※存在自体がネタバレかつ動向も本編終盤のネタバレを含むため、視聴後の閲覧を推奨。
アガムス「まだ、まだ大丈夫だ…!もうこの手しかない……私自身が、“マザー”を…!!」
アガムス「スフィアは、文明が発達した星に現れ、バリアで包み込んでしまうのです。そして、巨大な怪獣を送り込み、エネルギーを吸収。最期には、星そのものがマザーに…」
カナタ「マザー…?」
アガムス「時空を越えて存在する、ヤツらの本体です…。マザーの襲来を防ぐには、怪獣を倒すしかありません…」
ケンゴ「これがアキトの言っていた、エネルギー反応…!あれは、一体…!?」
ハネジロー「宇宙空間に、巨大なエネルギー反応が見られます…!」
アガムス「そんな、バカな…!?」
アガムス「マザースフィア…!あり得ない…マザーが星に降りるなど…!!」
DATA
概要
『ウルトラマンデッカー』第23話「絶望の空」の終盤より登場。
時空を超えて存在し、一定の文明まで発展した惑星を食らうとされる未知の生命体・宇宙浮遊物体スフィアの本体であるマザースフィアがスフィアザウルス化した姿と思われる怪獣(よりかはスフィアの生態を考えると、マザーが変形したこちらの方が原種と考えられる)。
「最強スフィア獣」や「最強融合獣」の異名を持っており、一定のエネルギーを吸収し終え、収穫の時期を迎えた惑星を飲み込む為にワームホールより飛来し、星を丸ごと総取りにしてしまう。
つまり、これまで送り込まれてきた数々のスフィア合成獣やスフィアオベリスクは、全てこのマザーに対し極上な栄養源を献上する為の尖兵に過ぎなかったのである。
また、アガムスが地球人への復讐心を抱き、この時代にスフィアを呼び寄せた原因が「スフィアによって未来のバズド星を襲撃された事実」である点を考慮すると、スフィアの元締めたるこのマザースフィアザウルスは、『デッカー』の物語における“真の全ての元凶”にして、まさしく名実共に作品としての『デッカー』のラスボスを飾るにこれ以上無く相応しい存在だと評価できよう。
未来世界においてもその恐ろしいまでの暴挙は何度も確認されていたのか、アガムスにもその姿と生態を把握されていた実態が劇中でも示唆されている。
なお、彼らの生態としては本来マザーが直接星に降りるのは大変珍しいらしく、スフィアオベリスクを破壊し一応の安堵の表情を浮かべたアガムスも、その君臨を目の当たりにし「マザーが星に降りるなんてあり得ない」と、その降臨に驚愕していた。
鳴き声は、スフィアザウルスに酷似した咆哮と、歪んだ女性の笑い声が混ざりあったような、おぞましいものとなっている。
外見
「スフィアザウルス」と銘打たれているが、スフィアの親玉なだけあってか、外見は通常のスフィアザウルスと(一見同種族とは思えない程)大きく異なる。
完全に直立した二足歩行形態で、前脚が発達したスフィアザウルスに対し、マザースフィアザウルスは後脚もとい下半身が太く肥大化している。
全体的に見て、その全身が青白い棘状のクリスタルに覆われている、あたかも氷山に手足が生えてそのまま怪獣になったかのようなイメージを持った、非常にマッシブかつボリュームのある体型をしている。
頭部にはU字型になった2本の角が生え、その下の厳つい顔立ちはまるで嗤っているかのようにも見える、不気味かつ邪悪さの滲み出た表情となっている。また、よく見ると顔面の造形は微妙に右側が盛り上がった左右非対称であり、その歪さも表情の邪悪さに拍車をかけている。
両肩は山のように高く盛り上がった翼にも鎧にも見えるような形状で、尻尾は二股に分かれている。
胸部中央には、青白く輝く球状のスフィアのコアのような発光器官がある。
当初ワームホールから現れた直後は、頭部が肩の突起で形成された巨大な殻に覆われており、その殻が花弁のように開く事で頭部を顕にした(おそらく殻に包まれた状態が、マザースフィアとしての姿だと思われる)。
能力
鎧の如く非常に強硬な肉体はあらゆる攻撃を受け止め、戦闘後で満身創痍だったトリガーやデッカーの攻撃を軽々と退けている。
また、巨体を活かした単純な肉弾戦も得意かつパワーも圧倒的で、怪力を生かした格闘技や、腕や尻尾での打撃はそれだけで強力。
全身に棘のように生やしたクリスタルから、無数の棘状の光弾「スフィアシューティングストリーム」を発射する。
大気圏外でトリガーと初めて対峙した際には、牽制目的でワームホールの中に潜んだ状態から発射している。
最大の武器として、胸のコアから緑色の強力な破壊光線「スフィアトルネイダー」を放つ。
この光線だが、青白く発光したクリスタルのエネルギーを胸のコアに集中させるモーションの後に放たれ、その威力は直撃すればウルトラマンすらも容易に吹き呼ばし、(エネルギーが残り僅かだった事情もあったが)一撃で変身解除させ、テラフェイザーのような強力なロボットの装甲さえ貫通するという、単純な攻撃力だけなら『トリガー』及び『デッカー』の世界の敵の中でも最強クラスと評せる凄まじいものとなっている。
その上、捕らえた相手のエネルギーを両手から全身のクリスタルへと吸収する事が出来る他、取り込んだエネルギーによってか連続での発射も可能で、第24話ではなんと計3回も発射し、トリガー、デッカー、テラフェイザーの3体を文字通り叩きのめした。
また、これまでのスフィア合成獣と同様に緑色の衝撃波を放ち、エタニティコアを刺激して暴走させている。エタニティコアのエネルギーを吸収してからは、体から金色の光も放つようになる。
立ち向かってきたトリガーに対し、逆にトリガーの頭を片手で掴み返す芸当を行うと、知性を匂わせる器用な行動も見せた。
さらに、体から緑色と金色の光を発し、体から大量のスフィアソルジャーを放って相手に取り憑かせて拘束する技も使っている。
これを受けた者は精神がスフィアに囲まれたような空間へと送られ、そのままスフィアに寄生されかけてしまうという、事実上の一撃必殺と評しても過言ではない、実に恐ろしい技である。
ゲーム『ウルトラマンフュージョンファイト!』では、地面からエネルギーを吸収し、無数の光弾とスフィアソルジャーで攻撃した後、胸のコアからのビームでトドメを刺す「マザースフィアファランクス」なる必殺技が設定されている。
弱点
第23話にて、アガムス曰く「マザーの弱点は判明している」らしいが、同時に「現時点では(未来の)バズド星の科学力を以てしても技術的に実現は困難」と口にしている。
後にアガムスの遺したフェイズライザーのデータから判明した弱点は、胸部のコア。
コアを破壊すれば、マザースフィアザウルスは完全に活動を停止するとされる。
一見すると弱点が常時露出している状態で、そこに攻撃を喰らわせれば容易く弱体化する……ように見えるが、このコア、とんでもなく硬い。
その硬さはテラフェイザーのクローアームによるパンチ、スフィアトルネイダーのエネルギーを吸収したデッカーシールドカリバーによる光輪、デッカーフラッシュダイナミックの猛攻を耐え、挙げ句の果てにはナースデッセイ号のナースキャノンが直撃しても傷一つ付かない程。
フルパワーに回復したデッカー達との戦闘で発射されたTRメガバスターを受けようやくヒビが入ったが、黄金に輝くセルジェンド光線を受ける(=マザースフィアザウルスが負ける)までは、コアがさらに破壊される様子すら見せなかった。
目的
何故マザーが地球に直接飛来したのかについてだが、エタニティコア回収以外にも複数の理由が考えられている。
①コアの力を持つトリガーを倒すついで?
マザースフィアが現代の時空に現れたのは、第23話にて地球を覆うバリアの収縮が始まってから(オベリスクが地上に配置された直後)。
続く第24話ではスフィアオベリスク破壊作戦が間もなく実行されているが、GUTS-SELECTがある程度纏まった作戦内容を考えられている事や直前の回で気絶したカナタがある程度休めている事、そしてそれまで特に何も異常が無かったカナタ本人の肉体に急速にとある現象が起こった事を踏まえると、最低でも数時間近くトリガーに足止めされていた事になる。
このスフィアオベリスク配置の時点では、マザーにとって一番の邪魔者はトリガーであり、地球飛来直後に一番最初に撃破したのもトリガーだった。直接記憶を読み取ったスフィア陣営からすれば、エタニティコアに直接アクセスが可能のトリガーは目障り極まりない存在であり、エタニティコアの力を得るついでにトリガーを倒しに来たとする線。
しかし、結果的にはマザーはトリガーに時間を使わされた結果、オベリスク(とスフィアバリア)を破壊されてしまい、地球のGUTS-SELECT陣営にナースデッセイ号やGUTSファルコンを修理させる時間を与えてしまった。さらには、宇宙空間ではなく地球でトリガーを倒した上に、ケンゴに完全なトドメを刺せなかった事態が、後の大きな敗因となった。
②裏切り者の粛清?
スフィアオベリスク破壊作戦にて、カナタの必死の説得を受け正気を取り戻したアガムス。しかし、スフィアからすれば当然自分達のエネルギーを使っておいて侵略の邪魔をしてくるアガムスはただの邪魔な反逆者である。第24話では現にテラフェイザー戦で直接撃破する前に機体からスフィアのエネルギーを吸収しており、マザーとしては自身の力を取り返す計算だったのだろうか?
③エタニティコアに直接アクセスする為?
前作『トリガー』本編を視聴すれば分かる通り、本来エタニティコアはウルトラマンですら触れればまともに使いこなせない超然的なパワーの塊である。
かつて『トリガー』では、カルミラもダーゴンやヒュドラム等の他の闇の巨人の力を吸収した状態でコアに接触しており、並の怪獣や宇宙人ではそもそも制御すらも難しい代物である。ケンゴの記憶を見てエタニティコアの危険性を知った以上、図らずもスフィア陣営はマザー自らが直接出張らなければ侵略完了がままならない事態になってしまった。
加えて、収縮が完全に終了する前にスフィアバリアとスフィアオベリスクが、テラフェイザーやデッカーによって破壊されてしまった為、普通ならマザーは安全地帯で待機していれば良いところを、エタニティコアのせいで地球に降りざるを得ない状況となったのだろう。
最終目標
その真の目的は悲しみや争いを止める為、全宇宙の全ての命を一つに融合し、完全なる生命体へと昇華させるである。
これは彼女(?)の「個々のまま存在しては、争いや悲しい未来は避けられない」との考えによるものであり、スフィアに囲まれたような空間でそれをカナタ達に告げる。
また、これは本家本元の宇宙球体スフィアとほぼ同じ行動目的である。
つまり、これまでのスフィアの破壊活動は彼らなりの“善意”によるものだったわけだが、その考え方は人類のような知的生命体の抱える事情や意志を完全に無視した、極めて独善的なもの(アガムスの言葉を借りれば、まさしく「宛の無い善意」)に他ならない。
故に行い自体はただの侵略行為としか受け入れられず、当然カナタ達にも全否定されている。
また、この考えはGUTS-SELECTのメンバー達に指摘された通り、宇宙に生きる個々の生命の可能性を塞ぎ、彼らの夢を邪魔するものでもある。
なお、散々邪魔をされたor存在を危険視した為か、ケンゴに関してはもはや取り込もうとすらせず、そのまま排除せんと集中攻撃をしている。
活躍
第23話「絶望の空」
地上のスフィアオベリスクによって吸収されたエネルギーにより、宇宙空間に発生したワームホールから出現。それによって、(第1話のスフィアザウルス戦やスフィアメガロゾーア戦以降、スフィアの電磁波で落とされなかった)ナースデッセイ号とGUTSグリフォンを一撃で機能停止に追い込み、墜落させた。
その後、偵察の為に現れたトリガー・マルチタイプにワームホール内より無数のスフィアシューティングストリームで攻撃を加え、直後マザースフィアから変形する形で完全に姿を現す。肩からスフィアシューティングストリームを大量に発射し、グリッタートリガーエタニティへとタイプチェンジしたトリガーとの戦闘へ突入する。
第24話「夢の果て」
デッカー・ダイナミックタイプと、改心したアガムスが操るテラフェイザーによってスフィアオベリスクが破壊され、地球を覆っていたスフィアバリアが消滅した直後に、宇宙空間で戦い続けていたトリガーを叩き落とすのに続けて、眩い緑の光に包まれて(マザースフィアから変形しながら)地球に降臨した。
しかもこの際、前回からグリッタートリガーエタニティ相手に特に傷付いた様子も疲労している様子も全く無く、しかもそのトリガーをマルチタイプに戻しているという完封ぶりである。
満身創痍のトリガーとデッカーを容易く蹴散らし、さらにテラフェイザーからエネルギーを吸収して、胸のコアからスフィアトルネイダーを発射。
一発目でトリガーを撃破、二発目でデッカーシールドカリバーごとデッカーを吹き飛ばし、トドメの三発目でデッカーを庇ったテラフェイザーをアガムスごと貫き爆破。
その爆風で変身解除に追い込まれたカナタはスフィアの侵食によって命の危機的状況に陥ったのみならず、ウルトラDフラッシャーが砕け散って消滅、変身能力を失ってしまった。
そして、全ての敵を斃したマザースフィアザウルスは、咆吼と共に緑色の衝撃波を放ち続けると、地中に存在するエタニティコアがこれに刺激され、暴走を開始。
10年前のメガロゾーアとの決戦の時と同様、地球どころか宇宙が消滅の危機に晒される未曾有の事態が再び発生してしまう。
最終話「彼方の光」
冒頭で、エタニティコアを狙った理由がケンゴから語られる。
以前デッカーとトリガーがスフィアメガロゾーアと戦った際(=第8話)、トリガーと接触していたエタニティコアの存在に気付いたスフィアは月面でケンゴの記憶を読み取った(=第19話)後、マザースフィアザウルスは新たに“エタニティコアの入手”を目的に追加したのであった。
そしてアガムスの残したデータから、マザーの弱点が胸部のコアであると判明。しかし、ナースデッセイ号も動かせない現状の戦力ではそれの破壊は不可能であり、どうしてもウルトラマンの力が必要不可欠、同等の力を持つテラフェイザーも動かすのがやっとの状況だった。
そこでGUTS-SELECTは、先に修理の完了したGUTSファルコンとGUTSホークを発進させ、唯一行動可能なトリガーと共同でマザーに対処する作戦を立案。隊長代理となったリュウモンの指揮の元、行動を開始する。
一夜明けて翌日……コアのエネルギーを得ようとするマザースフィアザウルスは、無数のスフィアソルジャーによる攻撃を再開。
そこに、戦闘機2機の攻撃を受けて隙が生まれたところにグリッタートリガーエタニティによって胸のコアを直接掴まれ、エタニティコアのエネルギーを吸収される。しかし当然黙って見ているマザーではなく、スフィアシューティングストリームでトリガーを迎撃する。
しかし、この作戦はカナタを再びデッカーへの変身・行動可能にするのが真の目的であり、狙い通りコアのエネルギーを吸収したトリガーはそれを光に変換、カナタに受け渡すのに成功し、デッカーへの再変身が可能となる。
かくしてトリガーとバトンタッチし降り立ったデッカー・ダイナミックタイプが、マザーとの決戦に臨む。
マザースフィアザウルスは最初からスフィアトルネイダーを放ちこれを排除しようとするが、シールドカリバーで受け止められ、さらにハネジローの操るテラフェイザーがデッカーの肩を支えて耐えられる。
そこから、テラフェイザーのクローアームによるパンチ、シールドカリバーによる光輪、デッカーフラッシュダイナミックと、二人の怒涛のコンビネーションによる攻撃もその防御力でものともせず、スフィアシューティングストリームでそれらを圧倒。如何に消耗しているとは言え、ウルトラマンと対ウルトラマン用兵器の攻撃をものともしないとんでもない強さを見せた。
そのままフラッシュタイプに戻ってしまったデッカーへにじり寄るが、そこへナースデッセイ号のナースキャノンを受け怯む。
ナースデッセイ号、GUTSグリフォン、ケンゴ達にコアを集中攻撃されているにも関わらず全く堪えた様子もなく、体から大量のスフィアソルジャーを放出、大群を差し向けて彼らを覆い、行動不能に陥れた。
「全てを、一つに……全宇宙の全ての命を、一つに……。悲しみを、争いを、止める為に……。個々のまま存在しては、争いや悲しい未来は避けられない……。全てを融合し、完全無欠の存在、完全なる生命体に……。これこそが未来……未来は一つに……未来は一つに……」
そして取り込んだカナタやGUTS-SELECTメンバーに対し、初めてマザースフィアは自ら言葉を発する。
「悲しみや争いを止める為、全宇宙の全ての命を一つに融合し、完全なる生命体へと昇華させる事が幸福への道だ」と諭し、「未来も決まった一つだけで良い」と主張するマザー。
それと並行して複数のキングスフィアを再び召喚し、一度は消滅したスフィアバリアを再び展開し始めた。
カナタ「一つ……全て……未来……完全…………じゃねぇ!!俺達の未来を、勝手に決め付けるな!!」
……しかし、多くの夢を否定するそれをカナタが受け入れるはずもなく、真っ向から反発される。
そして「失敗や間違いを犯しても、何度でもやり直せば良い」「悲しい未来が避けられないとしても、その悲しみを乗り越えて前(未来)へ進む」と豪語するカナタの声に合わせ、GUTS-SELECTのメンバー達はスフィアの呪縛を乗り越える。
さらに、奮起したデッカーより放たれた金色の光により、周囲のスフィアソルジャーが全て消し飛ばされ、GUTS-SELECTの機体への拘束を取り除かれる。
カイザキ「命を一つに……そんな事、絶対にさせない!!」
ムラホシ「この宇宙には命の数だけ可能性が……未来があるんだ!!」
ハネジロー「違うからこそ、前に進めるんだ!!」
リュウモン「俺達の未来は、俺達が創る!!」
イチカ「未来を夢見る、邪魔をするな!!」
自らの考えを否定された後は、機械のように「全てを一つに……」と連呼しながらスフィアシューティングストリームを発射するマザーだったが、ナースキャノンやハイパーソーンレーザーを受け怯んだところへTRメガバスターの直撃を受け、遂にコアに亀裂が入る。
それでも体を震わせながら、向かってくるデッカーと最終的にスフィアトルネイダーとセルジェンド光線の正面衝突となり、最初は優勢になるが、デッカーは叫びと共に(エタニティコアの影響か)その姿を黄金に輝かせ、セルジェンド光線も眩い程の金色に変化。
そのままカナタの気合の前に押し切られ、とうとう弱点のコアが破砕。
「全てを一つに……全てを一つに……全ての命を一つに……」
壊れた機械のようにそう繰り返しながら、マザースフィアザウルスは爆発四散。
世界中や火星に散らばっていたキングスフィアとスフィアソルジャーも、マザーの爆発の波動に巻き込まれるかのように消滅する(もっとも、スフィアは元より群体じみた個体である為、大元たるマザースフィアザウルスの死亡によって、それから分裂発生したスフィアも連鎖的に死滅したと考えた方が妥当かもしれない)。
地球を覆っていたバリアも消え、宇宙に置き去りにされていた人々も、無事地球に帰還出来るようになった。
こうして身勝手な善意を振りかざした侵略者・スフィアは、自らが否定していた個々の生命の力によって野望を完全に潰され、遂に滅び去ったのだった。
余談
デザインを担当した後藤正行氏のTwitterによると、「ラスボスなんで造形スタッフに無理言ってともかくデッカイ怪獣にしてもらいました」との事。
正面から見たシルエットは『ウルトラマンジード』に登場したキメラベロスに似ているが、改造なのかは不明。なお、キメラべロス自体は『ウルトラマンタイガ』にてナイトファングに改造予定だったもののキャンセルになった経緯がある。
『デッカー』のラスボス怪獣でありながら、劇中で最初に対面したウルトラ戦士はトリガーであり、主役以外のウルトラマンが最初に交戦する珍しいケースとなった(宇宙人系統であればエンペラ星人やウルトラマンベリアル アトロシアスが存在する。前者はウルトラの父やウルトラマンヒカリ、後者はウルトラマンゼロが戦っている)。
TV本編において、一度に複数のウルトラ戦士達と戦ったラスボス怪獣は少なくはないが、現役の主役ウルトラマンと前作ウルトラマンを相手に戦うのは、ウルトラシリーズの歴史ではこのマザースフィアザウルスが初となる。
前作のメガロゾーアに続く女性CVのラスボス怪獣であり、女性CVのラスボスが連続するのはウルトラシリーズに限らず、特撮ヒーロー作品全体で見てもかなり珍しい(元となったTDG三部作に見られたのと同じ傾向でもある)。
また、マザーの声を担当した大原さやか女史は、特撮作品への参加は『仮面ライダーゴースト』以来2度目となる。
凶悪極まりない外見に反してとても穏やかな言葉使いだったが、最終的に「全てを一つに……」を譫言のように繰り返していた為、取り込んだ対象を緩やかに屈服・諦念させるor自らの本能を正当化させる為のポーズに過ぎなかったと思われる(純粋に唯一無二の存在による恒久的な平和の構築を望むだけならば、エタニティコアの力を取り込む必要性はほぼ皆無であり、マザーの目論見通り、唯一無二の存在だけの世界になれば強大な力を奪い合う事態が起きない……以前に、それを得て振るう必要性すらない為)。
『ウルトラマンマックス』の主人公トウマ・カイト役の青山草太氏は、本作最終回をリアルタイムで見ていた事をツイートしている。
関連タグ
ウルトラシリーズ
暗黒惑星グランスフィア:『デッカー』の原典である『ウルトラマンダイナ』のラスボス。こちらは怪獣形態は存在しない。
クイーンモネラ:『ダイナ』の劇場版にて、ティガとダイナの2大ウルトラマンを相手に戦ったボス怪獣。
ジャンボキング、カオスダークネス:元号上4番目のラスボス繋がり。前者は別名が「“最強”超獣」で、『デッカー』にも登場したヤプールの怨念が超獣達を合体させた、『ウルトラマンA』本編における切り札。後者もナレーションで「最強のカオスヘッダー」と称されているだけでなく、怪獣に憑依してコピーする能力を持つカオスヘッダー(本作のスフィア自体、カオスヘッダーと設定上の類時点が多い)の本体が実体化して戦闘形態を得た姿で、かつ初戦が地球ではなく月面。さらには通常形態ではなく最強タイプのウルトラマンとの初戦だったりと、両者共に共通する描写や設定がかなり多い。
ゾグ:『ウルトラマンガイア』のラスボスで、主役ウルトラマンを完全に変身不能に追い込んだ点が共通する。また、第1形態は人間の女性に近い姿で演者も女性、第2形態は正面から見るとフォルムもマザースフィアザウルスと若干似ている。
ダークルギエル:『ウルトラマンギンガ』のラスボスで「幸福の中で全ての生命の時間を止める」という、マザースフィアと同様に独り善がりな善意を押し付けようとした。
ギルバリス:『ジード』の劇場版に登場したボスで、「宇宙の平和の為に有機生命体を不要と見なす」という、これまた独善的な正義論を振りかざす存在。最期は、主役ウルトラマンの驚異的な力を前に「理解不能……解析不能……」という言葉を譫言のように繰り返しながら倒された。
ルーゴサイト、ウーラー:平成の最終作並び令和の第1作のラスボスであり、どちらも幾つもの惑星を貪ったとされる怪獣。ただし、前者は本来の生態を狂わされた、後者は体内のブラックホールにより永遠の飢餓に苦しんでの暴走と、いずれもスフィアと行動指針が異なっている。また、ルーゴサイトとウーラーは共にマザースフィアザウルスと同様、物語の真の黒幕が原因で地球へ呼び寄せられ、ウルトラマン達と戦う事態となったという共通点がある。さらにルーゴサイトは、初出作品のメイン監督が『デッカー』と同じ武居正能監督という共通点もある。
イルド:『ウルトラマンティガ』に登場した宇宙人で、ラスボスではないもののほぼ同じ凶行をしていた。
他作品
スペースゴジラ:結晶型の隆起した肩を持つデザインが酷似している怪獣。それ以外にも、地上に打ち込んだ結晶からエネルギーを供給する、結晶体の比率が高い独自の飛行形態を持つなど、生態や能力において共通点が多い。
メガヘクス:個の存在は不要とし、全てを統合する為に地球に侵略してきた特撮悪役繋がり。体の配色や、胸に青いコアを持つ点も似ている。
ジェダ・ドーマ、AI1:全てを一つにする為に融合を目論んだラスボス繋がり。
エラス(リュウソウジャー):女性声優による特撮ラスボス繋がり。また、カナタ達とマザースフィアザウルスのやり取りは、エラスと主役とで交わされた「完全な存在による一切の間違いがない状態こそが、唯一無二の平和である」と「不完全な存在だからこそ何度でもやり直し、より良い未来を築き残せる」とする問答とも類似している。
氷川総司令:方向性は異なるものの、人々が持つ可能性を「世界を徒に消耗させる欲望」と否定し、夢も希望もない停滞した世界を創世しようとした人物。
総統メビウス、ジョージ・クライ:同じように宛の無い善意を押し付けたプリキュアシリーズのラスボス達。ジョージ・クライは“自らの実体験からの帰結故の行為”であり、哀しき悪役の要素はあるものの、総統メビウスは“想像主を見限った挙げ句の傲慢による暴走”と、マザースフィアに通ずる要素がある。
令和ウルトラシリーズのラスボス
メガロゾーア→マザースフィアザウルス→????