レッドフード(漫画)
れっどふーど
これは二人の狩人の物語
川口勇貴の漫画作品。
「狩人VS人狼」「人VS怪物」の戦いを綴った狩猟ファンタジー。
第14回金未来杯エントリー作品として週刊少年ジャンプ2020年42号に読み切りが掲載され、金未来杯優勝作品に選ばれる。
その後、2021年30号から連載作品として開始するが49号で打ち切りとなった。
18話が最終話となり、単行本にエピローグが書き下ろされた。
タイトルの由来は赤ずきんだが、読切版では「鉛の頭巾」と書いてレッドフードと読ませる場面があり、おそらく「RED」と「LEAD」を引っ掛けたダブルミーニングと思われるが、公式のタイトルの英訳は『The Hunters Guild:Red Hood』となっている。
狩人組合
CV.田村睦心(ボイスコミック)
本作の主人公。カソカ村に住む赤桃色髪と三つ編みが特徴の少年。
過去に両親を人狼へ喰われた悲劇に遭う。その為まだ幼いながら人狼討伐を夢見て、野生動物の狩猟で経験を積み力を磨いてきた。その甲斐あって咄嗟の洞察力や知的な判断力に優れる。また初めての人狼を前に恐怖したが、狩人の女性・グリムとの交流や「お前はいつ 大人になる?」等の言葉をきっかけに、子どもながら単身で怪物へ立ち向かう勇気と決断力を発揮する。
名前の由来は、ペロー童話の作者であるシャルル・ペローと思われる。
CV.沢城みゆき(ボイスコミック)
主要人物の1人。狩人組合に所属している狩人。赤頭巾を纏った普通の子どもに見えるが、狩りの際には容姿端麗の大人へ変身する。
怪物退治の豊富な知識と経験、気配だけで人狼を察知できる、冷静沈着な判断力を有するといった相当な玄人(プロフェッショナル)。これらの技能と、所持している狩猟用の多彩な道具・武器を駆使して、確実に怪物を追い詰める。
普段子どもの姿なのは魔女に呪いを掛けられた為。大人の姿になれるのは1日で3時間程の制限がある。
狩人連合のアイアンワークス車掌兼教官である、筋肉質の元気な女性(体育会系)。そして色んな意味でデカイ。左目に眼帯(アイパッチ)を当てている。常にホカホカと体が熱い人。
その他、狩人組合と関連のある人物
※年齢は2021年10月「週刊少年ジャンプ」45号の巻末目次コメントより出典。
牽引ヤドカリの運転士として登場した兄妹。兄・チルチは剣技、妹・ミルチは射撃を得意としている。
2人とも相当な強者で狩人候補だったが、ある事情により選考落ちしている。ベローが狩人組合の合宿へ参加する今期に、兄妹も再び選考合宿へ挑戦している。
名前の由来は青い鳥のチルチルとミチルと思われる。
ビックジョー=ボンカース
合宿参加者の1人。顎と首を覆うプロテクターを付けた巨漢の男性。23歳(……!?)。
見た目通りの怪力を有する。上記の通り20代だが老け顔であり、(本作を『読む者たち』も含め)ベローとポルッツェンからは「おっさんじゃなくて20代なんだ…」と、密かにごもっともな感想を抱かれた。
狩人組合の選考合宿にはベローもいる今期を合わせて、5回も参加している古参。つまり4度も選考落ちしているが、その反面から体力・胆力が頑強に鍛えられてもいる。
本名はケレンケン=ボンカースで、ジンモートの名家の出身。その過去から『物語(せかい)』へ背を向けて逃げるような言動を見せていたが……。
ブレーメン
合宿参加者の1人。過去に妻と子どもを人狼に襲われた怨恨から、狩人組合参入の意を固めていた老人。
しかし意気込みは充分であったが、やはり高齢と老体からか、過酷な合宿へついていけず途中離脱した。
但し、彼の脱退が折れ掛けたベローの心を震い立たせた為、彼の存在は『端役』ではあったが『無意味』ではなかった。
名前の由来はブレーメンの音楽隊と思われる。
合宿参加者の1人。通称・メリオ。34歳。
メガネをかけた長身痩躯の男。ヌメッとした雰囲気の人物だが、利己的な言動を見せる大人の男性。また〝食べかけ恐怖症〟を欠点に持つ。
メリオは菌類学者であり、上着の内側には『百門粘菌(スライムズ)』と呼ばれる多種多様の菌類を入れた容器を常備している。霧吹き等を活用して状況に応じた菌類を吹き付け、多彩な効果を発揮する奇抜かつトリッキーな技を持つ影の実力者。
合宿参加者の1人。顔に布(フェイスベール)を付け、中東風(アラビアン)の聖職者みたいな装いのお姉さん。26歳。
長身であり、思わず「ふくよか」を想起させる容姿(スタイル)をしている。信仰深い人物だが、狩人組合の選考合宿に最後まで残っただけあり、現実的な対応もする大人の女性。
「神殿巫女流 防衛術」と称する魔術(ミガエル曰く『神のご加護』)を使い、指先から障壁(バリア)の発現を可能とする。
ヌーロ・サウ
合宿参加者の1人。中華風の装いをしたお兄さん。26歳。
普段は糸目の控え目な青年だが、秘伝霊薬『柳風香(リュウフェンコウ)』を服用すれば、口から大柄の女性を怯ませる程の突風を吹ける妙技を使う(ついでに副作用で熱血漢な言動に変わる)。また『香』を使わずとも体術で応戦する姿も見られる。
以前は薬師(=調合師)であった。
合宿参加者の1人。ベローぐらいの低身長な童顔かつポーカーフェイスの25歳。
顔へ菱形(ダイヤ)の化粧(メイク)に、髪を4つ結びした特徴的な髪型、引き締まった体型(スタイル)を強調した装いの女性。「天空技劇(てんくうサーカス)団式 操縄術(そうじょうじゅつ)」なる巧みなロープ捌きの使い手、身軽で器用な一面、そして曲芸師のような風貌からサーカスの出身と思われる。
利己的な言動も見せるが、その為に協力関係を惜しまなかったり、他者へ助言を送る等と善良な人物だと窺える。
モスコ・コブス
合宿参加者の1人。右目に眼帯(アイパッチ)を付けちょび髭を生やした、禿頭(スキンヘッド)の壮年男性。
強面の大柄な風貌の通り横暴な性格で、金と暴力を信条としている経営者(ビジネスマン)。
「働く男の処世術(ワークマンズ・アーツ)」なる独特な体術を使う。
名前の由来は単弓類の一種モスコプスだと思われる。
ターパン
縦縞の服を着た長身で、赤みがかった鼻が特徴的な男性。
合宿参加者の1人だが、実は……。
名前の由来は絶滅した馬ターパンと思われる。
クルサ
角みたいな耳みたいな被り物(?)が特徴的な女性。猫っぽい服装をしている通り(そして彼女もにゃかにゃかにゃ恵体)、語尾に「にゃ」と付けて話す人(にゃ~)。
合宿参加者の1人だが、実は……。
ローレル
IW(アイアンワークス)の車掌を務める1人。選考合宿の最終試験「ケイドロ」では、屋上にある檻へ待機する看守(解錠係)を担った。
人狼
ミャイリ
CV.青井怜(ボイスコミック)
カソカ村の老婆。実は村長を喰い殺した人狼。グリムを呑み込むもベローに斧で腹を切り裂かれ、グリムに腹の中へ時限爆弾を仕掛けられ爆死した。年を取っている為に牙が無く、人狼の中でも弱い方だった。
名前の由来はミヤイリガイと思われる。
ナラオイア
まん丸に太った体型の人狼。ミャイリが殺されて嘆き悲しんだ。カソカ村を襲い家を破壊していたが、グリムに村の大鐘を落とされて気絶する。ドドーに足手纏いと見なされ心臓を潰され死亡した。
一人称が「俺」の為に雄と思われるが、単行本1巻の余白ページにて載っている、ナラオイアの人間形態は2つお下げの中性的な子どもと判明。そう実はオレっ娘(或いは男の娘)の可能性が浮上し、多くの『読む者たち』を驚かせた(しかも「プププ」と含み笑いをしてぶりっ娘な立ち絵であざとい姿)。また、ドドーに粛清された今際の言葉が「(恐らく役に立たなくて)ごめんよォ」の謝罪だったのもあり、損得抜きでドドーを心の底から慕っていた。
名前の由来はナラオイア(=三葉虫の一種)と思われる。
ドドー
すらりとした体型の人狼。ナラオイアの兄貴分。ナラオイアが村を荒らしている間に人間へ擬態し、避難した人達の皆殺しを企んでいた……が、ベローにより正体をバラされてしまう。
身バレした後、ベロー達の前で失態を犯したナラオイアを痛め付け、これ見よがしに自身を引っ掻き傷付け、再生能力により十数メートルの巨大人狼へ変化。残酷にも力を増した状態でナラオイアの心臓を潰した。
ナラオイアを粛清した後にベロー達へ襲い掛かるが、痺気貝(ガス・シェール)で噎(む)せて嗅覚を封じられるも、聴覚でグリムを見付け飛び掛かるがベローの不意打ちによる銃撃に遭う。だが「これでは死なないと」挑発するが、その傷が再生しない事実に気付いたグリムに追い打ちを掛けられ、待ち伏せしていたベローが仕掛けたガス引火による煙突の大砲で胸(心臓)を撃ち抜かれ死亡した。
ナラオイアと同じ余白ページによると、「ドドーとナラオイアは実の兄弟(兄妹?)ではない」と明言されている。それもあってか、ドドーはナラオイアを捨て駒程度にしか見ていなかった。
名前の由来はドードーと思われる。
血の目録(レッドリスト)
リュカオン
巨大化したドドーより更に大きく、50メートルくらいある巨体。人狼の首領。ドドーとナラオイアの親を名乗っている(が、直接的な血族ではなく、同じ種族の年長者と若輩者の意味合いと思われる)。この他に服を着ていたり、普通の人狼とは目付きが異なる、たとえ人間であっても『戦士としての覚悟』を持った者には敬意を表する等、別格の存在感を醸し出している。
『物語(せかい)』の進行に目を配らせる言動をしていたが……。
名前の由来はリカオンと思われる。
リュカオンの右腕。リュカオンと共にカソカ村に現れた魔女。人間を見下している。ワープゲートの魔法を使い移動する。吸血犯罪者と異世界から来た人間を絶滅させる存在を足して2で割ったような容姿。
「逆さ散り菊」と呼ばれる線香花火のような魔法を使い、カソカ村の辺り一面を焼き尽くし壊滅させた。
本作「レッドフード」の世界には空想的かつ中世風の特徴が見られる。物語序盤では燃料で薪や石炭等の原始的な面と、戦車に代表される機械的な技術面が混在する社会の一端が登場している。
物語には多彩な「知性」を持った生き物(キャラクター)が登場しており、人狼や魔女等の人外も存在する幻想的な世界観が描写される。魔女の呪いとする魔術の他に、人それぞれが持つ異能や神技の技術を誇る武芸者もおり、強者揃いの面々がお話へ刺激的(スパイス)な彩りを加えている。
だが、これら以上に強調されるのは「知恵を巡らせた知能戦」が繰り広げられている。
それは「狩り」の如く―
- 獲物(ターゲット)の習性や痕跡を観察・状況を推理して、
- 確実に仕留める為の戦略会議や戦術を組み立て、
- 時には罠を張ったり勝つ為の要素(ピース)を揃えたり、
- 囮を使った作戦も考慮に入れて、
- 仕留める瞬間に今までの準備を活用、全力でハンティングへ行く
これは野生でも行われる草食動物と肉食動物の弱肉強食に通ずるものがあり、狩りで重要な事の1つである「知性」の闘いに力を入れた作風が窺える。尚これは「人 VS 怪物」だけに限らず「人間 VS 人間」の騙し合い・疑心暗鬼も垣間見える。
これらの展開(シナリオ)から、主要人物の女狩人・グリムが口にする「狩りとは 人と獣の知恵比べ」が物語で注目される魅力(ポイント)の1つなのだろう。
また「狩り」の題材(テーマ)へ注力する為、数話に渡って大事な『ページ』を消費し易く、展開の伏線回収・辻褄合わせに「溜め」が起き易い創作に陥ると思われる。更に能力や技能の応酬よりも、やや「知的な駆け引き」が目立つ作風から、掲載誌の傾向「力や技のぶつかり合い」等から見れば少し特異な物語かもしれない(本作「レッドフード」は「知と知の鬩ぎ合い」と評する感じか)。
上述で触れたように運命=シナリオへ張り巡らせた糸(伏線)が物語に垣間見え、これを辿る為の意図的に追加される『ページ』の数々、それを魅せる為に迫力ある攻防戦=アクションや、個性的な画力で読者を惹きつける御伽話の世界(また妙に刺さりまくる「性的嗜好=フェティシズム」の意味も含めて)も注目点であろう。
これらの加筆で次々と振り回される登場人物達(キャラクター)の奮闘・思惑・暗躍入り交じる群像劇も見所(ポイント)である。
但し、上記の通り『戦略・智謀を重きに置いたバトル』の展開上、各キャラクターが持つ異能や技倆を全面的に押し出す、ド派手かつ爽快感に満ちた攻防戦の流れになり難い。
また、本来の狩猟よろしく戦場の地形や、キャラクターの手持ちの武装や道具の取捨選択等の良くてリアル、悪くて煩雑な描写が散見、上記のバトルシーンのカタルシスの少なさや、キャラクターの能力を活かし切れない展開なのも相俟って、人によって賛否両論になってしまう。
動物
物語には独創的(ファンタジック)な生き物が登場する他、おとぎ話に登場する定番の種族も散見される。
巨人
ベロー達が目撃した巨人は大きな木のような姿をしていた個体。ボンカースの回想では、1つの胴体に2つの頭部があるような姿をしていた事実から、体型に個体差のある種族だと思われる。また種族名の通りに、大木を軽々と運べるほどのがっしりした巨大な体躯をしている。
習性の一環である『通過』は(その名称や内容から、巨人としてはただ歩いているだけの行動と推測される)、人が暮らす街を襲う天災級の被害をもたらし、狩人組合が出動する程の大惨事。
作者のTwitterでは、カラーで描かれた巨人が投稿され、その様子は木属性の個体×2が悠々と歩いている画。
牽引ヤドカリ
人を乗せる車(台車の上に荷箱と人が寝起きする小屋を一体化したような乗り物)を背負ったヤドカリ。個体名はアンバー。
運転手がアンバーの前に吊るした魚を操って移動する(その構図は中々ユニーク)。
因みに、作者・川口勇貴の自画像は家を背負ったヤドカリが描かれる。
背負い蟹(カーニ・アルマート)
周りの物を背負い装甲にする蟹。泡を吐き出し砂と混ぜ接着剤にし色んな物を背に貼付ける。
6話で登場した巨大な個体は戦車を武器にしている。
器用蟹(プライヤ・クラブ)
人狼
ある日突然人間から変化し人間を喰らう存在。
一度人を喰べた人狼は一生人間を襲い続ける。
その他の特徴として―
等、姿以外の性質はかのジャンプ漫画の人を喰らう存在に近い。弱点は心臓で、これが潰されると再生出来なくなり死んでしまう。また、火で焼かれたり狼鉄鋼(ヴォルフォニウム)等の、特殊な金属で出来た銃弾を受けると再生出来なくなる。
『魔女の呪い』
劇中で度々追及される事象。
詳細は不明瞭だが基本的に『呪い』である以上、被った対象にデメリットを与える(グリムの幼児化が典型的)。
但し、『呪い』そのものを屈服・受け入れる等で制御が可能になり、そうなれば常人にはない異能を入手・行使できる(デボネアやミガエル等が該当)。
狩人組合
伝説の狩人・赤ずきんが設立した怪物退治専門の傭兵組織。依頼金を支払って、怪物退治の傭兵が派遣される。
狩人組合へ参入する希望者は経歴が様々に大人数おり、その為に組合では厳しい訓練が何日も続く選考試験を設けている。
人狼狩り616ツ道具
狩人組合が人狼を殺す為に作った616個の秘密道具。普段はいくらでも物が入る鞄にしまわれている。
猟犬の鼻(ハウンドマズル)
CV.常盤昌平(ボイスコミック)
犬の鼻型をした道具。銃に装着して使う。血や骨の臭いを嗅ぎ分けどんな生物のモノなのか判別する。そして喋る。
煙幕パイプ(ポケット・チムニー)
パイプ型の道具。人狼に吹き掛け視界や嗅覚を遮る。
痺気蜃(ガス・シェール)
身を守る為に刺激性のガスを吐き出す貝。これも人狼の嗅覚や視覚を一時的に封じる。
狩人の銃(チェーホフ・シリーズ)
人狼を仕留める為の銃。普通の銃及び銃弾では人狼には歯が立たない。反動の強いこの銃は人狼の心臓を貫通する威力がある。
知恵の鎖輪(サピエンス・チェーン)
長い鎖。瓦礫を絡ませリュカオンに攻撃したが歯が立たなかった。
耳壊鈴(じかいりん)
大きな音を立て、人狼の聴覚を無効化する。読み切りのみの登場。
檻人形(おりにんぎょう)
人狼を拘束する道具。読み切りのみの登場。
作品名の「レッドフード(RedHood)」のみだと、直訳で『赤い頭巾』故にグリム童話『赤ずきん』関連の作品なども当てはまる。またDCコミック「バットマン」の同名の登場人物の作品も多く該当(ヒット)する。
作品投稿サイト「pixiv」(またこれに限らず)で、本作関連の作品を公開・タグ付けなどする場合は、本記事の『レッドフード(漫画)』を使用する等の工夫で絞り込み検索を助ける。
汝は人狼なりや?:1930年頃・ヨーロッパ発祥の伝統的ゲーム。通称「人狼ゲーム」とも呼ばれ、形を変えながら現在も好まれて遊ばれている。ざっくり説明すれば「人間役は紛れこんでいる人狼を巧みに探る・人狼役は狡猾に人間を騙す内容」で、互いの知恵比べがミソの遊戯。本作「レッドフード」の題材(モチーフ)にされていると思われる。
赤ずきん(英: Little_Red_Riding_Hood):有名なグリム童話のお話。第1話にある構成の一部は、この民話に因んだ展開がある。
類似事項
RWBY:アメリカのプロダクションスタジオ《Rooster_Teeth_Productions》が製作する3DCGの長編WEBアニメ(及び、作中に登場するチーム名)。赤ずきんなどのグリム童話といった物語が題材(モチーフ)にされている、多彩な武器(こちらは変態・機械的な機能が満載)や魔法のような超能力が登場するアクション作品繋がり。
因みにGrimm(グリム)と称される怪物が登場する。
と、される『物語』がありましてな……
以下ネタバレ注意
⚠以下、本作の根幹に関わる『ページ』が「加筆」されます。⚠
⚠本誌未読の『読む者たち』は閲覧注意⚠
- 『真実の本(トゥルーブック)』
理を定め世界を構築する白紙の書物
本作『レッドフード(漫画)』には、いわゆる『物語(せかい)』の核になる書物が存在する。当然、殆どの只人は知ってはならない機密情報。これを管理する機関が存在しているも、現行では「2ページ」が何者かに奪われた状態であり、これだけでも大変な事態であるとされている。
では、この書物で何が出来るのか。その片鱗が15話以降で「加筆」されている。
例えば―
- 人狼界の首領(リュカオン)をいともたやすく"存在しない者"にできたり
- 赤ずきんの狩人(グリム)には記憶改変を施したり
等とする、恐らくの影響を及ぼしている。ただし、完全な「加筆」は行使できないようで、事後の『物語(せかい)』へ情報(てがみ)を遺したり、記憶改変を受けていない者によって、"そういう事"が行われたと察知し対処へ動ける。
また『物語(せかい)』の根幹に関わる「加筆」も行える事実が示唆されている。
そう。
大昔 空には竜(ドラゴン)が翔(と)んでいた しかし狩人が滅ぼした
と、500年前に"そういう話"を書いて"そういう事"に出来ると窺えるお伽話が、カソカ村の村長だったヘック・オーロックによって語られた。
そして彼の目的
『赤ずきん(グリム)』を主役の座から引き摺り下ろし
『狩人(ベロー)』を主人公に擁立するため
も同時に判明する。
実は主人公へ挿げ替える存在・『ベロー』は、狩人組合と敵対する「目録」と(実は途中まで)目的が一致する村長=ヘック・オーロックが『ページ』の力を合成して造った生きる人形だった(また作中世界では、人工生命の創造は「禁忌(タブー)」とされている)。
『ベロー』と名付けた特異存在を狩人組合に入らせ、組合の支配【真実の本(トゥルーブック)の管理の名目である現実改変】を解き、その後は「目録」が用済みとなった『ベロー』を処理しハッピーエンド(めでたしめでたし)となる予定だった。
またこれの関連事項として、人狼や巨人、そして組合の狩人等も『真実の本(トゥルーブック)』を管理する過程で生み出された存在(せってい)であるとも判明。この裏設定(しんじつ)を顧みると、怪物側からすれば「なぜ人外たち(自分たちキャラクター)が狩られる側なのか」と、不公平な立場からの反逆があって計画した秘策が『ベロー』だったのかもしれない。
だが甘い。
「目録」の協力者・村長であったヘック・オーロックが望んだ結末は違った……。
さて。本作『レッドフード(漫画)』を表面上の絵やキャラクター等を通して浅く読むか、作中の言動や思惑を深く読むか(汝は、どんな『読む者たち』なりや?)。
確かな事実は、本作が『二人の狩人の物語』であり、作中では『物語(せかい)』そのものを狩る人が登場している御話(ファンタジー)なのでございます。