曖昧さ回避
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)が岩手県で運営する鉄道路線。
- 近畿日本鉄道(近鉄)が三重県で運営する鉄道路線 ⇒ 近鉄山田線
本記事では1について記載する。
路線データ
路線名 | 山田線 |
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ラインカラー | 茶 |
路線区間 | 盛岡〜宮古 |
路線距離 | 102.1km |
軌間 | 1,067mm |
駅数 | 15駅 |
最高速度 | 85km/h |
非電化区間 | 全線 |
単線区間 | 全線 |
閉塞方式 | 特殊自動閉塞式(軌道回路検知式) |
保安装置 | ATS-Sn |
運転指令所 | 盛岡総合指令室(CTC・PRC) |
第一種鉄道事業者 | 東日本旅客鉄道(JR東日本) |
概要
東日本旅客鉄道(JR東日本)が第一種鉄道事業者として免許を保有する岩手県内の鉄道路線で、地方交通線。
元は盛岡駅(盛岡市)と釜石駅(釜石市)を宮古駅(宮古市)経由で結ぶ157.5kmの路線だったが、2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災により被災。特に被害の大きかった宮古駅〜釜石駅間55.4kmは長期間の運休を余儀なくされ、当初は鉄道路線を廃止しBRTによる復旧も検討されていたが、最終的に2019年(平成31年)3月13日に三陸鉄道に移管され同社のリアス線として復旧した。
その為現在では盛岡駅〜宮古駅間102.1kmの路線となり、路線名の由来となった陸中山田駅(上閉伊郡山田町)を経由しなくなった。
但し利用者数は残存区間においても減少しており、また元々山間部の人口希薄地域を経由している為JR東日本は度々廃止の可能性を示唆している。
利用促進の実証実験として、2024年(令和6年)度の1年間競合交通機関である岩手県北交通(岩手県北バス)の106特急・急行にJRの乗車券類で利用できる施策を行っている。
2016年(平成28年)3月16日のダイヤ改正で上米内駅〜区界駅間にあった大志田駅と浅岸駅が廃止された為、同区間はJR東日本管内の在来線で最長の駅間距離となっている。
沿革
盛岡駅〜宮古駅〜陸中山田駅間は1892年(明治25年)6月21日に公布された鉄道敷設法、陸中山田駅〜釜石駅間は1922年(大正11年)4月11日に公布された改正鉄道敷設法により三陸縦貫鉄道の一部をなす路線として定められた。
1923年(大正12年)10月10日に盛岡駅〜上米内駅間が開通。その後延伸を繰り返し、1939年(昭和14年)9月17日に全通した。また1943年(昭和18年)11月22日には宮古駅〜宮古港駅間の貨物支線が開通した。
開通当初は県都盛岡市と三陸地方を結ぶ路線として、特に盛岡駅〜宮古駅間は旅客数も多く、また釜石市からの鉄鉱石輸送を担う有力路線だった。
しかし鉱山の閉鎖や度重なる災害による地域の衰退、モータリゼーションの加速による車社会化によって利用者数が減少。
国鉄末期の1984年(昭和59年)2月1日には貨物支線が廃止され、1986年(昭和61年)11月1日には貨物営業そのものが廃止された。
ほぼ同時期に第三次特定地方交通線として廃止候補に挙がったが、当時は代替輸送道路が未整備という理由で廃止対象からは除外された。
1987年(昭和62年)4月1日に国鉄が分割民営化され、JR東日本が第一種鉄道事業者として継承。
1994年(平成6年)3月30日から宮古駅〜釜石駅間でワンマン運転が開始された。
2011年3月11日に東日本大震災により被災。復旧までの経緯については後述。
4月13日までに現存区間は復旧したが、転換区間はJRとして復旧する事なく2019年3月13日付でJR東日本の路線としては廃止され、三陸鉄道リアス線に転換された。
2016年3月16日には大志田駅と浅岸駅、2023年(令和5年)3月18日には平津戸駅(前年3月12日より営業休止)がそれぞれ利用者減少の為廃止された。
事故・災害
山間部を経由する為災害にしばしば悩まされている。特に被害の大きかったものを記載する。
列車脱線・転落事故
平津戸駅〜川岸駅間の鉄橋が雪崩により崩落。そこに盛岡発釜石行下り貨物列車が進入し谷底に転落。機関士が死亡、機関助士が瀕死の重傷を負った。
当時の山田線は戦時中の物資輸送の為24時間体制で稼働しており、悪天候と深夜帯で視界不良だった為鉄橋の崩落に気付けなかった事が原因とされている。
後年東映により三國連太郎主演で『大いなる旅路』として映画化されている。
カスリーン台風・アイオン台風
1947年(昭和22年)9月15日(カスリーン台風)・1948年(昭和23年)9月16日(アイオン台風)発生。
カスリーン台風は関東地方で豪雨被害をもたらした台風だが、岩手県においても北上川や閉伊川の氾濫等の被害が出た。山田線においては特に現在の宮古市内で水害による浸水や土砂崩れ等が発生し、翌1948年3月5日まで半年間の運休を余儀なくされた。
しかしその半年後の9月16日、アイオン台風によって岩手県は大きな被害を受け、山田線においても再び土砂崩れ等で運休を余儀なくされた。徐々に復旧したものの全線での運転再開は1954年(昭和29年)11月21日まで6年以上かかっている。
1980年(昭和55年)豪雨
1980年9月2日発生。
集中豪雨の為宮古市内で土砂災害が発生し、宮古駅〜津軽石駅間が不通となった。1981年(昭和56年)1月30日に運転を再開。
東日本大震災
2011年3月11日発生。
地震による被害に加え、沿岸部は大津波による駅舎や施設の流失、火災による消失等壊滅的な被害を受けた。
3月18日に盛岡駅〜上米内駅間、26日に上米内駅〜宮古駅間で運転を再開したものの、4月7日に発生した余震による被害で再び全線運転見合わせとなった。
4月10日に盛岡駅〜上米内駅間、13日に上米内駅〜宮古駅間が復旧した。20日からは宮古駅〜釜石駅間で岩手県北バス・岩手県交通による代行バスの運行を開始した。
しかし地域全体で壊滅的被害を受けた宮古駅〜釜石駅間は接続する三陸鉄道北リアス線・南リアス線を含めて復旧に長時間を要する事から、JR東日本は震災後の街づくりの推移を見据える為、鉄道の廃止及びBRTによる復旧を自治体に提案。しかし周辺自治体はこれを拒否して鉄路による復旧を第一とした。
幾度にも及ぶ協議の末、路線修理費用の2/3をJRが負担した上で三陸鉄道に路線を移譲する事が決定。2019年3月13日に三陸鉄道リアス線として復旧した。
2015年(平成27年)列車脱線事故
2015年12月11日発生。
松草駅〜平津戸駅間で宮古発盛岡行上り普通列車が土砂崩れによる倒木に乗り上げ脱線。乗客乗員16名が負傷した。
復旧工事は急ピッチで進められ、12日には盛岡駅〜上米内駅間、13日には上米内駅〜宮古駅間が復旧した。
2016年(平成28年)台風10号(ライオンロック)
2016年8月30日発生。
岩手県や北海道等の北日本に大きな被害をもたらした台風10号「ライオンロック」により、川内駅〜茂市駅間で土砂流入及び路盤流出が発生。
盛岡駅〜上米内駅間が9月1日、茂市駅〜宮古駅間が9月3日に運転を再開し、12月9日に川内駅〜茂市駅間が復旧した。
しかし上米内駅〜川内駅間は復旧まで1年以上かかり、2017年(平成29年)11月5日に復旧した。
2024年(令和6年)8月豪雨
2024年8月28日発生。
岩手県内の豪雨により土砂流入が発生し全線で運転を見合わせ。
9月15日に盛岡駅〜上米内駅間で運転を再開したが、JR東日本は全線復旧には2ヶ月以上を要し11月上旬の運転再開を目指していると発表した。
運行形態
震災前から臨時列車を除いて宮古駅で運行系統が分かれていた。一部区間転換後も基本的には線内運用のみ。ワンマン運転は行っていない。
2010年(平成22年)7月31日に土砂崩れの為休止・2014年4月1日に廃止された岩泉線とは一部列車が直通運転を行い、岩泉駅まで運行されていた。
都市間輸送では競合路線である106特急・急行に比べて本数・所要時間で大きく劣っており、前述の様に廃止も取り沙汰される状況である。
なお運行形態は2024年8月豪雨による運休前のものである。
快速リアス
都市間輸送列車。
下り2本・上り1本の運行で主要駅のみ停車する。
普通
全線通しの運行は下り2本、上り3本のみ。
その他盛岡駅〜上米内駅間に2往復(通勤時間帯の為1往復は休日運休)、川内駅〜宮古駅に下り1本・上り3本、茂市駅〜宮古駅間に1往復区間列車が設定されている。
臨時列車
盛岡駅〜宮古駅間で土休日を中心に「さんりくトレイン宮古」や、夏季や冬季にイベント列車が運行されている。
一部区間の三陸鉄道転換前は釜石線・東北本線経由で盛岡駅発着の循環列車が運行されていた。
駅一覧
現存区間
●:停車 レ:通過
現存区間の廃止駅
- 大志田駅(上米内駅〜浅岸駅間):2016年(平成28年)3月26日廃止。
- 浅岸駅(大志田駅〜区界駅間):2016年3月26日廃止。
- 平津戸駅(松草駅〜川内駅間):2022年(令和4年)3月12日休止、2023年(令和5年)3月18日廃止。
廃止区間
- 宮古駅〜釜石駅
- 貨物支線(宮古臨港線)
1984年2月1日廃止。接続路線は廃止当時のもの。
使用車両
現在の使用車両
自社車両
- キハ110系100・150番台
定期列車及び一部臨時列車で運用中。
かつては転換区間及び岩泉線直通列車でも運用されていた。
盛岡車両センター所属のハイブリッド気動車。
臨時列車として入線する。
盛岡車両センター一ノ関派出所所属の「のってたのしい列車」用気動車。
臨時列車として入線する。
- キヤE193系「East i-D」
秋田総合車両センター南秋田センター所属の事業用気動車(検測車)。
盛岡車両センター所属のディーゼル機関車。
工事列車や臨時列車の牽引で稀に入線する。
三陸鉄道所属
運行本部所属のレトロ調気動車。
一部転換前から山田線に乗り入れており、現在も臨時列車として時折入線する。
過去の使用車両
国鉄民営化後の車両のみ記載。
自社車両
全て盛岡車両センター所属。
国鉄時代から運用されていた急行形(キハ58系)・一般形(キハ52形)気動車。
キハ52形は岩泉線直通運用も存在した。
- キハ58系「kenji」
団体列車用のジョイフルトレイン。
- キハ100系0番台・キハ110系0番台
釜石線と共通運用の一般形気動車。転換区間で運用されていた。
なおキハ100-9と12の2両は、盛岡発釜石経由宮古行1647D普通列車として津軽石駅停車中に津波に流され、そのまま廃車され現地で解体された。
JR四国所属
高松運転所所属のJR四国の観光列車「アンパンマントロッコ」用車両。
2012年(平成24年)に被災地復興支援の為、東日本・四国・貨物のJR三社共同運行の団体列車として入線した。
イラストはいずれも改造前の原型のもの。
三陸鉄道所属
- 36-100形
運行本部所属の一般形気動車。
転換区間で三陸鉄道直通列車として運用された。