概要
2018年2月23日生まれの日本の現役競走馬。JRA栗東トレーニングセンター・武英智厩舎所属。
鹿毛の牝馬。毛色は異なるが、白毛母系で知られるシラユキヒメ直系の牝馬で、同世代のソダシとは近縁。
主な勝ち鞍は2021年のチューリップ賞、2022年の京王杯スプリングカップ、セントウルステークス(以上GⅡ)で、その他にもGⅢ3勝を挙げている。
普段はおとなしく、調教も真面目にこなし、すごい調教時計を連発している実力者だが、レース本番ではイレ込み過ぎて暴走しがちなためよくネタにされている。
プロフィール
馬名 | メイケイエール |
---|---|
欧字表記 | Meikei Yell |
香港表記 | 齊叫好 |
生年月日 | 2018年2月23日 |
性別 | 牝 |
毛色 | 鹿毛 |
父 | ミッキーアイル |
母 | シロインジャー |
母の父 | ハービンジャー |
生産 | ノーザンファーム |
管理調教師 | 武英智(栗東) |
馬主 | 名古屋競馬株式会社 |
主戦騎手 | 武豊 → 池添謙一 |
父ミッキーアイルは2014年NHKマイルカップ・2016年マイルチャンピオンシップなどマイル・短距離戦線で活躍した。その初年度産駒の一頭である。
母シロインジャーはシラユキヒメに始まる白毛一族の繁殖牝馬であり、2008年関東オークスなど地方重賞3勝のユキチャンの娘。
母父ハービンジャーは2010年のイギリス・キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスの勝ち馬であり、その娘の白毛馬なのでシロインジャーというネーミングである。
性格/強みなど
調教やパドックでは素直で大人しくしているが、いざ本番となるとかかりまくる様が「獅子舞」と呼ばれるなど、じゃじゃ馬となってしまう。
一部からは、馬主が名古屋に近い中京競馬場を所有していることと絡め、「暴走名古屋走りお嬢様」というあだ名をつけられている。
管理する武英智調教師は「前に馬がいるとムキになってしまう」と、武豊騎手からは勝利後に「勝ちはしたが良い勝ち方ではなかった。次に向けての課題は多い」(’21チューリップ賞)とコメントするなど、その暴走には手を焼いていた。
同じく気性難として知られるゴールドシップやオルフェーヴルなどとは違って、真面目過ぎるゆえの結果であり、「何が何でも先頭に立たなけらばならない」という気持ちが勝っているためにかかるのではないか。という分析もある。
(過去の例としては、ダイタクヘリオスなど)
実際、尻尾の赤いリボン(蹴り馬注意のサイン、上述の二頭を筆頭とするステイゴールドの一族が有名)が付けられていないことから、一般にイメージされる気性難とは方向性が違うのは間違いないようだ。
しかし、出足が鈍く、1回先頭に立つと満足して沈んでしまう場合もあるため、メイケイエールを御すのは簡単ではない。
一方で一度も先頭に立てずに負けたレースでは時折ゴール後も全力で追い抜こうとしている光景が見られることから、そもそもゴールという概念を理解していないのではないかという疑惑も囁かれている。
また、武豊騎手は一度、「あえて馬群の中に入り、前に馬の壁を作って前に行けないようにする」という、掛かり癖のある馬の矯正方法をレースで試したことがあるらしいが、メイケイエールは前の馬の壁にそのまま突っ込もうとしてしまい、断念したという(しかしながら、かかり防止としてこの戦法をしないわけにもいかないためか、高松宮記念2023でも使われており、結果として前が開かなかったことで気持ちが切れてしまい敗北を喫することとなってしまった)。
後に主戦騎手となった池添騎手によれば、「制動しようと手綱を引っ張っても首を振って力を上手く逃してしまい、ブレーキがかかってないまま目の前の馬群に突進していく」「乗った者にしかわからないあの恐怖」とのこと。
武英智調教師曰く、「遠くばかり見ていて自分の近くの状況を把握できていない」ところがあるらしい。
以上のようにレース中でのじゃじゃ馬っぷりが凄まじいのだが、2023年5月時点での戦績は15戦7勝(うち重賞6勝)と世代上位のポテンシャルは伊達では無く、それは気性難ゆえの自身に向いてない位置からのレースや、適性距離より短いとされる短距離路線であっても好走してるあたりからも窺える。
また、同世代の牝馬達に怪我が多い中、本馬は調教再審査こそ受けているが目立った故障をしておらず丈夫さも売りの一つ。
戦績は〔7-0-0-13〕。つまり勝つか4着以下(馬券外)という非常に極端な戦績(※)をしており、調教やパドックでは特に問題を起こさず、実際にレースにならないとどう転ぶかわからない点も相まって馬券師泣かせのピーキーな馬と言える(このため、1番人気に推されたレースでは必ずといっていいほど「単勝や馬単・3連単の1着固定としては人気だが、複勝や馬連などの2・3着には入れば金が入る方式では不人気」という奇妙な状態になる)。
一方で、良くも悪くも色んな意味で見所の多いレースとなることが多く、世代を代表する個性派競走馬として人気が高い。
(※)このような極端な戦績を持つ競走馬として有名どころでいえば、トウカイテイオーなどがいる。
経歴
デビュー前
2018年2月23日、北海道のノーザンファーム生まれ。母シロインジャーはシラユキヒメの血を引くいわゆる「白毛一族」の白馬だが、メイケイエールは父ミッキーアイルの毛色である鹿毛を受け継いだ。
気性難と聞いて想像される方もいるかもしれないが、ステイゴールドの血は1滴も入っていない。サンデーサイレンスの3×4のインブリードはあるけど。
2019年のセレクトセールで名古屋競馬株式会社に買われ、ノーザンファーム早来で育成の後、武英智厩舎に入厩。
なお、馬主である名古屋競馬株式会社は中京競馬場の管理・運営を行う会社である。
よく間違われるが、地方競馬の「名古屋競馬」とは関係がない。
メイクデビュー~2歳
2020年8月のデビュー戦では鞍上に福永祐一を迎えて出走し、2着に5馬身差をつけて圧勝。その後小倉2歳ステークスでは武豊を鞍上に迎えて2番人気に推され、台風接近で馬場が重馬場となる中、こちらでも勝利を収める。
続く11月のファンタジーステークスでは掛かり状態(気性の荒さが強く出すぎて騎手が制御不能になること)で爆走して見事勝利。
年末の阪神ジュベナイルフィリーズでも掛かり、今度は4着で敗れた。
3歳
2021年はチューリップ賞からスタート。1番人気に推されるも掛かりが出て3コーナーで先頭に立つ。掛かりが出た馬は終盤にスタミナ切れを起こして勝てないことが多いが、ゴールまで粘りきってエリザベスタワーと同着で勝利を果たす。
桜花賞
そのまま桜花賞へと駒を進め、武の怪我で横山典弘が騎乗することとなる。
後述する「ウマ娘」への立候補などで注目が集まる中、メンコやチークピーシーズ、シャドーロールなど矯正器具を(ぶっつけ本番で)一切外して出走した。
しかし、馬場入りした時から落ち着きがなく、レースではいきなり出遅れてスタート。さらにそこから制御不能レベルの掛かりとなり、道中で前には出たもののそこで満足してしまったのか、最後の直線でスタミナ切れを起こして撃沈。
「出遅れ」「掛かり」「逆噴射」の悪夢のスリーコンボをキメた結果、ソダシの最下位18着に終わる。
癖馬に定評がある横山騎手もレース後のコメントでは「競馬以前の問題だ」とバッサリ。
更にはハミ受け不良で平地競走再審査となってしまった。
なお、この桜花賞はウマ娘立候補発言などから興味を持った「ウマ娘プリティーダービー」のプレイヤーたちも視聴しており、トレーナーたちに「掛かり」の恐ろしさを見せつける形となった。
桜花賞後
この結果を見て陣営はオークスを回避し、短距離路線へと転換。
しばしの休暇を挟み、8月のキーンランドカップからスプリンターズステークスを見据えて再始動する予定となった。
そして2021年8月19日、課せられていた調教再審査に合格。メイケイエールは馬群が嫌いなので、一頭のみで走る再審査は無事にパスできたとのこと。
なお、騎乗した武豊は「1頭ならなんも起きないですよ。いい子だから。再審査の意味無いと思う」と語っていた。
迎えた8月29日キーンランドカップ(GⅢ・札幌芝1200m)。
メイケイエールは重賞3勝の実績に52kgの斤量の利もあり、単勝2.8倍の1番人気に推された。
……しかし3枠5番からスタートすると、やはり掛かってしまい先頭に躍り出る。最終直線では脚が伸びず、同じ3歳牝馬レイハリアの7着に敗れた。
やはり、どうにも馬群の中での我慢は難しいようである。
次は当初予定の通りスプリンターズステークスへ向かうこととなった。
武豊は凱旋門賞のため渡仏することになっており、ネット上では発表以前から冗談交じりに「こうなったらもう池添(池添謙一)を乗せるしかない」という声が上がっていたが、鞍上に本当に池添騎手が起用されることとなった。
池添騎手はあの気性難の三冠馬オルフェーヴルや、実力はあるわがまま娘スイープトウショウの主戦を務めた「癖馬に定評のある男」だが、メイケイエールはそれらの癖馬とはまた違ったタイプのため、どうなるのか心配されていた。
スプリンターズステークス
そして始まった10月3日スプリンターズステークス。事前に丸太をまたぐ訓練などが目撃された(※)中、予定通り池添謙一を鞍上に迎え、単勝オッズ24.9倍の7番人気。
3歳牝馬勢の一角にのし上がっていたヨカヨカが突然の骨折引退、他の3歳牝馬らも本レースへの参戦はなく、メイケイエールは出走中唯一の3歳牝馬ということになった。
パドックではいつものように落ち着いており、その後他馬に先駆けて本馬場に入場。返し馬や輪乗りで興奮する様子も見られず、ゲート入りも大人しかった。(ゲート前で散々暴れた馬がいたので、それに比べればゲート入りはとてもいい方である)
そして、スプリンターズステークスのゲートは開かれた。
3枠6番からスタート後は一瞬かかる様子が見られ、最初大きく斜行した(後述)ものの、その後なんと鞍上と折り合いがつき、一旦後方に下げ、外マクりで先頭集団に向かっていく作戦を取った。
しかし元が中距離、マイル得意な馬ゆえか、最後まで追い込み切れずに、3歳牡馬ピクシーナイトの4着という結果になる。この日の中山競馬場は馬場状態から内枠優位のレースが多く、このレースも内目を確保した3頭が逃げ残り馬券内を独占した。
馬券には絡めなかったものの、歴戦のGI馬含む差し勢では最先着し、久しぶりの掲示板入りを果たしたこと、鞍上との折り合いがついてきたことなど、今後につながる一戦だったといえよう。
なお、メイケイエールにしては珍しいくらいに折り合いがついていた……ように見えたが、パトロールビデオを見るとスタート直後にかかった際、外側にいたタイセイビジョンに衝突しかけ、そのさらに外側にいたエイティーンガールを玉突き事故的に巻き込むという、かなり危険なことをしでかしていた。
幸い人馬とも怪我はなく、降着や失格などはなかったものの、馬にはハミ受け不良で平地調教注意が下された。また池添騎手にも戒告の処分が下った。
ちなみに、池添騎手は武豊、横山典弘に続いて、メイケイエールによって戒告処分となった3人目の騎手である。
しかしその後は正気に戻って騎手の指示に従ったため、前よりは成長している。
また出だしでスタミナを無駄遣いしたにも拘らず、古馬を含むレースで4着(GI馬2頭に先着)に食い込んだあたり、やはり地力は凄まじいものがある模様。
池添騎手はインタビューにて2頭に迷惑をかけたことを謝罪した上で、「我慢を経験させることができたので次に繋がると思う」とコメントした。
※丸太をまたぐ訓練
障害馬のトレーニングのように見えるが、平地競走の馬でも行われることがある。
メイケイエールの場合、状況把握能力を養い、また騎手の指示に頼ることを覚えさせるために行った模様。
ただ、そのための助っ人として呼ばれた障害競走の高田騎手がクモ膜下出血で入院してしまったため、どの程度できたのかは不明。
スプリンターズステークス後
スプリンターズステークスを最後に年内は休養し次走はシルクロードステークス(GⅢ)の予定と発表され、鞍上は池添騎手の続投となった。
これにより、「もし池添がメイケイエールを乗りこなした場合、今後ますます癖馬にばかり乗せられるのではないか」と心配する声もある。
4歳
休養明けは1月から栗東トレセンで調教を再開。報道によると
- 「(1週前追い切りで)落ち着いて歩けていましたし、追い切り中に後ろから馬がきても気にしていませんでした」(吉田調教助手 サンスポZBAT!)
- 「雰囲気は良く、馬場入りの時は落ち着いていたし、他の馬が追い抜いていっても我関せずといった感じだった」(池添騎手 日刊スポーツ 極ウマ)
とのことで精神面は成長していることを思わせるコメントがある一方で
- 「折り返し(手綱)で調教している。てこの原理で、同じ引っ掛かるにしても力が上にかかるのではなく、下にかかるように。レースでは使えないから調教で覚えてほしい。最初の3Fだけ我慢できれば」(武英智調教師 デイリー)
など、一抹の不安を感じるコメントも出ていた。
シルクロードステークス
1月30日のシルクロードステークス。事前に行われた抽選により、メイケイエールは内枠の2枠3番からの発走と決まった。
陣営は調教でも使用していたパシュファイアー(網で馬の目を覆い周囲に気を取られるのを防ぐための馬具。主にパドックで使用するが、装着したままレースに出走する例は多くない)を使用。
また折り返し手綱(馬の腹帯に結びつけて前脚の間を通し、ハミの環に通して騎手の手に握られる可動式の手綱。通常の手綱よりも制動力が高いが、馬の気勢を削いでしまうリスクもある)も調教から使用。レース本番では通常の手綱に交換する予定だったが、返し馬まで使用した手応えで池添騎手の判断でそのまま出走することにした。
そしてレース本番。当初の予定通り池添騎手を鞍上に迎え、単勝オッズ4.0倍。レース直前にカレンモエに1番人気は譲ったものの、2番人気でレースに挑んだ。
馬群に包まれやすい2枠3番を引いてしまい、池添騎手はどうしようか悩んだというが、腹をくくって騎乗。
ゲート入りをやや嫌がる素振りも見せたが、スタートはきれいに決め、内枠を活かしてハナに立つ勢いで駆け出す。しかしコーナーを前に池添騎手はいったん抑えにかかり、装具の効果か精神面の成長か我慢がきいた。
好位でコーナーを抜けると、直線では抜群の手応えで抜け出し、2着シャインガーネットに1馬身差の快勝。
「真面目すぎた天才少女、堂々の復活!」
(ラジオNIKKEI 山本直アナウンサー)
陣営と騎手の努力が報われ、約10ヶ月ぶりの勝利と重賞4勝目となった。馬主の名古屋競馬株式会社としては初の中京競馬場開催での重賞獲得となった。
……ただし、スタート直後にダッシュをかけようとしてふらつき、外の2枠4番ルッジェーロに接触し不利を与えてしまっていた(とはいえスタート直後にヨレて他馬に接触することは競馬にはつきものの事象である。2着に入った8枠16番のシャインガーネットも外にヨレて同じ8枠の馬に不利を与えている)。
いずれにせよ(抑えが効いたとはいえ)多少掛かる様子を見せたこともあり、お転婆ぶりの矯正は未だ一歩一歩というところのようだ。
次走は引き続き池添騎手を鞍上に、馬主の御膝元たる中京競馬場で行われる春の短距離GI・高松宮記念を目指す。
高松宮記念
そして迎えた高松宮記念。枠は大外の8枠17番に決まった。
本番では好スタートを切り、そのまま外目から先頭を走るレシステンシアを追走する形となった。しかしこの日の馬場はかなりの内側有利で、ペースの速さもあって外枠の馬たちはポジション争いに加われず、苦しい展開が続いた。
さらに終盤の直線に差しかかると、ヨレたファストフォースの影響で若干仕掛けが遅れる不運に見舞われる。
それでも外側にいる馬たちが沈んでいく中、メイケイエールだけはそのまま大外から差し切り体勢に入り、一気に先頭集団まで追いすがった。
だが、内枠有利の馬場ゆえに捉え切ることが出来ず、ナランフレグの5着に終わった。
とは言え、1着のナランフレグとのタイム差は僅か0.1秒の僅差であり、スタートダッシュは目に見えて上手くなっていたし、道中も殆ど掛かる事もなかったため、今後に期待が持てる結果となった。
鞍上の池添騎手は「力負けはしていない」としながらも「これも競馬だから仕方がない」と悔しさを滲ませるコメントを残している。
また脚を余しているように見えたことから、ファンからも「1600m戦なら勝っていたのでは」といった意見が出ている。
しかし…。
京王杯スプリングカップ
次走は放牧を挟んでから芝1400mの京王杯スプリングカップ(GⅡ)。同週には同じ東京競馬場でヴィクトリアマイルも開催されるが、陣営は今後を見据えて慎重に200mずつ延長するローテーションを選択した。
また、外ヨレ癖で知られる同期のもう一頭のじゃじゃ馬娘リフレイムとは初対戦となり、「京王杯スリリングカップ」と呼ぶファンもいた。
大外の8枠12番を引いたエールは、道中首を上げて行きたがり折り合いを欠いたものの、池添はがっちり手綱を引き、何とかコーナーを中団外目で抑えることに成功。最終直線を向いて追われてからはぐんぐん伸び、リフレイムが外へ逸れていく中で先頭に立ち勝利した。
重賞5勝目とともに、安田記念の優先出走権を確保した。
なお、レース後の池添は短距離戦とは思えぬほど疲労した様子で「今後を占う大事な1ハロン延長でした。1ハロン違うだけで、いやーきつかったですね…」「折り合いはこの馬には一生付きまとってくるテーマだと思います」とのコメントを残した。
なお、上記の通り安田記念の優先出走権こそ手に入れたが、レース前から公表されていた通り安田記念は回避し放牧。
秋は先述の通りスプリンターズSを目標に、前哨戦として京都レース場の改修に伴う措置として中京競馬場で開催される短距離GⅡ・セントウルステークス(芝1200m)から始動する見通しとのこと。
さらにその後のプランとして香港遠征も検討していることが自身の冠番組にて池添騎手より明かされた。
2022年アイドルホースオーディション
9月に自身の写真集が刊行されるなど、着実に人気を集めているメイケイエール。
そんな中、京都競馬場が例年通り「アイドルホースオーディション」を開催した。
これは、ファン投票で上位5位以上に選ばれた競走馬のぬいぐるみを制作、販売するというもので、第1位になった競走馬には特別仕様のぬいぐるみも制作されるという企画。
この投票において、メイケイエールはステイゴールドやディープボンド、ヨカヨカなどを抑え、40,903票で見事トップに輝いた。
ちなみに、前述の通り第1位には特別仕様のぬいぐるみも制作されるのだが、ファンの間ではすでに例のパシファイアーと折り返し手綱の重装備仕様という予想が出ている。
セントウルステークス
迎えたセントウルステークス。同期のマイル巧者であるソングラインとは桜花賞以来の対決となった。
夏を超えて+14kgと馬体が大きくなっており、元々言われていた短距離型ではないという意見に近いどこか中距離型体型になった。
ただ精神が成長してるかはファンから不安視されたものの、最終オッズ1.7という一番人気で出走することになる。
本番では引き続き池添騎手が騎乗。
返し馬で一瞬興奮する様子を見せたり、ゲート入りを渋る一幕があったものの、不安だった気性や折り合いも良くなっており、先行集団より少し後ろを追走する戦法をとった。
直線を向くと同時に進出を開始し、上がり3F32.9の猛烈な末脚を繰り出す。
2着のファストフォースに2.1/2馬身差をつけ、1:06.2で堂々のレコード勝ちをした。
これでGⅠ勝利こそ無いものの、重賞勝利数ではソダシと同じ6勝。
悲願のGⅠタイトル獲得を目指し、再びスプリンターズステークスを目指した。
ちなみにだが、この時のシンガリであったジャスパープリンスですら走破タイム1分7秒9は叩き出しており、これを上回るタイムを持つ高松宮記念を制した歴代優勝馬は28頭中4頭のみ(加えて、タイ記録もたったの2頭)と全体的に高速決着だったことがうかがえる。
2022年スプリンターズステークス
迎えた10月2日のスプリンターズステークス。前年4着のメイケイエールは単勝2.5倍の堂々1番人気に推された。池添とコンビを組んで1年、復活と成長を遂げたお転婆娘は、いよいよ心身充実でGⅠ獲りへ、と期待は高かった。
……結果から言おう。14着の惨敗である。「1着か、馬券外か」は悪い方で継続されることになった。
懸念点が無いわけではなかったのである。まず2022年は中京と東京、左回りのコースしか走っておらず、右回りはちょうど1年振り。
そして、中山芝1200mはスタートから下り坂と緩いコーナーが続き、内枠の逃げ先行馬が有利なコースだが、メイケイエールはやや外目の7枠13番を引いてしまった。事実、このレースの勝ち馬は1枠2番から絶好の好位抜け出しを決めたジャンダルム。2着に4枠7番の3歳牡馬ウインマーベル、高松宮記念勝ち馬ナランフレグも3枠6番から意地の差し脚で3着に残し、馬券内は全て半分より内枠の馬だった。
また直前のセントウルSでこれ以上ない快勝を決めていたが、中2週という間隔も不安要素だった。2歳の頃、小倉2歳ステークスを中1週で走って勝ってはいたが、この時は出遅れ最後方から掛かりまくってコーナーで大外をブン回し、直線で差し切ってしまうという能力差に任せたムチャクチャなレースで参考にならない。そして、最悪のコンボを決めてしまった桜花賞も前走チューリップ賞から中1ヶ月。間隔を詰めて良くなる馬では決してなく、復調した2022年は少なくとも2ヶ月弱の間隔を取りつつ走っていた。
いずれの要素が決定的だったのかは分からない。しかし、これらの懸念も今のメイケイエールなら覆せると評価されたからこその1番人気だった。
メイケイエールは7枠13番スタートもなんのその、するすると前に出て、勝ったジャンダルムの外、4番手に付けた。首を上げ下げして掛かるようなところもなく、ここまでは十分な形だった。だが、直線で池添が促せども全く脚が伸びず、ズルズル後退。
レース後は池添も言葉少なに「あえて挙げるなら中2週かな…」と答えるしかなかった。
2022年ネット流行語100
香港スプリント参戦を目前とした2022年の年末、ニコニコ大百科とピクシブ百科事典が「ネット流行語100」を例年通り開催。
それと同時に、ノミネートされた言葉も発表され、SPY×FAMILYやTAROMANなど、2022年のネット上を彩った100単語がノミネートされた。
そんな中、メイケイエールはタイトルホルダーとともに、競走馬としては二頭のみノミネート。
その後、2022年12月12日に発表された順位発表では、チェンソーマン(55位)や喜多川海夢(59位)などを抑え、堂々の第51位にランクイン。
タイトルホルダーも94位にランクインし、前年のゴールドシップ(5位)に続き、2022年も競走馬がランクインすることとなった。
先述したアイドルホースオーディションに続き、またしてもファン人気の高さを見せつける形となった。
香港遠征前の不運
予定通り香港スプリント出走を目指すメイケイエールだが、ここで鞍上の方に災難が降りかかる。
11月26日の阪神7Rにて、池添騎手がゴール後に騎乗していた馬が躓いたことで落馬してしまい、翌日までの騎乗予定が取りやめになったのである。
最初は腰部打撲とされたが、後に骨折していたと発表され、香港スプリント(12月11日)までの復帰は不可能となった。
池添は「メイケイエールには何としても乗りたくてあらゆる手段を考えたんですけど、無理でした」と悔しさを滲ませ、オルフェーヴルの凱旋門賞に続く無念の海外GI断念となった。
これを受け、香港スプリントでの鞍上はジェームズ・マクドナルド騎手に変更された。
マクドナルド騎手は短距離レースの盛んなオーストラリアで活躍するトップジョッキーで、今年のロンジンワールドベストジョッキーランキングでは世界1位となる142ポイントを獲得した名手である。
……が、問題がある。
この馬がメイケイエールということである。
前走も前々走も暴走はしなかったが、それでも初の海外遠征となるメイケイエールに初騎乗するのだ。
加えて香港のルールでは折り返し手綱も使用禁止(もっとも、これについては武英智調教師も「どこかで外さないとダメだと思っていた」と語っているので、いつか来る運命だったのかもしれない)と不安が二重三重に重なっているが、ファンは陣営の健闘と、何よりも無事を祈った。
そして香港へ…
遠征前の不運も重なる中、メイケイエールはパンサラッサやジャックドールなど、他の香港国際競走遠征馬とともにキャセイパシフィック航空2035便で関西国際空港より出国。
4時間ほどのフライトの後香港・沙田競馬場に到着し、現地で調整を重ねた。
そして始まった香港スプリント。枠は大外の13番と決まる。
鞍上が世界トップジョッキーということもあってか、日本での走りっぷりが評価されたか単勝2番人気に推された。
そして、香港スプリントのゲートは開かれた。
スタートで後手を踏んだものの、その後は掛かりが出たか一気に加速し、二、三番手あたりまで進出する。
マクドナルド騎手もあえて抑えようとはせず、先頭集団に取り付きながらタイミングをうかがう戦法をとった(前方からのパトロールビデオでは「かかり気味な彼女の首の動きを、マクドナルド騎手が天才的な手綱捌きでいなしている様子」が映っていた)。
最終コーナーを曲がったところで鞍上からのゴーサインが出されると前の馬を交わして先頭に立つが、後続から差し・追込勢が一気に殺到。
メイケイエールは馬郡に呑まれるも香港勢ウェリントンの5着と、日本勢では最先着の大健闘を見せた。
そもそも香港は短距離が盛んなため、日本馬からすればかのロードカナロアの登場まで香港スプリントは鬼門であったことを考えれば、掲示板へ入っただけでかなり頑張った方である。
5歳
明けて5歳となったメイケイエールは始動戦を高松宮記念に定める。
落馬負傷していた池添騎手も療養から復帰し、直前の追い切りではかなりの好タイムを記録するなど万全の体制でいた。
高松宮記念2023
迎えた高松宮記念では1番人気に支持された。枠も3枠5番とかなりの良枠。
…しかし、当日の中京競馬場は長雨に晒されてずぶ濡れの不良馬場。加えて開催最終日ということもあって芝コースの内側はボロボロ。この悪条件がどう影響するのかが懸念されていた。
本番ではスタートを上手く切り、若干の掛かりは見えたものの許容範囲内。折り合いを付けてそのまま前目に着けて最終直線へと突入した。
しかし、直線では荒れた内側を避けるポジションを求めた各馬が広がり、進路の確保がなかなか出来ない状態になってしまう。行き場を無くしてしまったメイケイエールはそのまま沈んでしまいかつて同じ場所で共にレコードタイムを叩き出したファストフォースに大きく離されての12着。鞍上の池添騎手は「外を取りたかったが、勝ち馬に先に取られ、そこで気持ちが切れた部分があった。」「去年が外がしんどい馬場で今年は内がしんどい馬場だった。申し訳ない気持ちでいっぱいです。」と述べ、精神的な成長と不良馬場が仇になったとした。しかし、「ほんの少し運が向けば絶対にG1が取れる馬」とも語り、悲願のG1制覇へとその意欲を示した。
香港からの招待…しかし
これまであと一歩のところで運が向かない走りが続いてきたメイケイエール。このころ、香港からメイケイエールに香港チェアマンズスプリントプライズ(GⅠ 沙田 芝1200m)の招待状が届いていた。
しかし、陣営はこの招待を辞退し、国内での勝利を目指すことに決定する。そして、次走に選ばれたのは…
ヴィクトリアマイル(東京 芝1600m)
短距離路線に転向して以来、久々のマイル戦。同レースにはソダシやソングラインも参戦予定であり、桜花賞以来となるこの三頭の対決が実現する見込みとなっている。
また、このマイルへの距離延長を受け、競馬ファンからは鞍上を務める池添騎手の腕が引きちぎれないか心配する声が上がっている。
この影響で、発表当日にはTwitterで「メイケイエール香港辞退」と「池添の腕」がトレンド入りする事態となった。
池添騎手「わしのを腕トレンドすな💦」(公式Twitterより)
無念のヴィクトリアマイル回避
かくして久々のマイル戦に挑むことになったメイケイエール。最終追い切りではで4ハロン52秒0―11秒5の時計をマークするなど順調に調整が進められていたのだが...
5月11日、武英智調教師はメイケイエールのヴィクトリアマイル回避を発表した。
理由は左前脚のフレグモーネ(蜂窩織炎)発症。フレグモーネは皮下組織に見られる急性の化膿性疾患で、一夜で発症した馬の脚が腫れ上がるなど症状進行のスピードが極めて早く、早期発見・早期治療が肝心とされる病である。
武英智調教師によるとこの日の朝に発症したとのことで、「血液検査の結果、数値上や体温などに問題はありませんが、先のある馬であり、ファンの多い馬なので苦渋の決断になりますが大事を取って回避することになりました」とコメントしている。
安田記念に向けて
ヴィクトリアマイルを回避したメイケイエールだが、5月14日、武英智調教師は次走として、牡馬混合ではあるがヴィクトリアマイルと同条件のマイルGⅠ・安田記念とすることを発表した。メイケイエールは先述したように4歳時に京王杯SCを勝つも、気性の問題から優先出走権を得ていた同レースを回避しており、今回改めての挑戦となる。
当初は厩舎での治療後、放牧に出される予定だったが、早期発見が功を奏して素早く処置出来たこと、そしてフレグモーネからの回復が一気に進んだことにより、今回の出走にこぎつけることとなった。
武英智調教師は「すごく回復が早く、問題なく運動ができるようになりました。週明けから乗り運動を行います。少しでも不安があれば出走は考えないところですが、今の状態なら何も問題がありませんので、在厩の形で安田記念を目標に調整を進めて行きます。キッチリと体調を見極めながら調整して行きます」と説明している。
スライド出走になった安田記念に向けて、馬群のなかで入れ込む癖を解消するため、直前追い切りを行わずに出走するなど、意欲的な調整が進められた。
この年の安田記念はソダシやソングラインといった同期牝馬やかつて後塵を拝したナランフレグにとどまらず、シュネルマイスター、セリフォスといった強豪、さらには大阪杯勝ち馬のジャックドールに3歳馬のシャンパンカラーやドルチェモア、挙句の果てにはフェブラリーS2連覇を達成したカフェファラオといったタレントがそろい、計10頭ものGⅠホースが参戦する豪華レース。さすがにそのなかでは短距離路線を長く使われていたこと、フレグモーネからの急なレース変更で順調な調整が進んでいるとはいえないとみられたこともあって、18頭中の12番人気での出走となった。
レース本番は1枠2番という位置を踏まえ逃げを打つことも考えられていたが、発馬で真上に出てしまい、道中後方で馬群の中に置かれる最悪の隊形に。最終追い切りを抜いた効果か、その中でなんとか池添騎手に宥められながら好位に出して競馬を進めることはできたが、最終直線での末脚は不発で、因縁の相手・ソングラインがウオッカ以来となるヴィクトリアマイル・安田記念同年連覇を成し遂げた後ろで、見せ場なく15着に大敗した。
鞍上の池添騎手は暴走せず落ち着いて競馬ができたことを評価しつつも、「最近はレースや調教でパターン化しているところがあって、走りに向けて、気持ちが切れてしまっているところがあり、それが大きくなってきた気がします」と高松宮記念に続けてメンタル面の問題を指摘し、有り余る勝負根性で走ってきたメイケイエールにとって、今後の競走生活に暗雲が垂れ込めていることを予感させる結果となった。
後日、最終直線で落鉄し蹄をケガした状態で走っていたことが報じられた。武英師は「相当痛かったと思うし、走れなかったのは仕方ない」と振り返っている。
ちなみに、同レースでは不人気馬かつ負けレースとしては珍しく、ジョッキーカメラが公開されて、一生懸命に声をかけて彼女をエスコートする池添さんの声が聴けた。
3度目のスプリンターズステークスへ
9月にネットでなんと「アメリカ・サンタアニタパーク競馬場で開催される世界屈指の競馬の祭典・ブリーダーズカップを目指している」との報道がされた。
その記事は何故か短時間で削除されてしまったため誤報ではないかとも思われたが、ブリーダーズカップの登録馬リストに「MEIKEI YELL (JPN)」「JOCKEY Kenichi Ikezoe」の記載があったため、視野に入れているのは事実なのではと考えられた。
ともあれ、秋の始動戦は国内となった。
陣営は前年の反省を受けて、前哨戦を挟まない直行スケジュールでスプリンターズステークスへ参戦。夏のグランプリにて、池添が乗っていた「世界最強をクビ差で追い詰めたかつてのお手馬の娘」が同日パリ・ロンシャンで開催される凱旋門賞に挑戦することもあって、ファンの中にはそちらに行ってしまわないか心配する声もあったが、結局はメイケイエールを優先してたので杞憂に終わった。
前戦・前々戦の惨敗もあってか、人気は8番人気と落ち着いており、最終的には4番人気まで上がったものの二桁オッズは変わらなかった。
今回のレースに向けて陣営は馬具を工夫し、新たに「エッグバットハッピータン」というハミを使用。
このエッグバットハッピータンは本来なら二つの棒がつながっているハミ芯(馬が口内にくわえる部分)がジョイントなしの一本で舌を押さえつける形になっているハミ。
舌を上から抑えるため制動力が強く、ハミ芯をなめると甘く感じるため、馬への不快感が少ないことが特徴とされている。
これまで使っていた折り返し手綱は外し、パシュファイアーも枠を見て外す予定だと発表された。
スプリンターズステークス2023
レースではそれまで着けていたパシファイヤや折り返し手綱を外し、久しぶりに素顔での出走となった。
スタートは問題なく飛び出し、道中は5〜7番手につける中団に控えるレースを進め、ラストの直線では池添のムチに反応して末脚を披露したものの、かねてから言われていた短距離には不向きなストライドの大きさと中山競馬場の直線の短さもあってか、道中同じ位置にいた勝ち馬のママコチャ(同期ソダシの全妹)や、同じミッキーアイル産駒にして3着馬となったナムラクレアに突き放され、先行策に出ていたジャスパークローネにもハナ差で届かず5着に敗れた。
しかし、スタート直後には若干掛かっていたものの、その後は落ち着いて動くことができ、馬具なしでも掲示板まで食い込むことができた進歩に感銘を受けたファンは多かった。
そして天才少女はアメリカへ…
メイケイエールがスプリンターズステークスを終えた一方、脚部不安を生じていたソダシが全妹ママコチャにバトンを渡す形で引退。
これによって2020年の阪神JFで掲示板に入った馬の内、まだ走っているのはメイケイエールだけになった。
そんな彼女の次走がどうなるのか注目される中、10月11日にブリーダーズカップへの遠征が正式に発表された。
メイケイエールは次週から検疫に入り、出走するレースはダート1400mの牝馬限定戦・フィリー&メアスプリントか芝1000mの混合戦・ターフスプリントの両睨みとなったが、前者に決定。鞍上は引き続き池添謙一騎手。
迎えた本番では中団から追走する形となるが、ダートが合わなかったか全く伸びずに最下位の9着に終わった。
6歳
最良のエンドロールへと
6歳を迎えたメイケイエール。同期も続々と現役を引退し、メイケイエールにもそろそろ番が回ってくる頃合いである。
陣営が始動戦として選んだのはGⅢの京都牝馬ステークス。本番では3番人気に支持されるが、レースでは痛恨の出遅れ。池添騎手は何とか落ち着かせ、中団前に取りついたものの、直線では伸びることができず10着に大敗した。
…とはいえ、前進気勢は欠いておらず、まだ勝負を期待できる走りは見せていた。
レース後、陣営は次走を高松宮記念に決定し、このレースをもってメイケイエールは現役を引退し、ノーザンファームで繫殖入りする事も発表された。
高松宮記念2024
迎えた、ターフに別れを告げる最後のレース。
前年は大雨の後の不良馬場に泣かされたこともあって「今年こそは晴れて良馬場で」…というファンたちの願いも虚しく、当日は前日から続く小雨模様の影響で重馬場状態(それでも昨年よりはマシかもだが)。
そんな中、始まったレースでは昨年とは打って変わって中団に着ける先行策。6枠11番の外枠なことも助けとなって馬群の外目を追走する形となり、昨年のように進路が塞がる心配はそうそう考えにくい位置ではあったが。
いざ直線に向いて末脚を出そうとするものの、やはりダートでシンガリ負けしたことからもわかる重馬場適性の低さもあって、伸び切れず秋の勝ち馬ママコチャより半馬身遅れての9着。それでもこの日の一番人気であったルガルには先着しており、負けたとはいえ中京芝1200レコードホルダーとしての意地は見せ、まあまあ爪痕は残せたと言えるだろう。
レース後、手綱を取った池添謙一騎手は「綺麗なフォームで走る娘だから、やっぱり最後の直線は走りづらそうだった。最後だから思う存分走らせてあげたかった」と語っており、お転婆と言われる反面、優等生としての一面も持っていた彼女ならではの最後と言えた。
ちなみに、同レースではベストターンドアウト賞を受賞していた。
ソシテミンナノ…
競走終了後には、予定通り、引退式が催された。
思えば、かつてともに走ったソダシもソングラインもユーバーレーベンもヨカヨカも、引退式はなく、ファンに別れを告げる間もないまま引退してしまった。
GI2勝以上でない場合、引退式の費用は馬主が負担することとなるため、メイケイエール陣営から、これまで応援してきたファンへの最後のファンサービスと言ったところだろう。
関係者挨拶では、調教助手である荻野氏には懐いてなかったことや、癖馬請負人として名高い池添謙一騎手をして「今までに経験のないタイプで、勉強になった」と言わしめる存在だったことを明かされていた。
余談
美少女お嬢様
メイケイエールは何かとじゃじゃ馬ぶりが話題になりがちだが、小柄ながら脚長でバランスの良い馬体、小顔でアーモンド型の愛らしい大きな瞳に気品のある整った顔立ち、一輪挿しのバラを思わせる流星など、大変容姿の美しい馬でもある。
既出の通り、レース外ではとても素直で大人しく、トレーニングにも真面目に励む優等生である。パドックや栗東トレセンでは、見た目の美しさも相まった凛とした佇まいや優美な常歩を披露しており、メディアで取り上げられる度にファン達を「なんでレースで走るとああなるんだ……」と困惑させている。
武英智調教師によれば、「顔は本当にべっぴんさんだと思います」「厩舎でもすごく品が良いんです。なのにレースでは品が無い」とのこと。
2022年には写真集も発売されるのだが、帯文でやっぱりそのことに触れられてしまった(帯文は池添騎手寄稿)。
『ウマ娘』に立候補…?
桜花賞を迎える少し前にCygamesより競走馬擬人化アプリゲーム「ウマ娘プリティーダービー」がリリースされ爆発的なヒットとなっていた。
この話題を受けた名古屋競馬の中西社長は「是非ともメイケイエールもウマ娘に加えて欲しい」と新聞の取材で発言。先の通り、このインタビュー直後の桜花賞で「出遅れ」「掛かり」(両方ともゲーム内で状態異常のような形で再現されている)を実演してしまったことも含め、同ゲームのファンからにわかに注目を浴びた。
彼女の場合、当時現役馬であるため登場は難しいと思われていたが、デアリングタクトのウマ娘化発表で現役馬の登場の可能性が開かれ、俄に注目を浴びることに。…果たして、彼女はウマ娘に出られるのだろうか?
丸太を担ぐメイケイエール(?)
先述したように、スプリンターズステークス前には、丸太を跨ぐ訓練が行われたのだが、その目撃情報のツイートを見た際に一瞬「丸太を担ぐ訓練」と空見するものが相次いだ。
※画像はイメージです
そこから、「丸太を担ぐメイケイエール」というネタが生まれてしまい、Twitterなどではすでに丸太を担ぐのがメイケイエールの持ちネタのように扱われかけている。
ソングラインとの因縁(?)
ソングラインはメイケイエールの同期の牝馬であり、この二頭が揃って出走した桜花賞では暴走するメイケイエールに接触されて大きな不利を受け、15着という惨敗を喫してしまった。(メイケイエールはその後逆噴射をかましドベ)
この時のソングラインの鞍上が、主戦の池添謙一騎手であった。池添騎手はソングラインの主戦として好走を続ける一方で、武豊に代わりメイケイエールの鞍上も務めている。初乗りとなったスプリンターズSでは、メイケイエールの鞍上として斜行による制裁を受ける側になったのは奇妙な縁というかべきか皮肉というべきか。
その後、京王杯SCでメイケイエールが勝利(翌日のヴィクトリアマイルではソングライン5着)、その二週間後にソングラインが安田記念を勝利した際は、「朗らかに勝利者インタビューに応じる安田記念後の池添」と「疲労困憊した様子で勝利者インタビューに応じる京王杯SC後の池添」の比較画像がTwitterに出回り、ソングラインだけでなくメイケイエールの名もトレンド入りする現象が起きた。
メイケイエールもソングラインも短距離~マイルのレースで勝利経験のある馬であり、もし仮に同じレースに出るのならば池添騎手はどちらを選ぶのか、ファンの間では話題となっていた。
後にこの2頭の対決は2022年のセントウルステークスにて実現。池添はメイケイエールに騎乗し、ソングラインはその後に予定しているブリーダーズカップ参戦を見据えてクリストフ・ルメール騎手、出走レースが重複した2023年のヴィクトリアマイルと安田記念では戸崎圭太騎手に乗り替わりとなった。
奇しくも引退後に同じグループで放牧されていることが明かされたが、ソングラインとの折り合いが悪いことに加え、群れのボスであるジェラルディーナとも良好ではない模様。
メイケイエールの適性距離
折り合いの問題から短距離レースを中心に活躍しているメイケイエールだが、脚の長さゆえに回転が遅くストライド(歩幅)が長いため、本来の適性レースはもっと長い距離のようだ。調教師である武英智師も「短距離馬のストライドではない」とコメントしている。
池添騎手は自身のインスタライブで「折り合いさえつけば距離はいくらでも伸ばせる」とは言及している一方で、「折り合いはこの馬の一生付きまとう課題」とも述べており、距離延長の難しさを述べている。また同インスタライブにて「メイケイエールで有馬記念出ないの?」という質問を受けると、「もう腕が引きちぎれます、無理です」と冗談とも本音ともとれるトンデモ発言が飛び出している。
セントウルS前に放送されたウイニング競馬にて、キャプテン渡辺が池添騎手に対し「メイケイエールはスプリントとマイルどちらの方が適性が高いか」という質問をしたところ、「折り合いが解消されれば1600でももっと距離が伸びても大丈夫だと思うんですけど、でもそうじゃないので」と改めて気性面の問題と距離延長の難しさを露わにした。また、後述のクセ馬図鑑では「マイルまでならイケるかも」と言っている。
1200mは真の適性距離ではないとする意見が稀に見られるが、気性は距離適性の重要な要素であることを忘れてはいけない。他の一流スプリンターと比べても全く引けを取らないスピードと1400mでは鞍上が制御に苦労する気性を持ったメイケイエールの適性は1200mにあると言っていいだろう。気性が改善されて適性距離が変化するというのはままあることである。
なお、新馬戦では「敢えて馬群に入れるレースを選択することで、道中の折り合いを付けられるよう馬を成長させる騎乗スタイル」を信条とする福永祐一が騎乗しており、このような騎乗スタイル故に「福永の降りた馬は乗りやすく、よく走る」とさえ言われる彼をして折り合いのつけ方を指導できなかった数少ない例である(ただし、この新馬戦では5馬身差の圧勝を収めており、新馬戦とはいえこれが彼女の持つ最高着差記録である)。
メイケイエールの斜行ネタ
「メイケイエールに追突された馬は走るというジンクスがある」とごく一部のファンの間で話題になっており、桜花賞で接触したソングラインは次走のNHKマイルカップで2着と好走し、スプリンターズSで迷惑をかけたエイティーンガールとタイセイビジョンも次走の京阪杯で1着・2着となっている。ここからメイケイエールは走る様子も合わせて「幸せを呼ぶ獅子舞」というネタもあったりする。
しかしメイケイエールの斜行と被害馬のその後の好走には一切関係性はなく、それどころか一歩間違えば人馬ともに大事故にもつながりかねない行為であり、またレースに向けて馬とその陣営がしてきた努力とチャンスが台無しになり、メイケイエール自身も制裁という汚点を残してしまったと言える。「幸せを呼ぶ獅子舞」というネタは、そういった事実を茶化して肯定していると捉えられかねないということは踏まえておきたい。
彼女にしたいかどうか
かつて主戦を務めたスイープトウショウに関するインタビューでの即答が色褪せないレベルで語り継がれているためか、池添騎手が主戦を務める競走馬が牝馬の場合には「彼女にしたいか?」と質問されるのが定番となっているのだが。
同質問に対する池添騎手の回答は「彼女なら良い」という意外なものだった。理由は「スイープと違い、まだヨイショすれば何とかなるから」とのことだが、同時に「結婚はちょっと…」と言っている。
これにより彼の代表的な主戦牝馬の評価は、
- スイープトウショウ→彼女にするのもキツい(※)。
- メイケイエール→結婚は嫌だが、彼女なら良い。
- カレンチャン→結婚したい。
と綺麗にランク付けされることとなった。
(※)なお、ウマ娘では「スイープの父=池添騎手」という設定にされており、育成実装された際にはTwitterアカウントにて「(トレーナーことプレイヤーたちの)いうこと聞くんだよ〜」と本当にパパになったかのようなコメントをしている(該当ツイート)。
引退式に使われた楽曲
メイケイエール自身の名と同じ曲名である『いきものがかり』の『YELL』が使用された。
Bメロの一節「翼はあるのに飛べずにいるんだ」という言葉にはコースレコードを出す実力がありながら最後までG1タイトルに手が届かなかった彼女の運の無さを連想させるとともに、サビの一節「サヨナラは悲しい言葉じゃない それぞれの夢へと僕らを繋ぐ YELL」という言葉にメイケイエールの繁殖牝馬としての活躍を期待し、自身が最後まで届かなかったG1タイトルを産駒が手にする事を多くのファンが夢に見て別れを惜しんだ。
知名度は歴代アイドルホースに届いたか?
これまでにもオグリキャップ、ハルウララやディープインパクトなど、競馬を知らなくてもテレビやニュースで取り沙汰されるから名前だけは知ってるという偉大なる名馬が数多くいたが。
メイケイエールの場合、クラシック期が始まる頃にサービス開始した某競走馬擬人化コンテンツに馬主が意欲を示したことで、「某ゲームはやっているが、リアル競馬は一切手をつけない」というタイプのユーザーであっても名前を認知されることとなったと思える。
セレクトセールでのエピソード
2019年の1歳馬セレクトセールにおいて、馬主である名古屋競馬は、「長く走れる」「牡馬」「予算3000万円」を条件として、預託予定の武英智調教師にどの馬を落札するか任せていた。
だが武英師が「良い馬がいた」と落札してきたのは、「ミッキーアイル初年度産駒の」「牝馬」「落札価格2808万円」のシロインジャーの2018だった。おつかいとしては完全に不合格だが、結果として6歳春まで20戦を無事に走りきり、3億4000万円を稼いだ孝行娘となった。
ちなみに、メイケイエール以降も名古屋競馬はミッキーアイル産駒を2頭所有しているが、共に中竹和也調教師に預託されている。
関連イラスト
メイケイエールのイラスト
競走馬擬人化/オリジナルウマ娘
関連動画
池添騎手、メイケイエールを語る
関連タグ
ソダシ:血縁関係にある同期の白毛馬。メイケイエールの祖母(ユキチャン)の妹(ブチコ)がソダシの母なので、メイケイエールから見てソダシは従叔母・ソダシから見てメイケイエールは従姪となる。放牧中の牧場で馬房が隣で一緒に過ごしたことがあり、仲は結構良かったとのこと。
ゴールドシップ:実力はあるが極端な戦績を残し、そしてアイドル的人気を博した競走馬の先輩。一方性格・適性距離・レーススタイル等さまざまな面でメイケイエールとは真逆。なお、同期のユーバーレーベンの父でもある。