ソウルサクリファイス
そうるさくりふぁいす
略称は「ソルサク」。
キャッチコピーは「超魔法バトルアクション、誕生。」「魔法で狩ろうぜ!」。
「真実のファンタジー」「犠牲と代償」をコンセプトに、巨大な魔物を倒すために自身や仲間を犠牲にして戦うアクションゲームである。プレイヤーが所持できる魔法には限度があるため、役割を分担して共闘することが重要な要素となっている。
登場人物の名前はほとんどがアーサー王物語のものに準拠しているが、性格からお互いの関係性まで原典とは殆ど関連はない。
土地やモンスターにもバックボーンがあり、モンスターは英雄譚に出てくる神話の怪物のように「何故そう成り果てたのか」が自他様々な視点で生々しく描かれる一方、土地は訓成故事(現象や不思議な地形に神話的に理由をつけたもの、豊穣の女神がいるのに冬という何も実らない季節がある理由や、星座の成り立ち等)や訓戒故事(こぶとり爺さんや舌切り雀などに代表される「あまり業突く張りだといつかしっぺ返しがくるよ」「他人に親切にしておけばいつか自分が得できるよ」という内容の話)に近い内容になっている。
モンスターの名称や武器の名前などは童話や神話のものが多いが、シンデレラが「ガラスの脚がムカデの如く生えた化け物」であったりするなど、悍ましい改変が加えられている。
2012年5月10日に開発が発表された。東京ゲームショウ2012でプレイアブル出展され、日本ゲーム大賞2012フューチャー部門を受賞した。
発売1週目にPS Vitaカード版が92,396本、"共闘"ダブルパックが22,050本、合計で実質13.6万本を売り上げた(ダウンロード版は集計外)。2014年3月6日に2作目「ソウルサクリファイスデルタ(SOUL SACRIFICE DELTA )」が2014年3月6日に発売された。
主人公
強大な魔法使いマーリンにとらわれた主人公は生贄にされるのを待っていた。目の前でまた一人男が生贄にされ、次は我が身と思っていたところに、その男が持っていた本が喋りかけてきた。
その本の名はリブロム。『喋る魔道書』である。
リブロムには『ある魔法使い』の日記がかかれており、その記録を追体験することで、同じ能力を得ることができるという。主人公は自らの運命を変えるためにリブロムに記された魔物と戦う。
ある魔法使い
物語は『ある魔法使い』が魔法使いとなる試験を受けているところから始まる。
秘密結社アヴァロンによる魔法使いの管理のため、魔法使いは試験を受けていた。
試験中の相棒はニミュエ。
当初はお互いいがみ合っていたが徐々に二人はその絆を深めていく。
しかし二人の間には悲しい試練が待っていた。
魔法使いの試験、最後の課題は『お互いの相棒を殺すこと』
そして、『ある魔法使い』はニミュエに勝利した。彼女を生贄にし右腕に取り込む。
このとき彼は知る由もなかった。『右腕の彼女』に永遠に悩まされ続けるとは。
主人公
マーリンによって檻に閉じ込められている。彼自身は魔法の力を持っていないが、リブロムを読み進めることによりその力を得て、マーリンに戦いを挑む。見た目や性別は不明。下記の「ある魔法使い」に乗り移り彼の行動を体験する事になる。
ある魔法使い
リブロムを作った人間。リブロム曰く「かつて実際に存在した魔法使い」だが名前は忘れられている。
かつてはマーリンの相棒であったが何らかの理由でマーリンは異形の姿に、そして『ある魔法使い』は死んだらしい。右腕にニミュエを宿してから途方もない殺戮衝動に駆られるようになり、それを解決するためにマーリンと供に『聖杯』を捜していた。
ナレーションはこの人物のものなので「我が肖像」の記述によって自由に変更可能。
喋る魔道書、主人公に自身に記載された『ある魔法使い』の記録を追体験させる。
内容をある程度は改変できる一方、あくまで「本筋に影響のない物語のオチが変わるだけ」なので、「本筋に関係ない人物の生死」を変えたり「禁術の代償」をなかった事にできるが、本筋や著者の印象深いエピソードの内容を改変することはできない。
我がままで皮肉屋だがその一方で主人公に対して適切なアドバイスをくれる。
その正体は……。
劇中では世界を支配する不老不死の魔法使い。
リブロムの記述中では割と温厚な性格の様だが、時折右手に宿した生贄の魂に揺らがされることもある。彼は未来を予知することが出来るが、その代償として常人の何倍もの速さで老いていき、魔物を生贄にしてその魂を貪ることで若さを保つことができる。
『ある魔法使い』と供に聖杯を捜していた。
ニミュエ
『ある魔法使い』の元相棒。「アヴァロン」の試験の際に相棒だった。
最期は『ある魔法使い』に生贄にされるが、彼女の宿す殺戮衝動はその後、一生『ある魔法使い』を悩ませ続けることになる。その殺戮衝動は彼女の生い立ちに秘密があった……。
ちなみにファンからの愛称は『ニミュエたん』。
マーリンを追いかける女魔法使い。
その容姿をマーリンは「醜い老婆」、『ある魔法使い』は「ニミュエに似た美女」としている。
マーリンを執拗に追いかけては心中を迫ってくる。
アヴァロンシナリオ「悪徳魔法使い」に登場。
金目の物に目がない太った男で『ある魔法使い』を詐欺にかけ無理矢理働かせる。いつ死ぬかもわからず金に執着しない事が多い魔法使いにしては珍しいほど強欲である。しかしそれにはある信念があった。
妹や弟(実のではなく自称)がいる。
エレイン
サンクチュアリシナリオ「異端の救済者」に登場
救済組織サンクチュアリ所属の魔法使いで教祖ゴルロイスに心酔している。
ゴルロイスの抹殺の任務の為に嘘の入団希望を出した『ある魔法使い』のパートナーとして入団試験を共にする。
試験中重傷を負い、自分を生贄にするように言うが…
ゴルロイス
救済組織サンクチュアリの教祖、自身の著書「救済世界」を聖書とし、生贄を禁じ、魔物の救済を掲げて活動している。
その活動方針はアヴァロンに喧嘩を売っているも同然であり、ゴルロイスは魔物と同じ扱いをされ、討伐司令すら出されている。
モルドレッド
サンクチュアリシナリオ「裏切りの殺し屋」に登場。
別名「魔法使い殺し」、掟に誰よりも忠実で、殺害命令の下った魔物も魔法使いも容赦なく殺害し生贄に捧げてきた。
しかしある時とつぜんアヴァロンを出奔、行方をくらませ、サンクチュアリに加入したらしい。
「ある魔法使い」の目の前にいきなり現れ「ありがたく思え、お前を殺してやろう」と殺害予告をしてくる。
サンクチュアリの刺客としてアヴァロンの魔法使いを襲撃している以上「同胞殺しが嫌になった」訳ではないようだが、何故アヴァロンを裏切ったのか?
それには彼が誰よりも掟に忠実だったが故の代償が関係していて…
アヴァロンシナリオ「魔物の子供」に登場。
体の右半身が木の根のようなもので覆われた姿をしている。
捨て子だった彼は森に住んでいたとある魔物に拾われ育てられたが、ある程度育った時期に突然育ての母親に殺されかけ、逆に母を殺して魔法使いになった。戦いの後に胸をかきむしる癖がある。言葉を覚えたてのようなたどたどしいしゃべり方が特徴。
また、時折胸に痛みが走り、掻きむしるという行動に出ており、本人は「びょーきなんだ」と屈託のない様子だが、その感情の欠落ぶりは常軌を逸した印象を受ける。
アヴァロンシナリオ「狼男の苦悩」に登場。
隻眼の魔法使いで、「ワーウルフ」という魔物を十年以上追いかけているが、一度もその姿を見たことはないという。なぜか彼の周りにばかりワーウルフの被害が起きているが、その正体は……。
アヴァロンシナリオ「復讐の騎士」に登場。
大の魔法使い嫌いであるレデオ王の忠実な部下。『ある魔法使い』の力に惹かれ、勧誘する。
ガラハッド
アヴァロンシナリオ「人と魔の狭間で」編に登場。
半ば伝説として語られている存在であり、『魔物に最も近い魔法使い』とも呼ばれている。その異名に相応しい奇怪な姿で、何かに取り憑かれたかのように魔物達に挑み続けている。その胸中には自身の過去に対する深い悔恨が存在している。
ディンドラン
アヴァロンシナリオ「汚れた血を持つ女」編に登場。
急激に名前が知れ渡り始めている女性の魔法使い。彼女がここ最近で仕留めた魔物の数は、他の追随を許さない。そうした実績に加えて、その奇妙な癖も彼女のことを印象付ける大きな要因となっている。
「ソーマ」という強い依存性と魔物化を引き起こす麻薬の情報を知っているようだが、それには彼女の生い立ちや思考が関わってるようであり……。
サンクチュアリシナリオ「呪われた自己陶酔」編に登場。
サンクチュアリの勧誘担当であるナルシストな美男子で、自身の容姿に絶対の自信を持っており、「ある魔法使い」にも讃える様に要求してくる。
しかしその在り方には過去代償に捧げたものが関係していて…
グリムシナリオ「失われた歌声」編に登場。
かつてアヴァロンに所属していたという「伝説の歌い手」たる「歌姫」と同名の人物で、その歌声には人や魔物の精神を操る特別な「魔法」を宿していたという。
しかし「ある魔法使い」が出会ったルンペルは男性であり、「偽物」と断定していたが……
アヴァロンシナリオ「死神の憂鬱」編に登場。
骸骨のような仮面で素顔を隠し、返り血で染まった赤い衣装に身を包んでいる謎の魔法使い。
仲間を犠牲にしてまで戦果を上げる勝利至上主義者であり、幾度とない生贄の代償で右腕には涙を流す人の顔のようなコブがいくつも浮かび上がっている。
魔法使い
認められた殺人者。世界を守るために魔物と戦っているが、彼らが殺している魔物は元人間であるために民から嫌われている。
少数民族のセルト人の末裔に現れる。
生贄か救済か
ゲームの中で何度も強いられる判断。
生贄にして自分の力にするか。救済してその命を救うのか。
それは戦闘中倒れた仲間に対しても適用される。
ちなみにアヴァロンは魔物の救済を認めていないが、事実上黙認している。ただしやり過ぎると……
禁術・生贄魔法
自身や仲間の命や心臓、腕などを捧げることで放つ強大な魔法
禁術は強力な一方、目を抉り出して使う事で視界が狭まる、脚をへし折って使うので走れなくなる等相応の代償を払う必要があり、一回の戦闘で一度しか使えない
しかも一度払った代償は決して治療できないため、リブロムによって「改変」してもらいなかった事にしない限り、次戦以降は開始直後から代償を背負ったまま戦うことになる。
生贄魔法は同伴している仲間が倒れた際救済して復帰させるのではなく、生贄にする(殺害)事で発動できる
こちらも強力だが、仲間は死亡し、以後二度と同伴できなくなる。(同じくリブロムによって改変可能)
オンラインプレイ中、PCを生贄にしたり、された場合魂だけになり様々なサポートを行うことが出来るが、NPCとは火力が段違いのPCを生贄にした場合の、その後のDPSの落ち様は相当なものなので基本的に悪手である。
魔物
欲望により代償を払った人間のなれの果て。魔法使いが魔物になることも多い。
そのほとんどが聖杯に願いを聞き入れてもらったもの。
詳細は下記参照。
聖杯
魔法使い以外の人間が魔法を得るための存在。強い願いを持つ人間の前にのみ現れ、その人間の大事なものを生贄に捧げる事で願いを叶えるための魔法を与える。
ある意味ソルサク世界における「元凶」だが、その存在はあくまで中立。魔法を歪んだ意思で乱用し、欲望に溺れ、手当たり次第に代償を差し出し続けた結果、差し出してはならないものまで差し出して魔物に成り果てることは本人の問題であって、聖杯はそこに関与も誘導もしない無関係なものであるため、キチンと願いが叶ったものも少数ながら存在する。
基本的に願いには制限を設けてはおらず、生贄の規模や質によって決まる。
願いを持っていてもそれに足る代償を持っていないものや自力で叶えたい等で聖杯を求めていないモノの前には現れないが、逆に言えば「他にやりようがなく、かつ代償として差し出せるものがある」のなら見境なく願いを叶えるため、貧困層のモノが自身の肉体を代償に金や食料を願い、スライム(別名:貧しいスライム(slum slime))になる事が特に問題視されている。
秘密結社アヴァロン
魔法使いを管理する秘密結社。
魔物を必ず生贄にすることを掟として公布しているが、救済は事実上黙認している。
しかしあまりにその行為が目立つと結社より使いが送られてきて始末される。
救済組織サンクチュアリ
魔物の救済を掲げる秘密結社。
教祖ゴルロイスと、その著書「救済世界」を教義として、元人間や、何らかの事情で追放された魔法使いが身を寄せている。
アヴァロンと同じく入団試験があり、内容はほぼ同じだが「パートナーも魔物も生贄にしない」点が異なる。
公然と魔物を救済して回るため、アヴァロンとは敵対関係にある
グリム教団
Δから追加された第三の組織
永劫回帰といういわゆる「世界ループ説」とその阻止を説いて回る謎の宗教団体
運命について傾倒しており、魔物と化した人間が死ぬも生きるも運命に定められているとされ、どちらかに偏ることはない
予言者グリムという教祖を軸に置いており、世界中に信徒がいる
ソウルサクリファイスには様々なステージが存在する
ある時はまるで生物の体内の様な洞窟、ある時は巨大な芋虫の列車、ある時は人の顔の意匠と美しい金髪のような飾りのある塔の群れ、ある時は水浸しで清潔な泡の街、ある時は謎の翼の様なオブジェの乱立する牧場……
実はそれら全てが聖杯によって姿を変えた元人間、あるいはその願いの果ての産物である。(勿論ただの荒野も存在するが)
しかし、討伐しようにも土地そのものが変異してしまっているので倒すことは不可能であるため、魔物としては認定されていない。
ただ「なぜその土地がその地形をしているのか」を表す逸話が残るのみである。
北部
ヘリオス火山
絶えず噴火を続ける活火山と溶岩流の只中
かつてはほとんど噴火しない山であったが、ある時、山の麓の集落を長期間の厳冬が襲い、暖も取れず何人も凍死する事態に陥った。
そこで村の男が「山を爆発させれば暖かくなるはず」と思い立ち、聖杯に願いながら火山に身を投げる事で山と一体化、噴火する事で集落に熱気を届け、村を救った。
当初こそ命懸けで村を救った男に感謝を捧げ、祭り上げるほどであったが、長い時の中で風化、集落のものは誰1人男に感謝しなくなった。
自身の命懸けの行いを無碍にされたことで山となった男は激昂、過去類を見ないほどの大噴火を起こし、救った村も、感謝を忘れた村人も全てを呑み込み焼き払った。
今もなお噴火を続けているのは今なお怒りがおさまっていない表れなのか、或いは……
ヴァルハラ修道院
赤子を抱く修道女を思わせる繭が淡い光を投げかける荒れ果てた修道院。
かつてここで暮らしていた修道女たちは、非常に献身的であり、近くの戦場で傷ついた兵士たちを救うために救護を続けていた。
しかし長く続く戦争の果て、医療品や包帯が足りなくなっていき、死亡者は徐々に増していく。
その事を怒り、嘆き、悲しんだ修道女達は現れた聖杯に願い、自らを代償に捧げると、彼女達の肉体は解け優しい金色の糸に代わり、この糸で兵士たちを包む事で癒しの繭へと姿を変えた。
そうやってまた多くの兵士たちの傷を癒したがある時から兵士たちが繭の中から出て来なくなった、兵士たちは居心地の良い繭の中で一生を終えることを選んだのである。
彼女達がどんなにやさしく献身的でも、長く続く戦争で「もう戦いたくない」と訴える兵士たちの体の傷は癒せても戦争で壊れてしまった心までは癒すことが出来なかったのだ。
戦争が終わった今現在、この場所は「自殺の名所」である。
未だにいくつも繭が点在しているということは彼女達は今でもこの場所を訪れる「苦痛を訴える怪我人」を献身的に包んでは必死に癒そうとしているのだろう、その「怪我人」の目的が「優しい繭の中で迎える安らかな死」であったとしても。
イカロス牧場
寂れた風車や地中から生えた羽が点在する土地。
ある牧場主が、領主の息子に「空飛ぶ馬が欲しい」という無茶振りをされた。
しかし従わなければ逆らったと罰を受けるかもしれない、と考え試行錯誤した末、現れた聖杯に自身にとって大切な白い駿馬を供物にして、取り付けた生物に飛行能力を与える蝋の翼を授かった。
その翼を別の白馬に取り付け「空飛ぶ馬」として捧げ、その上で「翼が蝋なのであまり高く飛んではならない」と忠告をした。
しかし空を飛ぶのに夢中になるあまりその忠告を忘れた結果、翼は溶け落ち、まさにイカロスの末路を辿った。
一方で牧場主はその事故の責任を負わされ処刑されるまで、新たに白馬を育てて供物にしては、空飛ぶ生物を作っていった、牧場で未だ羽ばたく無数の翼はその名残である。
しかし、この牧場主以外には蝋の翼を扱えなかったため、現在は完全に放置されている。
魔物「ペガサス」の産まれた場所でもある
麗都ラプンツェル
女性の頭部の形の塔が乱立している。
この都に居る女性は誰も彼も美人揃いであり、決まってどんな綺麗な糸も霞んでしまう程に美しいしなやかな金髪であった。
そしてそんな見目麗しい女性は決まって人攫いの餌食である
守ろうとした父親達は真っ先に殺され、戸締りはこじ開けられ、言い含めてもあの手この手で騙され、誰も通じなければ結局力尽くで拉致される。
そんな現状を変えようとした母親達は目の前に現れた聖杯に自身を捧げることで娘達を子々孫々守り抜く事を決めた。
結果、自身の首が伸びていき頭が娘達の家になったのである。
侵入者は美しい髪の梯子が逆立ち棘となって追い払い、娘は伸縮させる事でこの上なく楽に出入りできる。
人攫い達は打つ手が無くなり去っていったが、母親達は油断せずにいた。
ある時ここに立ち寄った旅人の男はたまたま外出していた娘と恋に落ちた、娘の方は恋に恋していただけであったが、男は一目惚れであった。
お互いを想い合ったのも束の間、母親は娘を守ろうと家に引き戻し髪を逆立て入れなくした。
それでも娘に会いたい男は聖杯に願い、自身も娘のいるところまでその首を伸ばしたが、母親はさらに首を伸ばし男から逃げ、男もまた更に首を伸ばし娘を追った。
その追いかけっこは母と男の命が尽きるまで続いたという
街の中心にある絡み合う塔はそういった事情で聳え立っているものであり今もなお空高く、そのままの姿で絡み合ったままである。
リヴァイアサン
魔物「リヴァイアサン」の背中、詳細は魔物の方の項目参照
東部
パンドラの洞窟
四方の壁や天井に廃墟の街やカタコンベが混ざったような風景が広がる洞窟
ドケチな富豪が自身の富を守るために、その守りたい富を捧げて作った迷宮である。
入り口は宝箱の様になっており、開けて中を見ても迷宮が広がるばかり、中に入って財宝を探そうにも、探して見つけた宝箱の中にもまた迷宮が広がっていて決して財宝には辿り着けない様になっている。
その出来に富豪は満足したが、同時に気付いてしまう「これでは自分も富に辿り着けないではないか!取り出せない富など無いも同じだ!!!」
半狂乱になった富豪は次々と宝箱を開けて中に入りどんどんと奥深くまで入っていったが、未だ自分の富には辿り着けていない。
そしてその事にしか目が向いていない富豪は気付いていない、一度入れば自分ですら外には出られない事に。
迷宮ゴリアテ
壁面が生物の様に蠢く不気味な迷宮。
迫り来る侵略に頭を悩ませている国家があった。
か弱く貧弱であったその小国は来られたら降伏するしかないというところまで追い詰められていた。
そんな中、それが我慢ならなかった1人の愛国心が強い勇敢な兵士が「自分が1人でどうにかする」といい、隣国への国境に向かっていった。
阿呆でもわかる結末がそこにあった、森を焼き尽くす劫火に虫けら一匹が挑んだ所で焼き尽くされるだけであったのだ。
しかし、後を追った後続部隊は唯一の道にある妙な関所に阻まれついぞその小国には辿り着けなかった。
いくら大国の軍隊といえど孤立して補給もない先見部隊一つで国一つを相手にできるわけもない、今度は自分が虫けらの如く薙ぎ払われた。
さて、何もなかったはずの道に急に現れた関所とはなんだったのか?
そう、あの兵士が自らの身体を侵略者を滅ぼす関所へと変えたのである。
以降、勇敢な兵士の名から迷宮ゴリアテと名付けられたこの関所は今もなお侵略の意思を持つ敵を阻み続けている。
蟲車ワーム
巨大な人面芋虫の背中、一応魔物ではあるが、一定の区間を往復するだけの無害な存在であるため、討伐対象どころかむしろ危害を加える事を禁止されており、乗り物として有効活用されており、木の足場や梯子が設置されているなど好き勝手に改造されている、その端々に綺麗な蝶の入った虫籠も括り付けてある。
ある商人が居た、商人は金儲けにばかり執心し、一人娘も含めた家族を顧みなかった。
金儲けには才能があったのだが、それ以外はてんでダメであった、何もかも損得で考えてしまうが故に「家族と過ごしても一銭にもならない」と判断してしまうのだ。
ある時家族を蔑ろにしてきたツケが回った、妻が病気で倒れたのだ。
その遺書には「働いている姿が好きだった」「邪魔をしたくなかったから病気を隠していた」と書かれていた。彼女は夫を支える為に明確な利益もないのに一生を差し出したのだ。
どれだけ自分に尽くしてきたかを思い知った、「儲けなんかより大切なものがある」言葉に出来ない大切なものが、幸せとはきっとそれを大切にしたものが得られるのだろう、と。
せめて娘だけは妻の分まで愛し抜こうと、これまでとは打って変わって最大限の愛を注ぎ込んだ、しかし彼女は亡き妻に似て病気がちであった。
医者は言った、「成人までは生きられないだろう」、現実は残酷であった
娘はこれまで家庭を蔑ろにしてきた自分にうまく心を開かなかった、母が死んだのは父のせい、もしかしたらそんなふうに思われているのかもしれない。
使用人から聞いた話では娘が「あるものが見たい」と語っていたらしい
それは「蝶」、東方にとても美しい珍しい蝶があるのだという。
しかも短命でほんの数日しか生きないのだとか、だから生きているものを見たものが殆どいないとすら言われていた。
蝶は復活の象徴とされている、もしかしたら母に生き返ってほしいのかもしれない
そんな純粋な想いを考え、珍しいと聞いて一瞬儲け話が頭をよぎった自分を恥じた、そんな下劣さ故に妻を死なせたというのにまだ性根が変わっていない、心底自分が恨めしかった。
しかし、現実的に、口実として儲け話は都合が良かった「東方の珍しい短命な蝶を生きたまま連れて来られれば大儲けできる」そんな話を吹聴すればあっという間にキャラバンが出来上がった。
大規模な遠征となったおかげで問題もなく蝶の棲家にたどり着けた。
噂通り、いや噂以上の美しさであった、目一杯カゴに詰めて帰路についたが、結局道中で死んでしまった。
同行者は「価値は認めるが短命すぎる、商品にはならない」と落胆したが、商人はそんな事はどうでも良かった「儲けしか考えられない自分をこの旅で変えるのだ」、そう決心していたからだろう、二度目はさなぎを持って帰ったがラクダが体調を崩して失敗した。
三度目は流石に誰もついて来なかった、今度は幼虫を捕まえて帰路についた、食料を殆ど持っていかれてしまっていたが、道中彼はその幼虫を食ってまで歩みを止めなかった
割に合わない選択をしてでも何かのために尽くす、それこそが言葉にできなかった何か、即ち「愛」なのだと、今ならそう言えた。
やがて彼は道中死に瀕した、初めから彼は死ぬ気だったのだ、妻を死なせた時から死ぬ事は決めていた。
それでも愛のために動いて死にたかった。
だからこそ彼は目の前に現れた聖杯に願った、「蝶を運びたい、その方法が欲しい」と、自身の体を捧げた商人は巨大な芋虫になり、より高速でより多く蝶を運べる様になった。
流石にこんな姿で娘に会うわけにはいかないため、人伝に蝶を娘に届け、彼は娘の喜びを知った。
これまでにないほど満ち足りた気分であったが、すぐに娘が体調を崩したと聞いた商人はまた蝶を運んだ、回数を重ねるごとに何度も、量を増やして。
しかし商人の願いは届かず娘は亡くなってしまった。
商人は知らない、娘の衰弱と病気の原因が蝶である事を、その蝶の姿を知らないのは短命である他に見られるほどに近くに来たものを殺す病気を持っていて、ラクダが弱ったの同じく持ち帰った蝶のせいで娘がみるみる弱った事を
娘を殺したのは自分であったことを
そして今も、商人は蝶の生息地に行って必死に蝶をかき集めては娘の墓に蝶を供え、また蝶の生息地に向かう事を繰り返している。
その理由を知るものは商人以外にいない。
オリンピア平原
かつてロムルス人とセルト人が行った大戦争の跡地
今でも魔力が濃く残っているため、兵士の無念や通りかかった動物が魔力に当てられ
魔物「ジャック・オ・ランタン」や「コボルト」と化したりする
タルタロスの廃墟
魔物「ケルベロス」が人間であった頃守っていた街の幻影、詳細は魔物の「ケルベロス」参照
西部
バビロンの森
血管や心臓の様な模様の走る生きた樹木が形成する森
ある乾燥地帯を救おうと奔走していた執務官が居た。
彼は国のために様々な手段を講じ、一帯を緑化しようと励んだが、治水が出来ないためにまるで捗らなかった。
やがて水の代わりとして自身の血を水として与える様になるとほんのわずかだが成果が現れた。
しかし、ある程度育つと打ち止めになってしまう、当然与えられる血には限りがあるしその成果も緑化しなければならない範囲と比べれば微々たるもの
それでも諦められなかった執務官は聖杯に願い、自身の血のみならず他人の血すらも捧げ、一気に緑化を進めた。
そうやって育った樹には血管の様な脈打つ模様が刻まれていた。
やがてその執務官は死んだ、血を流しすぎたのである。
街も滅んだ、執務官が血を求め誰も彼も殺して血を搾り尽くしたのである。
今では過剰なまでに爆発的に緑化した森が、彼の治めていた街を持ち上げる巨大な森を形成しており、皮肉を込めて空中都市と呼ばれながら今もなおその範囲を広げている、潰した街も一つや二つではなく、最早その規模は小国にも並ぶ程である。
水都アクエリアス
水浸し泡塗れだが、どこか美しく清潔な無人の街、この場所で魔物や魔法使いが力尽きると他の土地と違い極短時間で浄化(消滅)させられ選択すらさせてもらえなくなってしまう。
ある所にとても潔癖な執務官がいた
その潔癖さは尋常ではなかった、何せ街を綺麗にするためだけに執務官に上り詰めるほどだったのだから、当然ほんの少しの埃すら許容できなかった。
そんな彼が潔癖になったのはあるトラウマのせいであった、昔の彼はそこまで潔癖ではなく、むしろ泥まみれになって帰ってくる様な活発な子供であった。
そんな彼についた泥や土を、彼の母は優しく笑いながら払ってくれ、男はその仕草に愛を感じ、好きであった。
母は内職で男を育てたが、ある時から体を壊し、やがて死んでしまう。
後に男は母の死因は内職で負った手の小さな傷から菌が入った事であった事を知る。
つまり、「自分が、汚れが母を殺したのだ」と
男が街の清潔化に力を入れ始めるのも当然であったと言える、それはあまりに病的でありほんの少しものを汚したら罰金、ゴミを落としたら禁固刑、汚らしいものは入ることすら許さなかった
しかし敵は限りなく増え続ける汚れである、どれだけ力を入れても全ての汚れをなくすことは不可能であった。
追い詰められた男はある結論に至る「人間こそが汚れの源であるのだ」と、そして男は現れた聖杯に願い、自身を清潔な水の溢れ出る水瓶に、街の住人を石鹸に変え、街の汚れを洗い流した。
街の中央に浮いている水瓶からはいまだに石鹸水が溢れ出ている、ということはおそらく男は今なお街の清潔さに納得がいっていないのだろう。
当然である、彼が洗い流したかったのは過去の汚れた自分、「母を殺した自分」であったからである。
しかしそれももう叶わない、彼には払う代償がもう残っていないからである。
今はただその代替行為のためだけに、世界の全てを洗い流そうとしている。
アンドロメダ湖畔
凍りついた湖面を中心に砂地から生えた数多の鎖がその中心部目掛けて伸びる異様な湖畔。
ある所に美しい女性がいた、見るだけでため息が出るほどの美貌であったがそれは偽りのものであった。
彼女が幼い頃、黒装束の怪しげな男が街を訪れた際、偏見なく接した事でもらった「美貌の媚薬」の効果で手に入れたものだったのだ。
とはいえそれは永遠ではない、彼女とて時が経てば老いる、そして老いて美貌に陰りが出ては媚薬を使う事で若さを保った。
しかし「この媚薬を使っていいのは十二度までだ、最後の十三度目を使えば不幸になる」という忠告を受けていた。
やがて十三度目の老いが訪れた、彼女は誘惑に負け、十三回目の媚薬を使用した。
当時彼女の齢は既に100を超えていた、にもかかわらず見た目は十代後半…化け物扱いされ始めるのも当然であったのである。
折悪く村では流行病が蔓延していた、そしてやはり当然周りのものはこう考えた「流行病を持ち込んだのはあの女だ」「アレを殺せば病はなくなる」と
女は捕らえられ、人里離れた荒野に鎖で縛り付けられた、ここは毒虫や蛇が大量に生息していた、やがて女は長く苦しんだ挙句に自然に殺されるだろう、と
しかしながら、ある意味で女もとうに狂っていたのだろう、彼女がこの後に及んで考えていたことは「死への恐怖」ではなかった、むしろ死ぬ事はかけらも恐れていなかった、早く死にたいとさえ考えていた。
そう、彼女が恐れたのは「死ぬまでに長くかかり、その間に老いる事」であったのだ
やがて現れた聖杯に女は願った、「永遠に美しくありたい」と
すると彼女はあっという間に氷漬けになり周囲へ伝播し、美しい湖畔の様になった。
確かに彼女の願いは叶えられた、しかし代償も払った。
彼女は永遠に人としての死を放棄したのである、湖畔中央に伸びる鎖がどこに向かっているのか、その先に何があるのか、それを知るものは誰もいない。
砂漠の方舟ノア
二つのコブがついた巨大な方舟が鎮座する砂漠。
その砂漠は死の砂漠と言われていた、あまりにも広大で補給もままならず、横断すれば道中で死ぬのも同然であったからである。
そこを横断することで富を得ようと考えた男がいた、相棒のラクダと共に一週間、二週間、あるけどもあるけども目的地に辿り着かず、やがて水も食料も尽き、男は絶望した。
そこに聖杯が現れ、「代償を捧げ願いを叶えよ」と語りかけてきた、しかし捧げられるものといえば相棒のラクダだけ…
自身の体で影を作り男を休ませるラクダを見て男は首を横に振った、「死なば諸共」どうせならここで一緒に死のうと。
しかしラクダは代償に捧げられた、男ではなく、ラクダ自身が相棒の男のために、聖杯に自分を捧げたのだ
そして男は立派な砂上船となったラクダを見てそのまま限界を迎え意識を失った、次に目を覚ますと隣国の眼前であった。
男は死の砂漠の横断という偉業を成し遂げたのだ。
男は大金を稼いだ、一度に運ぶ荷物を増やしてはまた儲けた、そうしているうちに自分のために命を捧げたラクダを忘れていった。
やがてそのツケを払わされることとなる。
あまりに無茶な量を積んだ事で、道中砂上船は挫傷してしまった、男も荷物も砂漠に投げ出される、船となったラクダは最後の力を振り絞り、体勢を変え男に影を提供した。
それを見て男を思い出した、相棒のラクダを、その思い出を、そして思い知った、船となっても相棒は相棒のままであったことを。
男は後悔しながら息を引き取った、奇しくも彼とラクダが息を引き取ったその場所は、同じ場所であった。
まだ貧しかった男が、自分の命よりも相棒と共に死ぬことを選んだあの場所と
まだ船になる前のラクダが、自分の命よりも相棒を生かすことを選んだあの場所と
男が死を覚悟し、ラクダが身を捧げ船となり、お互いの人生の転機となったあの時の場所と。
南部
高級宿屋ポセイドン
巨大な魚のような形をした家屋が佇む、何故かその周囲だけ水の干上がった海
海に身を投げようとする男がいた、商売に失敗し首が回らなくなったのだ。
この場所は誰も近寄らないため自死にはちょうどよかった、「巨大な化け物」が出るという噂が立っていたのだ。
後一歩、というところで凄まじい水飛沫が上がり、化け物…鯨が飛び出した、噂は恐らく鯨を化け物と認識したのだろう。
男はその光景に圧倒された、恐怖ではない、その凄まじさに、壮大さに心を持っていかれたのである。
この素晴らしさを知っているのは自分だけ、周りのものはくだらない噂に惑わされこれを知らないのだ
商売人としての心が疼いた
金がないので手作りの長椅子を設置し、近場に行ってこう嘯いた「人生を変える絶景の場所を知ってる、小遣いをくれれば教えてやるぞ」と
化け物が出ると噂の場所であるので殆どのものは気に留めなかったが、好奇心に負けて金を払う者もいた。
そして金を払ったものは皆例外なくその壮大な光景に圧倒され虜になった。
やがて噂は広がり、化け物ではなくその光景を見るために金を払うようになり、最早化け物の噂など忘れ去られていた
男も得た種銭で宿屋を作った、腰を落ち着けられる場所があるということで遠方からも人が来るようになった、借金はいつしか完済していた。
男は学んだ「負の中に正を見出すこと」それが成功の秘訣だと
「恐ろしい化け物」の噂に「圧倒されるほどの絶景」を見出したからこそ男は儲かったのだ
やがて城と見紛うほどにまで宿屋は大きくなり男の人生は絶頂を迎えたが、転げ落ちるのも早かった。
男の掴んだ極意はほんの一部に過ぎなかったのだ、クジラが飽きられ始めたのである
色々工夫もしたが何をやってもうまくいかない「ダメな時は何をしてもダメ」これも商売の極意の一つであろう
そして1番の問題は収入は減ったのに儲かっていた時の生活を変えようとしなかった事だろう。
またしても借金まみれになり今度こそ男は身を投げた、あの時のようにクジラも見たが、今度は何の価値も感じなかった。
しかし男は、目にした水中の魚や珊瑚の織りなす美しい光景に、あの時鯨を見た時と同じ衝撃を受けた
またしても商売人の心が疼いたところで、溺死しかけた男の前に聖杯が現れ、男は願った。
海が割れ例のクジラが変化した宿屋が出来た、剥き出しの海底に足を下ろし、間近で水中を見られるのである、内装もとても豪華に出来ていた
しかし肝心の男がそこに居なかった、海の水を干上がらせているのは男が水を飲み込んだからである。
「何かをするには対価が要る」これもまた商売の極意の一つなのだ
水を飲んだ事でぶくぶくと膨れ上がり、水平線のどこかに浮かぶ羽目になった男はそれを痛感していた。
ルナ荒野
昼も夜もいついかなる時も煌びやかな満天の星空が見える地
星に魅了されていた男がいた、幼い頃流れ星を見たあの日から、大人になっても星空が大好きで、馬鹿にされようと耳に入らず四六時中眺めていた。
ある時旅人がやってきた「世界中を踏破し、知らないところなどない、月にすら行ったことがある」そう囁いた。
男は憧れの地にたどり着いたことのある男を子供のように尊敬した、旅人は「月から持ち帰った石がある、大切なものだがどうしてもというならあげよう」と言い、男は私財の殆どを注ぎ込んでそれを買った。
少し経って、知り合いに「奴は有名な詐欺師だ、被害者はたくさんいる」と聞かされた、月の石はただの石ころだとも
男は激怒した、金なんかどうだっていい、自分の想いを踏み躙られた事が、自分の見たあの流星を愚弄されたことが何よりも許せなかった。
男にとってあの流星は、星空は、最早神や信仰同然のモノだったのだ、それを踏み躙られた以上男が詐欺師に詰め寄るのも当然であっただろう。
しかし男は詐欺師に刺され、瀕死になってしまう、朦朧とする意識の中、男は「もっと星を見ていたい」という願いと「詐欺師を絶対に許さない」という恨みだけが強く残っていた
そして男は現れた聖杯に願った
男の身体は白く輝き空高く浮き上がった、男は自身の肉体を捨て星になったのだ、これでまず半分願いが叶った。
二度と人間には戻れないがそんなことはどうでもよかった。
次に男の身体は落下を始めた、何処に?決まっている、もう半分の願い、詐欺師への恨みである。
星となった男は気付いていただろうか、自身の姿があの時見た美しい流星よりも美しく壮大に輝いていたことに
やがて星は矢になり着弾した、そのあまりの恨みから発生した衝撃と閃光は遠くからでも目撃できるほどであり、辺りの地形すら変わってしまうほどであった。
直撃した詐欺師は跡形も残らなかった、まさに天罰であろう。
男が姿を変えた矢は今でも地面に突き刺さって残っており、また星を見たいと願っていたことで、それ以降この周囲一体は常に夜なのだという。
さらに、男の恨みの爆発の閃光を目撃した者の多くはその眩い光に魅了され、その光景を心に抱いているという、星を信仰したあの男のように
男は死んだが、彼の想いは形を変えて別の誰かに受け継がれて今もなお残っている
その証拠に、「星の輝きを心の拠り所にする」という教義が少しずつ広まりを見せている
ネクロポリス
鋭い刃のツタが乱れ生える荒野
ある所に王がいた、身の程を弁えず、とにかく国土を大きくする事ばかりに注力し、あちこちに戦争をふっかけた。
民はその負担を強いられる事に耐えかね遂に叛乱を起こし、王を討ち取った。
反乱軍のリーダーが王になったが、機と見たのか隣国が攻め入ってこようとしていると情報が入った。
しかし、長い戦乱のせいで民は戦えない、武器もない、何もかもが足りなかった、有り余るものといえば戦争や内乱での戦死者の死体だけ
王に祭り上げられはしたが新王は王には向いていなかった、それでも必死になって頭を絞ったがないものは無い
民達はやがて新王も愚王であると罵り始め、新王は孤独を深めていった。
今更ながら前王の抱えていた重責を多少は理解できた気がした。
手詰まりになりかけたなか、王の目の前に聖杯が現れ、王は願いを叶えた。
王は積まれた戦死者達のところに行き丁重に弔うと、墓からは沢山の武器が取れた。
王は死体から武器を生み出す能力を得たのである。
しかもその武器は強力で、並の兵士ですら一騎当千の戦果を上げた
足りなかった物質が十分すぎるほどの質と量を確保でき、王の快進撃が始まった。
敵を排し、国を豊かにした、しかし王は侵略をやめなかった
十分すぎた武器はいつの間にか足らなくなり、また死体を求めた。
遂には微罪ですら死刑にし始め、側近が止めても殺し続けた。
「前王の時も都合が悪くなったら廃したくせに次は私か?」
王であるからこそわかることもある、新王は王になったからこそ前王の行動を理解できた
信頼できるのは権力だけになった、彼は知らなかったがそれは前王の辿った道筋と全く同じであった。
やがて彼は「より大切なものの死体」であるほど武器が強力になる事に気付き身近なものも片っ端から殺した。
しかしその強力な武器も意味をなさなかった、みんな造反したのだ、どんな武器も使うものがいなければ意味がない。
新王は前王と同じ末路を辿ったが、一つだけ違うことをした、「せめて土葬して欲しい」という遺書を書き自決したのである
数年後、国は滅んだ、王の墓から凄まじい大きさの刃のツタが生え、国土を蹂躙したのだ
「最も大切な自分の命」を代償にした武器を止める術はなかった、王の最後の武器は今もなお周辺国家に出没しては国を荒らし、誰もいなくなった土地を統治し続けている。
エルフの谷
綿毛の舞い飛ぶ谷
魔物「エルフの女王」が人であった頃その生涯を終え、魔物となった場所
エルフの最大産地でもある、詳細は該当魔物の項目参照
お菓子の村
何もかもお菓子でできた村
魔物「ヘンゼルとグレーテル」が生み出した場所
詳細は該当魔物の項目参照
魔物とは、己の欲望の赴くままに魔法を使い、その力に溺れて異形化した生物である。
魔物には、人間が魔法を使い続けた結果異形化した「人型魔物」と、人間以外の生物が間接的に魔法の力を浴びて異形化した「下級魔物」が存在する。
魔物は人間社会の脅威となるため、これを排除するのが魔法使いの宿命となっている。元となった生物よりも高い知能を得て、社会性を会得する場合もあれば、欲望のままに暴れるだけの低級な存在と成り果てることもある。また、欲望を得てしまった結果本末転倒な行動に出て、余計な苦労を背負い込むハメになることもあり、またごく一部ではあるが、争いを好まない魔物の中には人間を育て、人としての条理を教えようとする者もいる。
『デルタ』からは特定の攻撃時に一部の供物を無効化もしくは反射するようになり、特定の部位を破壊すればこの効果を無効化できる。
下級魔物
ある死病の感染源となっていたネズミの一部が魔法使い特製の毒餌を喰らいながらも生き延び、魔力を得たことで人間への敵対心を糧に複数匹が一つに集まって生まれた群体の魔物。
人間の死骸を取り込んだことで人に近い形態を獲得しており、長い左腕による引っ掻きや身体を群れに分裂させる奇襲を行う。また仲間と連携した攻撃や、複数のネズミに戻っての分裂攻撃を仕掛けてくる。
下級モンスターの中で最も種類が多く、鉄柵や十字架を取り込んだ灰色の「墓柵ゴブリン」、背にいくつもの武器が刺さった褐色の「鋼刺ゴブリン」、財宝を取り込んだ金色の「金欲ゴブリン」、酒瓶や盃を取り込んだ紫色の「酒豪ゴブリン」、背にキノコを生やした緑色の「毒茸ゴブリン」、珊瑚を生やした青色の「珊瑚ゴブリン」、燃え盛る燭台を背から生やした赤色の「火焔ゴブリン」の7種類の亜種が存在する。
ゴブリンと化したネズミに対抗して、魔法が使われた土地に住む小動物を捕食して魔力の残滓を取り込み異形化したネコの魔物。魔力を獲たことでゴブリンだけでは飽き足らず、従う意味がなくなった飼い主を含む人間をも襲い捕食するようになった。
ブヨブヨに太った身体と大きな口を持ち、口からゲロ弾を吐き出してくる。
また、「口に含んだものから力を獲られる」経験から瀕死になった下級魔物を見つけると積極的に捕食して巨大化し、吸い込み攻撃を行うようになる。耐久力やカウンター動作と相まって下級モンスターの中では強敵。
緑色の体で毒を吐きだす「毒緑オーク」と、氷を吐きだす水色の「氷塊オーク」の2種類の亜種が存在する。
長い年月魔力を浴び続けたことで「自由に動き回りたい」という願いをかなえた樹木の魔物。
獲得した足や表情から人間への憧れが見られる。しかし、足と知識を得た事と引き換えに今度は死への恐怖に囚われ、怯えて逃げ惑うようになる。
根に縛られて動けなかった樹が自由を求めて足と知恵を手に入れた結果恐怖に縛られるという皮肉な結末となった。
自分からは攻撃せず、魔法使いを見かけると逃げ回る。ダメージを与えると木に化ける。
木に攻撃するか実を全て食べると再びコボルトになり、もう一度ダメージを与えると倒せる。
葉が茂ってる普通のコボルトに加え、花を咲かせた「花樹コボルト」、木の実を実らせた「木の実コボルト」、葉っぱの無い「葉無コボルト」の4種類の亜種が存在する。
「木の実コボルト」が持つ木の実は、体力回復、攻撃力・移動速度・全属性耐性アップなど様々な効果が存在する。
魔法使いの死骸を喰らって魔力を得たカラスの魔物。
種の繁栄のために人間社会の真似をしており、下級のカラスたちが集めてきた食糧を搾取したり、光り物で自身を飾り付けている。やがて人間を超えるべく、より欲深くなるために魔法使いを積極的に襲うようになった。
常に空を飛んでいるため遠距離魔法がないと厄介な相手。
文献によれば、食欲には勝てないらしい。
王冠をかぶり体中を宝石や黄金で飾り立てた「成金グール」、翼を医療器具で飾り立て注射器を放つ「医者グール」、機械の部品を身に纏い放電能力を得た「電磁グール」の3種類が存在する。
魔力の影響を受けて、獲物を誘惑する術を得た蜘蛛の魔物。
胴体部が真っ赤に熟れた果実に変化し、これを用いて多くの獲物を誘惑して捕食し続けたことで巨大化、罠を使わずとも正攻法での捕食が出来るようになった今なお、取り込んだ栄養分を自身の果実を魅力的に育てるのに費やし続けている。
元が蜘蛛なだけあって粘着性の糸を飛ばして捕縛してくる。
果実の部分を捕食されて失ってしまい、代わりに腐った卵を身につけ毒を吐く障害物を設置する「腐卵ネクター」やランタンを代用し爆弾を設置してくる「蝋燭ネクター」の2種類の亜種が存在する。
叫び顔を浮かべた伸縮する風船のような頭を持つ植物の魔物。
全部で5色が存在し、攻撃されると頭部が大きく膨れ上がり、色に対応した属性を伴う大爆発を引き起こす。
他の下級魔物と違って雑魚ではなくトラップとして扱われる。
『デルタ』から登場した女性のような上半身と蜂の下半身を持つ、蜂の魔物。
自由と平等を求めた働き蜂が、魔力の残滓と結びつき、高い思考能力を持つ魔物と化した。
人間を模倣して武器を作り、現勢力たる女王バチを打ち倒し「革命」を起こした後、新たな指導者になるために多くの雄バチを魅了するかの多数決を行うようになり、そのために色香を持った生物…人間の女性を襲い捕食するようになった。
賢い彼女らは暴力は野蛮だと分かっている…しかしそれは同族に限った話。人間が食べるために家畜を殺すように、彼女らも他生物にはとことん残酷になれるのだ。
瞬間移動を繰り返しながら、手にした槍や尻の毒針で攻撃を仕掛けてくる。
冷気を操る「幻氷フェアリー」と、雷を操る「電影フェアリー」の2種類の亜種が存在する。
『デルタ』から登場した手へと変化した巨大な耳を持つウサギの魔物。
魔力を得たウサギが、最大の武器である耳をひたすら「選択と集中」を続けて進化させた結果、魔物へと姿を変えた。
情報戦で勝ち残ろうとする「密偵」のような生態をしており、人に対する諜報活動の過程で周囲の環境に溶け込み擬態化することで姿を消す能力を獲得した厄介な相手だが、心眼で姿を確認出来たり、いる場所の空間が僅かながら歪んでいたり、赤く光る目だけは誤魔化せない為よく観察すれば発見できる。
パンチなど強力な攻撃を行える巨大な耳は特化させ過ぎたが故に、人型魔物の咆哮や咆哮魔法で昏倒し姿を見せる。
炎を操る「火山ノーム」と、岩石を操る「岩窟ノーム」、アリスの無限魔宮にのみ出現する「不思議の国のノーム」の3種類の亜種が存在する。
『デルタ』から登場した沢山の財宝が入った宝石の宝箱に変化した殻を持つ、カタツムリの魔物。
本来は魔力を浴びて、今より安全に生きるために自身の殻を「生体鉱物」で出来た硬い石に変化させ鉄壁の防御と擬態能力を得たカタツムリなのだが、長い時を石の殻に籠りすぎたことで退屈を持て余し、様々な事を考え続けて思考に贅肉を着け、その答えを求めて自分探しを始めた結果、心の余裕が自己顕示欲へと肥大化したことで殻が煌びやかな宝石へと変化した。
しかし、その結果人間達に「綺麗な石」や「万能鉱石」として求められ、肥大化した自我が魔法使いにより強い力をもたらすことから大量に乱獲されて希少種になってしまうという、逸脱できた弱肉強食の理に逆戻りするという自己矛盾と本末転倒を引き起こしてしまった。
コボルトと同様、こちらからは攻撃せず、ひたすら逃げ回るのみ。
ランダムで出現し、倒して生贄・救済する事で、多くの経験値を得られる。
銅色の「銅石オリハルコン」と、銀色の「銀塊オリハルコン」、金色で多くの財宝で飾られた「金剛オリハルコン」の3種類が存在する。
銅石、銀塊、金剛の順に得られる経験値が多くなる。
人型魔物
人間が聖杯によって願いを叶えた結果成った姿。基本的に願いが歪んだ形で叶ってしまったモノや願いのために代償を払いすぎた結果魔物となったものがほとんど。
討伐すると正体である人間へと戻り、命乞いを始めるため、生贄にするか救済するかを選択することになり、この際救済された者は人間の姿を取り戻し、魔法を扱う能力が目覚め、場合によっては魔法使いとして生計を立て始める事もある。
しかし、救済されたとしても本人の本質(欲深さ)は変わらないためまた同じ過ちを犯して欲望に囚われてしまったり、さらに元魔物の人間は「醜人」と呼ばれて迫害対象となっているため社会復帰も難しく、こうした理由から救済された人間の半分が再度魔物化してしまうという。
そのうえただ殺しても、死後欲深い魂はまた別の魔物として復活してしまう危険性も存在する。
だからこそ、魔物は皆殺し、生贄にすべきという意見が主流なのである。
「半分"も"魔物に戻るから皆殺しにするのか、半分"しか"戻らないのに皆殺しにするのか、どっちだと思う?」
ただし、一つ落とし穴が存在する。
「生贄にする」と言うことは、"ある魔法使い"がニミュエの殺意に悩まされ続けるように「右腕に魂を宿す」事を指し、そして「その魂が無制限に増え続ける」ことを意味する、それも「魔物になるような欲に溺れた人でなしの魂」を、である。
抱え込み続けた魂と欲望はやがて魔法使いを蝕み、魔物に堕とす。
そして、また別の誰かがその元魔法使いの魔物を殺して腕に宿すのである。
また、人型魔物には、聖杯の力で魔物化したオリジナルとなった個体以外にも、
- 「ドッペルゲンガー」
魔法使いの魔物化の総称であり、多くの場合「魔物に付けられた傷によって病気のように欲望が入り込み自身も魔物へと堕ちた」パターンと、上記の通り「魔物を生贄にし続けた魔法使いが右腕の代償が限界を超えてしまい魔物に堕ちた」パターンの2種類が存在。
- 「ジェミニ」
右腕に宿った魂が2つ以上暴走したことで、一人の魔法使いが二体の魔物へと変化するドッペルゲンガーの複数化。
……が存在する。
どちらも元となった魔物と瓜二つになることがほとんどで、「人型魔物の別個体」はもっぱらこれに該当する。1体の人型魔物が暴れるだけで、周囲に同じ姿の魔物が複数現れてしまう。
彼等は純然たる被害者であるが、それを(本として読んでいるプレイヤー以外)確かめる手段は基本的にないし元魔物であることに変わりはない(「この魔物、前も倒したことがあるからドッペルゲンガーだな」というような判別はできる様で、"ある魔法使い"が魔物をドッペルゲンガーと断言する場面が存在する。)
また、一部の魔法使いが絶望、錯乱したことで魔物化してしまうケースも存在しており、ドッペルゲンガーはある意味「魔法使いの寿命」とも言える。
どちらにせよ生贄が定石である。
なお「ドッペルゲンガー」でない魔物は、魔物の成り立ちの逸話に描いてある本人である。
- 傲慢
"蛇巨人"ヒュドラ
クラーケンと同型の魔物。口から剣が生えた九匹の大蛇の集合体。
元々は貧しい地域に生まれた剣士。家族を養うために剣士となった。男は剣に対して類いまれな才能を持っており、いくつもの剣を同時に手足のように扱った。いつしかその武勲は戦場に知れ渡り、敵軍にとって恐怖の対象となった。敵軍は男の同僚を買収し、彼の飯に蛇毒を混ぜた。男は死の淵を彷徨った末に生還したが、かつての様には体が動かなくなった。彼の嘆きを聞き入れた聖杯によって男は九本の腕と剣を持つ化け物として生まれ変わった。
"女剣士"ワルキューレ
ワイバーンと同型の魔物。兜から翼が生えた女戦士。
元々は高名な騎士の一人娘。父が後を継ぐ男子を望んでいたことを知った彼女は騎士としての道を歩むが、やがて体力的に成人男性との戦いに限界を覚える。美しい姿を代償に人外の力を手に入れたものの、直後に父は戦死。天国の父に愛されたい一心で、武名を高め最強の戦士となることを誓う。
美しい姿を代償にしたと書かれているが、魔物化する前と比較すると、兜と足の形状、上半身に口ができた以外に目立った変化はなく、グロくて醜悪な外観が多い魔物の中では珍しく、元の姿が殆ど残っている(強いていうなら身長が高くなり少しいかつくなった程度だが、それでも女性としてはまだまだ美しい部類である)。このため、彼女が無意識のうちに本当に生贄に捧げたのは父の命ではないか?という考察もある。
"没落騎士"トロル
DLCで追加。ベヒモスと同型の魔物。
騎士の背中に人面疽の様な腫瘍を持ち、それが巨人のように膨れ上がる。
元々はほら吹きの騎士。誠実で勇敢、確かな武勇を持った騎士であったが次第に傲慢な性格になってゆき、退役してからは誰も彼を慕わなくなっていた。それでも彼はかつての栄光が忘れられず、自分の武勇伝を語ることで周囲の気を惹こうと試みる。最初の内は人々もその武勇伝に魅了され彼を支持していたが、やがて飽きられ、焦った彼はほらを語るようになる。ある時「巨人と戦った」とほらを吹いていると周囲からそれを疑われ、武勇伝を実証すべく聖杯に願い巨人を出現させた。皮肉にも、それは自分の背中から生えており、自分自身が武勇伝に登場する醜い巨人と化してしまう結果となった。
"蝿伯爵"ベルゼバブ
DLCで追加。エルフの女王と同型の魔物。蝿のような頭を持ち、周囲に凶暴な蠅を使役している。
元々は貴族。高慢で、何もかもを臣下に任せる彼は生活すら部下がいなければ何もできない有り様であった。ある時没落し、周囲に誰もいなくなった後も貴族であり続けた彼は、当然のように死の淵に立つこととなる。そんな時現れた聖杯に願うと、新たな臣下である蝿が現れていることに気が付き、自らが蝿の王となったことを知るのであった。
"老歌唄い"ブレーメンの音楽隊
『デルタ』から追加。服を着た老人のロバの口から犬、犬の口から猫、猫の口から鶏が飛び出し、体から幾つもの音楽器が突き出た姿をしている。
元々は元音楽隊の老人と彼を慕った動物たち。愚直なまでに音楽隊に従事した男だが、加齢と共に歌えなくなって除隊される。生きがいを無くした事で男はみるみると老け込み、ロバを息子と思い込むほどに耄碌し、彼の介護に辟易した家族は男を捨てた。仕事を忘れられない男はロバと共に民衆の前で歌い続けたが、それも飽きられていく。そんな彼の前に聖杯が現れたが、彼はすでに耳が聞こえていなかった。しかし、彼を慕っていたロバがその声を聞き、恩返しの為に自分を生贄にして「歌声」を彼に与えた。息子たるロバの姿と若返り、歌声を得た彼は新たな息子である犬を連れて歌う。それも飽きられて絶望する中、またしても聖杯が現れて息子である犬がその身を捧げる。
聖杯の声を聴くのは息子の役目。次に猫、鶏が彼の恩返しの為にその身を捧げる。当初こそその珍しい姿に注目を集めていたが、いつしかその姿は珍妙な音楽を奏でる魔物と化していた。化け物の歌う歌を聞こうとする者はおらず、今も歌を聞いてくれる聴衆を探して歌い続けている。
- 嫉妬
"一つ目巨人"サイクロプス
無数の眼球がついた三叉の槍に縋るようにして歩く単眼巨人。
元々は無骨ながら確かな性能を持つ腕のいい鍛冶屋だった男。常にライバルの二番手、しかも見た目重視のくだらない装飾のついた武器の下に甘んじていることが我慢ならず、自己顕示欲のために片目を犠牲にして最強の槍を作り出すが、あまりに悍ましい見た目のせいで誰にも認められず、殺戮で武器の性能を証明しようとするモンスターへと成り果てた。
ちなみにヒュドラの元の姿の剣を作ったのはサイクロプスの元の姿である。
"化物"リヴァイアサン
背中に廃墟を背負った巨大な人面首長竜。
この魔物との戦闘は、背中の廃墟から頭部を狙って進めることになる。
元々はある国の双子の王子の弟。全ての面で兄王子の方が優れていたため、弟王子は次第に兄への嫉妬を深めていき、やがて殺意衝動に変わっていく。
『飼っていた鰐を兄に仕向けたらどうなるだろうか?』、その願いを聞き入れた聖杯によって体が鰐と一体化し、城を背負うことが出来るほどの大きさに膨れ上がる。その化け物は、兄王子が出かけている隣国へと向かっていった。
「背中に敵や獲物がいるなら海に潜るか寝返り打てば一瞬だろうに」と突っ込んではいけない。
"硝子百足女"シンデレラ
『デルタ』から追加。美女の下半身が百足のように伸び、幾つものガラスの足をしている。
元々はある城下町の三姉妹の三女。姉妹の美脚は舞踏会に招待されるほどに有名だったが、三女はいつも置いてけぼりだった。憤慨した三女は報復としてムカデの猛毒を次女の食事に混ぜ込む。寝込んだ次女の代わりにドレスを着こみ、仮面をつけて仮面舞踏会に出る。
舞踏会に慣れてきた彼女はいつしか男を弄ぶようになる。今度は長女にも同じ毒を仕込み、彼女のドレスを着て王子に近づくが、極度の脚好きの王子はその脚をなめた時に別人だと気付き、急いで彼女は逃げ出したが片方の靴が脱げてしまう。
その靴の犯人を捜して町に役人が溢れ、自分が捕まるのではと考えた彼女は自分の脚を砕き、現れた聖杯に長女の脚をもらい、今度こそ王子を魅了できると思って近づいたが同じく見抜かれ、その後も美脚の女性の脚を狙って襲い、その脚を付け替えるもまた見抜かれる。実のところ、王子は「脚好き」ではなく「脚の匂い」が好きなのである。
それに気づかない彼女は王子が気にいるであろう脚を用意するために自分の下半身をムカデに取り換え、より美しく見せるためにガラス細工の脚を付けたが、王子はそれに怯えて逃げ出した。
"火遊び女"サキュバス
『デルタ』から登場。白雪姫と同型の魔物。
元々は男運の無い女。交際している男は女を財布代わりにしか考えていない絵に書いたような屑だった。しかし、彼女はそんな屑な人間を愛おしく感じる人間だった。彼の為に蝋燭を売り続け、いつしか帰る場所がある人間を妬ましく思い、恋人と幸せに暮らす幻覚を求めて放火し始める。放火の現場を抑えられた彼女は牢屋に入れられ、取り調べを受けるが、彼女の証言にあった男性は町には存在しない人物であり、彼女の家には男性を象った蝋燭だけが残っており、男は女の妄想が生み出した産物だった。その事実を受け入れられ無い彼女の前に聖杯が現れ、男の存在を証明するために自分の頭を蝋燭にした。燃え上がる炎の中に、脳内の恋人の姿が現れる。女は見せて回る。炎が生み出す幻覚を。周囲に妄想の火の粉をまき散らしながら。
元ネタは『マッチ売りの少女』だが、ソルサク世界にはまだマッチが存在しないためにこの名称になったらしい(元になった同話の原作者の人間性の方が化け物とは言ってはいけない)。
オマケにこれにも似ていると皮肉を言われている。むしろフォルムとしてはこちらだが。
- 強欲
"巨鳥"グリフォン
全身各所が金塊と化している異形の巨鳥。
前足に金塊を抱えており、戦闘中に落とすと何よりも優先して拾おうとする。
元々は領民に重い税を課していた貴族。
とある芸術家の老人が魔法で作り上げた「獣・人・鳥を三体一組で象った金の像」を寵愛しており、像の返却を求めた芸術家を踏みにじり、像を隠そうとした妻を厳しく罰して死なせるほどの偏愛ぶりだった。そして欲に憑りつかれ、寵愛した金の像と一体化した魔物となってしまった。
そのため救済しても金の延べ棒を背中に背負っている。
『デルタ』のトレーラーアニメに元の姿の男性が登場しており、その身体がグリフォンへと変貌していく姿も描かれている。
"異形のモノ"スライム
金銭欲・食欲などの様々な欲望に負けた人間の典型例。
ドロドロした欲望の対象の塊であり、財宝が形作る「金欲型」と食物が形作る「食欲型」がある。
自身の肉体そのもの以外に代償として捧げられるものを持たない人間が変異するため、頻繁に見られる、別名「貧しいスライム(slum slime、スラムのスライム)」
さらなる欲望を叶えるために、より多くの人間を取り込もうとする。
ちなみにダメージを受けた時に出る台詞があまりにも某そげぶの人にしか見えないため「右腕が暴走した」だの「聖杯に右腕を捧げた」だのと散々な事を言われている(仮に魔物化したらどっちになるのかは謎だが)。
また、作中には登場しないが、文献によれば「性欲型」のスライムも存在するようだ。(多分体から浮き出ているものが性器や淫具などだとレーティング的にヤバすぎるからだろう)
"青き炎"ペガサス
頭部は馬だが、複眼や横開きの顎などには昆虫的な要素が含まれている。
昆虫的な要素は、刺された虻の影響によるもの。
元々は国王の側近。強い野心を秘めており、領主になるためにあらゆる障害を排除してきたが、イカロス牧場に多くの兵を投入して死なせてしまったために責任を取らされそうになり、逃げた末にイカロス牧場にたどり着いた。その場所で聖杯に逃げるための翼を欲し、代償として生物としての形を捨てて化け物になった。以来、その化け物は領主になる願いを糧に領土を我が物顔で飛び続けている。
"耳翼人"ワイバーン
皮膜でできた巨大な翼のような耳が生えた蝙蝠人間。
その姿や背景は飛竜というより、吸血鬼や悪魔を思わせる。
元々は暗殺者。男は聴覚が異常に優れており、彼も自身を「蝙蝠」と重ねていた。
主人の依頼をこなし続けてきたが、ある時同業者の奇襲によって瀕死に陥り、聖杯によって窮地を脱した。男はこれが主人の差し金であることを知った上で舞い戻り、主人の命令を聞き続けた。やがて主人が病で死ぬと男は屋敷を飛び去った。
その姿は人とも蝙蝠ともつかない化け物だった。
"暴走車輪"ウロボロス
DLCで追加。捩れて輪になった鎧の中に、輪入道のように人面が浮かび上がった魔物。
元々は科学者。今で言うモーターを発案し、それを応用すれば馬の無い馬車ができると思い立つも人々からは一笑に付され、そんな人々を見返すために実験を重ねた。しかし成果は上がらず、やがて彼の実験は狂気に落ち、ついには自分に雷を打たせた。当然男は重傷を負ったが、その際に現れた聖杯に願うことで雷を自在に操る魂だけの姿を得た。
その後は強度の高い車輪を得るべく自身の身体を車輪とし、車輪の魔物と化した。
"靴職人"レプラコーン
DLCで追加。ドワーフと同型の魔物。靴に入った3体の魔物の集合体。
元々は高名な靴職人の三つ子の息子。息子に技術を継承するつもりであった父に認められるべく、3人は常に競い合っていた。
中でも焦った末っ子が探求の果てに見出した物、それが「知能の高い動物の皮で作る靴」であった。最も知能が高い動物は何か、それを考えた末、彼は人間を材料にすることを思い付く。逡巡する彼の前に聖杯が現れると、迷うことなく彼は2人の兄を生贄に捧げた。
だが、それは兄達も同じだった。結局、3人とも靴の魔物になってしまい、呆れた父に勘当されてしまう。
その後はただ父に認められたいがために、3人で手を取り合って人間を狩っている。
ちなみにこのレプラコーンを始め複数人1組の魔物は倒しても誰か1人しか仲間にならず残りは死んでしまう。
"殺戮戦士"キメラ
『デルタ』から登場。獅子の鎧に蛇の盾、山羊の槍を持った魔物。
元々は戦士の息子。ある事情によって戦士の道を閉ざした男は、自身の息子にその願いを託そうとしており、息子もまたその願いをかなえようとしていた。理由は過去の事故にあった。馬車に轢かれそうになった息子を助けた時に父親は足に怪我を負ったのだ。自分のせいで夢を絶たれてしまったと、息子は罪悪感を感じ続けていたのだ。
しかし、父に劣らない素質はあっても、虫すらも殺せない「優しさ」が息子にあった。
父親は息子を鍛え上げるために心を鬼にし、命を奪う覚悟を植え付けるために息子に試練を与えた。初めに山羊を殺させて死骸から槍を作り、次に蛇を殺させて死骸から盾を作った。
死に慣れ始めた息子を戦士として完成させるために今度はライオンを放った。
息子はライオンよりもそんな父の神経に恐怖した。
しかし、息子は覚悟を決めてライオンを殺し、その死骸は鎧となった。
父親は、仕上げに取り掛かる事にした。「人を殺す練習」として「自分を殺させよう」とした。
嫌がる息子に武具を括りつけ、感情を殺させようとした。
そして、その瞬間に聖杯が現れる。
息子は薄々勘付いていた、父は自分を救った事を後悔しているのではないかと
だからこそ、出来損ないの自分なんかのために道を絶ってしまった贖罪として完璧な戦士となるべく、息子は「感情」を捧げた。
そうやって「誰かのために」行動してしまう辺りが致命的に戦士に向いていない証なのだが、
結果として、感情を失った息子は何の躊躇もなく父親を殺害し「理想の戦士」へと生まれ変わった。
今でもこの時の武具を持ったまま数多な戦場に現れては多くの戦士の命を奪っている。
それが何を意味するのかも、何のための殺戮だったのかもわからないまま
"戦母"ギガース
『デルタ』から登場。シンデレラと同型の魔物。
鎧騎士にムカデのような体、尻にはデカい赤子の顔がある。
元々はある女戦士。生まれつき体格がよく、力が強かった女は傭兵として名を挙げた。
積み上げた戦果と名誉の代償として失うものも多かった。彼女は女の幸せを求めていたが、それを諦めていた。偶々遭遇した魔物に対し、周囲の制止も聞かずに彼女は立ち向かった。
結果、強力な一撃を食らって谷底に落ちたが、同じく谷底に落ちていた魔法使いが彼女を助けた。
周囲は魔物だらけ、不安を解消させるために会話が始まった。
日に日に衰弱していく彼女を勇気付けるため、彼女の願いを叶えようと男が言った。
助け出された後に女は男に手紙を送った、いつの日かまた会おうと。
しかし、手紙の内容はいつも同じ、会えない分だけ彼女の中に妄想が膨れ上がった。
そして、ある手紙を境に期待が裏切られたと知った彼女の前に聖杯が現れた。彼女は子供を望み、自分を袖にした魔法使いに突き付けてやるつもりだった「貴方の子よ、責任をとって」と。
しかし、彼女が冒頭だけ読んで破り去った手紙にはある真相が掛かれていたのだ。
実は彼女を助けた魔法使いは既に死んでいるのだ。自分の傷を後回しにして彼女を治療し、救援に来た仲間に「彼女を幸せに」と残していたのだった。
だが、もしも手紙を最後まで読んでいたとしても、「男との幸せな生活」を夢見ていた彼女はどっち道魔物になってしまっていただろう……。
ちなみに救済しても勝手に意思を継いで魔法使いとして戦う様になるし、生贄にしたら思いは踏みにじられるという彼女を愛した魔法使いにとっては物凄く報われない展開となっている。
- 憤怒
"悪魔の手先"クラーケン
体から帆船のマストや舳先、内臓が変異した触手が生えている怪物。
元々はある貿易商船の船長。何よりも愛する船を海賊に奪われた彼は、軍船の乗組員として戦果を挙げ、やがて因縁の海賊を追い詰めるも致命傷を負う。
聖杯に願い、船長は怪物となって海賊たちを殲滅するが、戦闘のあおりと臓物からこぼれる体液により船は沈没。
船長ともども海底に沈む中で再度聖杯が現れ、船長は再度願い、海上に浮上する。
そして、船長は自らが長を務めていた軍船を探し出し、かつての乗組員たちを殺し、そして肉塊を取り込んでいく。
その肉塊によって、 船長の姿は次第に馴染みある愛船の形へ変わっていく。
以降は愛船を再現し取り戻したい一心で、海を彷徨い犠牲者の肉塊を取り込んでいる。
"魔犬"ケルベロス
胸に槍が刺さった三つ首の獣人。二足歩行と四足歩行を使い分けて攻撃してくる。
元々は男性の衛兵で、二匹の愛犬とともに故郷を守っていた。
伝染病から逃れるために住民が故郷を離れていったため、住民をその場にとどめようと暴力に走った。
その結果、住民により槍で刺されるが、住民の命を代償にし、愛犬を取り込んだ結果ケルベロスとなった。
その願いの性質上(元ネタもだが)街に入ろうとする者には危害を加えず、しかし街から去ろうとするものには容赦しない。
無印のパッケージに描かれておりコラボの際は共演先の作品に出張するなど、モンハンでいうリオレウスのような看板魔物という扱いである。また、グロテスクではあるがそのポジションということもあってあまり嫌悪感を感じさせず、むしろ作品内の魔物としては割とかっこいいデザインである。
"ワガママ娘"ミノタウロス
角のある真っ二つに割れた鉄仮面を装着した魔物。
腕にはミイラを柄の代わりに据えた巨大な斧を持っている。
元々はある領主が小間使いに手を出して生まれた娘。
その出生を隠すために醜い鉄仮面を被せられ、母と離ればなれとなる。
やがて母親は領主の正妻の虐待によって狂ってしまい、狂った母と再会した娘は仮面を外し、母に正体を明かすが、最早母は娘のことすら認識できなくなっており領主と正妻に復讐を誓う。
そして現れた聖杯に代償を払い、娘は鉄仮面の化け物に、母親は捻じ曲がった巨大な斧へと変化した。娘はその斧を手に領主と正妻に復讐を果たしたが、自分の求めたものは絶対に手に入らない事を自覚してしまい、娘もまた狂ってしまう。
今は幸せな家族を狙って各地をさまよい続けている。
ちなみにこの壮絶すぎる過去からか、救済してもサンクチュアリではなくグリムに所属してしまう。
"目玉巨人"バジリスク
DLCで追加。ワイバーンと同型の魔物。両翼が目の様な器官に置き換わっている。
元々は盲目の青年。
自分の容姿に自信が無い娘に介抱されており、彼女の献身にいつしか愛情を抱くようになる。
その甲斐あってわずかに光を取り戻しそうになるも、「自分の醜い姿を見られたくない」という理由で娘が毒を盛り、再び視力を失うこととなった。
その事を知った彼は「容姿等関係なくお前を愛していたのに」という慟哭と、完全に光を失った絶望、そして復讐心から聖杯に願い、娘を犠牲として魔物化したが、バジリスクが流す毒はこの時に受けた物が影響している。
欲望満点の他の無印のDLC連中とは違い、とにかく悲惨な過去とあまり強くない所が涙を誘っている。
"巨眼姫"白雪姫
『デルタ』から追加。巨大な一つ目を持ち、七人の小人に支えられている。
元々はとある国の王女。王女はとても目が美しく、自己顕示欲の強い母親はそれを妬み、彼女を子供と言うよりも鏡としか見なくなった。成長した娘の存在が母親の自尊心を傷つけ、娘の目に映る姿が自尊心を満たした。そんな王妃の前に聖杯が現れ、娘を「最高に美しい自分だけを写す鏡」にするという母親としても人間としても最低な願いを叶えて貰う。
そしてその事に娘が気付かぬ様誰にも会わせず、鏡一つない部屋に幽閉した。
鏡になった事を知らずに育った娘は成人を境に疑問を抱き、再び現れた聖杯に片目を代償に鏡を作る魔法を得た。その魔法で真実を知り、近くにあったリンゴを鏡の使い魔にし、時を待った。
やがて現れた母親に本当の姿を見せつけ、母親はそこに映った醜い自分を見て驚愕した。
娘は母親を気遣い、無意識に目に映る母親を数段美化して映していたのである。しかし真実を知り、気遣う必要のなくなった娘は美化をやめ真実を見せつけ続けた、逃げようとしても林檎の鏡が真実を突きつけ続け、やがて母親は精神が破綻、死亡する。
しかしそんな人でなしの母親でもかつて大好きだった母親であり、それを自らの手で死に追いやってしまった事は彼女の心に影を落とし、その眼の鏡には今もなお美しかった母の姿を写し続けておりまわりを彷徨く林檎の使い魔に映る眼の中の母親を眼にしてはその大きな鏡の眼から涙を流している。
唯一、家族の手で魔物化したのち、自ら更に魔物化した魔物である。
"鼠使い"ハーメルンの笛吹き男
『デルタ』から追加。ブレーメンの音楽隊と同型の魔物。
元々はネズミが友達だった男。
彼は両親の愛を一切知らず、親戚の虐待を一身に受けて育った。友達を作る事ができず、自分を差別しないネズミと仲良くなった。いつしかネズミ達の意思が分かるようになり、男の意思を伝える事で芸もできるようになった。そんな彼の元に子供たちが集まるようになり、一層芸に力を注いだ。
だが、ある日村の子供の一人が姿を消し、大人たちは彼を犯人だと決めつけて彼が留守の間にネズミ達を惨殺した。それを嘆く男の前に聖杯が現れ、微かに息があったネズミと一つになり、魔物と化した。
彼はその力で村人へ復讐……しようとはせず、いなくなった子供を探索し、その嗅覚で子供を見つけたが、その子供は死んでおり、匂いから犯人が誰なのかも分かった。
犯人はその子供にいじめられていた子で、いじめに耐えかねて反抗を試みた結果、打ち所が悪く相手は死んだというのが真相だった。
男は犯人の子は今もなお罪悪感に苛まれ続けているだろう、それならば元より誰からも好かれておらず求められていない、化け物となった自分が犯人だと名乗ればいいのだ考えた
男は自分を虐げた村人に復讐するのではなくその子を糾弾するのでもなく、代わりに自分が罪を被る事でその子を救済する道を選んだ。
その後、彼は「自分こそが犯人だ」と叫んでまわり、「子供を攫っては殺す化け物と化した狂人」を演じ続けた。虐げられた者への愛と救済を胸に秘めて。
魔物の中で唯一、生粋の善人である。
- 色欲
"女王"エルフ女王
背中から翼が生えた四本腕の女。タンポポの綿毛を思わせるエルフを従えている。
元々はある崖から落ちた女性とそこにいたタンポポ。彼女は子宝に恵まれず、いつも子供をほしがっていた。その願いが、谷底で子孫を増やせずにいたタンポポと合わさり、エルフを生み出した。彼女はエルフを我が子のように可愛がり、母親として、女王として幸せな日々を送った。
やがてエルフの力で翼が生え、崖の上の世界に戻ると、やはり人間の子供がほしいと考えるようになる。
彼女は実は人攫いの女で、好みの子供を見つけては攫い、"家族"になり、反抗されては殺すという事を各地を転々として繰り返していた凶悪誘拐犯。少なくとも12人犠牲になっている。13人目でばれたという発言から、13人犠牲になっている可能性もある。
崖の下に落ちたのも事が発覚して追い詰められ、足を滑らせたからである。
彼女は崖の上に舞い戻って以来、人間時代のように人間の子供を見つけては品定めし、さらい続けている。
"謎の歌声"セイレーン
サイクロプスと同型の魔物である、女性の顔をした巨人。
無数の自分の口がついたほら貝を集めて作った杖…もとい楽器を携えており、杖を強化させるときに口から音符が出てくる。
幼馴染の男性に裏切られた女性が自身の歌声をささげた結果、魔物化した。
無印では童話の要素はまだなかったが、この経緯からすると人魚姫もモデルかもしれない。
"首無騎士"デュラハン
DLCで追加した無印では待望の2体目の毒属性弱点魔物。
拷問具のような棘付き鎧に身を包み、鎖につないだ己の生首を振り回して戦う戦士。
元々は変質的な趣向を持つ騎士。痛みを求めて戦場に繰り出しており、気味悪がった敵から恐れられていた。さらなる痛み、そして「死を体験してみたい」という禁断の好奇心を願った際に聖杯に出会い、不死の身体を得て自身の首を斬り落とした。
結果永遠に死に続ける事になり、つまり永遠の快楽を得ているためか生首は歪んだ笑みを浮かべている。
討伐された後唯一生贄にする事を求めてくる変態であり、生贄にされた際も断末魔ではなく嬉しそうな嬌声を上げる、作中で唯一と言っていい願いが歪んでいない(元から歪み切っていて歪みようがない)変態である。
"鋼鉄女"アイアンメイデン
DLCで追加。デュラハンと同型の魔物。
元々はとある騎士に恋をした女性。
騎士の助けになるために聖杯に願い、生命力の宿る血を手に入れた。
騎士の傷を癒すために、自らを拷問して常に血を流している。
騎士は女を見たショックで死んでしまう。
泣き叫び発狂した女の首は胴体から離れた。
ちなみに、神話のモンスターや童話の主人公がモチーフの魔物がほとんどな中で、こいつだけ唯一拷問器具がモチーフである。
"官能画家"インキュバス
DLCで追加。夢を操るキャンバスのような魔物。
元々は売れない画家。納得する絵しか描かず、家族にも愛想を尽かされた貧乏画家であったが、絵に対する拘りだけは捨てなかった。そんなある日、この上なく卑猥な夢を見た彼はそれを絵にすることを思い付く。しかし、自身の拘りが邪魔してなかなか完成が見えない、「自身の見た卑猥な夢はもっとエロティックだった」「この絵はそれを表現できていない」「表現できる絵の具がない」と苦悶した。
そこで画家は現れた聖杯に願い、自分の脳に筆を突き刺す事で、イメージを絵の具に絵を描く術を得た。
だが、そのうち「実際にその卑猥な体験をしたい」と無理難題を言われるようになり、今度は自身を滅多打ちにしてキャンバスと化し、鑑賞者を取り込む事で絵と同じ快楽を与えられる絵画の魔物と化した。
取り込まれた者は今も永遠の快楽を得ている、しかし「飽きられ、誰にも求められなくなる」事を恐れた画家により「二度と出ることはできない」事には画家本人も、取り込まれた者たちも未だ思い至っていない。
攻撃属性が非常に多く、盾の属性を吟味しないと苦戦を強いられることになる。
"変態王"裸の王様
『デルタ』から追加。バハムートと同型の魔物。
元々は変態的な趣味を持つ王様。公明正大な王様で、民衆からとても慕われていた。そんな王が統治する城下町で、「王冠と分厚いローブ」を身に纏った男が女性に対して裸体を見せつける事件が起きた。その人物は王に似ていたが、民衆は彼の評判を下げるための工作に違いないと考え、事件後も威風堂々としていた王を支持した。その態度を崩さなかったのは当然、その犯人は王なのだから。王自身はその行為に罪悪感を覚えていたが、その行為が癖になってしまい、何度も変態行為を繰り返した。行為を繰り返すたびに「そんな工作には騙されない」と民衆の支持が集まった。
そして彼は、ある行為を境にこの衝動が「本当の自分を知ってほしい」というものである事に気づいた。そんな彼の前に聖杯が現れて彼の願いを叶え、以降彼は「丸見え」の怪物になった王を直視できる人間、本当の自分を見てくれる肝の据わった人間を探している。
二つ名が「昂る変態王」であり、見た目も皮膚が透明化して内臓が見えている程度で、その半ばくだらなすぎる経緯もあって醜悪さや嫌悪感が薄れる魔物となっており、平成の日本の少年マンガに登場するスケベなギャグキャラのようなキャラクター性で親しみすら感じさせる……かもしれない。
"倒錯君主"カエルの王様
『デルタ』から追加。巨大なカエルに人間が座った姿をしている魔物。
カエルの舌が拘束された女性になっている。
元々は汗っかきな王様。その体質のせいで女性と縁がなかった(と自分では思っていた)王だが、自分と同じく大量の汗をかく女中に恋をする。女意を決した王が彼女に好意を伝えるも、片思いの人物がいると伝えられ、しかし王は無理強いすることなく彼女を励まして告白するように促したが恋は実らなかった。
汗っかきと言う理由で断られた事を知った王は自身をも侮辱されたと感じその男を拷問に掛けて殺してしまう。
それを知った彼女は嘆き、本来の姿であるカエルに戻ってしまう。カエルは助けてもらった礼を言いたい思いが魔法と結びつき人間になったものであり、そして自身の想いが受け入れられないことも知っていた。
その姿に感銘を受けた王はより愛情を深めたが、カエルはそれを怖がり逃げてしまう。
それ以降も王はカエルに付き纏う。そんな王の前に聖杯が現れ、自身の持っているすべて(城や配下の人間、金銀財宝)を捧げてカエルを人間にしてほしい、それでもなお逃げるカエルに、今度は自分がカエルになればいいと彼の願いを叶え続け、カエルを追い続けた。
カエルは思った「この王はおかしい」「重すぎる…」と…。やがてカエルは捕まり、それでも愛に応えようとしないことで王は怒り狂い、愛を伝えるために束縛し一方的に愛を注ぎ続けたことでカエルは自我を失い、王の言いなりになってしまった(舌の拘束された女性が彼女)。
王は気づいていない。自身の愛情表現がどれだけ歪なのかを、それは魔物に成り果てた姿よりも恐ろしいものである事を。
ちなみに依頼は家族がしているのだがこの「家族」が「王が生贄にささげた配下の家族」か「カエルの家族」かは不明。
救済しても懲りないので生贄にした方が世界のためになる気がしてしまう。
"調教兎"ウサギとカメ
『デルタ』から追加。カエルの王様と同型の魔物。巨大な亀の首が拘束された男性の姿で、甲羅の上にウサギの被り物をした女性が座っている。
元々はサディズトの女性とマゾヒストな男性、なのだが魔物の由来は女性の視点で話が進む。
女は男の泣き顔を見るのが好きだった。ウサギの被り物を被り、酒場で男を誘い、調教する事で金を貢がせていた。そんな彼女のうわさを聞いた貴族の男が現れ、これまでと同様にいたぶったが、貴族故に弱みを見せられない男はその行為を喜んだ。いつしか、そんな彼を癒してあげられるのは自分だと気付いた彼女は本気で彼を愛した。行為は更にエスカレートし、女は男に亀の甲羅を着せ、行動に難儀する男を見て「世界一のノロマ」とあざけるようになった。その後、行為が思いつかなくなった彼女の前に聖杯が現れる。願った彼女は自殺し、男性のために死に、その上で二度と愛を与えないで放置すると言う究極の愛を見せた。
男はその愛に答える為、亀のような姿に変貌した。本体は男の方であり、背中の女は幻覚であるため、倒しても変態男が出てくるだけである。
ちなみに某仮面ライダーのオマージュなのか、前述のベルゼバブとの同時討伐ミッションが存在する(この魔物の元の姿と某ライダーのベルゼバブの演者の境遇は非常に似ている)。
- 怠惰
"無精荷車"ケンタウロス
生きる事さえ面倒臭くなった、ものぐさな天才弓師の末路。
馬と荷車と合体し高速で動き回るが、これも自分で動くのが面倒だから。
嘗ては努力知らずの天才。弓の使い手でありながら、親衛隊も真面目に働くのがバカバカしいと放棄して盗賊となり、彼を慕った部下に自身の世話をやってもらっているほど楽をして暮らし、やがて馬ごと盗んできた荷車で生活するようになるが、次第に部下の相手をすることも面倒になり一人残らず皆殺しにした。やがて何もしなさすぎて飯もとらず荷車内は排泄物まみれになり、自身の死が近づいてきたなかで現れた聖杯に楽な体を願ったことで馬と荷車が合体した姿となった。
最終的に本当に面倒なのは「生きてること」だと気づき弓矢で自殺を図ったが、合体した馬の命のおかげで死ねず、馬を殺そうにも暴れて拒絶されて失敗に終わり、死にたい時に死ねない面倒くさいこの世界で生き続ける羽目になるのであった。
無印では最強クラスの魔法を落とすためプレイヤーから狩られまくっていた。
"岩ダルマ"ガーゴイル
ちやほやされることを嫌い石ころと化した美少年の末路。ある日道端を通りかかった女性に恋をしてしまい、元の姿に戻ろうとするも、長らく石ころとして過ごしたせいで元の自分を思い出せなくなり、目や鼻がバラバラについた石の魔物と化した。
ジャック・オ・ランタンと同型の魔物だが、二倍大きい体躯を持つ。
岩の身体で強烈な突進をぶちかましてくる。が、突進を盾で受け止めると気絶して逆に隙だらけになるというコミカルな姿も見せる。
ちなみに無印ではDLCでデュラハンが来るまで唯一の毒属性弱点魔物だが、逆に言えばこいつしか毒属性弱点がいなかったため他の属性で纏めて狩られていた。
"猫王子"ケットシー
ネコの様に自由になる事を聖杯に望んだ結果ネコの姿と化した王子。
気に掛けて愛でていた猫を代償として捧げ、何よりも自由な姿となったが、代償として捧げる瞬間は無自覚に涙すら流すほどの相手を捧げたにもかかわらず、涙の筋が乾く頃には何を失ったのかすら忘れてしまった。
「自由」な存在は「くだらない過去」にいちいち囚われたりはしないのだ、それが不幸なのか幸せなのかは本人にしかわからないが
無印ではとにかく強く、プレイヤーからは家出しただけというよりも魔法使いをケガさせ過ぎて討伐依頼に載ったと噂されている。
ちなみに怠惰なケットシーと聞いて関節技を掛けたくなった人もいるだろうが残念ながらこのゲームに関節技は無い。
"子豚兄弟"三匹の子豚
怠け者の3兄弟の末路。
ケンタウロス以来2匹目の怠惰らしい魔物にしてシンデレラ以来4匹目の毒属性弱点魔物(実際には弱点はそれぞれ違うのだが)でもある。
それなりに裕福な家庭で好きなだけ食べて暮らしていたため3人とも豚のように太っていた。父親が亡くなると、彼らの身を案じた母親に追い出されるも、逆恨みしながら兵役試験に応募する。
しかし長男は藁の鎧、次男は木製の盾と馬鹿にしているとしか思えない武装で参加したため、鼻で笑われてしまう。
三男だけはレンガで組んだ戦鎚を持って行ったため、唯一合格出来たが、今のままの体格ではロクな稼ぎもできない事に気づく
そして現れた聖杯に願い、長男は自ら自身を代償にして鎧に、次男は自らを代償にして盾となった。
「自分達よりも見込みがある三男が自分達を使ってくれ」と騎士となるはずの三男に託した
一見自分の身を犠牲に弟により良い人生送らせようとした美しい兄弟愛に見えなくもないが、三男は2人の魂胆に気付いていた
この2人はこの期に及んで自分に寄生しようというのだ、三男に持って貰えば自分は働かずに済む、そのために身体すら捧げる筋金入りの怠け者が自分の兄であり、自分がその弟であり、ついこの前まで自分もそちら側であった事に嫌気がさした。
それでもそんな自分達を支えた父や母の苦労を自覚できたことで、自分がこの2人を支える事こそが親孝行であると考え、2人の思惑に乗る事にした。
そして三男は強い武器を望んだのだが、慣れない事をしようとしたせいか、後先を考えず自分を代償として支払ってしまい武器になってしまう。
しかし、装備品その物となった彼らに、肝心の中身は存在しない。
末っ子はバカな自分に呆れた「やはり分不相応なことはするものではない」と、そして悪い意味で開き直った。
以後、体裁だけは整え、外観が鎧と盾と武器を装備した戦士に見えるようにした。
それを証明するかのように、鎧の隙間から、藁で構成された人型が確認できる。
そして今は自身を装着できる"寄生先"を探して彷徨っている。
あまり注目されないが、元ネタの童話でも、兄の豚二匹は怠け者という設定がある。家の材料を藁や木にしたのも簡単にできるためだったが、それが原因でオオカミに家を壊され食べられてしまった。
なお、それぞれ武器や鎧としてはちゃんと機能してはいるため、結局仕事してる、しかも本来中に末の弟が入ることで楽をするつもりだった鎧の長男が盾の次男と武器の末っ子を待たされ働かされており、逆にほんのちょっと覚醒したはずの末っ子は武器として持たれることでサボっているというのは言わないお約束。
- 暴食
"大飯食らい"ハーピー
グリフォンと同型の魔物。丸々と太った醜い人面鳥。腹には穴が開いているため、吸いこんで喰った獲物はここからすぐに吐き出される。
元々は失恋のたびにやけ食いする癖があった肥満体の女貴族。ある露天商に恋をして、会うたびに大量の果物を購入していた。
露天商が姿を消したとき、彼女は聖杯に願って空を飛び遠くへ会いに行けるようになった。露天商を見た彼女は気がついた。
自分は恋をしていたのではなく、その露天商を食べてしまいたいと思っていた事に。
プレイヤーが一番始めに狩ることになる大型魔物(厳密にはリバイアサンだが訳もわからずいきなり放り込まれる上マーリンの禁術で強制終了するためノーカウント)であり、願いの叶えられ方や歪み方、その末路の醜さが非常にわかりやすく本作の象徴とも言える
"飢餓市民"ベヒモス
DLCで追加。背中からリンゴの木が生えた四つん這いの樹木の魔物。振り落とされたリンゴは個別に襲いかかってくる。
元々は林檎好きの青年。幼い頃から病的なまでに林檎を好み、やがて家計と両親の精神を圧迫する程にまでなり、実家から勘当を受ける。
すぐさま好物の林檎が食べられなくなることに気が付き、絶望と後悔の最中、聖杯に願って背中に林檎を生やした。
"料理長"オーガ
DLCで追加。ミノタウロスと同型の魔物。巨大な鎌を持ち、コック帽を被っている。
元々はある王族の専属の料理人。一度食べた物を二度と口にしたがらない肥えた舌を持った王を満足させるべく努力を重ねていたが、不注意で食材の取り扱いを誤り食中毒を起こしたことで死罪に処される。
最後のチャンスとして王を満足させる料理を作る条件を出されるも思い付かず、聖杯に願うことで自分の舌を利用したタンスープを作り上げ恩赦を得た。彼女の作る料理は王に我を忘れさせる危険な美味らしい。
"大酒呑み"ドワーフ
DLCで追加。肩車状態で行動する、酒樽から手足が生えた三人の小人。
元々は3人の炭鉱夫。魔物としては珍しく、複数人の願いが合わさっている。
酒浸りの炭鉱夫であったが仕事をクビになり、やがて好物の酒も飲めなくなり死に瀕した際に聖杯が現れた。
聖杯に酒が飲みたいと願い、自分の体から自身の肉体を酒とする術を得たが、その度に体が縮んでいき、それでは自分の身が持たないために巨大な酒樽を作り他の人間を取り込み酒に変える魔物と化した。
"菓子兄妹"ヘンゼルとグレーテル
『デルタ』から追加。フィールド上のお菓子の家を移動するクリームに塗れた巨人のように見えるが、実際は二体一組の巨大な蝗の魔物。
元々は口減らしの為に捨てられた兄妹。
両親に捨てられ、幸せな思い出を思い浮かべながら衰弱していく兄妹の前に聖杯が現れ、2人は飢えをしのぐために自分たちの身体をお菓子に変えた。
兄妹は喜び、両親の飢えも癒そうと戻るが、両親は人の身で無くなった兄妹を拒絶する、両親からすれば自分達が捨てた子供が化け物となって復讐しに戻ってきたようにしか見えなかったのだ。
拒絶された兄妹に飢餓の原因となった蝗が集り、自身を必要としてくれる蝗に兄妹はその身を捧げる。
体のほぼ全てが喰われ、意識が途切れる直前にまたしても聖杯が現れ、蝗と家族になりたいという願いを叶える。新しい家族と帰る場所を得た二人は迷い込んだ旅人をお菓子に変えて貪る魔物と化した。
余談だが、フンパーディンク作のオペラ版「ヘンゼルとグレーテル」に登場する魔女も、捕まえた子供をお菓子に変えて食べるという設定になっている。
- 生欲
"火ダルマ"ジャック・オ・ランタン
ガーゴイルと同型の魔物。武防具の残骸が大きな塊となっており、外見は「カボチャ」のように丸い。
元々はロムルス帝国と魔法使いの戦いの際、オリンピア平原の戦場に漂う魔力の影響で人間として死ぬことができなかった兵士たち。
祖国のために己の死すら乗り越えようとする気概をもった、あるいは兵士になったことを後悔し親孝行のため家に帰りたいというその魂が、戦地に充満する魔力の残滓と結びついて周囲の武具の残骸を取り込んで生まれた魔物であるため、実際には現象に近い。
"不死鳥"フェニックス
老婆の顔を持つ、全身が炎に包まれた巨大な蛾。
元々は一人寂しい人生を過ごした女性。
代々幻覚剤を作って売る家系であり。それだけのためにコソコソと隠れて生きてきた自身の人生を嘆き、自暴自棄になって炎に身を投じたが、聖杯によって灰の中から若返って蘇った。
それから今までの分を取り戻すように彼女は人生を謳歌し、念願の恋愛もできた。
しかし若返りの効果は長くは続かず、度々炎の中で新生を繰り返す、その時共にいた恋人を捧げて共に燃え尽き、また若返る。
いつしか若返りの効果のサイクルが短くなり続け、絶えず新生し続けるようになり、常に炎を纏った姿になった。
蛾になったのはその若返りの儀の際家業で使っていた蛾が炎に紛れ込んだため
「飛んで火にいる夏の虫」という諺があるが、この虫も蛾のことであり、「炎の中に飛び込む」というのも、元ネタの不死鳥と共通している。もっとも、この魔物の場合は生前に継がされた家業のせいで蛾と一緒に過ごしていたため。
"鋼騎士車"ユニコーン
ケンタウロスと同型の魔物。全身を鎧に包み、武装馬車と一体化した半人半馬。額からは氷の矢が角のように生えている。
元々は王の側近。仕えていた先代の王が急死し、後継者もいなかったため彼が王の座に就いた。
男は誇らしげに思う一方、どこかで恐怖を抱え込んでいた。王の死は暗殺によるもので、実行犯は彼であったからだ。
そして他人との接触を恐れて甲冑に身を隠すようになったがそれでも恐怖は消えず、隙間の無い完璧な鎧を鍛冶屋に注文し続けた。
他人を拒絶し続けて男は自滅の道を辿っていたが、ある時現れた聖杯によって隙間の無い完全な魔法の鎧を得た。しかし、今度は魔法による暗殺を恐れるようになり、側近に魔法で攻撃するように命令した。
その結果、鎧は魔法すらも通さないことが証明されたが、不安がないことがなにか見落としがあるのではないかという更なる不安につながった。
"雪ダルマ"ジャックフロスト
ガーゴイルと同型の魔物。
こちらもジャック・オ・ランタンと同型の魔物だが、ガーゴイルと同様、二倍大きい体躯を持つ。
外観はガーゴイルとほぼ同じだが、こちらは氷で構成されており、鎧の手足となっている。
元々はとある騎士団。領主から「冬を撃退しろ」という無茶な命令を下されたが、それでも逆らう事ができなかった。
冬の寒さに耐えしのげば冬は恐れを成して逃げてゆくのではと考え、冬の寒さに打ち勝つために自分達が寒さになってしまった。
氷の魔物だが、魔物と化した経緯ゆえか発言が熱血。
"亡者の影"ゴースト
DLCで追加。色鮮やかなローブを身に纏い、腹部には裂けた口がある。
元々は娼婦。感染症にかかり醜く朽ちる自分に耐えられず、自身の永遠に揺るがない美しさを聖杯に願ったが、それは即ち肉体という概念からの解放であり、魂だけの存在と化した彼女は誰にも認識されない皮肉な結末を迎えた。
しかしそれでも彼女の欲求は衰えておらず、周囲に見せびらかすために透過したステンドグラスを布状に変化させ纏うことで輝くローブを手に入れている。
"蜥蜴戦士"リザードマン
『デルタ』から追加。頭部がトカゲの形をした魔法使い型の魔物。
元々は「エリクサー」と呼ばれる禁術に手を出して失敗した魔法使い達の成れの果て。
このエリクサーが齎す不死とは「生物とは元来不死である、同種の生き物が生きている時点で自分も生きているのと同じなのだから」という哲学的不死のことであり、「血族が続くうちはその生き物は生きている」という一種の原始的宗教のようなもの、その概念に自我は不要である
そのため禁術を行う代価として不要である「自我」を要求されるが、挑戦した者は皆完全に自我を捨て去る事ができず失敗してしまうらしい。
何故なら不死を求める者のほぼ全員は「永遠の自己」を求めており、そんな自意識と自我の塊に自我を捨てろと言っても無理な話であるからだ。
結果として半端に自我を捨てたことで魔物と化した彼らはリザードマンと呼ばれた。
エリクサーについて書かれた書物の行方は不明だが、リザードマンが生まれ続けているということはどこかで誰かに読まれているのだろう。
他の魔物とは異なり救済は不可能であり、生贄にしかできない。逆に救済すると復活して戦闘継続となってしまう。
"金剛蜥蜴男"バハムート
『デルタ』から追加。裸の王様と同型の魔物。
吸血鬼や悪魔を思わせる姿のワイバーンに対し、こちらは比較的ドラゴンその物という姿。醜悪な外観が多い魔物の中では普通の竜人といった感じでカッコいい外観であり、ユーザーからも好評。
禁術「エリクサー」に失敗したリザードマンの一部が、体内へオリハルコンを取り込み、意図的に寄生させたことで進化した魔物。
リザードマンはエリクサーの効能で「不老」にこそなれたが中途半端に自我を捨てたがため肉体は脆いままであり、生前の欲望たる「永遠の命」と崩壊していく自我を求め、オリハルコンを取り込むことで自我の穴埋めと自然界から採取できる鉱物とは一線を画した「生体鉱物」を生み出させて自身の体を硬い鉱物で覆うことで死から遠ざけようとし、一方のオリハルコンは肥大化した自我を入れられる殻としてより高い自己顕示を可能とする人型魔物…ひいてはリザードマンを選ぶという一種の共生関係の魔物である。
他の人型魔物との戦いで稀に出現する乱入系のレア魔物である。
ちなみにセリフのせいで彼を思い出した人もちらほら。
"傀儡狼"赤ずきん
『デルタ』から追加。狼のような黒い鎧を纏い、腹部から別の頭部が飛び出した姿をしている。
これはある詐欺師の話である。
元々は装備で相手を威嚇してきた騎士この騎士は天涯孤独の身だった、理由は分からないが親が居なかったのである。
それ故に傭兵稼業で身を立てる事にしたのだが、腕前はてんでど素人だった。
しかし、その気迫と恐ろしい鎧の迫力は他の追随を許さず、立ち振る舞いは一騎当千を思わせるものであった。
それ故に、彼が脅すだけで、大抵の兵士はビビって逃げてしまった、戦わずして勝つ、それが彼の唯一の戦法だった。
ある時、らしくなく突出し過ぎ、手傷を負った騎士は逃げ込んだ小屋に住む老婆を脅して食料を得ようとしたが、老婆は怯えているにしては奇妙なくらい騎士をもてなした。
居候して数日後、今までにないくらい豪勢な食事が出され、男はそれを平らげた。しかし、残されていた一通の手紙を見た騎士は老婆が(老婆は知らなかったようだが)自分の母親である事、昔生き別れた息子の面影を感じた事でつい優しくしてしまった事、その食事は食料が無くなってしまったので自分の身体を使ったものである事を知り、「生き別れ、やっと再会できた自身の母を食ってしまった!」そう驚いた騎士は母を助けようと半狂乱になり自らの腹を掻っ捌いた、それこそが老婆の、「レッドフード」の目的である事も知らず。
「騙されたな」
本性を現したレッドフードは男の身体を乗っ取った。手紙も料理も、全て男の記憶を元に構成された幻、何もかも嘘っぱちだったのである。
老婆はこうやって多くの人間を詐術にかけ、その肉体を乗っ取り生き続ける魔物「永遠のレッドフード」なのだ。
無印のケルベロスと並んで『デルタ』の看板魔物。
"女師範"アリス
『デルタ』から追加。インキュバスと同型の魔物。
元々はアリスと言う名の魔法使い。彼女は「ワンダーランド」と呼ばれる土地の発見を目標としていたが、魔法使いとしての寿命である「ドッペルゲンガー」が近づいている事を悟っていた。
彼女が「ワンダーランド」にこだわるのは、ワンダーランドが彼女の娘が変貌したものであったため。
探す合間にもう一つの目的である「後継者」を作るため、後世に「グリモア」と呼ばれる禁術を生み出し、自身を「アリスの洞窟」と呼ばれる魔法使いを育成する場所になるように聖杯に願った。
禁術によって世界中に娘を投影したにもかかわらず誰もが娘の存在を否定したのは、娘が生贄で吸収した女の中に居る記憶の存在でしかなかったからだ。その事も知らずに彼女は魔法使いの育成に力を注ぎ続ける、いつか「とっくに生贄にされた自分の娘」を見つけ出してくれると信じて
- その他
"狼男"ワーウルフ
ケルベロスと同型の魔物。外見は完全な人狼であり、ガウェインが十年間にわたって追い続けている。
何人もの魔法使いを倒してきた指折り付きの魔物であるが、その行動はなぜかガウェインの周囲にしか及ばない。
ある女魔法使いの仮説によってワーウルフとはガウェイン自身であることが判明する。
しかし、元々は仮説を立てた女魔法使いが魔物から受けた傷によって魔物に変化する症状を持つ病気のようなものであり、彼女と関わりを持つガウェインが代わりに受け取ったために彼にその症状が現れただけである。
作中ではガウェインが自身の目玉を犠牲に産み出した幻影のワーウルフと、ガウェインが変化した真のワーウルフの二体が登場する。
"魔始祖"オーディン
『デルタ』から追加。巨大な馬に魔法使いが乗った姿をした魔物。
元々は初代ペンドラゴン。並外れた知識欲を持つ彼は、全知全能の力を求めて自身の肉体や愛馬「スレイプニル」などを「記憶の器」に変え、更に有能な魔法使いを拐っては生贄行為を繰り返すなど暴走していき、未だ知らぬ禁術を含めてあらゆる魔法を持つ魔物へと変じた。
アヴァロンによって一度は退けられ、東方の世界へと姿を消したが近年再び姿を現した。他の魔物と違い、倒してもその場から姿を消すだけである。
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