玄武
げんぶ
曖昧さ回避
象徴
方角 | 北 |
---|---|
季節 | 冬 |
五行 | 水 |
色 | 黒(玄) |
地形 | 山岳 |
その他 |
|
関連する存在 | |
別言語での表記 |
|
※1霊亀は玄武の元型であるとも言われている。
概要
四神の一柱であり、北を守護する。
一般的には亀(神亀)の体に蛇(蛇神)が巻き付いた姿、或いは尾が蛇になっている亀、或いは亀単体の姿で描かれる。
亀と蛇がどういう関係にあるのかは諸説有り。また、その姿故に「亀蛇(きだ)」と呼ばれる事もある。
また、「玄」は「黒」を意味しており、黒色の体色をしている。
「北」という方角は、二十八宿(古代中国における星座)において北に位置する「斗・牛・女・虚・危・室・壁」を連ねたものを亀に見立てた事から来ている。反映する性質は知性・倫理・規律の要素が入るされる。
なお、二十七宿及び宿曜占星術では牛宿は外されている。
五佐においては玄冥が同じ方角に当てられており、玄冥は玄武の本来の名であるとも言われている。
「黒」という色は、五行において北が水、水が黒である事に関連しており、冬という季節もこれによる。
日本においては奈良県明日香村のキトラ古墳及び高松塚古墳において石室内四壁の中央に四神の青龍、白虎、朱雀、と共に描かれていたことで知られる。
相対する方角には朱雀がおり、一説ではこれが鶴亀の由来であるという。
四神の中で唯一、下の字が動物になっていない。「武」が何を意味するのかは諸説有り。
日本では他の四神に比べて馴染みが薄く、昨今のカルチャーにおいては「強さ」のイメージこそ上位の印象はないが、実際は(玄天上帝などの伝承も含め)玄武こそが四神における最強・最古であり、最上位として信仰された。
また、「冥界(命)」「長寿(不死)」「水」「子宝」という人間の命に直結するエレメントを象徴する事からも、中国の民間では四神中で最も親しまれて民間信仰が盛んだったともされている。中国神話や道教などにおいて、最高神を象徴したり宇宙の中心的な星とも位置付けられる北極星とも、後述の通り、妙見菩薩と併合する事で関わりが生まれており、実際に玄天上帝は道教の最高神の一柱である元始天尊の化身ともされる場合がある。
- 「北」は風水上でも極めて重要な方角とされ、たとえば平安京や日光東照宮などの建立時においても、北極星だけでなく龍脈などにも直結する最も重要な方角と位置付けられており、当然ながら玄武信仰が強く影響したとされる。
- 道教という厳密な古代中国神話と異なる神話体系ではあるが、時代を経て「最高神」の一角に数えられるまで昇格した事は、玄天上帝(玄武)が中国の民間において非常に親しまれてきた事の証明と言えるだろう。
宋の時代に宋朝の祖・趙玄朗の諱「玄」を避けて「真武」と呼ばれるようになった。この名称は後に神格として派生・独立する玄天上帝の異称「真武大帝」にも引き継がれることになる。
玄武をそのまま擬人化した神は執明神君(玄武帝君執明)といい、現在の道教において玄天上帝とは別神として理解されている。
後年には、玄武は四神より後代に成立した神・北極大帝(北帝)の配下とされ、北帝の四将(天蓬・天猷・黒煞・玄武)のメンバーともされるようになった。
やがて北帝配下の北方四将の一人としての「真武(玄武)」には浄楽国という国の王子、つまり人間としての前身が設定され、魔性のモノを討伐するべく上位の神仙に派遣される存在として性格づけられることになる。
真武は戦神としての性格を得、さらに北帝が持つ「破邪を司る北方の神」としての特性を吸収した。やがて容姿においても「蛇を尾とする亀」である玄武とは別個の形容、人型の軍神としての描写がなされるようになる。
「蛇」と「亀」は真武とは別存在とされ、玄天上帝の足下に配置されたり、さらに、踏まれた形で描写される事もある。
説話によっては玄天上帝に対峙された六天魔王が変化した者とされており、『西遊記』では「蛇亀二将」を孫悟空に貸すシーンがある。
『西遊記』含む「四遊記」の一つである『北遊記』は彼を主人公とした神怪小説である。『北遊記』では玄天上帝から抜き取られた内蔵が蛇将軍と亀将軍に変化するシーンがある。
沖縄の「亀甲墓」と呼ばれる墓作りには伝承やデザイン上の関連性があるとされる。
サブカルチャー上での扱い
近年の創作物では、本来の水属性ではなく、地属性(土属性)に割り当てられているケースも散見される。その場合では水属性が青龍に移される事が多い。
「玄」が「黒」を意味する事があまり知られていないためか、ただの緑亀など他の色にされてしまう例が多い。
また、蛇の要素も忘れられがちである。
ついでに四神を全面に出した作品では主人公として使われることもほぼなく、サブポジションにいる事が多い。
ガメラと玄武
ガメラの影響からか、主にゲーム作品等で玄武をモチーフとしたキャラクターが「回転しながら空を飛ぶ」「ジェット推進能力を持つ」「ガメラそっくりの顔や甲羅を持つ」などの描写がとられる事がある。また、『遙かなる時空の中で』がテレビアニメ化された際には、咆哮までが(制作会社等の関係も無いのにわざわざ)流用された。
- 「世界的なアイコンになったポップカルチャーにおける亀のキャラクター」ではガメラが世界最古であり、玄武を主役級の存在として描いた戦後発の大衆文化作品もガメラシリーズが草分けの一つである。
ガメラは昭和・平成・令和の全てにおいて、大なり小なり玄武や中国文化の影響を受けている(例:『ガメラ大怪獣空中決戦』の際にも古代中国の意匠が応用された)が、劇中で明確に玄武との関連付けがされたのは『ガメラ3』になってからである。
- 何の因果か、ガメラに因んで命名されたシネミス・ガメラも古代中国の古生物である。
「体色も黒が混じっていて蛇にも似た頭や尻尾を持ち(特に『ガメラ3』での首が長い姿)、マナと呼ばれる地球の生命エネルギーを操り、第一作では人間の傷を瞬時に癒し、最終作ではほぼ死にかけていたまたは一時的に死んでいた人間たちを蘇生させたともとれる描写があり、たぶん最強格である、仮死状態になっても生き返ったり、歴代の他の作品も含めれば転生している可能性もある事から、割と玄武の伝承に合致しているのかもしれない」
という評価もあるものの、後付け設定の所為で、炎属性の玄武になってしまった。
- ただし、『北遊記』にて主人公の真武君(玄武)が調伏して三十六員の筆頭になった「亀」と「蛇」(従来の玄武を意識している)は「水」と「火」を司る陰陽の存在である。
同作には(偽プラズマ火球を使うため炎要素を持つとも言える)朱雀に該当するとされる怪獣も登場するが、スーパーギャオスの亜種とはいえ「鳥」の要素が薄い。ただし、イリスは摂取した遺伝子情報によって姿や能力を変えるため、古代のイリスの姿が鳥に似ていた可能性もあるという意見もある。