎのために傍目には訳の分からない大袈裟な料理名を付けている事があるので、その時だけは要注意。
もちろん、日本語と意味が違う漢字や、日本では使わない漢字も多いため、その辺も注意。「焼(煮る)」「湯(澄まし汁)」などが代表例。
素材に無節操な中国料理
中国では、漢民族に限っても、広い範囲に居住しているため、食材のバリエーションが多い、というより多過ぎる。
食の禁忌が社会的にほとんどないため、外国人どころか、別の地域の同国人からしても「ゲテモノ」扱いされる物も多い。特に広東では「とりあえず生き物は何でも食べてみよう」というのか、先述した犬食がリバイバル以前も残存していて、カエル(主に腿肉)を鶏肉感覚で食べて(近隣の地域や東南アジアやフランスでも食べるが)、蛇、猫、コウモリ(果物を常食するオオコウモリ)、センザンコウ、その他諸々をおいしく頂いている。
高級食材も、「海中で岩に張り付く貝の干物」「鮫のひれの中の軟骨」「アマツバメの一種が巣を作るために出す分泌物」「海中のぐにょぐにょした棘皮動物の干物」「ラクダのこぶ」「森の死亡フラグの掌」その他諸々と、珍品のオンパレードで冒険し過ぎ感が漂う。
しかし無節操さは完璧(?)ではなく、こんにゃくは中国ではごく一部の地域でしか食用にしない「変な食べ物」で、ゴボウは中国から日本へ移入されたはずなのに中国では食用にしなくなった。馬肉も、日本の一部の地域やフランスなどで食べるが、中国では一部の民族を除いてゲテモノ扱いである。
さすがの広東でも、飛行機・机と椅子・人間は食用外だというギャグもあるが、人肉すら、古くは食用とする文化があった(飢饉や戦乱の際やむにやまれず人肉を食したという記録は世界中にあるが、中国は忠義の表現や恨みを晴らすため、ゲテモノ喰いのバリエーションなどとして平時でも人肉を喰っていた点が特異である)。無論、中国においても人肉が通常の食材であったというわけではないが、「水滸伝」を読む際にはご用心。
中華料理に関するタグ
料理
調味料
豆板醤 甜麺醤 オイスターソース 芝麻醤 鶏油 甜醤油 豆鼓 海鮮醤 魚露 XO醤 ラー油