「 お母さんが言いました。逃げたら一つ、進めば二つ、手に入るって 」
CV:市ノ瀬加那
概要
『機動戦士ガンダム水星の魔女』の主人公である。
シン・セー開発公社のCEOの娘で、同社の推薦によりアスティカシア高等専門学園パイロット科2年生として編入した17歳。辺境の地・水星の出身であり、持参したモビルスーツのガンダム・エアリアルのパイロットを務める。
「水星を豊かな星にするために勉強してきなさい」という母の言葉に従いアスカティシア学園に編入。初日に知り合ったミオリネ・レンブランを助けようと、彼女の婚約者であるグエル・ジェタークに決闘を挑んだ一件を契機に、エアリアルと共に企業同士の権謀術数に巻き込まれてゆく。
人物像
容姿
褐色肌に太い麻呂眉が特徴的なタヌキ顔。赤毛であり、髪質は癖毛。
後ろで2ヶ所束ねており、母からもらった少々古めかしいヘアバンドを着けている。
パイロットスーツを着る時は髪留めを使用して束ねている。
人物
一人称は「わたし」、二人称は「あなた」。言葉遣いは母親除く会話時では誰にでも敬語を常用する。ただし母親との会話やモノローグ時には中性口調に変わる。
第三者が閲覧可能な登録上の情報としては「父は早くに亡くなり、母はプロスペラ」となっている。父の死因は不明。
気弱で他人のペースに吞まれやすい面はあるものの正義感は強く、ビビりながらも他者の悪行をたしなめるなど肝が意外と太い。人との距離感を測りかねてはいるものの、むやみな謙遜や忖度はせず、ともすれば傲慢スレスレな図太さを見せる一方で、一度気を許した相手の事はあっさり信じてしまう故に騙されやすい面もあったりと、良くも悪くも真っ直ぐな正直者。
後述するが、水星の過酷な環境で救助活動に従事してきただけあって咄嗟の行動力も高いものの、緊急性の高い事案に幼い子供の身で独力での対処をさせ続けられ、マニュアルに準じた組織的な活動の経験や同世代と接する機会も得られなかったため、要救助者の元へ一刻も早く向かおうと先走り他のスタッフと足並みを揃えられないなど、集団行動には不慣れな面もある。
家族のように過ごしてきたエアリアルに対しては強い執着を持ち、ミオリネがグエルとの決闘のために無断で機体を持ち出した際には、コックピットへ乗り込みざまにミオリネに頭突きを食らわせつつ、シートから押しのける強硬さを見せている。
人間関係
良くも悪くも注目を集めており、学内では「水星ちゃん」(好意的ではない相手からは「水星女」)の愛称で呼ばれる。
ミオリネとの関係は、アスティカシア高等専門学園への到着間際に要救助者を発見しエアリアルで助けに向かうも、“計画”を邪魔されたとして突っ掛かられてしまう。
最悪の出会いから始まった2人のその後の関係についてはスレミオ等の項目で確認されたし。
当初は横暴さを見せつけ悪印象を持たれたグエルだったが、彼がとった後述のある行為によって(機敏を理解出来ない彼女からは)不可解な行動をとる男としてではあるものの一応は関係改善に至っている。こちらもグエスレ項に詳しい。
禁忌とされているガンダムに乗った嫌疑で拘束されている時にエランの訪問を受け、彼から差し入れられた食事を食べながら涙を見せたり、彼の言葉に顔を赤らめるなど好印象を持つ描写が見られ、デートにまで至った事も。彼の場合、思惑はどうであれ彼女に比較的好意を持った行動が中心であるのが一因であろう。
ちなみに2022年12月9日発売のアニメージュ2023年1月号にて、本作のシリーズ構成を担当する大河内一楼氏から、エランは「スレッタの初めての恋を描けるようなキャラクター」と紹介されている。詳細はエラスレを参照願う。
シャディクとは彼とミオリネとの個人的な関係に関心を持ちつつも、彼との決闘前には「花嫁(ミオリネ)の暴走を止めてやれ」と声をかけられ、それに対し「花婿ならお嫁さんを信じます」と返答し、彼女に寄り添う姿勢を見せている。
スレッタの技能とエアリアルの存在により、アスティカシア高等専門学園のスポンサーでもあるベネリットグループでは、彼女が「(水星の)魔女」であるとの疑惑が広がっている。
能力・パイロット技能
学生としては実技面では秀でた面を見せており、デミトレーナーでの操縦試験にて課題としてメイン除くすべてのセンサーをOFFにしたうえ、他の学生からの嫌がらせでメインカメラを黒塗りにされるも、再挑戦の繰り返しにより合格一歩手前に迫っていた。
反面座学はイマイチであり、本人も「勉強が遅れている」と編入当初から苦手意識を持っている。
作中に映った『モビル重機理論』の答案用紙では、確認出来る範囲では6問中の正答が2問と苦戦している(問「モビルスーツとモビルクラフトの違いを述べよ」→ 誤答「モビルスーツの方が操縦が難しい」など)。もっとも編入早々に決闘や『ガンダム』疑惑に巻き込まれており、出席する余裕がなかった点は留意する必要がある。
『ガンダム』が禁止されているとの知識はあるものの、エアリアルがそれであるとは(恐らく意図的に)知らされておらず驚愕していた。
異能じみた描写は無いものの、実戦経験が豊富な事もあり、優れた操縦技能と観察眼を持っている。
長年エアリアルと一緒に居たため機体特性を熟知しており、GUNDビットの練度は強化人士であるエランを上回り、それを用いた射撃は百発百中。また、自身を囮にGUNDビットでの奇襲を仕掛けようとする等、戦略面でも頭が回る一面を見せている。
単純な白兵戦にも強く、パワーのあるダリルバルデと切り結んだ際も怯む事無く、片腕にもかかわらず真正面から押し返して両腕を切断し、スピードに長けるファラクトの近接攻撃も余裕を持って防いでいた。
乗機との信頼関係もあってモビルスーツ操縦の技量には自負を抱いており、学園のエースとして扱われていたグエルの力量を初見で見抜き、乗機の四肢を潰して速やかに無力化しつつもコクピットを無傷に止めるなど冷静に処理する格上の戦いぶりを見せ、編入早々『ホルダー』となる。
何より特筆すべきなのは反応速度であり、エアリアルの機動性・追従性を活かしてダリルバルデのドローン攻撃やファラクトのGUNDビットをほぼ回避している。初使用のフライトユニットも即座に使いこなせており、相手の挙動の変化を即座に読み取り適切な行動を取る等判断力にも秀でている。
ただしその能力の高さは瞬間の閃きより経験の豊富さから来るものなので突発的なトラブルには弱く、焦るあまり戦闘中にビームサーベルがすっぽ抜けるというアクシデントも。スプリンクラーによる環境変化で動揺したせいでエアリアルの右腕を破壊された事もあり、精神的にはまだまだ発展途上である。しかし多少の逆境で自分を見失うほどに冷静さを失ったりはしておらず、外部からの指示が来ればそれをこなす形で立て直したりとメンタルは決して弱くはない。
不穏な描写
だが一方で、戦うたびに普通の人間では起こりえない場面を見せている。
特に第9話においては見えない誰かと会話しながら、更に敵の動きが見えているかのように次々と学園トップクラスのパイロット揃いのグラスレー寮生達を撃破し、エアリアルの性能を引き出せばデータストームによってパイロットが即死するとされているにも拘らず異常を見せていない。
『PROLOGUE』で登場したエリクト・サマヤは多くの視聴者が当初スレッタ・マーキュリーと同一人物と認識しており、エリクトの成長した姿とされていた。
しかしながら、本放送が始まった早い段階から「彼女らは別人ではないのか?」との意見や考察があり、そしてPROLOGUEとの間に21年経過したとされ、その他複数の情報から現在ではほぼ確実に別人とされている。
時系列的にナディム・サマヤの実子ではないと(ほぼ)確定したにも拘わらず、あまりにも面影を引き継いでおり、同じ地球寮のアリヤの占いで『母の存在の大きさ』や心当たりのないきょうだいに類する近親者の存在が示唆されている点から、不穏な考察も盛り上がっている。
また、第2シーズン・第14話終盤で交わされたプロスペラとベルメリア・ウィンストンの遣り取りから、新たに『エリクトが長女でスレッタは次女の姉妹(=PROLOGUEの時点でエルノラが妊娠初期の状態だったのではないか?)』とする説を挙げる視聴者も現れた。
動向
本編開始前(〜A.S.121?)
外伝小説『ゆりかごの星』では、母と二人で水星軌道基地『ペビ・コロンボ23』に逃げ延びている。水星ではスレッタ以外に子供がおらず、母共々疎まれる事態も少なくなかったゆえ、エアリアルを唯一の「友達」として、ストレージに保存された娯楽コンテンツを慰めにしながら幼少期を過ごしていた。
資源採掘の場である水星での労働災害に際して、エアリアルを駆って救助活動に従事し、多くの人を救った実績で次第に周囲の信頼を得るようになった。こうした数々の現場経験は「勝てなくても手に入ります。経験値もプライドも……信頼だって!」と表れている。
同作のエアリアルの発言によると、「お母さん」が出世したのはスレッタが11歳(A.S.116)とされるが、ヴィム曰く彼女がCEOに就任したのは3年前、A.S.119(14歳)であると発言している。
第一期本編(A.S.122)
編入直後、学園名物の〈決闘〉に巻き込まれかけるも最悪の出会いを果たしてしまったはずのミオリネに救われ、お礼をしようと温室まで付きまとい、彼女が丹精込めて育てたトマトをご馳走になりながら身の上話を広げていたところに現れたグエルのミオリネを私物化するかのような言動や狼藉にひどくビビりながらも、彼の尻にビンタをかまして割って入り、仔細も知らないままに決闘を挑む。
自分の意志を蔑ろにされる状況に憤ったミオリネにより、エアリアルを無断借用されるトラブルがありつつも、力尽くでコックピットに割り込むと、接近戦を挑むグエルのディランザをビットステイヴによるオールレンジ攻撃で瞬殺、頭部アンテナを斬り落とし決闘に勝利。
これにより図らずも「学園最強の座」に就いてしまったスレッタは、「ホルダー」の称号を得ると共にミオリネの婚約者となってしまう。フォールクヴァングでの殺戮の首謀者にして、父親の仇であるデリング・レンブランとミオリネとの父娘関係を知らないままに……。
だが決闘直後、フロント管理社警備隊のデミギャリソンに「『ガンダム』使用」の嫌疑を掛けられたスレッタは身柄を拘束されてしまう。
以後は外部の動向も知らされず独房で時間が過ぎるのを待つばかりだったが、突然やって来たミオリネから次の決闘と賭けの内容を聞かされたスレッタは急展開に驚愕する。
ミオリネは改めて地球行きの意志を語り、退学処分撤回のチャンスを掴んできた見返りとして学園から逃げおおせるまでスレッタに花婿役を続けるよう「取引」を持ちかける。学園に戻ると決闘の相手がグエルだと本人の口から聞かされる。
決闘の準備のために温室までやって来たエランと「連絡先の交換」を果たし、決闘委員会のラウンジで宣誓と承認を済ませたスレッタは、グエルに嘲笑を向けるセセリアを諫め、本心を問う彼に母から譲り受けた“哲学”を語り(一度は負けた事実を念押ししつつ)逃げずに再戦に挑む姿勢に敬意を払う。
ダリルバルデに乗り換えたグエルと戦うスレッタは、ジェターク陣営が決闘場に施した細工や、親の呪縛を振り払って意地を見せた彼の攻撃を振り払い、かろうじて勝利を収める。グエルへの認識を改めたスレッタは、機体を降りると彼のパイロットとしての技量を賞賛し、握手を求めた。
その姿勢は、先刻まで陣営の都合に振り回され苦悩していた彼の心に一筋の光明を見出させ、唐突にプロポーズされ絶句。
求婚直後に我に返ったグエルの制止も耳に入らず、スレッタはエアリアルに乗り込み逃亡。決闘騒動こそ一段落したものの、勝敗とは別の意味でも注目を集めてしまう。
サポートメンバーが必要とパイロット科の実習中に知り、再試験のためメカニック科の学生に手当り次第声を掛けるが、決闘で悪目立ちし過ぎたため失敗。再びニカから助け舟を出されて地球寮の面々を紹介されるも、スペーシアンに強い敵意を抱くチュチュの横槍でそれもご破算となり、本来は専門外であるミオリネの手を借りる事となる。彼女の私室を仮拠点として過ごしつつ、水星に人を呼ぶために学校を作りたいという夢を語る。
再試験当日は妨害と言う名のいじめに遭い、度重なるリトライの末に編入以降の波乱も重なって号泣しながら不安を吐き出し、二人の会話を聞いていたチュチュと妨害の犯人との殴り合いが発生。スレッタも揃って再々試験となってしまうものの、ニカの提案とチュチュのわずかな歩み寄りもあり、改めて地球寮に迎えられる。
エアリアル修復作業の傍らで、スレッタはアリヤの占いに付き合い、他の人物を占う方法を尋ねるとエランからの連絡で戦術試験区域の点検への同行を請われ、指定どおりエアリアルを伴って待ち合わせ場所へ向かう。
乗り合わせたコックピット内で、占いのためにエランの誕生日を尋ねるスレッタだが、エアリアルを操縦してみたいと言う彼の願いを聞き入れ、不躾な質問をしたのかもしれないと省みる。
しばらくして降機したエランは態度を一変させ、戸惑うスレッタを突き放す。“デート”の話を聞いて駆けつけたグエルは、茫然自失する彼女の様子を目にしてエランに詰め寄ろうとするも意に介さないどころか決闘を申し込まれ、新型機ファラクトを駆り、計略によってグエルの機体を機能不全に追い込むと完膚なきまでに破壊、事も無げにスレッタへ連絡を寄越し、次の決闘の対価にエアリアルを賭けると宣言。
心の整理がつかないスレッタを案じるニカに対し、ミオリネはエランのスレッタ評に同意しながらも、呆れ混じりに背中を押す。奮起したスレッタはペイル寮へ押しかけ、寮生に頼み込んで寮全体に通信を繋ぐと、エランに向け決闘の真意を問う。
当日、「エランの事を教えてほしい」と決意したスレッタ。フロント外宙域を決闘の場に指定され、機動力に優れるペイル製のファラクトとは不利であるエアリアルだが、地球寮が購入したジャンクパーツから組み上げられたフライトユニットで追い縋り、GUNDビット同士の壮絶な攻防を繰り広げながらフロント領空を抜け、互いの装備を損傷させる。スタンビットが殺到する中、エアリアルから放散した力場によってファラクトはダウン、ビットステイヴの斉射でブレードアンテナを折られ、機体も中破する。
ファラクトのコクピットをこじ開けたスレッタに引っ張り出されながら、どこか夢うつつのエランはスレッタの要求に応じるように、記憶の底に眠っていた誕生日を祝ってくれる人の存在を穏やかに語り始める。
後日、改めてエランとのデートを取りつけたスレッタは、バースデーソングを口ずさみながら、待ち合わせ場所で彼を待ち続けたが……。
その後、連絡も無しに学園から姿を消してしまったエランを案じるスレッタは、学園生活に身が入らない毎日を過ごしていた。そんな折、ベネリットグループの創設15周年記念を兼ねたインキュベーションパーティーの招待状が届く。ミオリネが発した御三家の言葉に食いつくスレッタは、エランと会えるかもしれないという期待を込めて参加を申し出る。
ニカやマルタンを伴って会場へとやって来たスレッタは、ミオリネから借りたドレスを着て、出席していたシャディクと出くわし、思いがけずプロスペラにミオリネを紹介する機会を得ながら、飲み物を取りに行った先でようやくエラン(オリジナル)と再会。社用で休学していた旨を聞かされて安心したのも束の間、彼に連れられてペイル社のプレゼンテーションに登壇し、ホルダーとして受け答える。
しかしあまりにも無防備な応答は、御三家が「エアリアルはガンダムである」と主張する口実に利用され、ステージは“魔女裁判”へと変貌。エアリアルやシン・セー社を公の場で潰そうとする御三家に、ミオリネが待ったをかけ、ガンダム研究を事業として扱う新会社「株式会社ガンダム(GUND-ARM Inc.)」の設立を宣言、総裁である父・デリングに頭を下げてまで出資を呼びかける。思惑は不明ながらもデリングによる3%の出資で信用を得た新事業は、業績回復のきっかけを欲していた多数の企業からの出資を受けて承認され、スレッタとエアリアルは幾度目かの危機を脱した。
学園に戻ると当然のように社の基盤として地球寮を乗っ取ろうとするミオリネの暴挙に、代わって平謝りするばかりのスレッタ。後付けとはいえ事業計画を詰めるべく、ミオリネは改めてプロスペラに面会を求め、同席したスレッタは、なぜエアリアルの事を秘密にしていたのかを確かめようとする。プロスペラは『ガンダム』とGUNDフォーマットを取り巻く悪評から“娘たち”を守るための措置であったと明かし、『ガンダム』と人々との橋渡し役をスレッタに託す。
地球寮では具体的な事業内容を巡って紛糾。チュアチュリーを始めとして反乱も辞さない寮生、もとい社員たちに折れたミオリネは、目ぼしいメンバーに必要書類の作成や会社ロゴマークのデザインを割り振り、ポジティブなイメージを打ち出すべくスレッタと他数名に2週間でのPV作成を指示。ミオリネは「GUND医療」の理念を知り、「GUNDフォーマットを使用した医療技術の開発」という方針に社員の同意を得て始動、スレッタはエアリアルと共に広報用PVに出演。「やりたいことリスト」の“部活”に思いを馳せ、どこか満足感を覚えるスレッタは、豪腕を振るいながらも歩み寄りの手段を模索するミオリネの姿勢に感謝を伝えるのだった。
しかし、シャディクの根回しによって学園の校則が変更され、会社の設立が不可能になったと知ったミオリネは、彼に対して「校則を元に戻すか、会社をシャディクに譲り渡すか」をかけた〈決闘〉を申し込む。
決闘は6対6の集団戦で行われることになり、地球寮の面々だけでは正規のパイロットが足りず、スレッタはグエルにも助っ人を依頼するが、彼は父から決闘を禁じられている事を理由に辞退する。しかし直後にグエルへ「お父さんは大事…ですよね。分かります。お父さん好き…なんですよね?私もお母さん好きです」と、彼の父であるヴィム・ジェタークとの確執を知らずに、子は親を尊敬し敬愛するものという持論をぶつけてしまう。
行われた決闘では、チュチュを除いた地球寮のメンバーはシャディクの仲間に瞬く間に撃破されてしまうが、スレッタは孤軍奮闘する。しかし、シャディク陣営はこの日のために対GUNDフォーマット兵器「アンチドート」を自身の専用機「ミカエリス」と、部下の機体「ベギルペンデ」に装備しており、これによりエアリアルは大幅に機能低下してしまう。スレッタはエアリアルと「みんな」に対して自分の未熟さを謝罪する。その時、エアリアルはスレッタの声に応えるかのように再起動し、機体各所から青い光を放ちアンチドートを無効化、1対多数の大立ち回りを演じる。
業を煮やしたシャディクは自分の手でエアリアルを仕留めようと前に出るが、これを読んでいたミオリネの策で、チュチュがミカエリスの頭部を狙撃し勝利した。かくして校則変更は取り消され、株式会社ガンダムは今度こそ無事に設立に至った。
会社設立から二か月がたち、スレッタは主力製品となるGUND義肢のテスト、ミオリネから託された植物の世話などをこなしつつもインキュベーションパーティー以来、久々に学園に顔を見せたエラン(強化人士5号)と出会う。彼は4号とは打って変わってスレッタに明るく積極的に接近し、突然デートを申し込む。ドギマギしながらもミオリネという花嫁がいることを理由に断るスレッタに「その関係、ウソなんでしょ」「ミオリネにとって君は、望まない結婚をしないための弾除け。だからきっと許してくれる」と囁き、強引にキスを迫って篭絡しようとする。
雰囲気の変わったエランに恐怖を覚えたスレッタが彼をはねのけて温室に向かうと、そこには出張から戻ってきたミオリネがいた。彼女はスレッタに、出張がちになる自分やこれから多忙になるスレッタの代わりに温室の世話を専門業者に任せた事や、『ガンダム』のテストパイロットが一人しか居ない問題を解決するために、エランをテストパイロットとして雇用したと伝える。
ミオリネはあくまでも会社や自分たちの業務を円滑に進めるため、そしてスレッタの負担を軽減してやるためにこれらを行ったのだが、その報告が非常に事務的で、エランとのデートの件すら許す始末であった。
ミオリネとしてはこれから同僚になる彼らに親しくしてほしいという意味合いであったが、スレッタは先程のエランの言葉の影響もあり「自分はミオリネにとってどうでもいい存在になった」と思い込んでしまい、彼女に贈ろうとしていたペアのキーホルダーを取り落とし呆然とする。
スレッタはこの一件を引きずり、メンテナンスに出していたエアリアルの受領のため株式会社ガンダムの一同での「プラント・クエタ」来訪の際、些細なミスを繰り返し、地球寮に対しても疑心暗鬼に陥るなど、精神的に追い込まれていた。さらにミオリネと顔を合わせることも避けるようになっており、昼食を摂る際に便所飯を決め込むほどに落ち込んでしまう。
ニカに諭されたミオリネはスレッタを探し当てると、追いかけっこと口喧嘩の末、これまで地球に逃げ出したくてたまらなかった自分を変えてくれたことへの感謝と、これからも自分と共に進んでほしいことをスレッタに強く訴え、二人の関係は一見修復されたかのように思われた。ペアのキーホルダーをミオリネに贈り会話を続けていたその直後、シャディクの指示でデリング暗殺を企てる武装勢力がプラント・クエタを襲撃し、閉まっていく非常用シャッターによって二人は離れ離れになってしまう。そしてスレッタは、窓越しにフォルドの夜明けが差し向けた機体、ガンダム・ルブリス・ウルを目撃する。
余談
- キャラクターデザインの段階では犬がイメージされていたようだが、まだ神秘的な雰囲気のあったPVを経て、設定画が公開されるや否やそのタヌキ顔から「水星たぬき」の愛称で呼ばれるようになる。一応タヌキはイヌ科である。
- 名字の「マーキュリー」は水星の意。名前の「スレッタ」は現状意味する単語は見当たらない状況。
- Sulettaをgoogle翻訳にかけると、マルタ語で靴下や靴の中敷きなどを意味するとでる。
- Wiktionaryによると、Sulettaはロマンシュ語で「単独の、ただ一人の」を意味する単語Suletの女性単数形である。
- あまり人名らしからぬ語感から偽名やコードネームであろうという考察も多くされ、上述のエリクトと同一人物であるという考察の論拠にもなっていた。
- 親世代が仇敵同士にあたると思われるミオリネとの関係は、初代ガンダムで「親を殺された子供が偽名で入学して、仇の子と偽りの友情を紡ぐ」様を演じた“キャスバルとガルマ”の関係を彷彿させ、一部では「ミオリネはスレッタに殺されてしまうのでは?」と心配する声もある。
- 『ゆりかごの星』では、スレッタの母親は「決闘でデリングの1人娘の結婚相手を決める」学園のルールを知った上でスレッタを送り出しており、スレッタが決闘の勝者となってミオリネの婚約者になるのを「仇討ち」として望んでいる本心が発覚している。
- 第1話でまさかの公式百合ガンダム路線が示唆されたため良くも悪くも熱狂する視聴者が続出し、pixiv上でも2人のマジ物系な投稿が一気に急増した。『PROLOGUE』等で描写された通り、複雑な設定や時限爆弾めいた背後関係も秘めており、今後進展するかは不明。
- 「暖色系の髪をした王子さまポジションの少女」と「決闘のトロフィー代わりになっているお姫様ポジションの少女」との組み合わせから、本作のシリーズ構成担当がゲーム版脚本や小説に関わっていた『少女革命ウテナ』のオマージュを推察する声も多く聞かれる。→少女革命スレッタ
- 序盤から本人もあずかり知らぬ事由で変事に巻き込まれる事態が多発しているため、出演者がスタッフに翻弄される某テレビ番組になぞらえて「またしても何も知らないスレッタ・マーキュリーさん(17)」とネタにされている。誰が呼んだか水星どうでしょう。かわいい。
- ちなみに演者の市ノ瀬氏は北海道出身(ここ大事)。
- 姓が「マーキュリー」なので伝説のセーラー戦士や伝説のロック歌手に絡めたネタもある。
- とあるインスタント食品と絡められる事もあるが、現状公式の発表はない……。
- 「Figure-rise Standard」から彼女のプラモデルが発売された際には量販店から”ガンプラ”として扱われ、購入制限が設けられている。お前もガンダムだ。
- 「スレッタ」という名前の競走馬が存在する。「人名」に由来するとの事であり、彼女を意識していると思われる。中の人と同じく北海道出身。
- ちなみに脚質は先行。逃げずに「賞金」と「勝ち」を得る姿はまさにスレッタ。
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両親
- エルノラ・サマヤ / ナディム・サマヤ:両親とされるが、時系列や描写から矛盾点がみられる。
- エリクト・サマヤ:当初は視聴者から同一人物だと見られていたが…。
- プロスペラ・マーキュリー:母親(本編)
ネタ・属性
女子主人公 / 水星たぬき / スレッタヌキ / 日曜日のたぬき / 狸
少女革命スレッタ / またしても何も知らないスレッタ・マーキュリー / セーラースレッタマーキュリー
オマージュなど
ALERT
勝手にバラさないでよ!
※以降から第12話以降のネタバレが記されます! ネタバレが嫌なユーザーはブラウザバックを強く推奨します!
もう少し後で見ようと思ったのにあんたのせいで台無し!
責任、取ってよね!
ALERT
新たな『ガンダム』の攻撃から必死で逃げ惑い、エアリアルが格納されている格納庫に辛うじてたどり着くスレッタだったが、そこは襲撃者により占拠されていた。隠れている最中に物音を立ててしまい絶体絶命の危機に陥るが、プロスペラとその部下のゴドイが兵士を射殺し窮地を免れた。眼前で死を目撃したショックで戦意を失った彼女に、プロスペラは「皆を救えるのはあなただけ」と、幼い頃から聞かせてきた「逃げたら1つ、進めば2つ」の言葉と共に激励する。
プロスペラの激励を受けて奮起したスレッタは、改修されたエアリアルの力で自身をつけ狙う『ガンダム』と、合流してきたもう一機の『ガンダム』を退けると、ミオリネがいる場所へ急ぐ。スレッタがたどり着いたちょうどその瞬間に見たものは、重傷を負ったデリングを運ぶミオリネと、二人を射殺しようとしているテロリストの姿だった。スレッタは「やめなさい!」と叫ぶと……
第二期本編(A.S.122)(ネタバレ注意!!)
第13話~第17話
第一期エピローグから2週間後。プラント・クエタでの事件はテロではなく事故として処理され、スレッタたち株式会社ガンダムのメンバーには箝口令が敷かれていた。ミオリネが事件の事情聴取で不在の中、スレッタはホルダーの義務として定められた決闘をこなしつつ、近く行われるオープンキャンパスへの準備を進めていた。
そんなある日、クエタの襲撃犯であるソフィ・プロネとノレア・デュノクが編入生として学園に潜入してくる。ソフィに「お姉ちゃん」と慕われることに気を良くするスレッタだったが、オープンキャンパスの当日にニカを殺害しようとするソフィとノレアを目撃する。ニカを助けるために、スレッタは二人に対して決闘を申し込む。
ソフィが決闘を受諾し、自分が勝った場合はスレッタに本当の姉になってもらうと宣言。その後に行われた乱戦形式の決闘イベント「ランブルリング」にスレッタは出撃するが、姿を見せたルブリス・ウルとルブリス・ソーンは決闘仕様ではなく実戦仕様になっており、召喚したMS型GUNDビット「ガンヴォルヴァ」と共に決闘会場を破壊し尽くしていく。ソフィが普通の子供が欲しがるものを叫びながら襲ってくるのを「人を殺してまで欲しがるのは間違っている」と諭しながらいなすスレッタだが、自分がプラント・クエタでしたことを思い出して一瞬躊躇してしまう。
あわやという瞬間にエアリアルは再びパーメットスコア・シックスを発動し、ルブリス・ウルの制御系を乗っ取る。その影響で、ソフィは膨大なデータストームの逆流により死亡。ノレアはソフィを連れて撤退するが「ガンダムの呪いで死なない貴方は、何者なんです?」と問いかけを残していった。スレッタはその言葉に呆然としつつも、被害を最小限に留められたことに、無意識に涙を流しながら安堵するのだった。
一方、プロスペラことエルノラの元を訪れていたベルメリアは、エアリアルのシステムにエリクト・サマヤが組み入れられている事実を知らされる。
それと同時に「エリーを幸せにする」為に『クワイエット・ゼロ』なる計画を進めている本心も。
これにより、スレッタとエリクトが別人である事実が確定するが、であるならばスレッタはエリクトの妹なのだろうか……それとも……?
ルブリス・ウルとソーンの事件後、プラント・クエタのテロ事件に関する事情聴取を終えたミオリネが学園に戻って来るが、スレッタはクエタの一件以降、ミオリネとギクシャクしてしまっていた。ミオリネはスレッタを温室に連れていき、命を救ってくれた彼女を「人殺し」と思わず呼んでしまったことに対し「ごめんって謝りたかった」「ありがとうって言うべきだった」と言うが、スレッタは笑顔で「あの時お母さんが言う通りに進んでよかった」と殺人を肯定するばかりか、ミオリネの「母が言うなら水星に学校を作る夢も、ガンダムで人を救う夢も捨てられるのか」という問いかけにも、即答は出来ずに迷いを見せながらもさも「母の言うことは当然正しいので自分の夢も捨てろと言われれば捨てられる」といった態度で笑顔で肯定する。
プロスペラがスレッタを操り人形にしていると感じたミオリネは激怒し、プロスペラを糾弾するために出て行くが、スレッタはその背を追いかけることも無く立ち尽くすしかなかった……。
後日、ミオリネの誕生日が近づく中、スレッタは先日の発言について自分でもおかしいと気づいており、ミオリネに謝る。そこで彼女から「私が言うなら、エアリアルを捨てられるか」という問い掛けをされたスレッタは、エアリアルは家族なので捨てられないと答える。
その後、温室で植物の世話をしていたスレッタの元にエランが現れ、これまでの好意的な態度をかなぐり捨て、エアリアルをよこせとスタンガンを片手に強要する。そこに地球から帰還したグエルが現れてエランを取り押さえ、難を逃れた。
グエルは父との絆であるジェターク社を救うために帰ってきたことと、スレッタへの好意を彼女自身に対してあらためて伝える。スレッタもその気持ちを嬉しく思いながらも、大切な人がいることを理由に辞退するが、お互いに友人として歩み寄ることができた。
そのやり取りを物陰で聞いていたミオリネは、スレッタにベネリットグループの策謀やガンダムと関係ない世界で幸せになってほしいという思いから、グエルに「スレッタと決闘をして勝ち、エアリアルを取り上げて欲しい。見返りに株式会社ガンダムがジェターク社の後ろ盾になる」と取引を持ちかけ、同時にプロスペラにも根回しし、エアリアルを緊急停止させるソフトを手に入れる。
約束通り決闘は執り行われ、スレッタは「地球寮に対して行われている嫌がらせを止めるために協力してほしい」、グエルはミオリネとの打合せ通りに「エアリアルをもらい受ける」ことを勝った際の条件として提示する。グエルはダリルバルデに乗り込み、父殺しのトラウマとも戦いながら互角の勝負を繰り広げるが、エアリアルのパーメットスコア上昇によって機能不全に陥り、勝負はスレッタの勝利で決着すると思われた…が、ミオリネがエアリアルを緊急停止させ、そのスキにダリルバルデがエアリアルのアンテナを斬り飛ばした。
ついにスレッタは敗北してしまったのである。
決闘場に現れたミオリネにスレッタは必死で謝罪するが、ミオリネはあえて冷たく振る舞い、スレッタを突き放す。プレゼントとして渡したクールさんのキーホルダーを返却され、ホルダーの称号を取り上げられたスレッタは泣き叫んでしまう。
「あ…ああああああああぁぁぁ!!!!」
「貴方はいい弾除けだったわ。今日までご苦労さま。さようなら、水星のお上りさん。」
少女は、大切な花嫁、自分に惚れてくれた男、共に戦ってくれた家族、ホルダーという称号、
そして『水星の魔女』という肩書きを、その日のうちに全て失った。
第18話~第21話
その後、何事もなかったかのように着々とやりたいことリスト(「友達と誕生日を一緒に祝う」項目だけ未達成なのがわかる)を埋めながら学園生活を続けていたが、前回の決闘での衝撃を誤魔化しながら空元気で日々を送っており、その姿から地球寮の皆に心配されることが多かった。
のちにホルダーでは無くなったものの、ミオリネの温室の世話をしていた所にやってきたチュチュからミオリネに対しての気持ちを聞かれるが、「(決闘に勝利する)約束を破った自分が悪いから」と言って自分を責めている様子を見せる。
その後、地球寮の面々に背中を押されミオリネに会いに行くスレッタだったが、プロスペラの誘導により遭遇したエアリアルによってコックピットに招き寄せられ、「スレッタ、乗って」という言葉を聞いてそのまま搭乗。宇宙に飛び立つ最中、エアリアルに母への疑問やこれまで信じてきたことに対しての疑問を相談したが……突如、データストームの白い空間に引き寄せられる。
そこにはエアリアルの本当の姿であるエリクト・サマヤ、そして、分解されていたガンダム・ルブリスがいる空間だった。
さらにそこでは、ガンダム・ルブリスの肩に乗るエアリアルもとい「エリクト」と、その周りに「12人のエリクト」がいた。そして、彼女らによって、己の本当の正体を語られる……
「君(たち)は、僕の遺伝子から作られた――"リプリチャイルド"ってことだよ。」
リプリチャイルドとは、(肉体的には死亡した)エリクト・サマヤの細胞で作られた存在であり、したがってスレッタの正体はエアリアルを起動するための鍵…つまり、エリクト・サマヤのクローンである。
エアリアルもといエリクト達からはスコア8に達したことで「スレッタ無しでも機体は動ける」ことを語られる。スレッタは自分もついて行こうとしたが、エアリアルによってデータストームを逆流させられた事で記憶が蘇る。
最終的にエアリアルからは、自身にも母親にも縋ってはいけないと言われ、強制的にコックピットから追い出されてしまった。
…宇宙空間に放り出された彼女の元には、母のプロスペラが来ていた。唐突に告げられた自身の出生と「役割」についての衝撃的な内容をすんなりと受け入れられるわけがなく否定しようとするが、プロスペラからは
「エリクトの言う通りよ――学園に戻りなさい、スレッタ。あそこなら、あなたの胸を埋めてくれる。」
と言われ、ランプ(おそらく救難信号用ビーコン)を渡されると同時に宇宙空間へと再び置き去られてしまう。
多くを失うだけに留まらず、大切だと思い続けてきた「家族」にまで置いて行かれた理由も、真相も、現実も全く理解できないまま、スレッタはただ真っ暗な世界で一人泣くことしかできないのであった。
後日、救出されたのか学園に戻っていたスレッタは、前述の経緯によるショックで意気消沈し、引きこもり状態に陥っていた。しかし、空腹に勝てずに部屋から出てきたところをチュチュに捕まる。そこで地球寮の面々と朝食を共にしたのを切っ掛けに、ようやく立ち直る気概を取り戻しはじめる。
そこにセセリアに半ば背中を押されたマルタンが現れ、ニカがテロ組織とつながっており、彼女をフロント管理局に通告したことを打ち明ける。スレッタを含む地球寮の皆はショックを受けながらも「自分ならニカともっと話し合っていた」「自分ならマルタンと同じことをしていた」と、それぞれの意見を出し合っていた。
その後、アーシアンのデモ組織とベネリットグループの軍隊の武力衝突が発生したこと、その原因を作ったのがデモ鎮圧のため交渉に向かっていたミオリネであることが、ニュース番組で報道される。地球寮の面々が動揺する中、その映像に映るエアリアルを見たスレッタは、この騒動がミオリネではなく、裏で糸を引くプロスペラによるものだと確信。プロスペラとエアリアル(エリクト)はこの計画に自分を巻き込まないために、あえて見捨てるような「一番じゃないやり方」を選んだのだと遂に悟る。
彼女は「わたし、何も分かっていなかった」と自身を省み、強い瞳で前を見る決意をする。
とは言え、一介の学生である以上何かできるわけもなく、とりあえずは今の自分にできることを精一杯やろうと授業に取り組む…が、株式会社ガンダムにクレームが殺到していることや、事件のことが気になり授業内容が頭に入らない。そんなとき、ペトラが「ランブルリングでラウダを助けてくれたお礼」として、授業内容の写しを見せてくれた。そこへ、シャディクによって意図的に監禁を解かれたノレアがルブリス・ソーンでガンヴォルヴァを伴い、学園を無差別攻撃するテロが勃発。戦闘の巻き添えで多くの学生が犠牲になり、スレッタはペトラと共に人命救助にあたるが、二人がいた建物も破壊される。スレッタは辛うじてかすり傷で済んだが、目の前でペトラは瓦礫の下敷きになってしまい(恐らくスレッタに)救助されるが瀕死の重傷を負い、病院に収容された。
その夜から解放されたニカを含めた地球寮のメンバーと合流したスレッタは、自らの負傷も顧みず人命救助や食料の配給などの支援活動を始める。自発的に懸命に働くその姿には、もはや転入当初のオドオドした様子はなく、セセリアも「水星ちゃん、あんた変わった?」と彼女の成長に気付いていた。
そんな中、宇宙議会連合の査察官であるグストン・パーチェがベルメリアと共に地球寮を訪れ、スレッタにプロスペラの説得を要請する。スレッタは自分の身の上を皆に明かし、プロスペラは説得を聞き入れないだろうと答える。それを聞いたグストンは、もはや説得は叶わないと悟り、21年前にヴァナディース機関が開発し、ヴァナディース事変の後に無傷で接収されていた「化け物の名を持つガンダム」こと「キャリバーン」に乗り、武力でプロスペラを止めることを重ねて要請する。だが、キャリバーンはパイロットへのデータストーム逆流を止めるフィルターが一切かけられていない、人体に掛かる負担を無視した危険極まりない機体であった。ベルメリアが反対する中、ベネリットグループの強制査察のため宇宙に上がってきた宇宙議会連合の艦隊が、クワイエット・ゼロの力で全滅させられたとの報告がもたらされる。
これを聞いたスレッタは強い決意とともにキャリバーンへの搭乗を承諾し、地球寮のメンバー、さらには話を立ち聞きしていた強化人士5号、グエルの助けになりたいフェルシーも同行することになった。出発前に5号はスレッタに4号の死や、強化人士の秘密を語る。スレッタはそれを聞いた上で、以前のような他人に流されての決断ではなく、自分の意志でプロスペラとエリクトを止めるという願いを語った。
ようやくスレッタは自分の足で歩き始めたのだった。
第22話~第23話
学園を出発したスレッタたちは、作戦前にミオリネに会いに行くが、グエルが「アイツは俺の婚約者だ。今さら会わせると思うか?」と行く手を阻み、会いたければ決闘で勝てと言い放つ。二人は生身でフェンシングを行い、スレッタが勝利する。グエルはスレッタにホルダーの座と婚約者の権利を譲り、ミオリネとの面会を許した。ミオリネは地球での一件で強いショックを受け、部屋に閉じこもってふさぎ込み、強い罪悪感からスレッタを顔を合わせることも拒否する。
二人は部屋のドア越しに会話をし、ミオリネは「スレッタとエアリアルを引き離そうとしたのは間違いだった」と自分の過ちを吐露する。スレッタもプラント・クエタやソフィとの戦いで殺人を犯したことについて話し、「たとえ間違っていても、前に進む」という決意を語る。ミオリネはスレッタの言葉に動かされて立ち直り、クワイエット・ゼロを止めるために同行することになった。
そしてついに、スレッタはキャリバーンに乗り込み、クワイエット・ゼロの発生させるデータストームの中でも行動できる「パーメットスコア5」のクリアを目的に起動試験が行われる。
エリクトの遺伝子を持つ事からパーメット流入に対する耐性がある可能性に賭けた試験であり、実際に起動させることはできたが、これまでエリクトが無効にしてくれていたデータストームの流入による猛烈な発作と激痛が容赦なく襲って来る。スレッタはこれに耐え抜いて出撃し、クワイエット・ゼロの支配領域へ飛び込む。ガンドノードを撃破しつつ進んだその先にはエアリアルが待っていた。スレッタは強い決意で「止めに来たんだよ! 二人を!!」と答えるが、エリクトは攻撃の手を止めない。
「エリクトの居場所を作るためだけに多くのフロントを巻き込むのは間違っている」「私はエリクトもお母さんも好き。お母さんを悪い魔法使いにさせたくない」と必死に訴え、スレッタはミオリネたちがクワイエット・ゼロの中枢に侵入する時間を稼ぐ。そのかいあって、ミオリネが緊急停止コードの入力に成功し、クワイエット・ゼロは機能を停止する。だが、宇宙議会連合はこれ幸いと、巨大化して権力を拡大しすぎたベネリットグループをこの機に乗じて潰すため、惑星間レーザー送電システムの照準をクワイエット・ゼロに合わせる。このレーザーは巨大レーザー砲としても機能するもので、議会連合はこれを使ってクワイエット・ゼロを破壊しようとしているのだった。
エリクトはそれを察知すると、エアリアルとガンドノードによる全力のデータストームを展開してレーザーを受け止める。眩い閃光の中、スレッタは自分に微笑みかけるエリクトの幻影を確かに見た。少しの時間の後、閃光が止んだ後にスレッタの目に飛び込んできたのは、大破して宇宙空間に漂うエアリアルの姿だった…。
第24話(最終話)
大破し機能停止したエアリアルを抱えて必死にエリクトの名を呼ぶスレッタだったが、これまでの負荷がたたり気絶してしまう。キャリバーンとエアリアルは地球寮メンバーの手で回収されたが、目覚めたスレッタの体はデータストームの痣が刻まれ、命を落としかねない状態だった。そんな中で、クワイエット・ゼロ内部に侵入していたミオリネたちがプロスペラに人質にされ、エアリアルを連れて来るよう要求が届く。エリクトを救いたいスレッタは無理を押して出撃しようとするが、手に力が入らなくなってきており、持っていたホッツさんのキーホルダーを取り落としてしまう。そこに、グエルと和解したラウダがやってきて
「お前のことを許したわけじゃない。けど、戻ってこなかったらもっと許さない」
と、ラウダなりの励ましの声をかけ、キーホルダーを拾ってスレッタに渡す。気合いを入れ直したスレッタは、キャリバーンにエアリアルを抱えさせてクワイエット・ゼロ中枢に向かう。
プロスペラはエアリアルの状態を見て、クワイエット・ゼロに接続して再起動をかければエリクトは助かることと、自身はデータストームに汚染された影響でそう遠くない時期に全身が麻痺して動けなくなることを告げ、計画の再開をスレッタに求める。だが、スレッタはこれを拒否し、クワイエット・ゼロを使わずキャリバーンのスコアを強引に上げることでエリクトを救おうとする。猛烈な発作で意識を失う寸前、モニターに強化人士4号の姿が映った。クワイエット・ゼロには強化人士のオルガノイドアーカイブ(生体データのデータベース)があることから、彼の魂は死してから情報生命体としてデータストームに還っていたのだった。
スレッタは4号との決闘に勝ってしまったがために、彼の死の原因を作ってしまったことを謝罪する。しかし4号にはそのことに対する後悔はなく、スレッタとの待ち合わせの約束を守れなかったことを謝罪する。お互いの想いを打ち明けあった二人は、力を合わせてスコアを上昇させ、エアリアルの再起動に成功する。
「スレッタはお馬鹿だね。自分で選べるのに、居場所があるのに。君はそれでも、いいの?」
「私、欲張りだから。お母さんともみんなとも、やりたいこと、いっぱいあるから!」
エリクトはスレッタの決意を聞き届けると優しく頷き、エアリアルのビットステイヴをキャリバーンに合体させる。その瞬間、パーメットスコアはこれまで観測されていた8をゆうに超えた領域に達し、遠く離れた月面にまでオーバーライド範囲が拡張される。スレッタは領域内で何が起こっているのかを瞬時に察知する能力を得て、ミオリネがベネリットグループを解散させたことを告知する通信を地球圏全域に届けたほか、エアリアル・ファラクト・シュバルゼッテの力をも借りて、第2射を発射しようとしていたレーザー送信システムをオーバーライドして機能停止させる。さらに、データストームに還っていた死者と生者の対話までも実現させ、強化人士5号はソフィとノレアを見送ることができた。プロスペラは夫・ナディムや恩師のカルド博士、フォールクヴァングの仲間たち、そしてエリクトとスレッタに諭されたことで遂に復讐劇に幕を下ろす。クワイエット・ゼロと全てのガンダムはパーメット粒子に分解されて消えていき、こうしてガンダムによって引き起こされた事件は終焉を迎えた。
キャリバーンの消滅によって宇宙空間に放り出されたスレッタは意識を失い漂流していたが、ホッツさんのキーホルダーが救難信号を送り、これを受けてやってきたミオリネとチュチュたちによって救出される。スレッタはキャリバーンが消滅する寸前に、最後の力でエリクトの生体データをキーホルダーに移動させていたのだった。
それから3年後。スレッタは母とともに地球に降り、キャリバーンの搭乗で負った後遺症のリハビリに取り組みながら、水星だけでなく地球にも学校を作る夢を叶えようとしていた。
Season2以降の余談・考察
- 2023年4月30日の魔女ラジ第29回では事実上のグエル回である第15話に登場していない点をネタにしており、同話に出演したミオリネ役のLynn氏やグエル役の阿座上氏に内容を教えてもらったという。
- もっとも、スレッタの出自を鑑みれば「父」に相当する人物が不在のため同話のテーマからは省かれるのも無理はないが……。
- エアリアルの正体についても触れており、「ガンダム」と会話する不思議ちゃんと思われていたスレッタが(第6話以降は)自発的にコミュニケーションをとる人物であったとコメント。
- 2023年5月7日の第30回では、長らくエアリアルとそれに搭載されたAIではあったが家族である当機と引き離されてしまった第17話の結末に触れるとともに、スレッタ自身も不器用な人間であるとフォローされた。
- ホルダーとして誕生日を迎えられなかった苦い結末と、それを取り上げられた悲鳴についてリテイクがあったともコメントされた。
- ホルダーの座を失い、(表向きは)離縁を突き付けられてもなお温室の管理を行う姿は2023年5月21日の第32回で同情されていた。
- エアリアルとの別離とそれに伴うひきこもりは長らく共に過ごしてきた以上、無理もないと2023年5月28日の第33回でフォローされている。
- 第19話放映後、ルームウェア姿の設定画がようやく公開された。なお、公開回では着用していない。
- 2023年5月28日の第33回ではスレッタのラストの発言について、マルタンの置かれていた状況から連想して自身に当てはめたものではないかと推察されていた。
- 18話でエリクトのリプリチャイルド(=クローン)であることが判明したが、スレッタの正体についてはそれまでにもクローン説以外にも、「エラン・ケレスと同様にエリクトそっくりに成形された強化人士説」、「GUND技術により作られたアンドロイド説」などの説があった。
- また、いずれの説も最終的に「エリクトが蘇るための依り代とされ、スレッタの人格は消されるのでは」とも不安視されていた(2期EDの大人びたスレッタの姿はエリクトではないか、といった予想もあった)。
- そして18話にて正体が判明するが、同話ラストでプロスペラもまた内心ではスレッタが自由になることを望んでいたことが判明したため、この説も否定されている。
- 役割としては生体端末でしかないが、間違いなく親子としての情はあった為、余計にスレッタの号泣する姿に胸を痛める視聴者も多かった模様。
- また、いずれの説も最終的に「エリクトが蘇るための依り代とされ、スレッタの人格は消されるのでは」とも不安視されていた(2期EDの大人びたスレッタの姿はエリクトではないか、といった予想もあった)。
- 第19話では、お腹を空かせてひとり食料庫にある冷蔵庫の中を漁っていた際、チュチュに見つかり慌てたリアクションが「食べ物を求めて人里に降りたら人間に見つかった時のタヌキだ(むしろアライグマではという声もある)」としてネタにされている。
※因みに本編では盗み食いは未遂で終わっている。
- データストーム耐性について
第18話まではどれだけエアリアルの力を駆使してもデータストームの負荷を受ける様子が全くなかったことから、エアリアル(=エリクト)が負荷を無効化していたからではないかと考察されていたが、同話でエリクトによってデータストームを逆流させられた際、他のガンダムパイロット同様に赤く光る痣状の模様が現れ苦痛を訴えるという考察を裏付ける描写があり、その後第21話でベルメリアとの会話から確定した。
しかし一方でエリクトたちの発光は白色、すなわちパーメットスコアがスレッタよりも上であることが示唆されており、スレッタ個人ではエリクトほどのデータストームの耐性がないようにも描かれており、エアリアル以外のガンダムに乗って戦うことがあれば、強化人士同様に彼女の生命に危険が及ぶ可能性が浮上しだした。
その後彼女が搭乗することになったガンダム・キャリバーンは上記の通り搭乗者の命が危険に晒される仕様のため、視聴者からは死亡フラグが立っていると心配されるようになる。
エリクトと同じ体細胞を持つスレッタは常人よりデータストームの耐性があるということで、キャリバーンのデータストームにある程度は耐えることができたが、体への負担は完全に無効にするには程遠く、戦闘時には苦痛や過呼吸などに耐えながら戦わざるを得なかった上に、第24話では負荷がたたって気絶してしまい、キャリバーンから降りても痣が消えないほどにデータストームのダメージが体に蓄積したかなり危険な状態だった。
3年が経過したエピローグでも上記の通り後遺症が残っており、少なくとも松葉杖が必要なくらいには歩行に支障がある上、(場面が夕方ということもあり分かりにくいが)頬に薄っすらと痣が残っている。ただ、本人が「体も少しづつ動くようになってきた」と言っていることから、これでもかなり回復してきた方であるようで、壮絶なリハビリ経験がうかがえる。
なお首の後ろ側に装着している器具に関しては、同様の機器をミオリネが使用していることからエリクトと会話するためのデバイスだとする説が有力だが、「GUND技術を利用した脊髄機能の補助装置ではないか?」との考察もある。
- 殺害人数について
実はインパクトこそ強烈なものの殺害人数は1人しかおらず、これは戦争とは無縁なビルドシリーズを除くテレビシリーズの歴代主人公ではダントツの最少記録である(ソフィはスレッタが直接手にかけたわけではないので、ここでは含めない)。
当初は正当防衛であることに加え「母に言われたから」と平気だったものの、精神的な成長を遂げたスレッタはこの件も後悔しており、最終的には自分達を葬ろうとする者達さえ誰一人傷つけず争乱を終結させた。
※不殺主義に目覚めた者達もそこに至るまで数多の命を奪っており、スポーツマン的な要素が強いドモン・カッシュですら断腸の思いで魂を解放したケースややむを得ない経緯で敵になった師匠、倒すべき邪悪とはいえ5人は手にかけている。
Season2以降の関連タグ