鬼滅の刃
ぱくりのおう
「生き残りたくば、刀を握れ。」
死闘の果てでも、祈りを。
失意の底でも、感謝を。
絶望の淵でも、笑顔を。
憎悪の先にも、慈悲を。
残酷な世界でも、愛情を。
非情な結末にも、救済を。
重ねた罪にも、抱擁を。
これは、日本一慈しい鬼退治。
概要
週刊少年ジャンプ2016年11号から2020年24号まで連載された少年漫画。作者は吾峠呼世晴。
単行本は全23巻。
一部海外では『Demon Slayer:Kimetsu no Yaiba』の題で刊行されている。
大正時代の日本を舞台に、鬼に家族を惨殺された主人公・竈門炭治郎が、鬼に変えられた妹の禰豆子を人に戻すため、古より鬼退治を生業とする組織「鬼殺隊」の隊士となり、仲間たちと共に鬼の脅威から人々を守る戦いを描く。
2020年5月18日発売の週刊少年ジャンプ24号にて、4年3ヶ月の連載に幕を降ろす。
同年10月の劇場版入場特典として柱の1人である煉獄杏寿郎の特別読切『煉獄零巻』が、その後「冨岡義勇外伝」を含む全3話の外伝が収録された『鬼滅の刃 外伝』(平野稜二作画・吾峠呼世晴監修)が発表された。
作風
昔話の『桃太郎』を土台に、身内を鬼に殺された人間が集まる鬼殺隊の戦いを描いた。ジャンルとしてはダークファンタジーに分類され、ゴシックホラーでは定番の「吸血鬼退治モノ」のフィクション構造を和風の世界観に落とし込んでいる。
仇討ちの要素があるが、登場人物は明るく個性的。現代には珍しいほど、ストーリーや設定に難解な部分がほぼ一切無く、非常に分かりやすいため誰が見ても理解できる点も支持を集めた要因の一つで、少年少女が苦難を逞しく乗り越えていく内容は朝ドラや世界名作劇場に例えられることも。
敵キャラクターである鬼の不死性や致死条件の頸切り、身体破壊や人喰いなどハードな描写が多く、鉄則として主人公サイドの人間の欠損は回復しない。しかし笑い所も要所要所に散りばめられ、特にシュールな笑いには定評があり、このセンスは読者によって好き嫌いが分かれる一方で本作の人気の要因にもなっている。
時代設定は物語開始当初より大正時代とされ、正確な年代などは明記されていないが、炭治郎が新人隊士の選抜試験である最終選別に参加した際に遭遇した鬼の台詞から、物語開始時は大正元年~4年(1912年~1915年)、最終選別以降は大正3年~6年(1914年~1917年)と推測できる。
当時の世間情勢として、日本はイギリスと同盟関係にあったり、海外では欧州戦争(後の第一次世界大戦)が既に開戦しているなど、実は結構大規模な出来事が起こっている最中にある。
これらの時代背景は劇中の内容にはあまり描かれることはないが、大正浪漫と称され和洋折衷の文化が花開いた美しい近代日本の風景は、幕末の動乱から明治維新を経て安定期へと入った、当時の時代を十分に感じさせるものとなっている。
また、登場人物はこの時代の日本人にしてはかなり高身長な人物が多い(中には現代でもNBA選手並みかそれ以上に大きな人もいる)一方、少年漫画としては珍しくその身長に対する(特に男性陣の)体重は割と現実的な値なのも特徴。
ストーリー
時は大正。山中にて炭売りを営む少年・竈門炭治郎は、母や幼い弟妹達を養いつつ、貧しいながらも平穏な暮らしを送っていた。
だがある日、帰宅した炭治郎が見たものは、無残にも殺された母や弟妹達の姿だった。
かろうじて息のあった妹・禰豆子を医者に運ぼうとする炭治郎だったが、禰豆子は凶暴な鬼と化して炭治郎に襲い掛かる。
危機を冨岡義勇という男に救われた炭治郎は、家族を皆殺しにし、禰豆子をこのような姿に変えたのは「鬼」の仕業だと知らされる。
わずかながら理性を残す禰豆子を元に戻すために、そして家族の仇を討つために、炭治郎の果てなき旅が始まった。
少年は、修羅の道へ
ただ最愛の妹のために―――
登場人物
下記の主要人物以外は「鬼滅の刃の登場キャラクター一覧」を参照。
本作の登場人物に難読な名前が多いが、その多くは実際に存在する苗字であり、本作の特徴の一つとなっている。
竈門炭治郎(かまど たんじろう)
CV:花江夏樹
主人公。額に火傷らしき傷痕を持つ、両耳に耳飾りを付けた少年。
とても優しい。頭が固く、意志が固く、並外れた嗅覚を持つ。
竈門禰豆子(かまど ねずこ)
CV:鬼頭明里
本作のヒロインにして炭治郎の実妹。元は家族思いの少女。
鬼の血が混じり鬼と化すも、兄と共闘する。人を喰わぬよう竹筒を装着している。
我妻善逸(あがつま ぜんいつ)
CV:下野紘
炭治郎と同期の鬼殺隊士。後天的理由で大正時代には珍しい金髪に垂れ眉の少年。
とても小心者。泣き叫び、喚き、鬼を滅する立場のはずが鬼から逃げ惑う。優れた聴覚を持つ。
嘴平伊之助(はしびら いのすけ)
CV:松岡禎丞
炭治郎と同期の鬼殺隊士。猪の被り物に上半身剥き出しの少年。
とても乱暴者。猪突猛進で強者と戦うことを何よりも好み、常識に欠ける。秀でた触覚を持つ。
冨岡義勇(とみおか ぎゆう)
CV:櫻井孝宏
妹に殺されかけた炭治郎の前に現れた上級鬼殺隊士。炭治郎を左近次に紹介する。
当初は禰豆子を殺そうとするも、炭治郎の懇願と兄を守ろうとする禰豆子の姿に刀を納めた。
鱗滝左近次(うろこだき さこんじ)
CV:大塚芳忠
炭治郎の剣の師匠。天狗の面を常に付けている。元は鬼殺隊の柱。
鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)
CV:関俊彦
災厄。千年前に最初に鬼になった、鬼の原種。彼の血が混じった人間は人喰い鬼に変貌する。
炭治郎の家族の仇であり、禰豆子を鬼に変えた張本人。
珠世(たまよ)※画像・右
CV:坂本真綾
200年以上前に鬼舞辻によって鬼に変えられた女性。人を殺すことを嫌い、鬼舞辻と鬼舞辻の呪いから逃れる。人を鬼へ変える、また人に戻す研究をしていて、炭治郎と協力関係にある。
愈史郎(ゆしろう)※画像・左
CV:山下大輝
珠世によって鬼に変えられた少年。彼女と同じく輸血で得た少量の血液を飲むことで人を喰らうことなく生活している。珠世のことが大好き。
柱(はしら)
古の昔より人食い鬼から人を守ってきた鬼狩りの組織である『鬼殺隊』の上級鬼殺隊士。
鬼殺隊士の隊士の中でも最高位に立つ人々の総称。
用語
詳しくは鬼滅の刃用語一覧を参照。
番外編・スピンオフ
『中高一貫!!キメツ学園物語』
コミックス巻末などに掲載されている、作者自身によるセルフパロディ。
本編においては、血と涙に濡れた手で刃を振るい合う人と鬼が、割と明るく暢気に日常を過ごしている。約一名を除いて。
言うなれば、これは、日本一(善逸に)厳しい学園ラブコメディである。
因みに本編の最終回は・・・?
pixivでは『キメツ学園』でタグ付けされている。
『鬼滅の刃 外伝』
鬼滅の刃【外伝】を参照。
公式小説
矢島綾による公式ノベライズ版。
基本的に本編の内容を補完する小話を4~5話+番外編として「キメツ学園」のノベライズ版が1話収録されている構成。
細かいネタバレ防止のため、『鬼滅の刃(小説版)』の項目を参照。
メディアミックス
アニメ
2018年6月4日発売の週刊少年ジャンプ27号にてアニメ化することが発表された。アニメーション制作はufotable。
これに合わせ、公式ウェブサイトではキービジュアル第一弾として、アニメ絵の炭治郎と禰豆子が公開されている。
また、TVアニメ化決定に即して、原作とアニメの情報を一挙に得ることが出来る公式ポータルサイトとTwitterも開設された。
2021年2月14日鬼滅祭にてTVシリーズ第2期として『遊郭編』のアニメ化決定が発表。
2022年2月14日『遊郭編』最終話にて『刀鍛冶の里編』のアニメ化決定が発表。
詳細は鬼滅の刃(アニメ)を参照。
劇場版
2019年3月29日ミニシアター公開「特別上映版『鬼滅の刃』兄妹の絆編」TVアニメ第1~5話に相当。
2020年10月16日公開「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」。PG12指定。
2023年2月3日公開「ワールドツアー上映『鬼滅の刃』上弦集結、そして刀鍛冶の里へ」。PG12指定。TVアニメの遊郭編10,11話と刀鍛冶の里編1話に相当。
舞台
2019年9月30日に舞台「鬼滅の刃」公式Twitterが開設され、2020年1月舞台化することが発表された。
脚本・演出は、舞台『刀剣乱舞』で有名な末満健一が、音楽は舞台『ハイキュー!!』で有名な和田俊輔が担当する。
詳細は鬼滅の刃(舞台)を参照。
ゲーム
2020年3月16日発売の週刊少年ジャンプ2020年16号の誌面にて、TVアニメ『鬼滅の刃』を原作とする二大ゲーム化プロジェクトが進行中であることが発表された。
『鬼滅の刃 血風剣戟ロワイアル』がスマートフォン向けアプリゲームとして、
『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』が家庭用ゲームとして、
前者が2020年に、後者が2021年に両タイトルともアニプレックスより、配信・発売予定であるが前者は発売延期。後者は発売中。
発表と同時にゲーム版の公式ポータルサイトと公式Twitterが開設され、作品全体の公式ポータルサイトにはゲームの項目が追加された。
鬼滅の刃 血風剣戟ロワイアル
略称及び公式Twitterのハッシュタグは「キメロワ」。
ジャンルは非対称対戦型サバイバルアクションで、プレイヤーが鬼殺隊と鬼の陣営に分かれて戦う非対称型のマルチプレイゲーム。
鬼殺隊は味方の隊士と協力しながら、鬼の滅殺を目指す。
『血風剣戟ロワイアル』に関しては公式サイト及び公式SNSが開設済みで、ufotable描き下ろしのキービジュアルも公開されている。
評価と売上
平成最後の少年漫画の大ヒット作にして、令和の社会現象を引き起こした作品であり、後述のように様々な記録を更新している。この要因として、アニメが多数の動画配信サイトによって視聴されたネット社会との親和性が大きい。
小学生前後の世代の目に触れにくい深夜枠を補完した事に始まり、放送終了後間もないアニメが好評を博していたこと、当時の既刊分の単行本が19巻という手頃な巻数だったこと、連載中の原作が終盤のクライマックスに突入していたことなど様々な要因が重なった結果、折からのCOVID-19による非常事態宣言で自粛を余儀なくされ屋内娯楽を求めた層を丸ごと取り込み、普段は漫画やアニメを手にしない層をも巻き込んで普及したのが主な経緯である。
ストーリーの骨格自体は「主人公の少年が人喰い鬼を倒す」という、少年漫画としてオーソドックスな王道ものだが単純な勧善懲悪とは違う作品の展開におけるシビアさと、同時に主人公である炭治郎の敵であるはずの鬼に対しても向けられる滅私の優しさは、社会の摩擦を表したような今までの批評には収まらず、イデオロギー(政治・社会思想)を超えたものが感じられるなど、人気の秘訣とされる面が多くの面から語られている。
特に戦闘に関しては徹底してシビアであり、今時では珍しい程に主人公達が強くなる方法がひたすらに地道で、主人公的なご都合主義などは少ない。これは作者の「人がそんなに簡単に強くなれる訳がない」という信条を体現した作風であり、そこに惹かれるファンも非常に多い。
一方で、笑いどころやキャラの掛け合いは独特であり、大正という時代に沿った文学的ともいえる台詞回しや言葉選びなどの評価も高い。編集は特に吾峠氏の語彙力を絶賛し、作中に組み込むことを奨めたという。
作画はモノクロを基調とし、トーンを多用する緻密で華やかな昨今の画風とは一線を画すが、その切り絵的な絵柄や雰囲気を味があるとして好む読者も少なくない。また、キャラクターの表情等繊細な感情描写については初期から抜き出た魅力を持つ。
秀逸な世界観や設定、それらを彩る独特ながらも魅力的なキャラクターなど、総じて一度ハマればどんどんハマってしまうスルメ的な作品だと言える。それでいてストーリーラインは王道で常に明確なので子供に対しても分かり易く、普段漫画やアニメなどをあまり見ないような人であっても物語に入りやすい作風である事も本作が(特に作画が美麗なアニメから)ヒットした要因である。
初期から作品を追っていた古参の読者からは、「『自分は好みだが、ジャンプでは受けないだろう』と思いながらハガキ(アンケート)を出した」と後に語る者が多く、編集側も当時から支えてくれた彼らあっての作品だと感謝すると共に、「打ち切り寸前だったことはなかった」と巷の噂を否定している。
また、早いうちから一部同業者にも注目されていたようで、奈須きのこ(TYPE-MOON)などを始め、著名な作家の称賛コメントが単行本の帯に度々載せられていた。その一人である秋本治からは上述の時代背景から古き良き日本の価値観や美意識が色濃い側面について「日本的美学を描いている」と評された。
さらに複数の漫画評論家からも高い評価を得ている。現代の読者が感情移入しやすく描かれ、読者に強い読後感と早く続きが読みたいという渇望を与えているとしており、和洋折衷文化が花開いた幻想的で美しい近代日本の設定は、泉鏡花の幻想文学のような空気が漂い華麗で女性ファンも多い理由の一つとされている。
2019年3月時点で国内の累計発行部数は450万部を突破していたが、後述のアニメ放映が話題となり人気・単行本売上が爆発的に急上昇し、完売する書店が続出した。
国内の累計発行部数は全23巻で2021年2月15日に1億5000万部を最速で突破している。
2020年度のオリコンコミック年間売上では1位から22位まで発売されている既刊全巻が独占。
単巻年間売上は439.3万部(18巻)、シリーズ年間売上は8234.5万部と歴代記録を新しく塗り替えている。
2021年度のオリコンコミック年間売上では2年連続年間1位を獲得(オリコンは12~翌11月までの期間集計。最終23巻は12月4日発行)。23巻は「年間コミックランキング」史上初の最高期間内売上となる517.1万部を売り上げた。
余談
- 銀魂とジョジョの奇妙な冒険は吾峠呼世晴が鬼滅の刃を描くきっかけになったとされており、銀魂側も鬼滅に乗っかった商法をしている。
- ファンになった有名人の中に明石家さんまがおり、2021年の「さんまのまんま」のゲストに炭治郎役の花江夏樹と善逸役の下野紘が1月に、甘露寺蜜璃役の花澤香菜が6月に出演した。花澤は子役時代に「やっぱりさんま大先生」でさんまと共演している。(花澤と出演した「もう一人の教え子」は同じ事務所の日高里菜。鬼滅の出演者では産屋敷輝利哉を演じた悠木碧も教え子の一人である。)
関連動画
累計150万部突破記念公式PV
関連タグ
「鬼滅の刃」関連タグ
掲載紙・作者 | 週刊少年ジャンプ / 吾峠呼世晴 |
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ジャンル | 伝奇 / 時代劇 / ダークファンタジー / 侍 / 武士 / 剣士 / 和風ファンタジー/バトル |
登場人物 | 鬼滅の刃の登場キャラクター一覧 |
用語 | 鬼滅の刃用語一覧 |
劇中台詞関連 | 鬼滅の刃台詞一覧 |
終盤ネタバレ注意用 | 鬼の王(201〜203話) / 鬼のいない世界(204話) / 幾星霜を煌めく命(205話) |
関連作品 | 過狩り狩り(連載前に描かれた読み切り短編) / 大正コソコソ噂話(おまけコーナー) / キメツ学園(作者によるセルフ学パロ) / 鬼滅の刃(小説版)(小説版ネタバレ防止用タグ)/鬼滅の刃(アニメ) |
その他 | 日本神話、カグツチ(タイトル案の一つとなった火の天津神)、竈門神社(福岡県太宰府市にあるゆかりの地である神社)、鬼滅キッズ |
表記揺れ | きめつのやいば(ひらがな表記)、DemonSlayer(英語表記)、鬼滅之刃(中国語表記)、귀멸의칼날(ハングル表記)、ดาบพิฆาตอสูร(タイ語表記)、Thanhgươmdiệtquỷ(ベトナム語表記)、Клинокрассекающийдемонов(ロシア語) |
※評価タグや二次創作的なタグについてはコチラ⇒鬼滅の刃(二次創作)
関連リンク
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鬼滅の刃のファンアート特集 - それは、哀しい鬼退治の物語。-(2019年5月10日公開)