概要
始まりは90年代から
関西準キー局ABC朝日放送は、夏休みが始まると、全国高等学校野球選手権大会(高校野球・夏の甲子園)が始まるまでの場繋ぎとして、2時間ほどアニメの再放送を行うのが恒例だ。しかし、夏の甲子園が始まれば無用の存在として雨天中止時の補欠(雨傘)にして、ことごとく子供の楽しみを奪った。
皮肉なことに、その子供たちのやりきれぬ思いの受け皿になったのは、同じく関西準キー局であるMBS毎日放送が当時まだ放映権(放送権ではない)を保有していた『仮面ライダー』であった。決まって放送されるのは一文字隼人が主役の旧2号編からで、90年代中期から旧1号も放送するようになった。
90年代末期は毎日放送が持っていた『仮面ライダー』(昭和ライダー)シリーズの放映権が順次石森プロに移管される時期になり、既にTBSの放映権が切れていた『ウルトラマン』が放送された。
昭和世代は甲子園世界はど真ん中ストライク世代だろう。
ライダーの放送が終われば学校のプールへ行くか友達とファミコンで遊ぶか自転車をサイクロン号に見立て、脳内BGMに「レッツゴーライダーキック」を流しご町内を走り回った。
関西では夏の甲子園が終わるとどこからともなく井上陽水の「少年時代」が聴こえ出し少し早くなった夕暮れと飛び始めた赤とんぼに夏の終わりを感じるのであった・・・
2000年以降は
少子化によりMBSやABCに限らず朝の子供時間枠は順次ローカル情報番組やドラマ再放送に移行していった。
そんな中、2000年より平成ライダーがスタートし、ファン達と夏の甲子園との戦いが始まった。昭和ライダーの放映権が全て石森プロに移管され、放送局はTBS系からテレビ朝日系に復帰。しかし運命の悪戯により、大阪のテレ朝系はかつて昭和ライダーが駆け抜けた毎日放送ではなく、朝日放送になっていたのだ(この辺はややこしいので「MBS 腸捻転」で検索)。
また以前と違ってネットでの情報交換が発達したので関西人だけ内容についていけない、ネタバレを見せられるという苦行・基本的人権の侵害を受けることに。
幾多のライダーが時間枠変更の憂き目に遭う中で戦わなかったのは『仮面ライダー電王』『仮面ライダーゼロワン』ぐらい。
平成一期
平成一期の作品は1月開始1月終了だったため、夏の甲子園の時期はまだ中盤であった。
また当時は夏に本編があまり進まないギャグ回を挟むことも多かった。
これについて、仮面ライダー龍騎放送当時のスタッフコメントによると「夏の甲子園で見られない人や夏休みの帰省ので見逃しを想定してこの時期は1話完結の話としているが、きちんと見てくれた人へのサービス回として美味しいネタを注入している」とのこと(参考リンク)。
『仮面ライダーディケイド』では、『仮面ライダーBLACKRX』・『仮面ライダーBLACK』の回(通称てつを回)の直後でストーリーも終盤にさしかかり、劇場版も公開されている最も展開が熱い時期に甲子園と戦わなくてはならなかった(余談だが、最初に時間変更のあった回の門矢士は野球のユニフォームを着て登場していたため、何か意図的なものを感じると一部でネタになった)。
平成二期
『仮面ライダーディケイド』は8月終了、そして平成二期の作品は9月開始で8月終了となったため、夏の甲子園の時期はストーリーも終盤でギャグ回が入れられることも無くなったことで事情が変わってしまった。
『仮面ライダーW』、『仮面ライダーオーズ』、『仮面ライダーフォーゼ』は終盤かつ劇場版公開とほぼ同タイミングという同条件での戦いを強いられた。『仮面ライダーウィザード』から『仮面ライダーゴースト』までは10月開始で9月終了となり、終盤ではあるものの最終回からは少し遠くなった。『仮面ライダーエグゼイド』以降は再び9月開始の8月終了となり、『仮面ライダーディケイド』の時と同様の状況となった。
2019年夏季、『仮面ライダージオウ』では台風10号による試合スケジュールの変更から、全国区では最終回放送日である2019年8月25日に「最終回の1つ前の回」を放送、翌日の26日に「最終回」を放送することになった。『仮面ライダークウガ』から始まる平成ライダーの最終放送回にもかかわらず、それを関西地区では平日に放送するとはこれいかに。
令和シリーズ
- 令和ライダー最初の作品である『仮面ライダーゼロワン』と放送時期が重なる2020年夏季では、東京オリンピックの開催スケジュールと調整することになり、夏の甲子園は8月10日開幕を予定していた。この年はCOVID-19の感染流行を受け、オリンピックは1年延期、甲子園で行われる全国大会のみが中止(地方大会は各自で実施)。その代わり春の選抜高校野球大会の代替試合(各チーム1試合ずつの交流試合)を同時期に甲子園で開催・朝日放送で中継する事になったが、第1試合が10時開始となったため8月16日の時間枠変更はギリギリ回避された。
- 雨天順延が多かった2021年夏季では、『仮面ライダーセイバー』が8月15日の第46章を放送延期。この日の第1試合も雨の影響で試合開始時間が遅れたが、ニチアサを放送せず11時くらいまでグラウンド整備の映像又は過去の試合を流すという暴挙に。関西のニチアサファンを涙目にさせるのであった…。第46章・最終章の放送は平日の8月27日午後に振り替え。
- 2022年夏季の『仮面ライダーリバイス』では例年通り「2週遅れ」となったが、8月21日は高校野球の休養日で試合が組まれていなかったため、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』共々「日曜日に2話一挙放送」の放送スケジュールが組まれた(10時からドンブラ、10時30分からリバイス)。残る分は8月23日午前に振り替え。
このほか
それ以前からおジャ魔女どれみシリーズなどの8:30〜9:00枠のアニメも戦っており、2004年以降はプリキュアシリーズの面々が戦列を担当する事になる。→製作局が遅れ放送という怪奇現象
メタルヒーローシリーズがニチアサで放送されていた1990年代は、テレビ朝日制作だった本シリーズは振り替え放送が無く、休止された回はそのまま飛ばされていた。
作品が進むにつれ、放送中のライダーやプリキュアの再放送でもう一度第1話から観ることで、録画や作品のDVDに頼ることなく、これまでのおさらいができるようになる。
夏の甲子園第100回の記念大会となる2018年には、開会式が行われた8月5日に限り、関西を含めて全国でも『HUGっと!プリキュア』が編成上の都合で休止になり開会式の時間に合わせて『仮面ライダービルド』も休止になると言う想定外の事態が起こった。
虚々実々な下克上戦が続いた末に大阪桐蔭が優勝し金足農が準優勝した2018年は、いろんな意味で伝説になった「第100回・記念大会」になった…。
なお、仮面ライダーシリーズと同じく日曜朝放送のスーパー戦隊シリーズはこの甲子園の魔物との戦闘を長年の間免れていたが、9:30〜10:00枠への移動に伴い、2018年放送の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』より関西地区限定で時間枠変更の憂き目に遭うハメになった(※前述の8月5日も休止・移転。ただその煽りで、翌週の前座番組での衝撃展開の後に第11話を越える最強カオス回が同時放送される事態はある意味回避された)。
2019年の『スター☆トゥインクルプリキュア』以降のプリキュアシリーズはTVerによる見逃し配信が行われるようになり、30分遅れとは言え高校野球期間中でもこちらで見られるようになったが、ライダー・戦隊はTVer配信がないため、スマホやケータイで見られる東映特撮FCやauビデオパスが今後も必須になるかもしれない。
金曜夜に放送されていたドラえもんとクレヨンしんちゃんも、2019年10月改編から土曜夕方への移動が決定し、番組編成次第では2020年より関西限定で長年無縁だった甲子園の餌食になる可能性があるが、移動初年度である2020年は両番組共移動、休止を免れるも、2021年以降は…。
なぜこのようなことになるのか
全国高等学校野球選手大会、いわゆる夏の甲子園は朝日新聞社が主催のため、甲子園球場のある兵庫県を含めた近畿広域圏を放送対象地域とし、朝日新聞社(会社登記上の本社は大阪府)が筆頭株主となっている朝日放送が1回戦から決勝まで生中継を実施している。全部NHKでよいじゃないか、という話もあるが、そこは年寄り(大人)の都合だ。朝日新聞社主家の村山家が神戸にあるため、テレビ朝日で中継を終えても朝日放送では終えられないという噂もある(村山家の先々代当主が第一回の始球式を投げた)。
なお、かつてはテレビ朝日でも中継を行っていたのだが、現在はTOKYO MXなど各独立UHF局による中継となっている。というか関西でも各独立U局が一部試合を放送している上に、テレビ和歌山に至っては完全中継をしている。
NHKではCM無しで生中継が見れるため、ABCもCMを右隅に流す。
実は、毎日新聞社が主催する選抜高等学校野球大会(春のセンバツ)の試合開始は朝9時ごろだったりする。とはいえその間、毎日放送ラジオは通常放送を止めて試合中継を行っているが。
出場校は夏の甲子園は49校、春のセンバツは記念大会でも最大36校と、春のセンバツの方が出場校が少ない(=試合数が少ない)のもある。
本当に悪いのは誰か
こうした事情から、視聴者の中には「見たくもないものに楽しみを奪われた」と感じ、大会や高校野球を嫌ってしまう人も存在する。今後もこのような事例がなくなることは無いであろう……
だが、待ってほしい。(ここからスーパーポエムタイム)
あなたに努力してでも叶えたい夢はありますか?
自分の持てる力全て使い尽くして勝ったり負けたりした戦いがありますか?
遠い未来ではなく今と言う瞬間だけを走り続ける事はできますか?
そしてその夢を受け継いでくれる相手がいますか?
高校野球の良さは球児達よりもっと年上になって初めて気づくよ
年を取ると彼らが輝いて見えますよ太陽なんかよりずっと輝いても突き刺すようにではなく包み込まれるような輝きに
本当に忘れないでほしい。青春の全てを野球にかけ真夏の突き刺さるような日差しの中、実力で手に入れた聖地への切符を持ってグランドを踏みしめ、優勝旗を手にすることだけを願い、全ての力を解き放って戦う高校球児達に何の罪もないことを…
というわけで朝日放送は高校球児ぐらい頑張って真夏の太陽の下撮影してる戦隊やライダーと作画マンが汗流して描いてるプリキュア見せて!
救いの近県テレビ遠距離受信
関西圏内でも同じ系列局の名古屋テレビあるいは瀬戸内海放送が遠距離受信出来る地域の方は希望が持てるかもしれない…!!
関西人の切なる願い
頼むからネタバレはやめてくれ!
実は
実のところサンテレビのプロ野球阪神戦のリレー中継利権を保持するため、高校野球で同局とのリレー中継体制を維持しているという説も存在するが真相は不明である。なお、この時期に甲子園球場を占拠されるのは、サンテレビの放送の生命線とまで言われる阪神タイガースが長期に渡って本拠地を使用できない通称「死のロード」を味わうことで不調に陥ることが多く、案外迷惑な話である。
斎藤佑樹と田中将大の投手戦で近年の名勝負と言われた2006年の第88回大会決勝再試合の早稲田実業対駒大苫小牧の視聴率についてであるが、関西地区での視聴率はNHKとABCでそれぞれ15%強と拮抗している。関東や名古屋地区では大きくNHKが視聴率で勝っていることを考えれば未だにABCの力は強いとも見れるが、平時においてはNHKがABCを上回る年が増加している。
2015年には決勝戦中継においてテレビ朝日が中継を降りるという事態になった。ここに深く関わっているのがスポンサー関係でおり、ここがローカルセールス枠になったことで枠の維持が困難になってといえる。
逆に言えばこれは今まで高校野球中継を支えてきたスポンサーの力も弱まっているということである。NHKの視聴率が例年に比べて落ちているというものでもないことを考えると、長らく民放で放送してきた体制に歪みが生じているとも言える。
元々ABCの甲子園中継を支える最大のスポンサーは住友グループが担ってきたのであるが、近年は三井住友銀行、日本製鉄(旧:新日鐵住金)を筆頭に、他グループとの合併を行う企業が増加し、財閥以来の結束力が歪むばかりか、合併を機に東京に本社を移す企業も続発している。
このような状況下で住友グループが一体となって支えてきた甲子園のスポンサー業務も1995年に撤退し、以降は関西基盤の企業を中心に複数社が支えてきたものの、元々関西以外に大きな営業拠点を有さない地銀や、大手企業の関西支局などが中心のため、次第に全国規模のCMを提供し続けるメリットが減衰しつつあった。ローカルセールス枠へのチェンジにより、ABC以外でのこれらの会社のCMが地元の別のCMに差し替えになる事態も相次いでいる。
子供(とオタク)の夢を奪い、さらには夏の球児たちの夢を奪う(高校野球アンチの増加)という事態を招かないためにも、縮小する資本関係をスリム化していくことは経営上大切であろう。即ち商業的に困難になりつつあるものから切り捨てていき、本貫である大会の維持と発展に繋げねばならないわけである…こうしたことを考えれば、着々とだがABCによる高校野球中継にも終焉の足音が聞こえてきたのかもしれない。
地方局での再放送と高校野球の予選
地方局の再放送に関しては、平日夕方やゴールデンタイム枠と言う事もあり、高校野球の予選と時間が大きく被ることはない。唯一のネックは、試合結果のダイジェスト番組位であり、これによって放送時間がずれる一例もわずかに存在する。深夜アニメがUHF局でも放送される前は、ダメージと呼べるような物はなかったのだ。
(ダメージと言う意味では、JRAの競馬中継。地方局ローカル枠が予選中継で中止となる為、スカパー!等に加入していない場合は民放で放送されるメインレースしか視聴できない事になる)
しかし、2016年7月10日――本選を前に思わぬ悲劇が起こる事になった。それはテレ玉における仮面ライダードライブの再放送である。予選に関しては雨天中止でもそのままドライブが放送される訳ではない(中止でも通販等のローカル放送になる)為、予選が終了するまでは休止と言う展開が続く事になる。
一方のtvkはマクロスΔ、装甲騎兵ボトムズ、響け!ユーフォニアムの放送時間が高校野球のハイライト番組でずれると言う展開になり、ユーフォニアムに至っては魔装学園H×Hよりも遅く放送される事になるのだが……内容的に時間帯を逆にして欲しいと願う視聴者は少なくないだろう。
(魔装学園H×Hに関しては、該当の大百科参照のこと)
2017年、テレ玉では仮面ライダーゴーストだけでなく手裏剣戦隊ニンニンジャーも再放送が始まっている為、去年以上の休止ダメージは計り知れないものに。2018年に関しても説明する必要性は……ないだろう。2019年度は雨天中止の場合に限って普通に放送されるという事になり、録画勢にとっては悲鳴を上げるような事態に。実際、雨天中止となった関係で仮面ライダービルドが通常放送されたことがあった。
2022年は騎士竜戦隊リュウソウジャーがクライマックス直前、仮面ライダーセイバーが始まったばかり(第2話まで)のタイミングで高校野球予選放送となっている。
TOKYOMXは東京エリアと言う事もあり、予選1回戦から放送すると枠が完全に足りなくなる為(MXはMX2のマルチチャンネルを採用しているのだが、そちらでも別プログラムを放送)か、途中からの放送となる。JRA競馬中継もネットされていない為、致命傷はないと思われたのだが、2019年度は新幹線変形ロボ_シンカリオン_THE_ANIMATIONが1回休止(この場合はシンカリオン的な意味で運休とも)になると言う展開に。2020年度は準決勝からの放送だったがシンカリオンとアルテは休止を免れ、『劇場版』も
滞りなく放映。2021年度はD_CIDETRAUMEREIの再放送が放送時間帯の移動(日曜深夜)となった。
『続編』は本放送数週間後の5分遅れのゴールデンタイムでの放送になるが、此方はコチラでパ・リーグのナイトゲームで運休する懸念が危ぶまれている。
(ただし、ホークス戦はTOKYOMX2で放送されているケースが多いため、大井競馬場の競馬中継と被らない限りは問題ないと思われる。対西武戦で西武のホーム(ベルーナドーム)だった場合はテレ玉で放送される可能性もあるため)
2022年は7月31日に東東京及び西東京大会の放送が決まり、てっぺんっ!!!が午前8時放送に繰り上げ、更に言えばTOKYOMX2ではホークス戦の中継が予定という展開が起こった。
関連イラスト
関連項目
おじゃる丸 忍たま乱太郎:NHK教育の10分アニメ。連続で放送されるが後者だけ高校野球で潰される事が多かった。
ラブライブ!スーパースター!!:上記の2作品同様NHK教育で放送されていたラブライブ!のシリーズ。第4話が雨天の影響で高校野球の試合開始が遅れてしまったため放送休止になるのではないかと騒がれたが3時間以上遅れで無事放送された。また、ネット上では一時期ラブライブが急上昇ワードになった(参考リンク)。
世界柔道:こちらはテレビ東京の類似事例。稀に世界卓球で休止になる事もある。
大相撲:NHKでの類似事例。中途半端な采配である番組の最終回録画を台無しにされた人が相次いだ。
高校サッカー:日本テレビでの類似事例……と言いたいところだが、一部UHF局も影響を受ける事例。2021年開催の準決勝ではテレ玉がルパパト休止になっている。
テレ玉:プロ野球(主に西武ライオンズ)試合日に夕方のアニメ時間帯と被った際に「マルチチャンネル機能」で当該番組を潰すことなく試合中継を行っている。高校野球にもこれを導入すれば本記事の事例は解決出来るのだが・・・と思われた中、別の球場で行われている試合を放送するという逆の発想でマルチチャンネルを採用している。
直通特急:三次元での高校野球による実害が存在し、人によっては本記事の事例と両方喰らった人もいる。こちらも解決策はあるが、実現に至っていない。