もしかして
概要
『機動戦士Ζガンダム』終了前後の月刊OUT1986年3月号、既に『機動戦士ガンダムΖΖ』として発表されていた新作が放映直前に設定変更されたという体裁で特集ページが組まれた。
とは言えページタイトルが『かってにZZ特集』『機動戦士Oガンダム 光のニュータイプ 決定!!完全<YARASE>独占速報』とよく見るとフキダシで<YARASE>の文字が挿入されている上にインタビューされているのが「大富野哲悠季」名義の編集長の写真のため、
『Z企画』を始め隙あらば架空の新作アニメの特集をやってたこの雑誌の読者で騙された人はそうは多くなかったと思われる。
それから一年以上を経た1987年6月号より『月刊ガンダム』なる誌内誌にて、設定をブラッシュアップして『音声多重アウトサイドストーリー』と銘打って多量の脚注を付記した小説が連載開始。ΖΖと同時代、火星を舞台としたストーリーで、ギャグのような理由で人手不足に陥るホワイトベースの姉妹艦など主に『機動戦士ガンダム』のパロディが多め。同年9月号の最終話の次のページより『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』の特集が始まるという趣向。
第一話の最初のページの脚注を見るにガンダムSF論争を踏まえて意図的に荒唐無稽な設定としていると思われる。
続編『機動戦士OガンダムⅡ』が1988年2月号より4月号まで連載された。『ミノフスキー粒子』を自社と同じ「ミノリ」と略したり、敵がもはや『Gの影忍』のノリになっていたり、
各章のサブタイトルが露骨に有名作品のパロディになっていたりと悪ノリに磨きがかかっているが、ストーリーの進行を左右するようなギャグは控えめ。また音声多重アウトサイドストーリーではないので脚注はない。
ストーリー
1986年3月号
宇宙世紀0088、アクシズは消滅したが、ハマーン・カーンの弟カーン・ジュニアを擁する宇宙戦団はジオン公国の正統後継者を名乗っていた。
廃棄された試作コロニーサイド0の8バンチにはスーパー・ジオンの秘密開発ベースがあり、6バンチには孤児たちがロストシティと呼ばれる街を形成していた。
そこへブライト・ノアが艦長を務めるアーガマ2が漂着し、一方カーン・ジュニアの謁見室にはセイラ・マスを追ってシャア・アズナブルが現れ……
1987年6~9月号
宇宙世紀0088、太陽風に吹き寄せられ、リンゴ大にまで変異したミノフスキー粒子の漂う火星圏、THE・OWN(ジ・オン)がダイモスに巣食っていた。
そこへスペースコロニーコロンブスから試作機の回収を命じられた白鹿号(ホワイト・ムース)は、レーダーの全く効かない環境、クルーの錯乱、迷路と化した艦内での迷子等によりコロンブスに衝突。
しかし同じ試作機を狙ってジ・オンも襲撃し、モビルスーツのパイロットを失った白鹿号のフライドは偶然遭遇した少年タロにMSの基本的な操縦が出来ると知るとあることを知らせる。
汚染物質を恐れて住人も近づかない研究所跡の丘は、それ自体が巨大なモビルスーツだった……
1988年2~4月号
新たにTHE・OWNの実権を握った親衛隊デカダーンスは執拗にOガンダムを追い、タロとファナはコンバーターの修理のために開発者を探して火星を彷徨っていた。
THE・OWNが狙っていたのはコンバーターの起動回路であり、Oガンダムの代わりにタロ達と行動を共にしていたゲンサン博士に狙いを変える……
その目的「火星落とし」とは?
登場人物
メインキャラクター
- タロ・アサティ
『1986年版』では、一年戦争によって両親を失いロストシティで暮らす孤児。デザインはほぼジュドー・アーシタ。
ブライトはニュータイプが普遍的に実践されうる第2進化レベルステロタイプを直感する。
『1987年版』・『1988年版』では父に反発して家出しており、MSの操縦が出来、人間用のビームサーベルを装備している。
無造作なオレンジ色の髪の美形だが、時折虚ろな顔で「でぇへへ……」と笑い出す発作を持っている。
実はこれはニューロ・タイプの発現。ニューロ・タイプとはフラナガンによって理論上の可能性として予言されていたマイナスのニュータイプで、
ニュータイプとは逆の変化が意識に起きるためにニュータイプの感覚からは消えたように感じられる。
正気を保ってはいられないことが予測されたため宇宙神経症からその呼び名が付けられた。
タロ自身は「呪われたニュータイプ」「本来人間の居場所ではない虚無の宇宙に適応し過ぎてしまい、人間としては劣っている」と自嘲し、
正体を現したシャーに「重力に魂を引かれない人類とはこんなものなのか」と吐露している。
それとは関係なく「母親は自分が生まれる前に死んだ」と父から聞かされて疑わないほどの天然ボケ。
正体はダイモス経済界の大立者ヨイトモ・ミナモトの息子で本名はタロ・ミナモト。
光の剣を持ち、顔を隠した父と敵対……あれ、ガンダムというより別作品の誰かに似ているような?
- ファナ・コ・アサティ
タロの妹。
『1986年版』では、物心つく前からタロに育てられたので兄と言うより父のように思っている。デザインはリィナ・アーシタに似た顔立ちだが毛先の暴れたツインテール。
『1987年版』・『1988年版』ではタロを追って家を出た後、ダイモスで車に轢かれそうなところをシャーに救われ、記憶喪失を主張し名字を隠して彼の秘書をしていたいた。タロと同じオレンジのロングヘアーで、シャーが本気で口説くほどの美女だがやはりタロと同じ発作を持つ。
『1987年版』終盤で頭を打ち過ぎてより発作の際に妖艶に笑うようになってニューロタイプ状態を保ったまま会話もできるようになり、ニューロタイプ能力はタロより強力で、無人のOガンダムを遠隔操作できる。
『1988年版』ではデカダーンス兵が女性に免疫が無い事を利用して内紛を起こさせたりしている。
新生エゥーゴ
『1986年版』にのみ登場。
- ブライト・ノア
アーガマ2の艦長に任命され、処女航海中にグワラン・フォートレスと交戦、サイド0でタロとファナに出会い、二人にステロタイプを直感する。
- ソーラ・レイ
後半より幼いニュータイプとして登場してくる予定。
スーパー・ジオン
『1986年版』にのみ登場。
- カーン・ジュニア
ハマーンの実弟。16歳ながら恐るべき度量で人を従わせる。タロに対し"闇のニュータイプ"というところか?
- アルティシア少佐
ジオン軍の軍服を着てクワトロ・バジーナと同じサングラスをかけたセイラ。
髪型も変えていないが、一応正体は隠しているつもりらしい。
地球からカーン・ジュニアの招聘に応じ、G・ザックやPGMK-IVを駆る。
第三勢力
『1986年版』にのみ登場。
- シャア
一年戦争の頃のデザインをベースに頭全体を覆い、顔は隠れていない新ヘルメットを着用。
地球から旅立ったセイラを追って現れ、謎のパイロットとして独自の組織を作り上げて行く予定。
地球連邦軍
『1987年版』にのみ登場。
- フライト・テンプラー少尉
軍内の落ちこぼれやはみだし者を集めた白鹿号の艦長。本人も充分にはみ出し者であり、後先考えずに艦の天井やフロントガラスを破壊して錯乱する始末。
- ドクター
医者もはみだし者であり、出番と見るや高笑いと共に現れ主にフライトに鎮静剤を注射する。時々誤爆する。
火星
『1988年版』にのみ登場。
- エドッコ・ゲンサン
火星特有の大型化したミノフスキー粒子を食用にしたり性転換させて未知の引力を発生させ、音速の5550000倍まで加速が可能なシステムを光速ではなくあくまで超音速なので相対性理論の制限は受けないと言って作り上げたり
箸で水から酸素を取り分けたりと技術はマッドサイエンティストめいているが本人は気っ風の良い江戸っ子。
自分の発明が兵器に転用されたことを悔いていたが、タロを気に入りOガンダムの修理に協力する。
- ナニ・ワッコ
ゲンサン博士と同居している少女。スリを働いていた時にタロに一目ぼれして家に招く。
- 酸素屋
酸素の薄い火星で、風船に詰めた酸素を売る屋台。
本編に登場したのはタロ達の様子を探るTHE・OWNのスパイであり、本来は無人の荒野に屋台はいるはずがないのだが、酸欠だったタロ兄妹は気付かず目的地を明かしてしまった。
THE・OWN
『1987年版』・『1988年版』に登場。
ジオン公国とは関係なく「我が家族」程度の意味。
ダイモスの鉱物資源を背景とした工業都市の住人がニポンへの憧れを拗らせた「ブシドー」の狂信者集団。
地球連邦に対し、幕藩体制を要求しているが本気にされず白鹿号のクルーでも存在さえ知らない者もいる。
この経緯であり、男尊女卑の体制から女性兵士も少ないため人数は少なく「国」ではない。「公共の利益に貢献する」という主張から「公団」を名乗っていたこともあるが、ジオン公国と紛らわしいのでやめている。
日本の「王監督」なる人物の記された文献を誤解し兵士は背番号を着けている。
- セーイ大将軍
『1987年版』・『1988年版』に登場。
THE・OWNの統率者。ニポン(と野球)にちょっと俗っぽい憧れを持っている。その名は新撰組の旗印「誠」に肖った仮名であり、能面で顔を隠しており、見てしまった者は処刑される。
部下の無能さを嘆くときに「こんな時に子供らがいてくれたら……」と言っているため、余程優秀な子供たちが、現在は一緒に暮らしてはいないらしいが……
正体はダイモス経済界の大立者ヨイトモ・ミナモト。ミナモト家の婿養子と言う立場から政治からは距離を置いており、仮面は自分の意思で天下を動かしたいと言う反面ミナモト家の名を慮ったもの。
『1988年版』で病死する。
- オダイカン・サマー中佐
『1987年版』にのみ登場。
バンダイサン艦長でOガンダム回収の責任者。外様(で美形)のシャーのことを嫌っている。ダイミョウで出撃するがコロンブスの爆発に巻き込まれて死亡。
- バトゥール・C・サルタン
『1987年版』にのみ登場。
用心棒として雇われた元ジオンの撃墜王だが、そそっかしい性格で味方も誤射したために「赤い星屑」の異名で呼ばれている。
「サルタン」の名と撃墜王の実績から王を意味する「シャー」の愛称で呼ばれる。
日本刀の鍔を眼帯として左目を覆っているが、これは見せかけだけで、素顔は挿絵を見る限りシャアによく似ている。
第一部クライマックスにおいて、タロのビームサーベルと日本刀で切り結ぶが……
タロと対峙した時に「本物のバトゥール・C・サルタン」は隻眼であることが指摘され、この人物はニュータイプではあるものの偽者であることが明かされた。
バトル・コンサルタントとして雇われたことから誤解されたのを利用してなりすましたとのことで、最後は「息抜きは終わった、連邦と決着を付けねば」と言い残して去る。
尚、概要の通り次のページから『逆襲のシャア』の特集が始まっている。
デカダーンス
『1988年版』にのみ登場。ニポンを崇拝し、その文化、風俗に染まり切ることを誇りとする親衛隊。
盛り上がると一般のTHE・OWN兵は意味も分からず「ハラキリ!」と叫ぶのに対し、デカダーンスは本当に切腹する。
- ヴィナン・ユキノジョウ大佐
セーイ大将軍の忠臣ではあるが、秘密を知った主治医を殺害し、宇宙船の外壁に孔が開いたときは自分で詰め込んで塞いだ力士の自己犠牲を称え、
病死したセーイに代わり総司令官となった時は畏れ多いとして大将軍の位を固辞しながら皇帝を名乗ろうとするなど狂気に満ちた人物。
ミノフスキーコンバータで火星を地球軌道に移動させ、地球に取って代わる(物理)という火星落としの計画を推進している。
闇蜘蛛六人衆
Oガンダム追跡のために組織されたユキノジョウを含め6人の精鋭部隊。Oガンダムの衝撃波で撃墜された2名は名前が設定されていない。
- フディーコ・ドザエモン少佐
- フディーオ・ドザエモン少佐
- ベス・ボール・ジュウベエ中佐
登場メカニック
『1986年版』では型式番号MSF-000。
Oは規格外(OUTER)と同時に0の意味もかかっている。スーパー・ジオンの試作MSをタロが手に入れるエルガイムMk-Ⅱのパターン。
分離・変形・合体も可能だが、最大の特徴はニュータイプ以外のパイロットでも使えるサイコミュと、ニュータイプの覚醒を促すフィードバックシステム。
後に似た機構を持つガンダムデルタカイが登場した。
『1987年版』・『1988年版』では、一年戦争中の連邦のMS不足を補うための60mのダミー、Grand Dummy(Gran=Dum)略してOガンダム計画を文字通りの隠れ蓑とした、HI-S MSと呼ばれる9.52mの小型モビルスーツ。
空間操作を可能にするミノフスキー・コンバーターによりアンドロメダまで往復したことがある。
コンバーターなしでも大型ダミーを動かすパワーと通常のMSに倍する推力を持つ。
『1988年版』では傷つきながら後のエクシアリペアの如くあり合わせの材料で修復して戦い続ける。
新生エゥーゴ
- ΖガンダムMk-Ⅱ
型式番号MSU-010。
タロが最初に乗るMSで、Zガンダムの後継機だが百式に近い非可変機という、
- アーガマ2
ブライトが艦長を務める巡洋艦。
スーパー・ジオン
- G・ザック(グランド・ザック)
型式番号PCX-005。
ハイザックの重武装型で、新生エゥーゴ、スーパー・ジオンの双方で広く採用されている。
ΖガンダムMk-Ⅱの初陣の敵はこのスーパー・ジオン側のG・ザックである模様。
- PGMK-IV
型式番号MOX-012。
アルティシア少佐の乗機。
サイコガンダムMk-Ⅱ(設定画では「サイコガンダムMk-Ⅲ」)を更に尖らせたようなブレードアンテナの生えた真っ赤な機体。
後にサイコガンダムMk-IVG-ドアーズが登場している。
- ガザX
型式番号NNT-01。
スーパー・ジオンの主力可変MS。ガザ系の機体。
- グワラン・フォートレス
カーンの要塞艦。
第三勢力
- 百一式
シャアの乗機らしいが、詳細不明。
連邦軍
- ホワイト・ムース
『1987年版』にのみ登場。ホワイトベースの姉妹艦だが、戦時のドサクサで受注した町工場が2週間で作ったために艦内は迷路と化している。
序盤ではクルーが何人も配置に付けず人手不足に陥り、終盤は受け入れた難民が以後出て来ないことの説明づけとなった。
- JIM
事務用モビルスーツ。ビームスプレーガンに見えるのはボールペン。欠陥機で、ブンボーグなる専属サイボーグしか操縦できない。
ホワイト・ムースの護衛として付けられたが、20機余りが衝突によって失われる。
コロンブス
- コロンブス
『1987年版』にのみ登場。地球から最も遠いスペースコロニーで、内部には軍や民間の研究所が無断で実験を繰り返したバイオテクノロジーの産物である奇妙な生物が跋扈し、老朽化が進んで照明は植物油、住民が回し車の要領で回転させているている。
マボロシ艦隊の攻撃が燃料油に引火して崩壊したが、その際に爆風で吹き飛んだ巨大な変異ミノフスキー粒子が艦隊の外壁に開けた孔から奇妙な生物たちが入り込み、パニックに陥った艦隊を全滅させた。
THE・OWN
- ブシ
『1987~88年版』にのみ登場。ザクをベースにしたMS。後頭部にバー状のレーダーアンテナ、両足と両肩にバーニアとスカートを追加し腰に二本のヒートサーベルを持つ。
野戦用のノブシ、山岳用のヤマブシ、ステルスフィルムを体中に巻き付けたシノ・ビなどのバリエーションがある。
- コムソ
ザクをベースにした強行偵察用MS。頭部に円筒形のセンサードーム、レーダーアンテナのアタッチメントを携帯している。
- ダイミョウ
『1987~88年版』にのみ登場。ドムを改良した重MS。コックピットが広く大名気分が味わえる。
大名は裕福なのでブシと同じ二本のヒートサーベルの他に、短剣のような隠しヒートサーベルも持つ。
接近戦主体だが、唯一の飛び道具は最後の武器として刺し違えるために後頭部から全方位にミサイルを発射する。
- ブギョウ
新型高速MS。ユキノジョウの専用機。
マボロシ艦隊
THE・OWNの艦には日本の山の名をつけることが慣例となっている。
- トヤマ
- バンダイサン
『1987年版』にのみ登場。ムサイ級に相当する宇宙軽巡洋艦。