概要
信長の妹・市を母とした浅井三姉妹で、徳川二代将軍・秀忠の正室であり三代将軍家光の生母となる「江」を主人公に、女性視点からホームドラマやラブストーリー要素をふんだんに盛り込んだ戦国時代~江戸時代初期を舞台にしたオリジナルドラマ。
登場人物
- 江(上野樹里)
- 淀(茶々)(宮沢りえ、幼少期:芦田愛菜)
- 初(常高院)(水川あさみ、幼少期:奥田いろは)
- 織田信長(豊川悦司)
- 市(鈴木保奈美)
- 浅井長政(時任三郎)
- 浅井久政(寺田農)
- 赤尾清綱(油井昌由樹)
- 須磨(左時枝)
- ヨシ(民部卿局)(宮地雅子)
- サキ(大蔵卿局)(伊佐山ひろ子)
- ウメ(和泉ちぬ)
- 織田信包(小林隆)
- 織田信忠(谷田歩)
- 織田信雄(山崎裕太)
- 織田信孝(金井勇太)
- 三法師(織田秀信)(庄司龍成→西村亮海)
- 柴田勝家(大地康雄)
- 佐久間盛政(山田純大)
- 斎藤利三(神尾佑)
- 森蘭丸(瀬戸康史)
- 森坊丸(染谷将太)
- 森力丸(阪本奨悟)
- 佐治一成(平岳大)
- 丹羽長秀(江連健司)
- 池田恒興(武田義晴)
- 佐々成政(中原裕也)
- 明智光秀(市村正親)
- 豊臣秀吉(岸谷五朗)
- なか(大政所)(奈良岡朋子)
- 豊臣秀次(北村有起哉)
- 豊臣秀勝(AKIRA(EXILE))
- 豊臣秀長(袴田吉彦)
- 豊臣秀頼(太賀)
- 旭(広岡由里子)
- 完(山本舞香)
- とも(阿知波悟美)
- 宇喜多秀家(斉藤悠)
- 羽柴秀勝(斉藤秀翼)
- 細川ガラシャ(ミムラ)
- 清原マリア(吉田羊)
- 細川忠興(内倉憲二)
- 細川忠利(中川大志)
- 細川幽斎(小田豊)
- 京極龍子(鈴木砂羽)
- 京極高次(斎藤工)
- 石田三成(萩原聖人)
- 島左近(中村育二)
- 黒田官兵衛(柴俊夫)
- 黒田長政(長谷川公彦)
- 真田幸村(浜田学)
- 真田昌幸(藤波辰爾)
- 上杉景勝(和田唱)
- 大野治長(武田真治)
- 片桐且元(三田村邦彦)
- 前田利家(和田啓作→大出俊)
- 古田織部(古澤巌)
- 福島正則(金山一彦)
- 加藤清正(横山一敏)
- 毛利輝元(浜田晃)
- 副田甚兵衛(住田隆)
- 後藤又兵衛(木村栄)
- 毛利勝永(青山義典)
- 孝蔵主(山口果林)
- 本多正信(草刈正雄)
- 本多正純(中山麻聖)
- 本多忠勝(苅谷俊介)
- 天野康景(鶴田忍)
- 酒井忠次(桜木健一)
- 大久保忠隣(阿藤快)
- 林羅山(林泰文)
- 酒井忠利(石井洋祐)
- 池田幸隆(澁谷武尊)
- 北条氏政(清水紘治)
- 北条氏直(岩瀬亮)
- 朝倉義景(中山仁)
- 武田勝頼(久松信美)
- 足利義昭(和泉元彌)
- 近衛龍山(江良潤)
- 近衛信尹(杉崎真宏)
- 金地院崇伝(コビヤマ洋一)
- 大姥局(加賀まりこ)
- 築山殿(麻乃佳世)
- 松平信康(木村彰吾)
- 結城秀康(前田健)
- 徳川秀忠(向井理、幼少期:嘉数一星)
- 千姫(忽那汐里、幼少期:芦田愛菜)
- 徳川家光(木咲直人)
- 徳川忠長(今川智将)
- 徳川和子(上白石萌音)
- 福(春日局)(富田靖子)
- なつ(朝倉あき)
- 千利休(石坂浩二)
- おね・北政所・広台院(大竹しのぶ)
- 徳川家康(北大路欣也)
問題点
これまでの映像作品ではお座なりにされがちだった「女性視点での戦国時代」を描こうとした点では2002年の大河ドラマ『利家とまつ』等と並ぶ意欲作といえる。
ただし、ストーリー内容や演出が奇抜を極めたことにより多数の視聴者が困惑する事態となった。
まず、当時の実際の年齢と役者の年齢の齟齬があまりにも酷い。(江:6歳・上野:25歳)。
歴史的事実を無視した特徴的な脚本に「ホームドラマ時代劇」や「わざわざ大河枠でやる内容ではない」と揶揄されるありさまであり、このキャスティングの問題も放送終了まで批判の的となってしまった。実際に作品を見た人なら分かるだろうが、幼児になりきる上野の演技のシュールさときたらない。
のみならず、指摘を受けても脚本の方向性を改めもしなかったことも批判された。
他にも、「江が家康と一緒に伊賀越えする」、「謀反を興した明智光秀を江が説教する」、「近江と江戸の移動がおかしかしい」、「大阪の陣での秀忠の言動が史実と大いに異なる」など、骨太がウリなはずの大河ドラマにあるまじき謎要素を歴史的事件に無理やり絡めたことや史実を無視(※)した内容などが多く指摘された。
※史実と異なる展開は評価の高い大河でもよくあることだが、それらの大河の多くは歴史の雰囲気を壊さずに描いているため悪く言われていない。むしろ、史実と創作の差分の妙技こそが大河ドラマの真骨頂と言える。しかし、この大河はやり過ぎというレベルである。主人公である江は、確かに現代こそ浅井三姉妹の末っ子という「有名人」だが政治的な影響力を行使できるようなったのは事実上徳川秀忠の正室になって以降のこと(少なくとも時の実力者である戦国武将に一方的に悪態をついたりを説教できる立場にはない。織田信長の正室であった濃姫でさえその点は弁えていたりする。辣腕を振るったとされる豊臣秀吉の正室であるねねや江の姉でもある淀君は例外中の例外であり、しかも後世の講談などで誇張されている部分さえある)であり、戦国時代のハイライトに絡ませるには多少強引な展開になるのはいたしかないとしてもその「江無双」の凄まじさは結果的に裏目に出ることになった。端的に言えば、歴史ものとしての原作クラッシュさが常軌を逸しすぎたのである。
まとめると、ライト向けともファンシー的とも形容し難い内容が祟ってあらゆる意味で大河ドラマらしくないと方々で評価されてしまったのである。
作品の歴史考証に参加した学者はスタッフから押し切られる形で通された演出で作られたと述べ、学者仲間からも非難を受け、作品と史実との違いには自らも苦言を呈した。
「スイーツ大河」「ファンタジー大河」「のだめカンタービレにしか見えない」だという批判も多く、評価も視聴率も低い結果に終わる。
その酷さは評価の低い作品の多い21世紀大河においても最低・最悪と言っても過言ではない。『週刊新潮』2011年12月29日号で「第1回新潮ラズベリー賞」(アメリカの最低映画賞「ゴールデンラズベリー賞」にちなんだ、2011年の日本の最低ドラマを選ぶ企画)において、本作は最低ドラマ賞に選ばれ、主演の上野も最低主演女優賞に選ばれてしまった。
これに加えて、同作の脚本をつとめた田渕久美子が、以前にも脚本をつとめた大河ドラマ『篤姫』(2008年)では歴史考証を尊重し且つ比較的に重厚なストーリーで好評を得ていたにもかかわらず、前述のように今作では一転して思いっきりぶっ飛んだ内容でゴリ押していた事実も酷評に拍車をかけた。
田渕自身は「この時期に自分の夫と死別してしまいメンタル的に万全でなかった」(要約)と釈明している。
(もっとも、作品自体のクオリティが問われるレベルで挑戦的な内容にした説明にはなっていないため、現在でもこのコメントを胡乱に捉えるユーザーが跡を絶たない。)
良くも悪くも同作の評価が大混乱を極めたことにより、特に2000年代から徐々に不安視されていた時代劇ものとしてはおよそ不釣り合いな(かなり露骨な)フェミニズム要素の導引と、これに連動するかのように『武蔵MUSASHI』や『天地人』といった既存ユーザーが悲鳴をあげるレベルの迷作が出現したことで、一部から呟かれていたNHKが大河ドラマの方向性を見失い出しているという懸念の声が顕在化してしまう事態になる。 これを前後して、ネット上を中心に「これからの大河ドラマって何を目指すべきか」とか「今年の大河の総合的なクオリティは大丈夫か否か」といった議論がユーザー間でも頻繁に取り交わされるようになり、以降の大河制作にも大きな影を落とす結果となった。(この時期、2ちゃんなどでは「江のような史実に重きを置かない作品もありなら、もういっそ銀英伝を大河にしたらどうだ」という意見も割と真剣に取りざたされていた)
そして……俗に言う「脱・大河ドラマ」的に奇抜な演出に走りストーリーとしてもひどく前衛傾向な作品は、大河ドラマの既存ユーザーの需要を無視するものとして地雷視される傾向が強くなる結果にもなってしまった。
ただし男性陣の描き方とそれを演じる俳優の評価が高く、特に豊川悦司演じる織田信長に至っては「歴代トップクラス」と称され、北村有起哉演じる豊臣秀次に至っては真田丸の三谷幸喜がそれをお手本としたほど。
余談だが、2000年の大河ドラマ「葵徳川三代」において、江を演じた岩下志麻も、ドラマ開始時(1599年〉の江の年齢と実年齢がかなりずれていたことも付記しておく(江:26歳、岩下:当時59歳〉・・とはいえ、徳川家康役の津川雅彦、徳川秀忠役の西田敏行、石田三成役の江守徹をはじめ、配役の主要メンバーはベテランがかなり多かったのも事実であり、「江」ほど史実から外れなかったのも事実だが‥。
関連タグ
その当時にブームを引き起こしていたゲーム作品。戦国武将を元にしたキャラクターでバトルする内容だが、浅井三姉妹の母親であるお市をはじめ女性キャラも多数登場している。
多数の若年層が戦国時代に興味を持つきっかけを作る功績を残している反面、実際の人物像や正史とはかなり改変されている部分が多い。大河ドラマ『江』が前述のような内容になったのはこれらのゲームユーザーを取り込もうとした結果なのではないかと当時のSMSでは囁かれていた。
簡単に言うと、現代の高校生が戦国時代にトリップしてしまい当時の戦国武将と対面する物語。内容的には当時の人物がかなり現代的な価値観を持っていたりなど時代性にそぐわない部分も多々あるものの、ジャンル的にはSFや伝奇の系列でもあるためあくまで仕様として捉えられていて、好評さえ得ている作品。『アシガール』に至ってはNHK総合で実写ドラマ化された。