概要
ワーナーブラザーズが配給し、レジェンダリー・エンターテインメントが日本の東宝と連帯して制作する怪獣映画シリーズ。
怪獣王ゴジラをはじめとしてモスラやラドン、キングギドラといった、東宝が擁する大人気怪獣と、彼らの元祖とも言うべきキングコング、そして新たなオリジナル怪獣達が共演する、怪獣映画のシネマティックユニバースである。
シンボルマークは、劇中に登場する組織MONARCHのシンボル「⋈」に「M」を強調したものである。
沿革
『ゴジラ対ヘドラ』の監督で知られる坂野義光が立ち上げた企画に端を発する。
氏は、当初『ゴジラ対ヘドラ』を3D作品で作ろうとしたが頓挫→ガメラの3D作品を作ろうとしたがこれも頓挫→当時拡大の兆しを見せていたIMAX専用短編映画として再度ゴジラの新作企画を考案、これがレジェンダリーに持ち込まれたのが、モンスターバース誕生のきっかけであるという(ちなみにこの幻のガメラ映画の敵怪獣として、東宝のガイラとは別の「ガイラ」という怪獣が企画されていたとか)。
坂野の企画は長編映画に形を変えて始動し、ゴジラ2度目のハリウッドリメイクが実現することとなった。
2014年5月16日(日本では7月25日)に『GODZILLA-ゴジラ-』として日の目を見たこの作品は、世界累計で興収5億ドルを記録する大ヒットとなった。
これを受けてレジェンダリーはすぐに続編制作を決定。東宝からゴジラに続いてラドン、モスラ、キングギドラの使用権を会得して続編にこの3体を登場させると発表した。
さらに、『GODZILLA-ゴジラ-』に登場した研究機関「MONARCH」を中心にしたフランチャイズ映画シリーズを作り上げると宣言。MCUやDCEUの怪獣版ともいうべき「モンスターバース」が晴れて正式始動することとなった。
この時、併せて「古いものと新しいもの、異なる巨大超生物種族の生態系の中でゴジラとレジェンダリーのコングを結集する」という構想について言及していたレジェンダリーだが、2015年9月10日、当時制作予定だったキングコングの新作映画に関して、共同製作先をユニバーサル・ピクチャーズからワーナーブラザーズに変更。ゴジラシリーズとコングシリーズをモンスターバースの中で正式にクロスオーバーさせ、ゴジラとコングの対決を描く『GODZILLA VS KONG』を2020年5月29日の公開を目指して計画中であることを伝えた。
そして2017年3月10日(日本では3月25日)、コング映画の新作にしてモンスターバース第2作『キングコング:髑髏島の巨神』が公開。上記の『GODZILLA-ゴジラ-』の続編に繋がると思しき場面を入れ、両作の関連性を明確なものとした。
2019年5月31日には、第3作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が公開。先の発表通りにラドン、モスラ、キングギドラも登場した豪華な作りで話題となった。しかし、前2作よりも膨れ上がった大型予算に対して興行収入は4億ドル未満と、残念ながら想定を下回る結果となっている。
そして2021年3月24日(米国では3月31日、日本では7月2日)、第3作となる『ゴジラ vs コング』が公開。1962年の『キングコング対ゴジラ』以来実に59年ぶりに、日米を代表する二大怪獣の決戦が描かれた。
コロナ禍により映画館の閉鎖や人数制限が行われている状況を受け、ワーナーのサブスクリプションサービスであるHBO MAXでの配信も同時に始まるという特異な公開形態がとられたが、そんな中でも世界累計4億6千万ドルの大ヒットを記録。当初、今作をもって完結予定だったモンスターバースだが、この予想外のヒットを受けて、シリーズの継続とさらなる展開が決定した。
2024年3月29日(日本では4月26日)に、『ゴジラxコング:新たなる帝国』が公開。日本で制作された『ゴジラ-1.0』の興行的な成功およびアカデミー賞受賞によりゴジラシリーズに大きな注目が集まっていたこともあり、これまでで最も少ない制作予算で作られながらも、前作を上回る世界的な大ヒットとなることがほぼ確定的と見られており、モンスターバースがハリウッド映画の中で確固たる地位を確立したことは最早疑いようがなくなったと言えるだろう。
スピンオフ
髑髏島に流れ着いた人々のサバイバルを描くアニメシリーズ。2023年6月22日Netflixで全世界独占配信。
第1作で壊滅したサンフランシスコを舞台に、ある家族がモナークの存在へと迫っていく実写ドラマシリーズ。2023年11月17日AppleTVplusで全世界独占配信。
『スタートレックエンタープライズ』のクリス・ブラックが共同製作と総指揮、『ホークアイ』のマット・フラクションが共同製作を務める。
恒例の日本人俳優として、渡部蓮(渡部篤郎とRIKACOの次男)や山本真理等、多数の日本人俳優がキャスティングされている。
上記の『ゴジラxコング』の大ヒットを受け、第2弾の制作・配信も決定。
備考
これらの配信作品は上記の通り媒体がワーナーのHBO MAXではないが、そもそも配給がワーナーからソニー・ピクチャーズに変わった模様。
ちなみに1998年版、いわゆる「エメゴジ」を制作したトライスターピクチャーズは現在ソニーの子会社であることから、その主役とよく似た怪獣のモンスターバースへの合流を予想する声も一部でみられる。
なお、当初は東宝とレジェンダリーとの契約は『GvK』までで、以降の両者のパートナーシップが継続するかどうかは未定とされていたが、上記のAppleTVのMVドラマにおいては東宝も制作に関わっていることが伝えられていた。その後、『ゴジラXコング』の制作決定およびヒットを受け、シリーズの更なる継続が決定。両者のパートナーシップは今後も当面の間は維持されると考えられる。
さらに、『GODZILLA-ゴジラ-』の公開と前後して日本の東宝もモンスターバースとは別に自社の国産ゴジラシリーズの再展開を決定。
それから日本でも2016年に制作公開された『シン・ゴジラ』を皮切りに、このモンスターバースと並行して映画およびアニメといった様々な媒体によるゴジラ関連作品を定期的に制作、発信するようになっている。
作品一覧
作中年表
46億年前 | 地球が誕生する。モスラ誕生。 |
2億7000万年前 | 古生代ペルム紀。現在よりも強力だった地球の放射線を活動源とする超巨大な生命体が地上を支配していたが、環境の変化(P-T境界事変)に伴う放射線レベルの低下により地底へ移動。 |
1万2千年以上前 | ゴジラ誕生。 |
紀元前11世紀 | フェニキア人日本に。ゴジラ族の怪獣「ダゴン」がムートープライムと交戦。卵を産み付けられてしまう。 |
1944年 | 太平洋戦争(第二次世界大戦)の真っ只中、米軍パイロットのハンク・マーロウ、日本軍パイロットのグンペイ・イカリ、南太平洋・髑髏島に墜落。多数の巨大生物と接触する。 |
1945年 | 日本・広島市に原爆投下。この放射能の影響により未確認巨大陸生生命体シノムラ、そしてゴジラが覚醒。ゴジラによってシノムラは撃退される。 |
1946年 | トルーマン大統領の指示により未確認生物の調査を行う特務研究機関MONARCHが設立。シノムラの断片へ放射線照射実験を行った結果、復活させてしまう。 |
1954年 | 米原子力潜水艦ノーチラス号、ゴジラと初の接触。ビキニ環礁にて水爆実験を名目にゴジラおよびシノムラへ核攻撃を実行。シノムラの殲滅には成功したものの、ゴジラの殲滅は失敗に終わる。以後も水爆実験を名目にゴジラへの攻撃が何度か繰り返されるも全て失敗に終わり、ゴジラの消息も途絶えてしまう。 |
1973年 | ベトナム戦争の終結に伴い、MONARCH調査遠征隊が髑髏島へ出発。コングほか多数の巨大生物と接触し、約半数が殺害されて隊は壊滅状態に陥るも、島で生存していたマーロウと共に生き残ったメンバーが脱出に成功、調査は一定の成果を収める。 |
1982年 | 南極のMONARCH第31前哨基地が焼失。その後、第32前哨基地が設置される。 |
1999年 | フィリピン諸島ユニバーサル・ウェスタン鉱山でゴジラ種の骨格化石(上記の「ダゴン」)、および寄生していたメスのMUTOの繭が発見され、MONARCHによってネバダ州ユッカマウンテン放射性廃棄物処分場へ移送される。同時期にオスのMUTOが日本・雀路羅市原発を襲撃し、繭化。MONARCHは事態を隠蔽し、繭の周辺に研究施設を建設して隔離する。 |
2014年 | 雀路羅市にてオスのMUTOが孵化、ロシア・アクラ級原子力潜水艦を襲撃し、ハワイ・ホノルルにてゴジラと対決。またユッカマウンテン放射性廃棄物処分場よりメスのMUTOも脱走、ラスベガスなどを破壊し、核弾頭を強奪、サンフランシスコにてオスのMUTOと接触して産卵。その後、ゴジラとの激戦によってMUTO2体は排除されるも、サンフランシスコは壊滅状態に陥り、多数の死傷者を出す。【サンフランシスコの惨劇】 |
2019年 | 中国・雲南省MONARCH第61前哨基地にてオルカ起動実験。【神々の目覚め】 |
2021年 | 髑髏島にカマソッソが襲来。生態系とイーウィス族が大打撃を受ける(髑髏島のイーウィス族は1人を除いて全滅)。 |
2024年 | MONARCHによるコングの地下世界への移送計画が浮上。同時期に、ゴジラが突如人類文明に牙を剥くようになる。 |
2029年 | MONARCHが地下世界から謎の信号を受信。真相を確かめるべくアンドリューズの指揮のもと、地下世界への調査が行われる。 |
余談
『GODZILLA』に出演したアーロン・テイラー=ジョンソンとエリザベス・オルセン、『髑髏島の巨神』に出演したトム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ブリー・ラーソン、ジョン・C・ライリー、『キング・オブ・モンスターズ』に出演したヴェラ・ファーミガ、『ゴジラVSコング』と『ゴジラXコング』に出演したレベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリーは同時期に展開されていたMCUにおいてもメインキャストとして出演していたことから、中の人繋がりでネタにされることがある。(MCUではないが『ゴジラXコング』のキャストの一人ダン・スティーヴンスもMARVEL原作のTVドラマで主人公を演じている。)
ちなみに、のちにアーロン・テイラー=ジョンソンとブライアン・タイリー・ヘンリーは、2022年公開の日本を舞台にした映画『ブレット・トレイン』にて相棒同士の役で共演している。
『KOM』に登場したラドン・モスラ・キングギドラはエメリッヒ版ゴジラの制作以前、つまりヤン・デ・ボンが起用されていた時期に東宝から使用のオファーがあったとされるメンバーである。詳細はこちらを参照。
一時期、同じくレジェンダリー・ピクチャーズが制作している『パシフィック・リム』シリーズとのクロスオーバーの構想も持ち上がっていたとされていたが、現時点において『パシフィック・リム』側のスタッフは「モンスターバースとの合流の計画は無い」と否定している。『パシフィック・リム』の配給権が、ユニバーサル映画に譲渡されていることも関係していると思われる。
ワーナーは2018年に『ランペイジ巨獣大乱闘』という怪獣映画を公開しているが、こちらとも現在のところ関連性はない(そもそもは同名のアーケードゲームが原作)。
シリアスな第1作から、作品を経る毎に次第にエンタメ路線全開の怪獣プロレスにシフトしていっていることから、日本のファンからは「昭和ゴジラのハリウッド版」「金のかかったチャンピオンまつり」等と揶揄されることもある。
実際、『ゴジラVSコング』以降の作品で監督を務めているアダム・ウィンガード氏は『ゴジラxコング』の公開に際して、「昭和後期のゴジラシリーズの多種多様な展開が好み」「昭和後期の展開を本作の中にも落とし込んだ」と述べており、少なくともウィンガード監督の作品は昭和ゴジラ(特にチャンピオンまつり時代)から多大な影響を受けているとみて間違いなさそうである。
ついでにシリーズごとの制作予算も最高額だったのは2作目までで、それ以降は徐々に製作費を削減されているという1970年代の国産シリーズと同じような状態になっているとのこと。
とはいえ、一つの作品にかける制作費が嵩み続け、最悪の場合回収が見込めない程の赤字になることも常態化していた昨今のハリウッド映画の現状を鑑みれば、むしろ健全な方向に進んでいると考えることもできる。加えて抑えられているとは言ってもあくまで一般的なハリウッド映画の中では低い部類に入るというだけであり、(物価や相場の変動もあり一概に比較はできないものの)昭和のゴジラシリーズと比べて破格の制作予算が掛けられていることに変わりはない。
なお、海外ではマルティメディア的に展開しているシリーズであるため、映画などの映像作品以外の媒体での展開が乏しい日本では各種設定を深掘りするのがなかなかに困難なシリーズであるといわれることも。
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遊星からの物体X:(『KOTM』に登場する南極の第32前哨基地(Outpost32)は何らかの事故で第31前哨基地(Outpost31)が焼失した後に再建されたという裏設定がある)