概要
『金・銀』(第2世代)で登場したポケモン、ライコウ・エンテイ・スイクンの総称。
いわゆる「準伝説トリオ」の一角で、これを含めてあくまでプレイヤー間で広まった非公式の呼び名である。
デザインを担当した漫画家の斉藤むねお氏によると、ライコウが虎、エンテイがライオン、スイクンが豹をメインモチーフとしているそうで、デザインの道筋的には「各属性のエレメントを背負った精霊・もしくは神様」を目指したとのこと。
つまり本来は「三犬」というより「三猫」と呼ぶのが適切である。
では、なぜこのような名称で定着してしまったかと言うと、ボックス等に表示されるミニアイコンが第2世代当時のグラフィックでは狛犬のように見えたからというのが有力説とされる。
またスイクンなどはかなりマズルが長く、本体のグラフィックも犬に見えなくもなかった。
これにはれっきとした理由があり、三種は元々もっと犬に近い存在だったからである。
体験版では順にライ・エン・スイという名称で、全て長いマズルを持っていた。
もっとも、仮に狛犬だとすると、一般的な犬とは一線を画する上位存在になるので、動物に例えること自体がおかしくなるのだが。
以上の事情から、この呼び方には異論も多い。
海外では「Legendary Beasts」などと呼ばれており、それを踏まえながら犬と猫の間を取って「伝説の三聖獣」とするべきという意見もある。
登場から15年以上後の話ではあるが、『ポケモン超不思議のダンジョン』で公式に「三聖獣」という単語が使われたこともあり、結果的にその方が正しかったとも言える。
とは言え、この手の単語が必要となるのは主に対戦考察の場である。
何を置いても強さが最優先で、見た目など二の次、三の次の問題になる。
あるいは、「さんけん」の方が「さんせいじゅう」より入力上も発音上も明らかに手間が少ない。
そのような理由で完全には犬ではないと分かりきった上で尚この単語を使い続けるという人もまた多い。
pixivでは機械的に使用率の高い方を取ってこちらを親記事としている。
ジョウト地方の伝説
『クリスタルバージョン』ではスズの塔のぼうずから以下のことが語られる。
- 150年ほど前にエンジュシティのカネの塔(現・焼けた塔)が焼け落ちた際、名も無き三匹のポケモンが亡くなり、空から舞い降りたホウオウの力で「ライコウ」「エンテイ」「スイクン」として蘇った。
- ライコウは塔に落ちた雷、エンテイは塔を燃やした炎、スイクンは塔を鎮火した雨の力を宿した。
- それを見ていた人々が蘇った三匹を恐れ、攻撃する者まで現れたが、自分たちの力を理解していた三匹は反撃することなく去っていった。
このエピソードを実際に映像化したWebアニメ『ポケモンジェネレーションズ』では名も無き三匹の姿がシルエットで描かれたが、その姿はどちらかと言えば犬であった。
ただし、このアニメでは戦火による消失とされているなど、全てがゲームに忠実ではないことに留意する必要がある。
ゲーム上の扱い
俗に「種族値」と呼ばれる内部ステータスが、三種でシャッフルされた間柄になっているという特徴がある。このあたりからも三種がセットで扱われていることが窺える。
使われている数値は「75、85、90、100、115×2」で、伝説だけあって高めに纏まっている。
- 『金・銀』
ジョウト地方を散り散りに駆け回り、ランダムに移動するので出会うだけでも一苦労(一度遭遇すると出現場所がポケモン図鑑に表示されるようになるが、それまでは総当たり覚悟で探すしかない)であった。
しかも戦闘に持ち込んでもすぐに逃げてしまい、「くろいまなざし」等の逃亡阻止技を使っても全員が「ほえる」で解除可能と隙が無く、ボールを投げても捕獲率は非常に低いと、ゲットまで膨大な時間を要した。
同様の捕獲イベントは後続の作品でも度々取り入れられ、プレイヤーからは様々な感情を込めて「徘徊型伝説」などと呼ばれた。「みんなのトラウマ」に数える人もいた。
対戦において、徘徊するポケモンには単なる手間以上の問題があった。
ポケモンには上記の「種族値」に上乗せされる「個体値」というステータスがあり、これは文字通り個体ごとに変動してくる。
その数値の決定タイミングは、一般的にランダムエンカウントであれば「出現時」、シンボルエンカウントであれば「戦闘に入った時」であり、できるだけ高い、もしくは何らかの事情で特定の値を求めたい場合は、直前にレポートを書いて(セーブして)目当ての値が出るまでやり直していた(これを対戦考察の場では「厳選」と呼ぶ)。
これが徘徊型の場合、「動き始めた時」になった。
すなわち、「厳選」をしようとするとどこにいるかも分からない三種を探し出すところから全部やり直しになったのである。
しかも、三種は一つのデータに各一匹ずつしか出現しないので、レポートを挟まずに全てを捕獲しなければならず、内一匹でも満足いかなければ三匹ともやり直しになった。
なんということをしてくれたのでしょうとなったのも無理の無い話であろう。
- 『クリスタルバージョン』
スイクンがパッケージイラストに起用されると共に、ストーリー中でも他二種とは異なる扱いがなされるようになった。
これとバランスを取るためか、同時期のアニメにてライコウは特番の、エンテイは映画の主題となっている。
セット実装したポケモンをバラバラに売り出すことは当時としては珍しい試みであった。
また、扱いが大きくなった影響か、ゲームでは伝説のポケモンとしては初めて専用のBGMが用意されてもいる。
更に、「三種とも自力で捕獲する」ことがホウオウと出会うための条件とされ、多段イベントの様相も呈している。
ただし、ゲーム内でのライコウとエンテイの扱いは変わっておらず、徘徊を続けていた。『金・銀』よりも難易度が上昇したとも言え、素直に喜べないプレイヤーもいた。
条件付きで今度はカントー地方を徘徊するようになった。
スイクンも徘徊型に戻ってしまった上、ゲーム中には条件どころか存在の示唆さえも無かったことから、攻略情報無しではまず気付けない謎のイベントと化していた。
しかも、捕獲したところで「HP」「こうげき」以外の「個体値」が確定で0になるという謎の配慮もなされており、悪い意味で「厳選」を諦めた対戦勢も多く出た。
とは言え、この時期他の捕獲手段は『ポケモンコロシアム』しか無く、ハードが異なればゲーム性も異なり、それが本題のゲームではないので当然ではあったが「厳選」にこぎつけるまでにかなりのプレイ時間も要求されたと、とても素人に手を出せるものではなかった。
『金・銀』のリメイクで、負の側面もしっかり原作再現してしまっていた。
スイクンについては『クリスタル』での扱いがベースになっていたことが救いか。
専用BGMは一種ごとに曲調が変わるというアレンジが加えられており、「厳選」を考慮しないならば良リメイクではあった。
なお、この世代まで「なみのり」を覚えないライコウやエンテイも、覚えるスイクンと変わらず水上にも出現するという仕様があった。
流石に不自然ということか3D化以降は同様の描写は見られず、後年登場した「シンクロマシン」などを用いても再現は不可能とされている。
末期には映画で色違いの個体が取り上げられ、前売り券購入者に限りゲームにも配信された。
これらは次回作の『ブラック・ホワイト』のイベントに関わったほか、通常覚えないわざもあったので対戦にも大きな影響を与えた。
このあたりから伝説のポケモンの捕獲難度がかなり低下し、三種ともマボロシのばしょでシンボルエンカウントできるようになった。
『クリスタル』とは逆にホウオウまたはルギアを手持ちに入れている必要はあったが、「自力で捕獲」といった条件も特に無かった。
なお、『ハートゴールド・ソウルシルバー』でせっかく三曲作られたBGMは使われず、『クリスタル』版(厳密にはそれをこの当時の音源で再現したもの)に戻ってしまった。
ウルトラワープライドによって行ける世界にいることがあるが、ライコウは『ウルトラサン』限定、エンテイは『ウルトラムーン』限定で、それら2匹を揃えて手持ちに入れると初めてスイクンが出現する、という変則的な登場になっていた。
鳴き声の文字起こし(「バリバリダー!」の類。だいたいあってない)が三種になされたのはこの時が初で、順に「ららいー!!」「ええいー!!」「すすいー!!」であった。
DLC「藍の円盤」クリア後にブルーベリー学園内に現れるおやつおやじからそれぞれに対応した「おやつ」を貰うと、ライコウは西1番エリア、エンテイは東3番エリア、スイクンはオージャの湖に出現した。全てパルデア地方内である。
今回は久々に『ハートゴールド・ソウルシルバー』のアレンジBGMがかかっていた。
番外作品
「三犬」としての出番のみを取り上げる。それ以外は個別記事を参照のこと。
ポケモン不思議のダンジョンシリーズ
- 『赤・青の救助隊』
『金・銀』での関係性を反映してホウオウに出会うためにパッチールから託された「とうめいなはね」に色を加えていくイベントで戦うことになる。
炎の大地でエンテイを倒すことで「しんくのはね」、稲妻の大地でライコウを倒すことで「ゆうひのはね」、最終的に北風の大地でスイクンを倒して「なないろのはね」へと変化させていく。
エンテイはプライドが高く、スイクンは穏やかで、ライコウは荒々しい性格となっており、いずれも当初は主人公たちを侵入者と勘違いするが、主人公たちを認めると冒険の手助けをしてくれる知性の高さを備える。
今度は徘徊性を反映し、「ひみつのせきばん」や「なぞのパーツ」を持っているとランダムで出現するようになった。
ライコウはかくされたいせきB20F・B29F、エンテイはやみのかこうさいしんぶB10Fで出現する。スイクンだけは出現方法が異なり、うみのリゾート解放後にさいごのまB29Fに現れる…上記のアイテムを出現させるのもかなりの手間であるが、スイクンの出現するダンジョンはアイテムの持ち込みの出来ない場所であるため、フロアに到達できただけでも幸運なレベル。
『空の探検隊』では挑戦状を受け取ることで彼らと戦って仲間にできる依頼に挑戦することが可能という大幅な仕様変更がなされた。
エンテイやライコウは伝説のポケモンらしい尊大な口調で話す(挑戦状も同様)が、スイクンだけはラティアスのようなハキハキとした敬語口調となっている。性別不明の種族に裏設定的に性別が付けられることは無い話ではないが…どうしてこうなった。
ポケモンレンジャーシリーズ
エンテイはサマランドの4つの試練を主人公がクリアしてしまったために石像から復活。一度はキャプチャされてどこかへ去っていくが、ゴーゴー団のボスラゴウによって究極のスタイラーでライコウ、スイクン共々キャプチャされてしまう。
先鋒のライコウは素早く動き回りながらしばらくフィールドに残る「かみなり」や「いわくだき」を撃ってくるが、じめんタイプのポケアシストさえあれば、そこまで強敵というわけではない。
中堅のスイクンは「かげぶんしん」しながら「オーロラビーム」を撃ってくる。分身は1回かこめば消えるが、独立して動くので鬱陶しいことこの上ない。幸いにもプラスル・マイナンやくさタイプなど動きを止められるポケアシストが刺さるため、活用するのが望ましい。
大将のエンテイは本作屈指のトラウマ要素であり、触れるとダメージを食らう炎のバリアを8回囲んで消す必要がある上、火柱で画面を狭めてくる。おまけに囲み回数が17回と多いため、いわタイプのポケアシストで足止めするのが有効である。みずタイプも有効ではあるのだが、ポケアシストで長時間拘束するにはタッチしてチャージする必要があるため、いわタイプの方が速効性がある。
無線基地にライコウ、アサヒの遺跡にエンテイ、カナルの遺跡にスイクンが出現し、いずれもポケモンナッパーズによって興奮状態になっていた所を主人公にキャプチャされた。
現地民の間ではわらべうたが伝承されるほど身近な存在であり、伝承ではオブリビアの勇者を背に乗せて活躍したという。
なお、スイクンの聖域であるカナルの遺跡は周囲が晴れであっても雨が降り続けているという不思議な気候となっている。
三体はレンジャーサインで呼び出すことができ、ライコウは崖を飛び越え、スイクンは川を渡り、エンテイは邪魔な大岩を砕いて進む能力を持つ。共通能力として咆哮で隠れたポケモンを出現させる特技がある。また、エンテイのレンジャーサインはファイヤーの聖域を守るバリケードの認証キーとしても用いられている。
それぞれのレンジャーサインのモチーフはおそらく稲妻(ライコウ)、牙(エンテイ)、尻尾(スイクン)であると思われる。
ポケモンGO
2017年9月1日より「三鳥」およびルギアに差し変わる形でレイドボスとして登場。
1週間交代で登場していた「三鳥」とは異なり三種同時に実装されたが、地域ごとに出現する種族が変わり、1か月ごとに出現場所が変わるという特殊な措置が取られた。長年の「徘徊」を現実的な範疇で再現したとも考えられる。
時期と地域の対応関係は以下の通り。
また、2019年7月のアップデート後には、トレーナーバトルのトレーニングモード(マスターリーグ相当)で、チームリーダーたちが一番手として三犬たちを繰り出してくるようになった(ブランシェ:スイクン、キャンデラ:エンテイ、スパーク:ライコウ)。
関連イラスト
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古代三聖獣:三種のこだいのすがたとされるタケルライコ・ウガツホムラ・ウネルミナモの非公式な総称。こちらも「古代三犬」と呼ぶ人はいる。