妖怪(カクレンジャー)
かくれんじゃーのようかい
概要
現代に蘇った、日本古来より伝わる異形の怪物達。
その実態は、人の心に潜む怒りや憎しみといった負の情念が生み出した存在である。
彼等との戦いで最も太古のものは、2000年前に起きた三賢人(後の三神将)と妖怪大魔王との闘争であり、結果的に三賢人率いる人間側の勝利に終わり、大魔王と彼に協力した妖怪達は地底世界に追放された。
しかし、妖怪が滅ぶことはなく、時代の節々で姿を見せていた。戦国時代ではヌラリヒョン率いる妖怪忍者が大魔王復活のため暗躍していたが、カクレンジャーの先祖達がヌラリヒョンを地底世界に通じる封印の扉に閉じ込めたことで妖怪の力は封印され、妖怪達は400年もの間人間の姿で暮らすことを強いられた。
しかし現代において、カッパに騙されたサスケとサイゾウによって封印の扉が開かれ、妖怪達が復活してしまった。
復活当初こそは指揮統制が存在しなかったものの、貴公子ジュニアの登場や大魔王の復活を経て、徐々に組織化され、妖怪王国の樹立を第一の野望とするようになった。
ちなみにスーパー戦隊シリーズの中でも女怪人の数が多く、関連作品を含めた妖怪の総数の1/6に当たる7体が登場している。
性質
上述の通り、その本質は人の心が生み出す負のエネルギーが形をなしたものである。
完全に撃破すると梵字の形のエネルギーになって昇天・爆発して消滅するが、これは形を成したエネルギーがなくなっただけであり、その妖怪そのものが滅びたわけではない。
倒された妖怪(ドロドロ含む)は封印の扉の向こうにある封印の世界へ取り込まれて元の姿に戻るが、マイナスエネルギーを失ってしまい力が出なくなるほか、扉の外に出ることもできなくなる。
妖怪を構成するマイナスエネルギーは全体のごく一部に過ぎず、それらを統括している彼らの元締めにして力の源こそが妖怪大魔王である。
さらに妖怪が全滅した状態で大魔王が撃破されると、大魔王を構成していたマイナスエネルギーが封印された妖怪達に分け与えられて力を取り戻すというとんでもない性質があり、根本的に妖怪軍団に勝利するには全ての妖怪を撃破した上で、大魔王を生け捕りにして封印の扉に閉じ込めるしかない。
しかし、そもそもの大本が人の負の感情である以上、大魔王率いる妖怪軍団を全て封印してもそれで終わるわけではなく、負の感情が強くなれば妖怪軍団が再び力を取り戻すか、最悪の場合新しい妖怪が生み出されることすらあり得るのである。
滅ぼすことは理想的にも現実的にも不可能という、スーパー戦隊の敵としてはなかなか珍しい連中と言える。
ただし全ての妖怪が悪というわけではなく、中には良い心を持った妖怪も少数ながら存在する。
三神将は彼らとは逆に正の化身であるが、彼らと共通している点として妖怪軍団も忍法を扱うという点が挙げられる(過去には妖怪忍者なる組織が存在したほか、能力を行使する際に「忍法」と付ける妖怪が序盤で散見される)。
この性質のため、スーパー戦隊では歴代唯一の「首領や幹部のみならず、一般怪人や戦闘員に至るまで全員が(実質)健在のまま物語が終了した」敵となっている。
妖怪一覧
幹部以上の妖怪は妖怪軍団を参照
妖怪名 | 概要 | 登場話 | CV・人間態 | 妖怪モチーフ |
---|---|---|---|---|
ヌラリヒョン | 400年前、日本で暗躍していた妖怪忍者のボス。カクレンジャーの先祖によって、封印の扉に閉じ込められた。 | 第1話(回想) | CV:千田義正 | ぬらりひょん |
カッパ | サスケとサイゾウを利用して封印の扉を開けさせた張本人。ロクロクビとは夫婦。 | 第1・2話 | 赤星昇一郎(CV・人間態共) | 河童 |
ロクロクビ | タコのような頭が特徴の女妖怪。カッパの妻。 | 〃 | 鈴鹿景子 | ろくろ首 |
オボログルマ | タクシーの妖怪。人間世界ではタクシーの運転手として暮らしていた。 | 第3話 | ドン貫太郎 | 朧車 |
アズキアライ | オボログルマたちの親分。飛鳥警察署をアジトにしている。 | 第3・4話 | 粟津號 | 小豆洗い |
ヌリカベ | モクモクレンを相手に人間を駒にした脱出ゲームをしていた。 | 第5・6話 | 阿部渡 | 塗壁 |
モクモクレン | ヌリカベの弟分。鶴姫に一目ぼれし、結婚を迫った。 | 〃 | 舘大介(現在は舘正貴) | 目目連 |
ガキツキ | 大食いの妖怪。セイカイに憑依し、巨大化させた。 | 第7話 | 今井耐介 | 餓鬼 |
バケネコ | 猫の妖怪。子供達を誘拐し、仲間たちに売り捌こうとした。 | 第8話 | 北山亜紀子 | 化け猫 |
ドロタボウ | 関西弁を喋るテレビ好きの妖怪。モチーフはカカシ。 | 第9話 | 松村明 | 泥田坊 |
コナキジジイ | ピエロ人形のような妖怪。人形に人の魂を入れて、自分の家族を作ろうとした。 | 第10話 | ムッシュ田村 | 子泣き爺 |
シロウネリ | ぼろ布の妖怪。リサイクルを嫌っている。 | 第11話 | 市川勇 | 白うねり |
テング | 自称・世界一強い妖怪。ユガミ博士と共謀して、カクレンジャーを倒そうとした。 | 第12話 | CV:岸野一彦 | 天狗 |
カネダマ | ブリキのロボットのような姿の妖怪。人に呪いをかけ、霊媒師を装い呪いを解く代わり金を要求する。 | 第13話 | 人間態:斉藤清六/CV:篠田薫 | 金霊 |
ケウケゲン | 病の元をばら撒く大猿のような姿の妖怪。医者として暮らしているがとんでもない藪医者。 | 第14話 | 大河内浩 | 毛羽毛現 |
シュテンドウジ兄弟 | 監獄に収容されていた妖怪兄弟。カクレンジャー打倒の為、ジュニアが愛豊した。 | 第15・16話 | CV:渡部猛(兄)、山中一徳(弟) | 酒呑童子 |
アミキリ | 霧隠才蔵によって右腕を失った過去を持つ女妖怪。剣の使い手。 | 第17話 | 河合亜美(CV・人間態共) | 網剪 |
ザシキワラシ | 心優しい少年妖怪。ジュニアに洗脳されて、悪事を働かされた。 | 第18話 | 人間態:牧野一進/CV:沢田澄代 | 座敷童子 |
ツチグモ | クモの妖怪。人間を糸に絡めてソーセージにしてやろうとした。 | 第19話 | 森富士夫 | 土蜘蛛 |
サルガミ | 技を盗むため道場の師範代に化けて、人情に訴えかけてカクレンジャーを騙した。 | 第21話 | 大杉漣(CV・人間態共) | 猿神 |
エンラエンラ | 車の排気ガスから生まれた妖怪。笑いガスや泣きガス、痺れガスが武器。 | 第22話 | CV:神山卓三 | 煙羅煙羅 |
ウミボウズ | 大魔王復活のために、純真な子供達15人を石に変えた。 | 第23話 | CV:河合義雄 | 海坊主 |
イッタンモメン | 「ゲゲゲの鬼太郎」でお馴染みの妖怪。バイクに乗った殺し屋妖怪。 | 第25話 | CV:檜山修之※1 | 一反木綿 |
カサバケ | 傘の妖怪。ゴッドカークの巻物を探す鶴姫を妨害する刺客。 | 第26話 | CV:青柳文太郎 | 傘化け |
ヌッペフホフ | 顔面コレクターの妖怪。長い舌で気に入った人間の顔を盗む。 | 第32話 | 高月忠 | ぬっぺふほふ |
アマノジャク | 小坊主をだまして封印から解き放たれた嘘吐き妖怪。食べた者を悪人に変えるキノコを栽培する。 | 第33話 | 人間態:岩城力也/CV:梁田清之 | 天邪鬼 |
スナカケババア | 食べ物を砂に変える悪事を働いた女妖怪。作戦成功の暁には大魔王と結婚しようと目論んでいた。 | 第34話 | 日向明子 | 砂かけ婆 |
カマイタチ | 学校を支配し、妖怪教育で子ども達を妖怪に変えようと企む。 | 第35話 | 十貫寺梅軒 | 鎌鼬 |
バクキ | 幻覚を操る妖怪。ニンジャマンの壺を奪うために子供たちを人質にした。 | 第36話 | CV:神山卓三 | 貘 |
カラカサ | カサバケの同族と思われる女の妖怪。ダンスが得意。 | 第37話 | 草薙かおり | 唐傘お化け |
ウシオニ | ライフル銃を所持したガンマン。自分の遺伝子入りの銃弾で人間を牛鬼人間に変えた。 | 第38話 | CV:今西正男 | 牛鬼 |
ノッペラボウ | 妖怪世界で最も恐れられている殺し屋。 | 第39話 | CV:大友龍三郎 | のっぺらぼう |
キュウビノキツネ | 「キツネの嫁入り」の話を餌にして子供をさらった。 | 第40話 | 人間態:神田時枝/CV:京田尚子 | 九尾の狐 |
チョウチンコゾウ | この世に未練を残した悪人のゴースト達を蘇らせる。 | 第41話 | CV:千葉繁※2 | 提灯小僧 |
オオムカデ | サンタクロースの国を乗っ取り、人間を操るムカデ入りプレゼントを配ろうとする。 | 第45話 | 平久保雅史 | 大百足 |
ムジナ | 自称・妖怪マンガ界の水木しげる。漫画のキャラクターを使って、カクレンジャーを倒そうとする。 | 第46話 | 佐藤正宏(CV・人間態共) | 狢 |
カシャ | 南極のオーロラを再現するため、子供達を捕まえ、人間花火を打ち上げようとする。 | 第47話 | 人間態:関根大学/CV:辻村真人 | 火車 |
ユキオンナ | 冬の妖怪。雪だるまに変えた人間を生贄にして日本を氷漬けにしようとした。 | 第48話 | 橋本由香 | 雪女 |
ビンボーガミ | 前身は強欲な金貸し。相手を貧乏にする光線でカクレンジャーの装備をボロボロにした。 | 第49話 | 石黒正男 | 貧乏神 |
オオニュウドウ | 妖怪銀行頭取の息子。人間の家を奪い、ジオラマを作るのが趣味。 | 劇場版 | CV:安西正弘 | 大入道 |
ヒトツメコゾウ兄弟 | オオニュウドウの手下。 | 〃 | 人間態:日下秀昭(兄)、石垣広文(弟)/CV:篠田薫(兄) | 一つ目小僧 |
オンブオバケ | バラノイアがオカルト科学で生み出した妖怪 | Vシネマ | 安西正弘 | おんぶおばけ |
※1 オープニングでは「桧山修之」と誤って表記。
※2 オープニングでは「千葉茂」と誤って表記。
妖怪レプリカ
ユガミ博士が開発した。劇中ではカッパ、オボログルマ、アズキアライ、ヌリカベ、モクモクレンの5体。
備考
さて、最終的に妖怪軍団は人の心に潜む怒りや憎しみといった負の情念が生み出した存在であることが判明し、彼らは封印の扉に封じられるという形で戦いが終わっている。
この扉は妖怪エネルギーの元となるマイナスの感情を封じる心の扉そのものであり、つまるところカクレンジャーの戦いとは人間の善の心と悪の心の戦いのメタファーだったのである(なので、人間がいる限り、妖怪軍団は滅ぶことがない)。
第1話で封印を解除された理由が儲け話をカッパを持ちかけられたことであり、これを自分の欲に負けたと考えればテーマは一貫していると考えられる。
加えて、終盤でカクレンジャーに味方する三神将が人間の正の側面の化身であることが判明し、彼らに諭されてカクレンジャーの変身アイテムたるドロンチェンジャーが封印の鍵となるのは第1話の展開と対になっているとも解釈できる。
これらを踏まえると妖怪が起こした悪事の動機のいくつかは人間の負の側面や欲望に置き換えられる。
また、情念に由来する存在だが、生殖の概念があるのか、カッパとロクロクビの存在が語られている他(妖怪達は仲間に対する愛情や友情といった感情も持ち合わせているらしい)、エンラエンラのように自動車の排気ガスといった物質を媒体として誕生する妖怪もいるようである。
なお、カクレンジャーが乗り物としている猫丸、白面郎に拾われ、百地三太夫の弟子となった少年ブン(演:福田康之)、ジライヤと心を通わせたザシキワラシのような善良な妖怪も存在する。彼等は人の良い側面から生まれたのか、それとも従来の妖怪のような出自かは不明。