アルスラーン戦記
あるすらーんせんき
概要
田中芳樹が1986年より執筆している大河ファンタジー小説であり、それを原作としたアニメ・漫画を指す。
中世ペルシャ風の架空の王国「パルス」を舞台にした、王太子・アルスラーンや彼に忠誠を誓う臣下のダリューンといった登場人物が織りなす壮大な物語。
構成としては第1部(1~7巻)と第2部(8~16巻)に分かれる。第1部は「架空戦記もの」の印象が強いが、第2部からはファンタジー色が濃くなっている。
19世紀イランの英雄叙事詩『アミール・アルサラーネ・ナームダール(名高き王アルサラーン)』をモチーフにしているため、作中に登場するパルス語の固有名詞の多くはペルシア語を元とした造語である。
原作小説の版(2019年3月現在)
刊行当初は角川書店が版権を持っていたが、2000年ごろに版権が光文社に移動した。そのため、内容はほぼ同じものの異なる版が存在する。
版 | 巻 | 刊行年 | 挿画 | 備考 |
---|---|---|---|---|
角川文庫 | 1~10巻(刊行終了) | 1986~2000 | 天野喜孝 | 版権の移動により絶版 |
カッパ・ノベルス | 1~16巻 | 2003~2017 | 丹野忍 | 角川時代刊行分の10巻分は、2巻分を合本し5冊として発行。11巻以降は1巻1冊となっている。現時点で小説の内容を最速で読める媒体 |
光文社文庫 | 1~14巻 | 2012~ | 山田章博 | カッパ・ノベルスの後を追う形で刊行中 |
らいとすたっふ文庫 | 1~7巻 | 2014~ | なし | 唯一の電子書籍版。8巻以降はカッパ・ノベルス版で最終巻(16巻)が刊行された後にリリースされる予定 |
原作者の体調不良等で何度か執筆が中断され、「終わらない大作小説」としてファンをやきもきさせ続けたが、2017年12月に刊行された16巻をもって完結。第1巻「王都炎上」刊行の1986年から数えて31年後に物語の幕が引かれることとなった。
執筆が長期間にわたったため作風が初期と末期では著しく変化している。
原作のほか、マンガやアニメ等各種メディアミックス作品が存在する。これらは続く項目で解説する。
2018年には、まさかとも言うべき星雲賞にノミネートされた。一応の完結をした事に伴っての対象入りを果たしたため、ノミネートされた形と言える。
……この作品がSFなのかに関しての議論は、敢えてここでは行わない。
用語
この作品では、「国王(シャーオ)」など、日本語にペルシア語を音写したカタカナが振られている表記が多い。原作やマンガを読んだことのないアニメ視聴者にとって意味がわかりにくいことがある。 → アルスラーン戦記用語集
物語
東西を結ぶ大陸公路の中心に位置するパルス王国は、勇猛果敢な騎士団を誇り、栄華を極めた強国であった。
王国を率いる不敗の国王、アンドラゴラス三世の息子アルスラーンは、父王と王妃に愛情を注がれることはなくとも、王都エクバターナで王子として不自由なく健やかに育っていた。
パルス歴320年に西方の宗教国家ルシタニアが侵攻し、アルスラーンも初陣を飾る。時に14歳。
しかし、敵の思いがけない罠や味方の裏切りによりパルス軍は敗北。アンドラゴラスは囚われの身となり、エクバターナも数日で陥落した。
死屍累々の戦場で、独り敵に囲まれたアルスラーンは、危ういところを臣下のダリューンに助けられ、からくも脱出。
落ち延びたアルスラーンとダリューンの二人は、再起を図るべく、集まったわずかな仲間たちとともに、故国の奪還へと旅立つことになる。
登場人物
余談だが、『弟は兄より生き延びるが、必ず兄関連で苦労している』という謎のジンクスがある。
イスファーンは復讐に燃え、ギスカールは面倒事を押しつけられて内政・軍事を取り仕切り、ラジェンドラは王位を争った、などなど。
声優表記は【カセットブック版 / 劇場版・OVA版 / 日5アニメ版】のもの。
主要人物
アルスラーン(CV:関俊彦/山口勝平/小林裕介)
主人公。パルスの国王アンドラゴラス三世の子で、パルス国の若き王太子。
敵国ルシタニアに奪われた国土を奪還するため、ダリューンやナルサスら頼もしい味方たちとともに立ち向かう。旅の中で、彼自身の出生の秘密と向き合うこととなる。
ダリューン(CV:鈴置洋孝、田中秀幸/井上和彦/細谷佳正)
パルス国の万騎長。
黒い甲冑と真紅の裏地の黒マントを身に纏い、大陸公路有数の戦士として名を馳せる「黒衣の騎士」「戦士の中の戦士(マルダーン・フ・マルダーン)」。愛馬は黒馬の黒影号(シャブラング)。
王太子アルスラーンに対して揺るぎない忠義を捧げ、アルスラーンが最も頼りとする第一の臣。一方、親友で幼馴染のナルサスとの会話では、人の悪さがにじみ出る。
ナルサス(CV:大塚芳忠/塩沢兼人/浪川大輔)
アルスラーン軍の軍師にしてアルスラーンの政治・軍事の師匠。パルス国の北西・ダイラム地方を領する貴族だったが、アンドラゴラス三世と不和になり身分を捨てた過去を持つ。
一見文弱の貴公子と思われがちだが、剣の腕前は達人級で、優しげな容姿に似合わない毒舌家。
絵画をこよなく愛するが、画才は智勇とは遠くかけ離れており、ことあるごとに親友のダリューンにけなされる。
弟子のエラムと二人で山中に引きこもり隠遁生活を送っていたが、ダリューンがつれて来たアルスラーンの才覚をいち早く見抜き助力する事となる。
エラム(CV:佐々木望/同左/花江夏樹)
ナルサスの父の元で働いていた奴隷夫婦を両親に持つ少年。ナルサスによって奴隷の身分から解放された後も、両親の遺言で侍童(レータク)としてナルサスに仕えている。
アルスラーンとは共にナルサスに教えを受ける兄弟弟子でもあり、旅の中でさまざまな体験を共有し身分を超えた友情を築く。アルスラーン陣営で最年少。
パルス
アンドラゴラス三世(CV:中庸介/大塚明夫/菅生隆之)
剛毅で強靭な王。武人として卓越した実力を持ち、国王でありながら陣頭に立ち最前線で剣を振るう。一方で政治の腐敗には関心を持たず放置している。
実の子であるはずのアルスラーンに対して厳しく接し、そこに父子の情は垣間見えない。
タハミーネ(CV:弥永和子/同左/田中敦子)
傾国の美女とも呼べる妖艶さの持ち主で、その美貌ゆえにさまざまな男たちに権力争いに巻き込まれた過去がある。
アンドラゴラス三世に対しても、アルスラーンに対しても、妻・母としての愛情を示さない、謎めいた女性。
ヴァフリーズ(CV:菅原淳一/池田勝/津田英三)
アンドラゴラス三世の腹心で、パルスの大将軍(エーラーン)。ダリューンの伯父にあたる。荒川弘版ではアルスラーンに対して剣術指導をする様子も描かれる。
アルスラーンの出生の秘密を知る数少ない人物で、その成長を案じている。甥であるダリューンには、パルス王家ではなくアルスラーン個人に忠誠を誓うよう求める。
キシュワード(CV:納谷六朗/中村大樹/安元洋貴)
パルス国の万騎長。
二振りの剣を変幻自在に操って敵を倒すことから「双刀将軍(ターヒール)」と呼ばれる。古くから続く名家の出身であり、その穏やかな人柄から人望は厚い。
アルスラーンとは2羽の鷹を通じて古くから個人的な親交があった。
ジャスワント(CV:松本保典/結城比呂/羽多野渉)
パルスの東に位置する隣国シンドゥラの宰相マヘーンドラの部下だったが、その没後はアルスラーンに仕える。
浅黒い肌を持ち、武勇に優れ、その身のこなしは黒豹に例えられ、剣さばきはシンドゥラの太陽のように激烈であると評される。
メルレイン(CV:中原茂/子安武人/日野聡)
剽盗を生業とするゾット族の族長ヘイルターシュの息子で、弓の扱いに優れる若者。
秀麗な顔立ちながら常に不機嫌な表情をしている(ように見える)ため誤解されやすく、愛嬌を落っことして生まれてきた、などと評されるが、本人は意識していない。
アルフリード(CV:佐々木優子/渡辺久美子/沼倉愛美)
武芸に秀で、面倒見のよい明るい性格の少女。
危地にあったところをナルサスに助けられ、彼に惚れ込んでついていく。アルスラーン陣営に参加するようになる。ナルサスを慕うエラムとは犬猿の仲。
ルシタニア
イノケンティス七世(CV:大木民夫/桜井敏治)
ルシタニアの国王。
イアルダボート教を熱心に信奉し、深く考える事なく異教徒虐殺を命じる。
酒よりも砂糖水を好んで飲み、怠惰、脆弱な肥満体質。
政治・軍事には無関心で、面倒事は全て弟のギスカールに押し付けている。
ギスカール(CV:中尾隆聖/小杉十郎太/子安武人)
兄に代わって、ルシタニアの政治・軍事を取り仕切る苦労人。パルス遠征計画を立案した張本人で、銀仮面卿とは互いに利用し合う間柄である。
非常識な人々に囲まれて苦労する常識人だが、王位簒奪の野望を持っている。
ジャン・ボダン(CV:北村弘一/同左/斎藤志郎)
イアルダボート教、ルシタニア国教会大司祭、異端審問官。
異教徒根絶やしを掲げて、大規模な焚書や女性・子供も含めた大量虐殺などの非道を嬉々と行う狂信者。宗教者の増長を快く思わないギスカールと政治的に対立する。
シンドゥラ
マルヤム
音声媒体
二人の漫画家によってコミカライズされている。
中村地里版
劇場版・OVA版のタイアップ作品。1991~96年にかけて『ASUKAファンタジーDX』にて連載し、単行本は13巻で完結済。
作画担当の中村地里が自他ともに認める田中作品フリークであることから白羽の矢が立ち、コミカライズが実現した。ファンタジー色が濃い少女漫画風の絵柄ではあるが、原作小説の台詞や展開などをほぼなぞる形で第1部(原作小説7巻まで)の内容を描く。
荒川弘版
2013年から『別冊少年マガジン』にて連載開始。単行本は概ね年間2冊のペースで順次発売されている。
中村地里版とは対照的に、アクション作画の多い少年漫画作品。概ね原作通りに進行しているが、荒川の独自解釈による設定改変・演出変更が随所に見られる。日5アニメ版の原作としてクレジットされている。現在Pixivに投稿されているファンアートの多くは、荒川弘版および日5アニメ版のキャラクターデザインに依拠している。
ちなみに、田中芳樹の出版物には著作権の管理元によって明確な二次創作についてのガイドラインが設けられているが、荒川版は「原作小説とは無関係な、講談社が著作権を管理する荒川弘の原作作品」という位置付けとなっているため、このガイドラインは適用されないとのことである。
このため、荒川版および日5アニメ版の二次創作については、講談社出版作品の基準に従うこと。
劇場版・OVA版
松竹配給。「アルスラーン戦記」(1991年)、「アルスラーン戦記Ⅱ」(1992年)は劇場版。1年につき1作製作される予定だったが、角川書店の分裂騒動などにより頓挫。劇場版の続編として「アルスラーン戦記Ⅲ」(1993年)から「アルスラーン戦記Ⅵ」(1995年)まで、計4作のOVAが製作されるに留まった。
製作スタッフの多くが入れ替わっているが、キャラクターデザインはすべてアニメーターの神村幸子が手がけたもので統一されているため、「神村版」と通称されることもある。荒川弘版が登場するまで、アルスラーン戦記のファンアートの主流となったと見られる。
日5アニメ版
荒川弘版「アルスラーン戦記」のアニメ化という扱い。毎日放送及びTBS、CBC、さらに北は北海道放送から南は琉球放送までのTBSの地方系列局約25局の日5枠で下記の通り放送された。
タイトル | 放映期間 | 話数 | 内容(原作小説との対応) |
---|---|---|---|
アルスラーン戦記(1期) | 2015年4月~9月(2015年春アニメ) | 全25話 | 1巻「王都炎上」~4巻「汗血公路」 |
アルスラーン戦記 風塵乱舞(2期) | 2016年7月~8月(2016年夏アニメ) | 全8話 | 5巻「征馬孤影」~6巻「風塵乱舞」 |
1期10話「カシャーン城塞の主」で、一時的に執筆ペースが落ちていた荒川弘版「アルスラーン戦記」の単行本未収録の内容を追い越してしまったため、11話以降は原作小説の内容に概ね沿いながらアニメスタッフが独自に製作したものとなった。2016年ごろから荒川の執筆ペースは回復しているが、荒川版では細部やエピソードにアニメ版と異なる演出・表現が発生し続ける事態となっている。
2期として製作された「アルスラーン戦記 風塵乱舞」は、通常2クール(25~26週)で放映される日5枠のアニメと異なり全8話とされ、全4話構成の「七つの大罪 聖戦の予兆」と1クールを分け合う形となったことが話題となった。
メディアミックス:ゲーム
外部リンク
関連タグ
作者 | 田中芳樹 |
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挿絵・キャラクターデザイン・コミカライズ | 天野喜孝 丹野忍 山田章博 / 神村幸子 / 中村地里 荒川弘 |
カテゴリ | 小説 ライトノベル |
ジャンル | 中東風ファンタジー 架空戦記 貴種流離譚 |
制作 | プロダクションI.G ライデンフィルム サンジゲン |
評価タグ | アルスラーン戦記100users入り→アルスラーン戦記500users入り→アルスラーン戦記1000users入り 殿下マジ天使 |
カップリング | アル戦【腐】 |