概要
本家ポケモンシリーズの対戦において、大会常連だったり使用率上位なポケモンのこと。
第三世代あたりから使われ始め、第四世代の『バトレボ』およびニコ動の流行によって爆発的に広まった。当初は蔑称の意味合いが強かったが、第五世代でガチ対戦が一般的になると単に”強い”ことを指すようになった。
第九世代現在はシーズン制で頻繁に環境が変わることや、「厨」という言葉自体が通じなくなったこともあって死語になりつつある。普通に「使用率上位」とか「主流」と呼ばれることの方が多い。
なおミュウツーなど一部の伝説のポケモンは「禁止級」と呼ばれ、厨ポケ扱いはされない。一応、第八世代以降は参戦可能になったが、その頃には「厨ポケ」という言葉自体が使われなくなっていたため、やはり厨ポケ呼びは下火である。
由来
中坊(中学生)の誤字である「厨房」と「ポケモン」を合わせたネットスラング。
90年代後半はパソコンの普及率が低く、ネットを利用するのは収入のある高校生以上に限られていたが。しかし00年代に入って各家庭のネット事情が改善されると、掲示板や攻略サイトに小中学生が流入するようになり、各地で荒らし等の問題を起こすようになった。
ここから「立場を弁えない問題児」「空気の読めない子供」と言った意味合いで厨房というスラングが出来上がり、中でも特定のジャンルにこだわる輩を〇〇厨(今でいう〇〇キッズ)と揶揄するようになった。
そしてこれが対戦/オンラインゲーム界隈にも伝わり、明らかに調整不足なキャラクター/武器を「キッズが適当に振り回しても強い」といった意味合いで厨キャラ/厨武器等と呼ぶようになった。
厨ポケも同じで第3~4世代であまりに突出した性能を持つポケモンに対し、キッズでもゴリ押しで勝てるポケモンとして「厨ポケ」のレッテルを貼る風潮が生まれた。その是非について掲示板等で盛んに議論が行われた。
厨ポケの功罪
なぜ厨ポケが生まれたのか
結論から言えば公式側の調整不足である。
種族値が高すぎ/配分に無駄がなさすぎ
ポケモンには「種族値」と呼ばれるステータスが各々設定されており、これをもとに戦い方を決める。攻撃/特攻に優れていたらアタッカー、HP/防御/特防なら耐久、素早さならサポート等。
評価基準は人それぞれだが120~130ほどあれば高いとされる。80~100程度でも特性や変化技でフォローできるなら採用圏内である。
ただし種族値が1つ高いだけでは強いとは言えない。例えばアタッカーならいくら火力が高くても、攻撃する前に倒れたら意味がない。だから相手より先に動くか、相手の攻撃に耐えないといけない。なので上の条件に加えて、激戦区を抜ける素早さ(80~)、もしくは平均以上のHP/防御/特防(80程度)が必要になる。
耐久も同じで、防御120でもHP50しかなかったら実際の物理耐久は並である。なので受けにするなら、高めの防御/特防に加えてHPも80~は欲しい。
しかし実際のところそんな都合の良い種族値を持つポケモンは限られており、大抵は配分に無駄があってそこが弱点になる。そこをどう補っていくか、トレーナーの腕の見せどころである。
そんな絶妙なバランスの中、極めて高い攻撃、平均以上のHP/防御/特防、激戦区を抜ける素早さ、しかし不要な特攻は低いといった完璧な種族値配分のポケモンがいたら、それだけで環境トップの素質を持っていることになる。
タイプに恵まれすぎ
ポケモンには他の多くのゲームと同じく「タイプ(属性)」が設定されており、その相性によって技の威力が倍増したり半減したりする。タイプの優劣による読み合いが対戦の醍醐味である。
しかし本来ポケモンには対戦を実装する予定はなく、対戦バランス度外視で優劣が設定されたため、実のところタイプ格差はかなり酷い。等倍範囲広すぎのドラゴン(第五世代以前)、弱点少なすぎのノーマル、耐性多すぎの鋼(第七世代以前)、逆に弱点多すぎな草/岩/氷、攻撃面が貧弱な虫etc...
岩や氷は攻撃面では非常に優れるタイプであり、相手を速攻で倒すことでよってほとんどデメリットをある程度無視できるような強力なポケモンがいる一方、デメリットが致命的なレベルの足枷になっているポケモンもいる。同タイプ間での格差も激しい。
加えてタイプを二つ持つ複合タイプのポケモンはタイプ一致技も二つ持っていることに加え、互いに弱点を打ち消しあったり、替えの効かない耐性を持っていたりといった強みがある一方、単タイプのポケモンにそういった強みがないということも指摘されている。
だからといって今更タイプ相性を変えると混乱を引き起こす恐れがある。なので強いタイプにはある程度ハンデを与える等して、バランスを取っていく必要がある。ドラゴンは等倍範囲が広いからサブウェポンは与えない、鋼は攻撃面を弱くする等。
豊富なサブウェポンを備えるドラゴン、攻撃面も最強格のはがね等、タイプ面で優遇されているのに何もハンデがないポケモンがいたらバランスブレイカーに成りかねない。
習得技の範囲が広すぎ
ポケモンの技には上記のタイプ以外に物理/特殊の区別があり、それぞれ多種多様な技が存在する。なのでタイプ相性、攻撃/特殊のバランスを考えて技を覚えさせていく。
例えば攻撃特化のドラゴン/地面タイプだったら...
- タイプ一致の物理技として「げきりん」「じしん」
- 第6世代で竜無効のフェアリーが出てきたので、対策の毒技「どくづき」
- 鋼/飛行みたいな変わり種が出てきたら困るから、保険として炎技「ほのおのキバ」
...あたりが欲しい。しかしこんな都合の良い技ばかり覚えられたら、相性不利な相手にも対抗できる無敵のポケモンとなってしまう。そのためあえて覚える技を制限したり、扱いに困るようなトリッキーな技を与えたりしてバランスを取る必要がある。
また、他にもキノガッサの「キノコのほうし」の様に自身より遅いポケモンの対戦参加権を無くしかねない強力な技を持っているだけで厨ポケと揶揄される存在もおり、当時の調整不足を象徴として挙げられる事も多い(後にくさタイプに粉/胞子技無効の処置を取られた)。
特性が強すぎ
ポケモンには「特性」というバトルを有利に運ぶための能力があり(第3世代以降)、これを如何に上手く使うかが勝利の鍵である。一見弱そうなポケモンでも、特性を上手く使えば相手をパターンに嵌めたり、大ダメージを出したりできる。
当たり前だが、特性が強すぎるとゲームバランスを崩壊させる恐れがある。だからと言って弱い特性ばかりだと何も面白くない。なので強い特性には発動条件を設けたり、ペナルティを与えたりしてバランスを取っていく。
もしこんな強特性がデメリット無しで使えてしまったら、バランス崩壊待ったなしである。
ストーリーとの兼ね合い
メタな話になるが、そもそもポケモンは対戦ゲームである以前にRPGである。
RPGといえば強力な敵に立ち向かうために強い仲間を探し、育成し、バトルに挑むというのが醍醐味である。だからプレイヤーキャラは弱い状態から始まるし、仲間にも早熟型とか大器晩成型とか個性を持たせる。全てのキャラクターを同じ強さにすることはまずない。
ポケモンも同じである。旅の途中で色んなポケモンと出会い、捕まえて育成し、わざ構成やパーティを考え、必要なら途中で手持ちを入れ替える。弱いポケモンがいるからこそ「今の手持ちでいいんだろうか」と悩むし、弱さを補うためにレベルを上げたり、強い技を覚えさせたりする。絶妙なバランスの悪さが駆け引きを生み、楽しい冒険を演出する。
その逆もしかりで、カイリューやメタグロスは一見優遇されすぎに思えるが、実際には捕獲が難しく進化が遅いという欠点がある。バトルにおける強さはそれを乗り越えたプレイヤーへのご褒美と言える。
加えて冒険にはやられ役も必要である。第1世代のイワークが攻撃種族値の低さがよくネタにされるが、これはニビジムのタケシ戦で詰まないようにとの配慮である。攻撃が低いおかげで、ヒトカゲでも頑張れば勝てるようになっている。一見して理解し難いイワークの弱さも、ちゃんと意味があるのだ。
しかしこれらはあくまでストーリーにおける話であって、対戦には関係ない。入手時期が遅いとか、捕獲しにくいとかのデメリットは対戦では無視される。結果として能力の高さだけが浮き彫りになるので、そのポケモンが「強すぎる」として悪目立ちするのだ。
なぜ嫌われるのか
構築に与える影響が大きい
厨ポケがいるだけで「使いたいポケモンを使えない/使わせてもらえない」という現象が起きる。
厨ポケは「とりあえずパーティに入れておくだけで勝率が上がる」というレベルで圧倒的な採用率を誇っており、いまやライト層でも使わない方がおかしい状況となっている。特に環境の変化に乏しかった過去世代では顕著で、例えば第六世代以前ならシングルでガブリアスと当たらないことはまずなかった。
そのためガブリアスを意識しない構築は縛りプレイも同然で、どんなプレイヤーであれ最低でも1~2枠は対ガブリアスのポケモンを入れていた。つまりその分、好きなポケモンを入れる枠がなくなっていたのだ。無論ガブリアス以外の対策もするので、厨ポケ対策だけで枠が埋まることもあった。
- 好きなポケモンを活かすための構築を考えたら、好きなポケモンを外すのが最適解だった
- 厨ポケを徹底的に対策したら厨パになった
...というのはよくある話である。
マイナーポケモンの障害になっている
厨ポケがいる限りマイナーポケモンが報われないという指摘がある。
- 大会でナッシー、ニドクイン、パチリスなどのマイナーが活躍した実績がある
- 『剣盾』でチョボマキやチラチーノを採用した最終二桁順位の構築がある
- 好きなポケモンで勝ちたいなら、そのポケモンで勝てるよう努力するべき
- ポケモン勝負において弱いポケモンはいない
上記は実際にあった出来事、および公式台詞(要約)で、厨ポケ批判に対する反論としてよく引用される。確かに正論なのだが、こうして日の目を見るマイナーポケモンはごく一部であり、実際には膨大な数のポケモンがまともに評価されることなく雌伏を続けている。
特に厨ポケの「劣化(ここでは、近い性能で見劣りするポケモンという意味)」とされるようなポケモンは、厨ポケと比較して採用するメリットに乏しい・厨ポケと同じ対策が効くのでついでで対策されるという二重苦に苛まれることとなる。
不遇ポケモンとされるポケモンはその極端な例であり、中には登場してからというものまともななテコ入れが無いまま放置され続けているポケモンもいる。このような不遇ポケモンで使用率上位に勝つのは至難の業で、彼らが対戦の舞台に上がるためには公式に救済してもらうか、障害となっている厨ポケにいなくなってもらうしかない。これについてはプレイヤーではなく公式の努力不足だと言われている。
ポケモンが不当に評価される
厨ポケを始め「対戦で使い易いか否か」でポケモンの格差や扱いを決める風潮に、心底ウンザリしているファンは少なくない。
厨ポケが対戦環境を支配している以上、全てのポケモンは厨ポケと比較される。中には「鈍足かつ低耐久でまともに行動できないので弱い」「厨ポケの下位互換で採用する理由がない」等と低評価を下されているポケモンもいる。客観的な事実とは言え、あまり気持ちのいい扱いではない。
厨ポケ側も同様で、例えばガブリアスは第四~六世代で過剰に持ち上げられたが、第七世代でのミミッキュの台頭で使用率が下がると一転して扱き下ろされた。理不尽とも言える扱いで、純粋にガブリアスが好きなプレイヤーからすれば許せない事態だろう。
本家にも「でも、弱くなったらあっさり捨てるんでしょう?」と、厨ポケ事情を皮肉るような台詞がある。
本家シリーズが対戦ツール扱いされる
厨ポケ事情を改善するため、対戦環境は新作発売のたびに良くなってきている。
しかし言い換えれば対戦に多大なリソースを割いているということでもあり、これを本題のはずの冒険を蔑ろにしているとして不快に思うファンは少なくない。例えば『USUM』は対戦ツールとしてはバランス調整という重要な仕事を担っていたが、ストーリーや世界観的には大きな変化はなく、対戦に興味がない層からは完全版商法だと批判された。
ほか第八世代発表当時の参戦ポケモン制限もかなり騒動になった。対戦ツールとしては新しい環境が構築されたことで概ね好評だったのだが、ストーリー派(特に海外)のプレイヤーには大不評で、凄まじいレベルのバッシングが巻き起こった。
とは言え近年では『LEGENDS アルセウス』など対戦よりも本編での冒険に力を入れた作品も出ており、本家シリーズもDLCで新しい冒険の舞台を提供しつつ参戦ポケモンも増やす等、ストーリー派とバトル派、両者が楽しめるようにとの工夫はなされている。
なぜ厨ポケを使うのか
レート/ランクを上げるため
かつてポケモン対戦は友達同士の交流手段だった。参加者全員が楽しめるようにするのが暗黙の了解であり、強いポケモンを使って一人だけ気持ち良くなるというのは論外だった。
しかしそれはもう遥か過去の話である。いまやポケモン対戦はレート/ランク上位を狙う競技となった。ここでは如何にして勝率を上げるかが正義で、勝てるポケモンを連れてくるのは当たり前であり、弱いポケモンを採用する理由などどこにもないのだ。
楽しい試合をするため
ゲームに限らず試合が面白いのは最後までどちらが勝つか分からないからである。
基本的に、戦力が拮抗しないと面白い試合は成立しない。例えば野球の試合が面白いのはお互いが経験者だからであり、片方が素人だけのチームだと一方的な蹂躙になる。
ポケモンも同じで、お互い厨ポケを使うからこそ対等な試合になる。対等だからこそ自分の対戦経験・知識を活かしたり、読み合いを制したりする必要が生じ、勝った時の喜びも大きなものとなる。上級者同士なら戦略的な思考の積み重ねも起きるし、それだけ勝負も熱くなる。
初心者でも勝てるため
ポケモンは誰でも楽しめるゲームである。
しかし対戦となると話は別で、新規が経験者に追いつくためには相当な努力が求められる。三値、性格補正、タイプの一貫性、わざ構成、持ち物など常識とされる知識も始めたてのプレイヤーにはかなり難しい。準備の時点で心が折れるプレイヤーすらいる。
しかし厨ポケなら性格、努力値振り、わざ構成、持ち物がほぼ決まっており、それを真似するだけでいいので初心者でもすぐ用意できる。肝心のデータは公式データベースで調べられる。最終シーズンまで遊び尽くすなら自分で考えることも覚えるべきだが、オマケとして対戦を楽しむ分にはこれで十分である。
また厨ポケ=似た顔ぶれというのは過去の話で、第九世代現在はかなり選択肢が広い。詳しくは公式のデータベースを見て欲しいが、使用率30位未満のポケモンでも普通に実戦レベルである。そこから自由に組めるので、誰もが同じパーティという事態にはならない。加えてその中にはミミッキュ、ドラパルトのようなデザイン面で人気のポケモンもおり、1体も好きなポケモンがいないということもないと思われる。
型の開発を楽しむため
厨ポケは非常にポテンシャルが高いため、いくらでも戦術を編み出せる。
例えば努力値調整は特に理由がなければ攻撃+素早さ、特攻+素早さのような振りが基本だが、あるポケモンをピンポイントで対策するために中途半端に防御や特防に振ることもある。わずかな数値の違いが相手の読みを外すこともあり、もし思い通りに行けば痛快である。
また公式データベースに表示されるのは前シーズンまでの情報である。つまり今シーズンで何が人気か、どう対策すべきかは自分で考えないといけない。中堅以下だと特定の戦法以外は弱かったりするので、明らかに環境に合わない時は外さざるを得ないが、厨ポケなら多少変わったことをしても強さは落ちないので、わざ構成や持ち物を変えたりで環境の変化にも適応していける。これは厨ポケならではである。
上位陣は厨ポケのゴリ押しで勝っているように見えるが、実際は日々勝つために思索を重ねているのである。
厨ポケを取り巻く時代の変化
第4世代
- 厨ポケの登場
「厨ポケ」という単語はインターネットが人々に普及してきた第3世代あたりから使われ始めた(「厨房」自体がその時期に使われていたネットスラングである)が、第4世代に『ポケモンバトルレボリューション(バトレボ)』の普及と共に広まったとされる。
- 厨ポケの忌避
ポケモンは『バトレボ』の発売によって初めてネットを通じた不特定多数との対戦が可能になったのだが、これはWii用ソフトであった上に前世代までのような1人用ストーリーモードもほとんど無く、決してライト層がお手軽に始められる代物ではなかった。
そのため必然的にディープなポケモンファンを中心とした比較的小規模な対戦環境となり、特に発売当初は各種コミュニティサイト等を通じたアナログな方法で対戦者を募る事も少なくなかった。
すなわち近所の友達同士で対戦していたノリを色濃く残していたわけであり、貪欲に勝利を目指すというよりも、好きなポケモンや見栄えのいい戦術を披露し合うという意味合いが強い環境であった。それ故に勝利だけを追求するプレイヤーが悪目立ちしてしまい、「厨ポケ」が嫌われたのである。
また、当時台頭しつつあった動画投稿サイト「ニコニコ動画」にて、「バトレボ実況プレイ動画(外部リンク)」が一つのエンターテインメントとして確立した影響も挙げられる。
エンタメならば、視聴者を楽しませる事が第一目的であり、お決まりのメンバーや戦術では注目を集められない。敵として出てきても展開が見えて面白くない。そうした観点からも「厨ポケ」は忌避される傾向にあった。
実際、ガチバトルを楽しもうと啓蒙する動画まであった上にその動画に批判や難色を示すコメントさえあった。第9世代現在ではとても考えられないだろう。
もちろん所謂ヒール役としてであれば対戦相手が厨ポケであることが歓迎されることがあり、特にこれらを倒すという命題の動画コンテンツを展開したもこう氏はこの厨ポケ忌避を上手に利用した実況者の一人だったと言える。
- 不遇ポケモンの登場
「不遇ポケモン」という単語も、こうした環境で性能の低いポケモンや別のポケモンに見劣りするポケモンをどうにかして使うことを目指すトレーナーによって生み出された。すでに揶揄・侮蔑とする声もなくはなかったが、ニコニコ動画の系列サイト「ニコニコ大百科」初版に「ネタキャラとして扱われる事が多く」とされるように主に同情の対象とされてきた。
第5世代
- 厨ポケの市民権獲得
しかし、『ポケモンBW』以降ソフト自体にランダムバトル機能が実装され、ランダムバトル機能の利用者、ひいては対戦を楽しむトレーナーが第4世代以前に比べ大きく増加した。
更には成績が数値化されるレーティングバトル(レート)と数値に拘らず勝負が可能なフリーバトルが用意された。こうしてガチ勢とそうでない人達がが棲み分けられたことで、厨ポケにネタパーティが蹂躙されるといったことも減り、厨ポケへの批判も下火となった。
それに伴う形でランダムバトルをとことんまで楽しむために強さを追い求めるトレーナー大きく増加。インターネットの急速な普及も手伝い、勝つための手段を探し回るようになっていった。
当然勝つためには「勝てるポケモン」、つまり厨ポケを育ててバトルで使っていくことが最も近道であり、こうして厨ポケは忌避の対象から徐々に勝つための有望な戦力と見なされるようになっていったのである。
上記ニコニコ動画においても、そうした風潮の伝播に加えて、実況者同士の交流戦等を通じてレート環境で戦うトレーナーの強さが明らかとなり、従来のエンタメ路線に代わって資料映像としての需要が生まれてきた。
資料映像ならば、誰もが真似できる汎用性を持った戦略である事が望ましく、似たような展開も、むしろその中で一歩上をゆく手段を披露するための舞台設定として好都合なものとなる。そうでなくとも本気で勝ちに行くプレイスタイルが求められるようになっていた。
- 不遇ポケモンの形骸化
こうして厨ポケが市民権を獲得したことで、「ニコニコ動画」で行われた厨ポケ忌避・批判も黒歴史として反省する風向きに変わった。これで一応の解決を見たかに思われた「厨ポケ」問題であったが、別の問題も生じた。ポケモンが戦力として評価されていくうち、不遇ポケモンに対する扱いがいじめ・煽りの性質を帯び始めたのである。加えて過剰な擁護を行うこれらのポケモンのファンの一部が暴徒化したことで対立が激化した。
やがて「不遇ポケモン」は蔑称と見なされるようになり、形骸化していくことになる。
第6~7世代
- フリーバトルへの禁止級解禁
第6世代(XY)ではネット対戦のルールに変更があり、禁止級と呼ばれていた一部の伝説のポケモンや幻のポケモンがフリーバトルに限り解禁された。
本来は対戦での使い道のなかった禁止級への計らいではあったのだが、勝利にこだわらず楽しむトレーナーたちの最後の楽園だったフリーバトルに一般のポケモンを上回る暴力が持ち込まれることとなった。第5世代で最後までフリー対戦を続けていたニコニコ動画の実況者達も、これを受けて相次いでレート環境への移住を余儀なくされており、それに伴ってパーティも一層のガチ化が進行している。
第7世代でフリーバトルは禁止級のいるルールといないルールに分割されるのだが、自由さを求め楽しむトレーナーも多かった事などもあってか「禁止級」無しのフリーバトルは過疎気味になっており、仮に利用するトレーナーがいても、レートで使うポケモンの実験場として利用するようになった。
「厨ポケ」を批判したところで、今や誰も聞く耳を持たなくなったのである。
- 「メガシンカ」の登場
新たに登場した「メガシンカ」システムもそれを一層助長した。
メガシンカをすると種族値が上昇するのだが、その幅は基本的に「種族に関わらず100固定」。メガシンカ自体、強いポケモン・人気のポケモンを中心に選定された事から、強いポケモンがますます強くなるという格差の固定化が進行した。メガシンカしない型で使っていたとしても、いるだけで対戦相手に読み合いを強いる事が可能なのは大きな強みである。
さらに、メガシンカが可能なのは1試合中1匹のみ。一見ただのバランス調整にも思われるが、むしろこの仕様は6匹を選ぶパーティ以上の激しい枠の奪い合いを生み、生半可な強化では到底選定されないという事を意味していた。
公式も環境に変化を付けようと、使用率の高いポケモンやメガシンカの使用を禁止するといった特殊ルールでのバトルを度々開催してもいるのだが、情報伝達の早い現代では選挙の出口前調査よろしく、始まる前から新たなテンプレパーティが出来上がっているというのが実情である。
特に最強のメガシンカの呼び声高かったメガガルーラは特性「おやこあい」による2回攻撃があまりに強すぎて、徹底的にメタられるも最終的に対策不能と判断され、ガルーラの対策はガルーラだと揶揄された。『ORAS』でも変わらず、ガブリアスと並び第六世代での使用率は常にトップだった。
第8~9世代
- とうとう起きた「剣盾ショック」
そして第8世代(剣盾)で、ポケモンの歴史を揺るがす多くの仕様変更が行われた。
レートが廃止されて、勝率を稼ぐことで昇格できるランクバトルが登場、そして何より膨大化したポケモンに対応するため、1ソフトへの出現数の削減、有り体に言えばリストラが行われたのである。
これによりかつての厨ポケが減少し、環境が変化することが期待されたが、やはりその中で使用率の高い厨ポケとそれ以外のポケモンが明瞭に分けられ、結果的にはあまり変わらなかった。
- 不遇ポケモンの瓦解
こうしてそもそも戦えるかという尺度が生まれたことにより、不遇とされているポケモンでも「登場できるだけマシ」という評価がトレーナー間でされるようになった。
こうして不遇ポケモンという概念はほぼ瓦解した。しかしこれは不遇ポケモンを取り巻く環境が改善されたことを意味するものではない留意していただきたい。現に「ニコニコ大百科」で不遇ポケモンと呼称されていたポケモンたちは第8~9世代を経てなお半数近くが未登場のままであり、むしろ悪化したとするトレーナーもいる。
- アップデートにより変化のついた対戦へ
こうした状況であったが、アップデートにより当初は使えなかったポケモンを後で段階的に解放するというシステムが新たに導入されたことで、事情はだいぶ変わり始める。
「環境を制覇する強いポケモン」自体は時期によってある程度変化するようになったのだ。
具体的には、第8世代、2020年の最初の数ヶ月までは、カビゴン・トゲキッス・ドリュウズ・ミミッキュ・ドラパルトの5匹が環境トップとされていたが、ポケモンホーム解禁や鎧の孤島追加に伴い、新たにフシギバナ・ポリゴン2・ガオガエンといった発売当初は登場を逃していた強豪達が再び環境に躍り出ていくことになったといった具合にである。
現在
それでも、あるポケモンがあまりに暴れ過ぎてヘイトを買い、プレイヤーから嫌われるという構図がなくなったわけではない。よい例がガルットモンスターやミミッキュであり、第8世代においてはエースバーン等が該当する。「強いポケモンは使いたいが、強過ぎるポケモンは使いたくない」という心理があるのだろう。環境が一極集中しやすくなっていることも原因だと思われる。
また一方で第9世代ではカイリューが古参ゆえの技範囲の広さ・マルチスケイルとテラスタルの相性の良さもあり使用率トップに長く君臨し、厨ポケ扱いされた。
これだけならまだよかったのだが、「しんそくを高種族値のカイリューに与えたのが間違い」といった古参からすれば今更何をと言いたくなるような難癖(カイリューにしんそくを与えられたのは第二世代のクリスタルからであり、ろくな技がなかった当時はメインウェポンにせざるを得なかった)をつける者までおり、しまいには「素早さの高いカイリューにアンコールがあるのはおかしい」という、カイリューの素早さ(S80)が今では決して高くないことすら知らない輩まで出る始末であり(カイリューのアンコールが問題となっているのは単純に「S80以下の鈍足ポケモンが縛られてしまう」ことである。「素早さの高いアンコール使い」はこいつが該当する)、このことは良くも悪くも話題となっている。
ランクバトルのプレイヤーには、戦い方の参考資料としてのバトル実況も好まれるようになっていった。
一方で動画コンテンツの場合でも、あまりにも同じ顔触れが並びすぎてしまうと動画映えしないため、普段使われないようなポケモンや縛りプレイで厨ポケに勝利するエンターテインメント重視の動画も依然として多い。
外部作品における厨ポケ
ポケモンGO
ポケモンGOにおいては「使えるポケモン」と「使えないポケモン」がかなりはっきりと分かれているが、「使えるポケモン」の中でも飛びぬけた存在=厨ポケというのはほぼいないと言ってよい。
例えばカイリューはジム攻撃・防衛・レイドバトルのいずれにも使えるオールラウンダーだが、カイリューがジムを攻撃してきた際にはボスゴドラ、防衛している場合にはトドゼルガなどで相手も対策することが十分可能である。さらに言うとボスゴドラとトドゼルガのどちらもかなり育てやすく、多くのプレイヤーが普通に所持している。よってカイリューですら厨ポケと呼べない、と言った具合である。
当時は使える技が2つしかなかった事もポイントで、例えばくさタイプのポケモンを育てようと思った場合、ゲージ技の「ソーラービーム」を覚えられるポケモンであれば大体高性能の持ち主とされ、候補としてはフシギバナ、ナッシー、メガニウム、モジャンボ、ルンパッパ等が挙げられる。各々性能の差はあるがそこまで大きく影響するものではない(むしろくさ技をタイプ一致で撃てることが大事)ので最終的には好みの問題となる。
手に入りやすいか否かも評価基準に入ることがあり、完全1強状態とまではいかない。
……のだが、トレーナーバトル実装後状況が変化しつつある。
ポケモン本編と同様世界中のトレーナーとランダムに対戦ができるようになって以降、厨ポケという言葉こそ使われないものの、ポケモン達にランク付けが行われるようになったのである。
対戦の報酬にズルッグ、ワシボン、マスクド・ピカチュウといった限定ポケモンが加わったこともあり、図鑑を集めているだけの人であっても対戦に踏み出さざるを得ない状況になっている(救済措置が後に取られることはあるが)。
本編同様「ポケモンを自分の都合のいい駒のように扱っている」という批判が0ではないが、困ったことに本作には運ゲー要素がほぼ存在しないため「そんなことを言っているから勝てない」と突き返されてしまう。
本来はポケモンという存在を通して、他の人と交流するということを前提で始まったポケモンGOなのに、バトルの導入を機に本編同様コアユーザーとライトユーザーとの間に埋めることのできない大きな断絶を生み出してしまい、ともすればギスギスした一面が出てくるようになってしまったのである。
肝心のバトルも不具合が多すぎる等開始当初から色々と問題点が多く、好き嫌いが大きく分かれてしまっているのが現状。
詳しくはトレーナーバトル(ポケモンGO)にて。
他の作品
ポケモン不思議のダンジョンのフワンテ、ポケモンコマスター初期のオニスズメ、しりとりにおけるルチャブルなど、本編の対戦とは別環境のため強いポケモンがネタ的に祭り上げられることがある。
関連項目
チートキャラ(厨キャラ)