仮面ライダーW
かめんらいだーだぶる
俺たちは/僕たちは、二人で一人の仮面ライダーさ!
概要
『平成仮面ライダーシリーズ』第11作目。2009年9月から2010年8月まで、テレビ朝日系列で放送された。
前作『仮面ライダーディケイド』と違い、「W」だけでは何を表しているかが判りづらく、検索にも不向きなので、「仮面ライダーW」という正式名称がタグとして主に使われている。
以降の作品でも、正式名称をタグとして用いる方式が主流になった。
キャラクターとしてのプロフィールは仮面ライダーダブルを参照。
風都という街で蔓延る悪と戦うご町内ヒーローにして史上初となる「二人で一人の仮面ライダー」。
体の色が完全な左右非対称という、奇抜揃いの平成ライダーの中でも特に奇抜な配色が最大の特徴となっている。
見た目が酷似していることから、同じ東映製作かつ石ノ森章太郎原作の「キカイダー」や、フジテレビ放送のコント番組「笑う犬シリーズ」に登場する「センターマン」の名が愛称として使われることがある。
「ソフト帽を愛用し、ハードボイルドを気取るもののズッコケる事の多い探偵が主人公」「一風変わった街の仲間たち」「主人公に突っかかってくる刑事」など、世界観やキャラクター造形は、松田優作主演の「探偵物語」をオマージュした部分が多い。鳴海探偵事務所に置いてあるデスクは、「探偵物語」の撮影時に実際に使われていたものとの事。
名前である「W」は、ネットスラングにおいて「笑い」を表す感嘆符であるため、おふざけで"仮面ライダーw"とも呼ばれてしまう。
「W」はあくまで大文字で。小文字にしたり大量に並べたりしないこと。
総合的な評価
前後編構成や相棒キャラの登場、コメディ要素を交えた内容など後続の作品に受け継がれた要素も多く、後のシリーズにも大きな影響を与えた作品でもある。
作りこまれた設定の他、敵役から脇役に至るまで魅力的なキャラクター達、細かく張り巡らされた伏線が大団円に向けて収束していく総じて高いストーリーとシナリオの完成度など、現在でも平成ライダーの中でもトップクラスの根強い人気を誇る作品である。
物語は園咲家率いる秘密結社『ミュージアム』との暗闘を主軸に二話完結型の様々なエピソードを絡めた構成となっており、その内容も抱腹絶倒のコメディから、単純に善悪を論じられないビターな余韻を残すものなど、飽きさせない工夫が見られる。(ただ、その二話完結型が年末に裏目に出ることとなってしまった。)
本作の怪人(ドーパント)は従来のライダー作品の中でも特にトリッキーなモチーフと能力を持たされており、「怪人(犯人)は誰なのか?どのような能力の持ち主で、それを攻略するにはどうすればいいのか?」を物語の基本的なフォーマットとして、推理ものをベースとした作劇がなされている。
また、他作にも要所で見られたが「人間が怪人となって意図的に悪事を働く」といったものを本格的に取り扱った作品であり、謂わば「人間も怪人と変わらない存在である」ということをより明示させる形となっている。
敵役となる犯人達も、我欲のまま力を振るう単純明快な悪人から、ささやかな善意を黒幕に利用されて悪事に加担させられた者、抜き差しならない事情から悪事に走るしかなかった者まで様々。
探偵&刑事をヒーロー、犯人を悪役という日常的な正義に落とし込んでいるだけあり、従来のヒーローものの正義観とは一線を画した上で、なお分かりやすい構図を見せているのも特徴に挙げられる。
放映終了後も平成ライダー初となるVシネマによるスピンオフ作品『仮面ライダーW_RETURNS』や、近年でも漫画媒体による純粋な続編(新シリーズ)である『風都探偵』等が展開され、その裏表紙には、『平成ライダー最高傑作』と謳われており、その人気の高さが窺える。
2021年に行われた「全仮面ライダー大投票」では、作品部門で第2位、キャラクター部門でも第2位、音楽部門ではOP曲の「W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜」が6位といずれの部門でもトップクラスであった。
また、キャラクター部門においては劇場版キャラクターであるエターナルが17位、ジョーカーが20位、作品部門では『運命のガイアメモリ』が第19位といずれも高い順位をキープ。なお、『運命のガイアメモリ』以外にランキング入りした劇場作品は同じく劇場版最高傑作との呼び声高い『REAL×TIME』、「平成」の集大成『平成ジェネレーションズFOREVER』、『Over Quartzer』の三作品だけである。
あらすじ
1年前の2008年、私立探偵の鳴海荘吉とその弟子の左 翔太郎は、謎の組織に拘束されていた少年を助け出す。脱出の途中に荘吉が追手の凶弾に倒れ、残る2人も絶体絶命の窮地に陥る中、少年は翔太郎に謎の機械を渡し、こう告げた。「悪魔と相乗りする勇気、あるかな?」
そして2009年の秋。あらゆる場所で風車が回る風の街風都において、荘吉の後を継いで探偵業を営む翔太郎と1年前に救出された少年、フィリップの元に荘吉の娘である鳴海亜樹子が事務所からの立ち退きを要求しにやってきた。翔太郎に付きまとううちに、亜樹子は風都で怪事件を起こす怪人「ドーパント」の存在を知る。そして、翔太郎とフィリップが変身する風都を守る戦士「仮面ライダーW」の戦いに深く関わっていくことになる。
敵怪人の特徴
今作の敵怪人であるドーパントも、仮面ライダー同様ガイアメモリを使用して変身する(なお、仮面ライダーが使用するガイアメモリは別経路で精錬されたものであり、ミュージアムが流通させているガイアメモリとは外装や性質が異なっている)。
一般人が何者かへの恨みから変身していることも多く、後の『仮面ライダーフォーゼ』におけるゾディアーツ、『仮面ライダーリバイス』におけるデッドマン(フェーズ2以上)などの一般人がアイテムを得て変身する怪人の先駆けとなった。
一般ドーパントの場合は、市販のガイアメモリを手術によって施した生体コネクタへ挿して変身する。
園咲家(ミュージアム)の幹部ドーパントの場合は、腰に装着したガイアドライバーにメモリを挿して変身することになる。
幹部たちがガイアドライバーを使用しているのは、ガイアメモリの毒を濾過して有益な力のみを得るため。メモリを"直挿し"している一般のドーパントはガイアメモリの毒に当てられ、心身ともに中毒症状を呈していく。
ちなみに、彼らが変身する際には仮面ライダーたちのような掛け声はない。
正体が女性であることも多いため、作品全体が「悪女が多い仮面ライダー」とも云われている。そのため、「風都の女」というワードが作品の代名詞ともなっている。
『風都探偵』のコメントにて、これが探偵物を意識した意図的なものであることが言及されており、ネタにしたエピソードまで存在する。
登場キャラクター
ミュージアム
- 園咲琉兵衛 / テラー・ドーパント…演:寺田農
- 園咲冴子 / タブー・ドーパント / Rナスカ・ドーパント…演:生井亜実
- 園咲若菜 / クレイドール・ドーパント…演:飛鳥凛
- 園咲霧彦 / ナスカ・ドーパント…演:君沢ユウキ
- ミック / スミロドン・ドーパント…CV:高戸靖広
- 井坂深紅郎 / ウェザー・ドーパント…演:檀臣幸
周辺人物
財団X
- 加頭順 / ユートピア・ドーパント…演:コン・テユ
呼称表
| 翔太朗 | フィリップ | 亜樹子 | 竜 |
---|---|---|---|---|
翔太朗 | 俺 | フィリップ | 亜樹子 | 照井 |
フィリップ | 翔太朗 | 僕 | 亜樹ちゃん | 照井竜 |
亜樹子 | 翔太朗君 | フィリップ君 | 私 | 竜君 |
竜 | 左 | フィリップ | 所長 | 俺 |
仮面ライダー
本作の仮面ライダーは、シュラウドが開発した変身ベルトに、適合するガイアメモリを装填することで変身する。
使用するガイアメモリは、ドーパントが使用する生物的なデザインのものではなく、直方体型のUSBメモリ然としたデザインである。
仮面ライダーは変身に使用したガイアメモリに秘められた「地球の記憶」の種類に応じた能力を得ている。
メタ的な共通点として、主要なライダー4人は名前の最後が「ル」となっている。
☆は本編未登場。
仮面ライダー | 変身者 | 使用ベルト |
---|---|---|
仮面ライダーダブル | 左翔太郎&フィリップ | ダブルドライバー |
仮面ライダーアクセル | 照井竜 | アクセルドライバー |
仮面ライダースカル☆ | 鳴海荘吉 | ロストドライバー |
仮面ライダーエターナル☆ | 大道克己 | ロストドライバー |
仮面ライダージョーカー | 左翔太郎 | ロストドライバー |
仮面ライダーサイクロン☆ | フィリップ | ロストドライバー |
各話リスト
音楽
作詞:藤林聖子/作曲:鳴瀬シュウヘイ/編曲:TAKUYA、鳴瀬シュウヘイ/歌:上木彩矢 w TAKUYA
OP主題歌。
Cyclone Effect
作詞:藤林聖子/作曲:AYANO/編曲:Labor Day/歌:Labor Day
サイクロンジョーカーテーマソング。アレンジ版として「acoustic edit.」も存在している他、作中でも実際に存在する曲として扱われている。
Finger on the Trigger
作詞:藤林聖子、鬼音鼓/作曲・編曲:五十嵐“IGAO”淳一/歌:Florida Keys
ルナトリガーテーマソング。作中でも存在する曲らしく、翔太郎の十八番である。
桐山漣と菅田将暉の歌ったバージョンはCD化されなかったが、「平成仮面ライダー20作記念ベスト」にて収録されている。
Free your heat
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:Ryo/歌:Galveston 19
ヒートメタルテーマソング。
Glorious street 栄光の道
歌:Florida Keys
第8話で登場。
Naturally
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:鳴瀬シュウヘイ/歌:園咲若菜(飛鳥凛)
園崎若菜のテーマソング。作中でも若菜が歌う人気曲として登場。
ネット版では井坂深紅郎が歌唱している。
Leave all Behind
作詞:藤林聖子/作曲:Ryo/編曲:Wilma-Sidr/歌:Wilma-Sidr
仮面ライダーアクセルテーマソング。Vシネマでは主題歌に採用されている。
Love♡Wars
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:鳴瀬シュウヘイ/歌:Queen & Elizabeth
クイーン&エリザベスのキャラクターソング。
Nobody's Perfect
作詞:松井五郎/作曲:鳴海荘吉/編曲:菅原弘明/歌:鳴海荘吉
Extreme Dream
作詞:藤林聖子/作曲:AYANO/編曲:Labor Day/歌:Labor Day
サイクロンジョーカーエクストリームテーマソング。
cod-E 〜Eの暗号〜
作詞・作曲:松岡充/歌:SOPHIA
仮面ライダーエターナルテーマソング。Vシネマの主題歌に採用。
関連作品
劇場版
メインタイトル
2009年12月12日公開。
本作と前作『仮面ライダーディケイド』のクロスオーバー作品。TVシリーズの第12話と第13話の間に位置するエピソード。
2010年8月7日公開。
本作の単独作品。TVシリーズの第44話と第45話の間に位置するエピソード。
2010年12月18日公開。
本作と次回作『仮面ライダーオーズ/OOO』のクロスオーバー作品。ファイナルステージの後日談。
2011年12月10日公開。
『仮面ライダーフォーゼ』と『仮面ライダーオーズ/OOO』のクロスオーバー作品。TVシリーズ、劇場版、そしてVシネマの、『仮面ライダーW RETURNS』までを含めた後日談。本作から左翔太郎&フィリップや財団X、ドーパントが登場。
Vシネマ
2011年に発売されたVシネマ。全2作。
照井竜が主役の『仮面ライダーアクセル』は、『MOVIE大戦CORE』の後日談。
大道克己が主役の『仮面ライダーエターナル』は、過去パートは『AtoZ』の前日譚だが、現代パートは『MOVIE大戦CORE』より後の時期になる。
スピンオフ
- 『左翔太郎のハードボイルド妄想日記』
セル版DVDのVOL.1以降1話ずつ収録されているミニドラマ。
左翔太郎の妄想という体で進行するのでネット版のノリに近い。
監督は後に新世代ヒーローズを担当する伊藤良一氏、脚本は用田邦憲氏。
エピソードタイトル | 登場怪人 |
---|---|
もしも亜樹子が優秀な秘書だったら | ティーレックス・ドーパント |
もしも亜樹子が市議会議員だったら | コックローチ・ドーパント |
もしも亜樹子がメイドだったら | バイラス・ドーパント |
もしも亜樹子が怪盗だったら | バイオレンス・ドーパント |
もしも竜が探偵だったら | バード・ドーパント |
もしも亜樹子がアイドルだったら | トライセラトップス・ドーパント |
もしも亜樹子がマジシャンだったら | パペティアー・ドーパント |
もしも亜樹子が【極妻】だったら | ナイトメア・ドーパント |
もしも亜樹子が妹だったら | ウェザー・ドーパント |
もしも亜樹子が殺し屋だったら | ジーン・ドーパント |
もしも亜樹子がおばあちゃんになったら | ジュエル・ドーパント |
もしも誰もがハードボイルドだったら | テラー・ドーパント |
余談
制作経緯
本作は『仮面ライダーキバ』が放送されていた2008年から企画がスタートしており、当初の予定ではキバの後番組となる予定であった。
しかし、テレ朝の悲願にしてバンダイからの無茶振り(平成ライダー10周年記念作品制作およびスーパー戦隊シリーズと開始時期をずらす放送時期調整)によってWの放送は延期されることになり、当初はガンバライドオリジナルキャラクターとして制作されていたディケイドのテレビ放映が急遽企画され、こちらが先に放送された。
そのような経緯もあってか本作は従来よりも企画を練る時間が長く与えられ、初期案からかなり大きく変わっていったとされている。
初期案では風の街…ではなく水の街・水都が舞台で、1人の人情派探偵・フィリップ(…という名前の左翔太郎ポジション)が主人公だった。彼はダブルドライバーを介して自らの身体(ボディ)に、彼の心の師であるおやっさん・鳴海荘吉の魂(ソウル)を宿らせることで2人で1人の仮面ライダーダブルに変身するというものであった。
早い話が、当初から探偵ストーリーではあったものの、所謂「バディ物」路線では無かったのである。
やがて企画が煮詰められ、ハードボイルドに憧れるがどこか空回り気味の人間味溢れる探偵主人公・左翔太郎と、それと対をなすようにハードな人生を背負ってきたクールな相棒・フィリップが互いに支え合う2人で1人の仮面ライダーという、本作を象徴する現在のフォーマットが確立した。
そしてこの時に、ダブルのデザインも踏襲して半人前を意味する『ハーフボイルド』というキャラクター造形が翔太郎に付与された。