ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団
うるとらろくきょうだいたいかいじゅうぐんだん
ワイドスクリーンを圧倒する空前の顔あわせ
これが ウルトラの兄弟だ!
海外ロケを敢行し
国際的スケールで迫る!
ファン必見の
まぼろしの超大作!
(日本公開当時のポスターより)
概要
インド神話「ラーマーヤナ(ラマヤーナ)」に登場する白い猿神ハヌマーンがウルトラ6兄弟と共にタイ王国に出現した怪獣軍団と戦うという映画。
1974年11月29日(資料によっては1975年1月とも)にタイで、1979年3月17日には日本で公開された。
原題は『ハヌマーンと7人のウルトラマン』。6兄弟がメインなのに7人となっている理由は、ウルトラの母も含まれていることに加え、タイ語では「6」の発音が「転ぶ」という単語と同じであまり縁起の良くない数字とされるため、縁起をかついで「7」になったという。
当初はタイ版と日本版でストーリーを別々に作る予定だったが、予算の都合でタイ版を編集する形で日本で公開することとなった。
映像は『ウルトラマンタロウ』以外にも『ファイヤーマン』といった円谷特撮からも流用されている。
監督は東條昭平氏(のちに『太陽戦隊サンバルカン』〜『超力戦隊オーレンジャー』までのスーパー戦隊シリーズでメガホンを取る事になる)、脚本は若槻文三氏(『ウルトラマン』をはじめとする円谷プロ作品で脚本を担当していた)。
評価と反響
当時の円谷プロダクションの技術の粋を結集して作られた、大迫力の特撮が魅力。また、主人公のハヌマーンをはじめ随所にラーマーヤナや上座部仏教の要素が取り入れられており、馴染みのない多くの日本人の目には新鮮に映る。
仏教の教えに忠実に生きることこそが正義として描かれている(実際、タイでは飛行機などの座席にファーストクラスより上の「僧侶クラス」があるなど、仏教をとても篤く信仰している)がゆえに、仏敵たる仏像泥棒や怪獣に凄惨な攻撃を加えるのも、他のウルトラシリーズにはない特徴である。口さがないファンからは「ウルトラリンチ」と揶揄されたりも(後述)。
主人公の少年が盗賊団に銃殺されてしまうなど、子供が過酷な社会の犠牲になる場面に、同じ東條昭平監督の『怪獣使いと少年』との共通性も窺えなくはない。
この一連の残虐描写の背景には、当時ベトナム戦争の悪影響で米軍から流出した大量の銃火器が市中に出回り、極度に治安が悪化していたタイの社会事情があったと考察する向きもある。東條氏曰く「当時のタイは今よりずっと治安が悪くて、腕時計を手首ごとたたっ切られて盗まれた事件まで起こっていたんで、この映画のように目先の利益のために子供を殺すようなワルもいておかしくなかった」らしい。
ストーリーは、良く言えば勧善懲悪で単純明快、悪く言えば荒削りで支離滅裂。ウルトラ6兄弟の描写が、豪華ではあるものの大雑把な辺り、若干海賊版くさい雰囲気すらある。
実際この後、映像権を得ていない『ウルトラマンZOFFY』『ウルトラマン怪獣大決戦』の映像を無断使用してリメイクした『ハヌマーンと11人のウルトラマン』(ウルトラの父、レオ兄弟、ウルトラマンキングも登場。だが一部でウルトラマンジョーニアスも登場している場面がある)を公開して問題視され、こちらはタイでも封印作品となっている。
そんな異色作、というか珍作、はたまた怪作……なのだが、意外にも日本公開当時の評判は良かったらしい。
同時期には『実相寺昭雄監督作品ウルトラマン』も劇場公開されており、マニアの間ではこちらの評価が高かったのだが、同時上映された映画館では明らかに『VS怪獣軍団』のパンフレットの方が多く売れていたとか(ただし、配給された映画館の数が多かったため、トータルの収益では『実相寺版』が上回っている)。
TV版の再編集で新撮シーンが少なく、新鮮味の乏しい『実相寺版』よりも、一部流用シーンもあるとは言えほぼ完全な新作であり、当時はまだ本家でも実現していなかったウルトラ兄弟と多数の怪獣が入り乱れての大バトルが繰り広げられた点も、子供たちには嬉しかったようだ(これまでの作品ではウルトラ兄弟が勢揃いすることはあっても、最終的には1対1(エースキラー、ババルウ星人など)か、兄弟全員と1匹の怪獣によるバトル(テンペラー星人など)しかなかった)。
訴訟問題
3代目円谷プロ社長・円谷皐氏が単にチャイヨーのソムポート・セーンドゥアンチャーイ社長と仲が良かったことから始まったこの企画だが、個人的なコネから始まった(おそらく口約束の)企画ゆえか、きちんと文書化された契約が交わされた様子がなく、結果的に後に円谷プロを長きに渡って苦しめる、ウルトラシリーズの海外展開権を巡る裁判の発端ともなった作品である。
誤解されがちだが『VS怪獣軍団』自体の著作権が両者で争われたわけではない。それどころか、本作の著作権については、円谷プロ側の主張は日本とタイの法廷で二転三転し、一貫性を欠く有様だった。
『VS怪獣軍団』の権利を侵害された埋め合わせとして交わされた(とチャイヨー側が主張する)、通称76年契約書が問題となったのである。
(詳細はチャイヨー・プロダクションの記事を参照のこと)
本作についてはチャイヨーが全面的に出資しており、ソムポート氏はチャイヨーの作品、少なくとも円谷プロとの「共同制作」であると認識していたようだ。そのため、円谷プロが日本国内でチャイヨーの名を外して公開したり、無断で海外にフィルムを売却した件を違法と主張している。
さらに、「自分も『ウルトラマン』制作の際、ヒーロー的キャラクターの必要性やウルトラマンのデザインについて円谷英二に立案した」とも主張しているが、ウルトラマンそのものに対してはハヌマーンの添え物・単なる商売道具程度にしか考えておらず、この意見には信憑性が疑われる(後の「プロジェクト・ウルトラマン」は社長の息子が企画したもので、社長自身は関わっていない)。
封印、そして円谷の黒歴史に
日本では1980年代にVHSやレーザーディスクが発売され、90年代前半までは普通に流通しており、「ウルトラマンワールド」などの子供向け再編集ビデオにまで内容が使われるほどだったが、TDG三部作が発表される直前の1995年から上記の紛争で円谷プロとチャイヨーの関係が悪化した結果、それ以降の映像ソフト化はされていない。
本作の著作権の曖昧さに加えて、上述の「本作の無断利用の“侘び”として、円谷皐氏からウルトラシリーズの利用権を譲渡された」という「76年契約書」の主張を追認してしまいかねないため、円谷プロにとってはまさに腫れ物、あるいは不発弾のごとく扱いの難しい作品となっている。
そのため、ソフト化どころか雑誌などの紙媒体への掲載すらほぼ不可能という状況となっており、ある意味では第12話以上に幻の作品となっている。
かつて小学館から発行された書籍『ウルトラ怪獣大全集』『ウルトラ戦士超技全書』が電子書籍として復刻された際にも、本作に関するページが全て削除されたほどであった。
一方、タイでは日本とは対照的にDVDなどが今日に至るまで発売されている。これは、2008年の最高裁判決で円谷プロのみが著作権を持つと確定しているためである。
ちなみに、作品が封印扱いになったことに対して、東條氏や佐川和夫氏ら本作に携わったスタッフは「特に思い入れがない(のでどうでもいい)」と語っている。というのも、本家円谷プロ作品のような“ドラマのための特撮”を求められたわけではなく、「ただ延々戦っていればいい」という要望だったため。チャイヨー側はとにかく安く仕上げさせようとした上に、注文はやたらと多かったらしい。
佐川は唯一、冒頭の太陽の特撮(中華鍋をガスバーナーで熱して、その上に耐熱ガラスを敷いて撮った)は苦心しただけあって印象に残っているとコメントを残した。
この扱いはささきいさお氏が歌った日本版主題歌「ぼくらのウルトラマン」も同様である。内容はウルトラマンの勇姿を歌い上げるもので、ハヌマーンのハの字も出てこない精悍な曲なのだが、1999年発売のアルバム「ULTRAMAN COMPLETE SONG COLLECTION」に収録されて以降、17年に渡りウルトラシリーズ関連の歌集でもスルーという状態であった。
それからしばらく後、2016年に発売された「ウルトラマンシリーズ放送開始50年 ウルトラマン主題歌大全集 1966-2016」、「ウルトラマン 主題歌・挿入歌 大全集 Ultraman Songs Collected Works」にて久々に収録された他、2021年にデジタル配信となった「ウルトラマン レジェンド・ソング・コレクション」にも収録され、曲単体の購入も可能となった。
2024年現在、この3つとも公式媒体で本作のタイトルが今でも確認できる例となっている。
封印解除の可能性は?
前述の「76年契約書」については、近年、タイ、アメリカなど海外の法廷で偽造(無効)とする判決が定着しつつあるが、皮肉にも日本国内では真筆(有効)との最高裁判決が確定している。
契約書に押印されていた円谷エンタープライズ(当時)の社印が、厳格な鑑定の末に真印であると認められたためで、この鑑定・判決が覆る可能性は無きに等しい(ハンコ文化が法律レベルで定着している日本では、真印・実印の効力は極めて大きいのである)。
そのため円谷プロとしては、現在・未来はもちろん、過去においても「76年契約書」に基づいて『VS怪獣軍団』を日本国内で上映・ソフト化した事実はないと黙殺する以外に、手がないのが現状である。もしここで「76年契約書」を追認するような真似をすれば、ようやく道が開けつつあるウルトラシリーズの海外展開に、自らトドメを刺す格好になりかねない。
『VS怪獣軍団』を日本で再リリースするためには、チャイヨーサイド(例えばソ厶ポート氏の遺族や、「76年契約書」を受け継いでいるユーエム社)と改めて契約を結ぶよりないが、ここまで事態がこじれている上に、作品自体の評価も(良く言って)賛否両論、当時のスタッフも特に思い入れがない(≒二度と世に出なくてもかまわない)となると、改めて和解して契約を交わす面倒を抱え込むとは考えにくい。
おそらく日本国内では、海賊版(違法アップロード)でしか視聴できない事態が半永久的に続くと考えられる。
一応、2021年にウルトラマン誕生55周年を記念して開催されたイベント『TSUBURAYA EXHIBITION 2021』では、作品年表に『実相寺版』と並んでクレジットされたが、これが円谷側の現時点での限界であろう(事の大きさを考えれば完全に「無かった事」にされてもおかしくはない作品な為、前述の主題歌の出典としての表記も含め、存在するという形だけでも認められているだけマシと言える)。
あらすじ
仏を敬う心優しい少年・コチャンは、いつにも増して激しい熱波と干ばつがタイ王国を襲う中、友人たちと共に、貧しいながらも楽しく生きていた。
ある日コチャンは、仏像泥棒に遭遇する。銃を持った泥棒たちを、無謀にも彼は追いかけ、ついには射殺されてしまった。
しかし、幼いながらも仏を敬い、仏の教えに殉じたコチャンを、ウルトラの母が見ていた。彼女はコチャンの遺体をウルトラの国へ持ち帰り、白猿ハヌマーンとして蘇らせる。
こうしてハヌマーンの力を手に入れたコチャンは、仏像泥棒と戦い、さらには地を焼き尽くさんばかりの光を放つ太陽と交渉してタイの人々を救う。
その頃、仏への敬意を失った愚かな者たちは科学の力で異常気象に対抗しようとしていた。
ところが、人工降雨ロケット発射計画を無理やり進めた結果、ロケット基地は大爆発し、さらには地の底に眠る怪獣軍団を目覚めさせてしまう……。
白猿ハヌマーン
CV:二又一成
1万年以上も昔から地球の平和を守り続けてきた風神ラマヤーナの子にして、タイの人々の心に勇者として深く根付いている神話上の英雄。ラマヤーナの生んだ風を吸い込んだ女神サワハが生んだ。
ハヌマーンの項に詳しいが、本作の彼の設定は、本来の神話とはいささか乖離している(原典での父は風神ヴァーユ)。
日本仏教にはハヌマーン信仰は伝わらなかったらしく、この作品が日本人にハヌマーンを知らしめることとなった。
見た目はいかにも神話に出てくるような、カラフルな模様が入った白い猿(発祥の地であるインドの図像ではなく、タイにおけるハヌマーンの図像が反映されている)。
猿だからか、常に踊っているか体を掻いているかしており、落ち着きがない。ウルトラ6兄弟との別れの際にも、自慢の踊りを披露していた。
ハヌマーンを模した踊りをコチャンが踊るうちに、仏のような後光が指して変身する。その際にはなぜかセブンのテーマが流れる。
勇敢にして心優しい性格で、倒れたアナンのために秘薬であるサンユラニトリチャワーの花の汁を探し求め、タイの平和を乱す怪獣たちにも果敢に立ち向かう。
一方、仏教にとっての正義に基づいて行動しているため、その教えを破る者に対しては厳格。仏像泥棒相手には、必死に命乞いをしているにもかかわらず、惨殺でもって対応した。ウルトラシリーズ史上、積極的に人間を殺した巨大ヒーロー(≠悪役)は彼が唯一である(一応この泥棒はコチャンを射殺したので当然とも言えなくもないが)。
これは、タイでは仏像を盗むことが仏への最大の侮辱、つまり重罪であるという価値観があるためで、かなり容赦のない惨殺ぶりが見られる。
特に3人目の泥棒を殺す際、日本版では日本人の宗教観・感性的に合わないためか、手で握った場面で終わるが、タイ版ではこの後さらに笑いながらこねくり回して血が溢れるという残虐極まりない描写になっている。
また、怪獣を倒す時にも、明らかに楽しんで相手を殺している残酷さが見られる。
ちなみに、原典で仕えていた相手であるラーマはヴィシュヌの化身であり、ヴィシュヌの10の化身の中にはお釈迦様もいる。
能力
釵状の武器。剣に変化させることもできるが、切れ味は悪く、斬撃というよりは殴打に徹する。
相手の肉を吹き飛ばして骨だけにしてしまう不思議な風・ハリケーンガンや、八つ裂き光輪やバーチカルギロチンのような切断光線・ウインドスラッシュを放つことが可能。
神話のハヌマーンは棍棒が武器であり、厳密には剣ではなく棍棒と呼んだ方が正しい。
飛行能力
卍の字を全身で表現したダイナミックなポーズで飛行する。ダンシングシヴァのような外見でもある。太陽の精スーリヤに直談判をするため、太陽の近くまで飛んでいった。
なお件のポーズ、「タイでは手足を揃えた飛び方では笑われてしまう」というチャイヨー側のリクエストで実現したという。円谷側のスタッフは違和感を禁じ得なかったそうだが、お国柄の違いなのだろうか。
尻尾
尻尾はどこまでも伸びる。神出鬼没のサンユラニトリチャワーの花を捕まえるために使用したが、その様子はもはや触手プレイ。
その他
近接戦闘では、ムエタイのような動きを用いた技を多く使う。
また、風に変身して、長距離を瞬間移動することも可能。
活躍
ウルトラの国で変身したハヌマーンは、「卍」型ポーズで誇らしく飛行しながらタイに帰還し、バンコクらしき都市の上を飛び去っていった。
その後、コチャンの姿に戻ると仏像泥棒の前に現れ、彼らに然るべき報いを与える。
「逃げても無駄だ!仏様を奪った罪は重い。生かしてはおけぬ!!」
「お前たちを殺してやる!」
「仏様を大切にしろ!大切にしない奴は死ぬべきなんだ!!」
「どうした?どこへいったぁ?」
「おお?ボクシングか。お前がその気なら相手になってやる!」
と、ヒーローらしからぬ物騒な言葉を発しながら楽しげに追い掛け回した末、次々と血祭りに上げていくのであった。
おそらく、というか絶対、仏様はこういう展開を望んでいないはず。
続いて、コチャンを探すうちに熱射病で倒れてしまったアナンをサンユラニトリチャワーの花の汁で救った彼は、タイを襲う異常気象の原因を調子に乗って最近地球に近づきすぎている太陽の精スーリヤだと見抜き、宇宙まで一気に飛行すると、遠ざかるよう彼に直談判する(仏教世界観は天動説)。
「お前のために雨も降らないんだ!」
「地球から、もう少し遠ざかってくれ」
結果、太陽は地球から遠ざかり、干ばつの危機は回避された。
しかし今度はロケット基地が大爆発し、地中から怪獣軍団が襲来。ハヌマーンは果敢に立ち向かうが、多勢に無勢、たちまち劣勢に陥ってしまう。
その時、ウルトラの国からウルトラ6兄弟が救援に駆けつけた。こうして、今作最大の見せ場にして問題点であるウルトラリンチの幕が上がる……。
怪獣軍団討伐後は、M78星雲に帰るウルトラ6兄弟を見送った後、自身も空に飛んで帰っていった。
なお、一部文献で「仏像の目が光った後、ハヌマーンとコチャンが分離、コチャンはアナンら友人の下へ帰っていく」という記述が散見されるが、タイオリジナル版の映像でもそのシーンは存在せず、噂の出所は不明である。
登場人物
コチャン
CV:佐久間あい
本作の主人公。ハヌマーンを信仰している子供たちのリーダー格。
3人組の仏像泥棒に殺されてしまったが、ウルトラの母によって白猿ハヌマーンとして蘇った。
彼が射殺される際の絶叫はトラウマもの。
アナン
CV:白川澄子
原語での発音は「アナンダ」で、アナンダ(アナンタ)を思わせる。
マリサーの弟で、コチャンを慕う心優しい少年。ハヌマーンをコチャンだと信じて必死に追いかけるうちに熱射病になってしまった。
怪獣から逃げるためにと木に登るなど、あまり賢いとは言えない。実際姉に「怪獣は何十メートルもあるのよ!」と諌められていた。
マリサー
CV:栗葉子
アナンの姉で、ヴィルッド博士の助手。
科学を過信するヴィルッドに不信感を抱いており、仏への敬意を忘れていない。
ヴィルッド博士
CV:仲木隆司
ドーナ第7ロケット基地でタイ王国を干ばつから救うべく人工降雨ロケットを開発した科学者。
科学を過信するあまり、指揮官からの実験を中止する通達を聞き入れず、基地を怪獣軍団に破壊された末に自棄を起こす。
が、その後改心し、続編の『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』にも登場した。
シープアク&シースリヤー
ドーナ第7ロケット基地の職員。
日本版のナレーション曰く「優秀な操縦士」らしいが、その割には遊泳禁止の湖ではしゃいだり、怪獣軍団の襲撃には落ち着きなくひたすら右往左往するなど、やや間抜けな印象。しかも吹き替えはなぜか関西弁。
なぜか『ウルトラマンタロウ』のZATの隊員服を着用し、なぜか『ミラーマン』のSGMのヘルメットを被っている。そしてなぜか当時大ヒットしていたピンク・レディーを知っている。
仏像泥棒
CV:水鳥鉄夫(リーダー)
仏像を取り返そうとするコチャンを射殺するも、その代償としてハヌマーンから報復を受ける羽目になった。
1人はハヌマーンに踏み潰され、もう1人は大木の下敷きになり、死亡。最後の1人はハヌマーンに追い回されて発狂したのか、ハヌマーン相手にシャドーボクシングを延々やりだした末、ハヌマーンに握り潰された。
続編の『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』にも登場する。
スーリヤ
演者:久須美護、CV:古川登志夫
太陽の精。劇中では単に「太陽」とだけ呼ばれる。チャリオットに乗っている。
かつてハヌマーンの頼みにより一度だけ日の出を待ってあげたことがある。今作では、地球に近づきすぎたために異常気象をもたらしてしまい、ハヌマーンに注意されて距離を取ることになった。
引用元のインド神話でも太陽神に位置付けられており、『マハーバーラタ』ではカルナの父としての登場で著名。
サンユラニトリチャワーの花
CV:上坂タエ子
サッパーヤ山の頂に咲く花。サングロテトリチャナーとも。
この花の汁はどんな傷病も治してしまう秘薬としての効能を持ち、かつてハヌマーンは、鬼の矢に撃たれたラックサナの命をこれで救った。今作では、熱射病に倒れたアナンを助けるために再び用いられる。
いたずら好きな女性の人格を持っており、瞬間移動のごとく自在に移動して、採りに来た者を弄ぶ。ハヌマーンが彼女(?)を採ろうとするシーンでは、白猿と花が「捕まえてごらんなさい」「待てよこいつ」を繰り広げる様がたっぷり3分ほど続く。
M78星雲
冒頭のナレーションによると、
- 暗黒星雲の裏側に存在する
- 6900万個の衛星を有し、最大の星であるウルトラの国は地球の直径の60倍もある
- ウルトラの国に太陽はなく、生活にはプラズマエネルギーを使っている
- 地上に300ほどの都市、地下に900台の原子力発電所があり、そこでプラズマエネルギーが作られる
そうである。
ウルトラ6兄弟
CV:古川登志夫(初代ウルトラマン)
ウルトラの母と共にコチャンの復活に立ち会う(『タロウ』第1話の映像を流用しているため、該当シーンにタロウは不在)。
終盤では苦戦するハヌマーンの救援に駆けつけた。昼間に出現したにもかかわらず、日没頃までカラータイマーも鳴らずに変身しっ放しな件については、気にしてはいけない。
アクロバティックな動きで怪獣軍団を圧倒するが、その戦いぶりは日本のウルトラシリーズに比べてやや残酷。
また、光線技を使う際の手の組み方がかなり適当(これに関しては本家の方も決して褒められたものではないが)。
ウルトラの母
CV:上坂タエ子
コチャンの遺体をウルトラの国へ運び、新たな命を与えた張本人。コチャンの遺体を連れ去るシーンは明らかに悪役のそれに見える。
怪獣軍団
映画の後半、まるでこの作品が怪獣映画であったことを思い出したかのように大地を割り登場した怪獣たち。一応はロケット群の誘爆による天変地異で永き眠りから覚醒したということになっているが、この作品のテーマを考えれば、仏への信仰を忘れ、現代科学を過信する人類に対し戒めとして遣わされた使徒であるとも解釈できなくはない……多分。
自分たちを討伐するためにやって来たジェット機群を一掃するなど高い戦闘能力を誇ったが、やってきたハヌマーンとウルトラ6兄弟になすすべなくコテンパンにのされ、凄惨な末路を迎えた。全員合わせてもウルトラ戦士の方が頭数が多いのは内緒だ。
ソムポート氏は、タイでは水牛の姿をした妖怪の言い伝えが国民に馴染み深いことを考慮し、水牛に似た角を持つゴモラを怪獣軍団のボスに指定したが、残りの怪獣は適当に選んだだけらしい。
『タロウ』怪獣に比重が偏っていたり、ゴモラを除けば全員宇宙怪獣だったり、そもそも『ミラーマン』の怪獣であるダストパンが紛れ込んでいるのはそのため(ダストパンに関しては、日本初公開当時のチラシにて「『ミラーマン』からの特別ゲスト」と紹介されていた)。
他の4体は本編で使用された着ぐるみのようだが、ゴモラはアトラクションやCM撮影用と思われる。
『激伝』では、タイラント・アストロモンス・ドロボンが同じ弾で商品化された。彼らは漫画版では「闘士ゴモラの昔の仲間」という設定で登場しており、ついでに商品化されていないダストパンもさりげなく混ざっている(しかし台詞はない)。
また、OVA版では謎の隕石の目撃者としてコチャンという名の少年(CV:くまいもとこ)が登場する(作中で名前は呼ばれないが、EDのキャストクレジットに書かれている。さすがにハヌマーンには変身しないが、ハヌマーンに似た模様の服を着ていた)。当時はまだ作品自体が黒歴史になっていなかったのである。
主題歌
- ぼくらのウルトラマン
バンダイから販売された『ウルトラビッグファイトスペシャル2 ウルトラ戦士スーパーミュージック』では『ウルトラマンA』にキャラクターソングがOP主題歌以外に存在しないという都合上、本曲が『A』の楽曲として用いられた(後半は本作の映像が使われている)。
なお、原語版では全く別の楽曲が使用されている。
余談
神話関連
本作はラーマーヤナ(より正確にはタイで発展した「ラーマキエン」)からの引用が多く、作中で登場した名詞や元ネタについて少し解説する。
- ラマヤーナ
原典の主人公ラーマに由来する。
「ラマヤーナ」とは「ラーマーヤナ」が語源と思われ、これでは人物ではなく物語のタイトルである。
本作では1万年以上も前のタイ王国を守護していたとされる(大元の「ラーマーヤナ」の舞台はインド)。
原語版ではラーマキエンにおけるラーマの名称「プラ・ラム」となっている。
- ラックサナ
ラーマの弟であるラクシュマナに相当。
本作でもラマヤーナの弟として扱われている。
原語版ではラーマキエンにおけるラクシュマナの名称「プラ・ラック」となっている。
- クンパン鬼
作中ではラックサナを鬼の矢で苦しめた相手とされる。
原典でラーマと敵対していた種族がラクシャーサである事から、クンパカン(กุมภกรรณ)すなわちクンバカルナの事であると推測されるが、原典において矢でラックサナを傷を負わせのはインドラジットである。
- ピペークの老人
作中ではハヌマーンに薬草の在り処を伝えたとされる人物。
ピペーク(พิเภก)即ち、ラーマに味方をしたラクシャーサであるヴィビーシャナが元ネタだろう。
- サッパーヤ山
原典のカイラス山などに相当。
ラーマーヤナにおいてはハヌマーンは薬草を生やした山を引っこ抜いたエピソードが語られているが、本作では山を引っこ抜いていない。